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Editor’s Choices
まずはTURN編集部が合議でピックアップした楽曲をお届け!

COVAN – 「da loose (feat. Mr.PUG)」

名古屋市南区出身、Ryo Kobayakawaらと結成したD.R.C.crewの一員で、過去には東京のアンダーグラウンドを代表するレーベル《WDsounds》からもリリースするなど常にその動向を注目されてきたラッパー、COVANが待望のファースト・アルバム『nayba』を発表。そして、この曲「da loose」では、MONJUの活動でも知られ、ドリルと言えば!なMr.PUGをフィーチャーし、AIWASTONE(AIWABEATZとIRONSTONEの2人組)による硬質なドリル・トラックにライド。9時5時で働く労働者の一人として、切れ味の鋭いラップを披露している。ゴールドチェーンをぶら下げて労働者を見下しているラッパーたちにはどう響くだろうか。(高久大輝)

Cruush – 「Headspace」

ニューダッド、ラウンジ・ソサエティらのサポート・アクトを務めてきたマンチェスターのシューゲイザー・バンド、Cruush。昨今の90年代オルタナ〜グランジなど折衷的な要素はたしかにある。けれど、彼らの特徴はその厳かさだ。物理的にレコーディング空間に拘った「Headspace」の残響は、ざらついたシンバルの煌めきからフィードバックの波まで重々しく揺らいでいる。たくさんのマイクロフォンがすくい上げるノイズの構築は神秘的なほど細かい。こうした自然を注意深く描写する様は、4月リリースのEP『Nice Things Now, All The Time』が挿絵画家/児童文学者であるシシリー・メアリー・バーカー「花の妖精」の作風から影響を受けたこともあるのだろう。(吉澤奈々)

Late Bloomer – 「Things Change」

ノースキャロライナ拠点のスリーピース・バンドが3月にリリースする最新アルバムに収録される一曲。近年では新たに出会うことも少なくなった痺れるファズ・ギターとメランコリックなメロディーで包み込まれたスロー・テンポでストレートなオルタナティヴ・ロックに改めて魅力を感じてしまう。楽曲後半にはミッドウエスト・エモ・マナーのシンガロング・パートも用意され、楽曲のところどころからペダル・スチールの音色も聴こえてくるように起伏のある楽曲構成も好印象。いまさら5分間のロック・ナンバーなんて、じゃなくて、ウェンズデイの台頭に象徴されるように、こんなオルタナ・ロック・サウンドこそいま改めて聴かれるべきだと思う。(尾野泰幸)

Sam Evian – 「Wild Days」

最初の2作品を《Saddle Creek》からリリースしているこのサム・エヴィアンは、Celestial Shoreのシンガー/ギタリストとして活動してきたニューヨーク拠点のサム・オーウェンスのソロ・ユニット。サムはブルックリンの録音スタジオ《Figure 8》の設立に関わったりもして、ニューヨーク界隈のインディー・シーンを長く支えてきた。3月22日に届けられる4作目『Plunge』からのこの最初の先行曲は、どこか60〜70年代のヴィンテージ・ロック感を伝えていて、逆に今の時代に案外見当たらないルーズでアーシーなスタイルに挑んでいるかのようだ。ニュー・アルバムにはスフィアン・スティーヴンス、ビッグ・シーフのエイドリアン・レンカーらが参加しているそうで本当に楽しみ。(岡村詩野)

Tierra Whack – 「SHOWER SONG」

ファンク調のシンセベースが軽やかに歌い、ティエラ・ワックも小粋なフロウを聴かせ、一方でBPM80台のキックは慎重に歩みを進める。リリックは曲名どおり、シャワーを浴びながら歌うことについて。シャワールームならエコーがかかるからホイットニーにもブリトニーにもなれるし、いやなことは石鹸と水で排水溝に流しちゃおう。「ん~、こりゃfunkyだね!」 今回もヴィヴィッドな音と、箱庭的で不思議なキャッチーさを合わせもつティエラ。ウィローやリル・ヨッティのアルバムにも招かれる人気者だけど、ソロ作品でもちっとも外さない。フルレングスとしては6年ぶりのアルバム『World Wide Whack』は3/15リリース。(髙橋翔哉)


Writer’s Choices
続いてTURNライター陣がそれぞれの専門分野から聴き逃し厳禁の楽曲をピックアップ!

Elijah Maja – 「Gentle + Jeje」

イギリス系ナイジェリア人で、ロンドン出身のアーティスト、Elijah Maja。オーディオ・ヴィジュアルを用いたリサーチを行う研究者でもある。点滅し波打つ電子音、それにやさしく触れるように、短く途切れながら言葉を紡ぐ穏やかな声。詞は英語とヨルバ語が混ざっているそうだ。伸び伸びとしたストリングス、霧のようなコーラスや低いグリッチ音も、2分弱の間に次々と織り交ざり積み上がっていく。本楽曲が収録される、2月末にリリースのアルバム『Chariot』には、ジョイ・オービソンやキング・クルールがプロデュースに参加。プラトニックな関係、ロマンチックな関係、家族的な関係がどのように育まれていくかをMaja自身が探求した作品だという。(佐藤遥)

Fabiana Palladino – 「Stay With Me Through The Night」

ジェイ・ポールの復活作「Do You Love Her Now」(2019年)に参加し、彼の2023年コーチェラ・ライブのメンバーでもあったファビアナ・パラディーノが、ロマンティックなデュエット「I Care」に続いて放つソロ作。これまでのシンセを多用したフューチャリスティックなソウルの密室感とは趣を変え、自身のシンガー・ソングライター的資質が前面に。エモーショナルなピアノをフィーチャーし、『Fantasy』期のファンキーなキャロル・キング、あるいはランディ・クロフォード「Give Me The Night」と並べたいソウル・フィーリングが心地よすぎる。父のピノ・パラディーノも参加している《Paul Institute》と《XL》の共同リリースとなるアルバムが楽しみでしかたがない。(駒井憲嗣)

Inner Wave, Schoolgirl Byebye – 「Automatic」

Divino Niño『Last Spa on Earth』のリミックスEPでもその見事な手腕を披露した、LAを拠点に活動するInner Wave。本作は、昨年彼らの中国ツアーで一緒だったSchoolgirl Byebye(このバンド名は、ナンバーガールの同名のアルバムから取られている)と意気投合し、Schoolgirl Byebyeのデモテープがアイデアの発端となり制作されたコラボ楽曲。前者のグルーヴィーな部分と後者のはっぴいえんど~never young beachを思わせるサウンドが、互いの共通点であるノスタルジーや望郷の念、郷愁を誘うサウンドとして結実している。(杉山慧)

John Roseboro – 「This My Home」

ネオアコや渋谷系といったムーヴメントに顕著なように、ボサノヴァを愛し演奏するポップス作家は世界中に存在する。とりわけ現在のNYブルックリンで、真摯にその愛を奏で続けているのがジョン・ローズボロだ。自作曲からMei SemonesとのデュオによるA.C.ジョビン「三月の水」のカヴァーまで、ソウルフルな歌声を密やかに吹き込んでいる。昨年リリースされたアルバム『Johnny』も好評だ。年始に発表された新曲「This My Home」は、これまでの楽曲と比べてもシンプルな弾き語り。抜群のマリアージュを発揮している歌声とガットギターのペアリングのみを贅沢に味わえる一曲となっている。(風間一慶)

Kim Gordon – 「Bye Bye」

キム・ゴードンの来たる新作は、ソロ名義でのファースト・アルバム『No Home Record』(2019年)に引き続き、リル・ヨッティやイヴ・トゥモアらの作品を手がけたジャスティン・ライセンと再びタッグを組んで制作。その先行トラックがこちらだ。重苦しいトラップ・ビートの反復、ジリジリと漏電するようなノイズ、そして「パスポート、歯磨き粉、マスカラ」など荷造りのチェックリストを思わせる単語を無機質に読み上げるキムの声は、サブリミナル効果のごとく私の脳を侵食する。デビューから40年経った今なお新鮮な音像と不敵なノイズを放ち、「BYE BYE」とつぶやく彼女はどこへ向かうのだろう。今はこの中毒性のあるナンバーに身を預け、アルバムへの想像を膨らませることにしよう。(前田理子)

Khruangbin – 「A Love International」

内に向かうエネルギーというのは凄まじい。レジリエンス、という言葉があるように、外に広がってゆくことよりも大きな力があることは、私もよく体感するため、アルバム『A La Sala』のコンセプトである、リヴィングルームのある暖かい家を目指すというのにも納得して聴いた。メロディーの繰り返しや、フェードアウトによって、曲が終わっても日常が続くように、循環してゆくのだろうと思う。すぐに反響して返ってくる音は、まるで賑やかなクラブの端で演奏しているような、小さな一角での出来事なのかもしれないと想像する。 しかし、決して区切ることなく海のように広がってゆく、国を超える音楽、異国に誘われる音づくりが為されていることは、様々な言語が飛び交う『A Love International』のYouTubeのコメント欄からも明らかである。(西村紬)

阿佐ヶ谷ロマンティクス – 「想うということ」

東京を中心に活動する5人組バンド、阿佐ヶ谷ロマンティクスの魅力を一言で表すなら「チャーミング」だと思う。冒頭から跳ねるヴォーカルはあどけなく、しかしサビではクライマックス感たっぷりに歌い上げられ、抽象的な描写なのに不思議とストレートに感じられる純朴なラヴソングに胸が締め付けられる。結成された早稲田大学の中南米研究会の影響を感じるラヴァーズ・ロックやダブ的要素は健在で、今回特に心掴まれたのはサビ前の唐突なドラムの切り替えの不意打ち。「リスナーを驚かせてやろう」という遊び心ももたせながら、ポップスとして気持ちよく聞けるアレンジも安定していて文句のつけようがない。手放しに応援したくなるこの気持ちは、聞いてもらえればきっと分かるはず。(寺尾錬)

北村盧 – 「煙突」

今から5年ほど前、《MARKING RECORDS》で知った松本市を拠点にしたバンド、金魚注意報。琴線を直撃するメロディと美しいコーラスにやられたのだが、ライブを観ることが叶わないまま活動停止に。ヴォーカル/ソングライターの金沢英里子はコスモス鉄道として活躍中だが、もう一人のフロントマンである北村盧もファースト・ソロアルバムをYouTubeにて公開。録音まで自らで手がけた宅録的なサウンド、微妙に芯をずらしながら心に入り込んでくる絶妙な温度のメロディは、初期のマック・デマルコやAlex G、Summer Eyeなどにも通じる人懐っこさとそこはかとないストーリー性を感じさせる。これからの活動に注目したい。(ドリーミー刑事)

Text By Haruka SatoKenji KomaiShoya TakahashiRiko MaedaNana YoshizawaIkkei KazamaRen TeraoTsumugi NishimuraDreamy DekaShino OkamuraKei SugiyamaDaiki TakakuYasuyuki Ono


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