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BEST 10 TRACKS OF THE MONTH – June, 2022

Editor’s Choices
まずはTURN編集部が合議でピックアップした楽曲をお届け!

The A’s – 「He Needs Me」

共にマウンテン・マンのメンバーで、シルヴァン・エッソとしても活動するアメリア・ミースと、ドーター・オブ・スウォーズのアレクサンドラ・ソーサー・モニング。二人の「A」によるコーラス・ユニットがこのジ・エーズ。15年以上一緒にヨーデルを歌ってきた2人が、ジャンルや年代を超えた10曲の大好きな曲をとりあげることをコンセプトに結成、ファースト・アルバムも届けられたところだが(日本盤は9月リリース)、第一弾シングルとしてこの曲をとりあげるセンスには思わず感涙してしまった。ロバート・アルトマン監督が1980年に実写映画化した『ポパイ』のサントラに収録された曲で、オリーブ役で出演した女優、シェリー・デュヴァルの愛らしい歌で親しまれているポップ・ソング。原曲の愛らしい雰囲気をそのままに、二人の見事なハーモニーで構成された抜群に洒落たアレンジだ。アルバムにはサム・ゲンデルも参加! (岡村詩野)

ゆるふわギャング – 「Package」

ダンサブルでサイケデリックでスピリチュアルでヒップホップで……秀逸な最新アルバム『GAMA』から、文字通り世界中を飛び回ってきた、ゆるふわギャングを象徴するような一曲を。アルバムの中でもとりわけキラキラとなるウワモノの音色がエモーショナルなAutomaticによるビートと、初期衝動の入り混じったRyugo IshidaとNENEのラップの相性はばっちり。ラッパーがよく言う「やるしかねえ」という言葉をネオリベ的にしか解釈してこなかったという方がもしいたら、絶対に聴いて欲しいです。この曲は、それを別の角度から突き抜けた先で鳴っているような気がしてなりません。(高久大輝)

WHY BONNIE – 「SAILOR MOUTH」

これまでスネイル・メイルやビーチ・フォッシルズのツアーにてオープニング・アクトを務めながらコアなインディー・ポップ・ファンのなかで注目を集めてきたテキサス拠点のインディー・ポップ・バンド、ホワイ・ボニー。バンドが8月に《Keeled Scales》よりリリースするデビュー・アルバム『90 in November』からのリード・トラックが本曲だ。成長とともに積みあがり自らの生の土台をなす記憶といかに関係をもちながら生きていくのかという哲学を記したリリックが歪んだオルタナティヴ・ギターとブレア・ハワートンの気だるげなボーカルに導かれながら、心の中のノスタルジアをくすぐる佳曲。(尾野泰幸)

Wild Up – 「Touch Him When (Heavy)」

死後評価を高めた作曲家、ジュリアス・イーストマンの楽曲を、LAのアンサンブル、ワイルド・アップがカヴァーする作品の第二弾『Joy Boy』から。メンバーで韓国出身のギタリスト、Jijiが演奏する本楽曲には2ヴァージョンあって、アコースティックな「(Light)」に対し「(Heavy)」は激しいディストーション・サウンド。ピアノで演奏される場合は虚無のアンビエンスや微妙な不協和音が魅力の楽曲だが、このカヴァーでは極端に増幅された倍音とそれによる位相の揺らぎが加わっている。地鳴りのごとき力強さはポスト・クラシカルというよりドローン・メタルのそれであり、持続する混沌への執着が両者をつないでいる。(髙橋翔哉)


Writer’s Choices
続いてTURNライター陣がそれぞれの専門分野から聴き逃し厳禁の楽曲をピックアップ!

Braxe + Falcon – 「Love Me」

ダフト・パンクと並ぶフレンチ・ハウスのパイオニアとして知られる、アラン・ブラクスとDJファルコンがユニットを結成。今夏最高のバレアリック・トラックと言って差し支えない、パンダ・ベアをフィーチャーした「Step By Step」を含むEPを《Domino》のサブレーベル《Smugglers Way》から6月24日にリリースした。そのEPからの最新トラックとなる「Love Me」を取り上げたい。フレンチ・タッチと呼ばれたムーヴメントを思い出させる軽めのハウス・サウンドながら、MVにも漂う『ストレンジャー・シングス 未知の世界』に通じるレイドバック感が「Love Me」だけでなくEP全体に通底しているのは、アランとDJファルコンがアラフィフであることも大きいが、世界中を覆いつつあるシティ・ポップのムードともリンクしているように思えてならない。(油納将志)

Ezra Collective – 「Victory Dance」

ここ数年のサウス・ロンドン・ジャズの活況は、コロナ禍を経て単なるムーヴメントから各自がミュージシャンとしての成熟を志向するフェーズに突入している。当時その渦中にいたスーパーグループはというと、フォウンテンズD.C.や アイドルズを抱える《Partisan Records》へと移籍し、隊列をなすビートの快楽とコレクティブが内包する「バグ」の折衷を図った。鋭敏なクラーベが牽引する「Victory Dance」は、その試みが同レーベルからのデビュー作にして結実していることを如実に示している。サルサの符牒を巧みに織り込んだジョー・アーモン・ジョーンズのピアノソロは圧巻。(風間一慶)

Pinty – 「On My Own」

メトロノミーやエマ・ジーン・サックレイ、AFRIQUAらと果敢にコラボレーションを続け、このところ一段と存在感を増すMC。新たなミックステープ『Pinty’s House』からの先行シングルは、カルマ・キッド(Sam Knowles)をプロデューサーに迎え、パーティーとその後の孤独をキャプチャーした物憂げなトーンを通して、スモーキーなジャズとハウス双方の志向が際立つ仕上がりとなっている。自身のセラピーそしてジェントリフィケーションをテーマにした前EP『Tomorrow’s Where I’m At』(2021年)の内省を経て、新作は「ウォーリーをさがせ!」的アートワークよろしく、さらに多様でオプティミスティックな作風になるのではと、楽しみでならない。(駒井憲嗣)

moon tang – 「i hate you」

『少女コレクション序説』という少々不穏な随筆で澁澤龍彦は少女を「みずからは語りださない受け身の存在」と定義したが果たしてそうだろうか? moon tangが「i hate u」のMVで発散する強烈な少女性に私は胸のすく思いがする。彼女は香港理工大学デザイン科卒の才媛で、MVにも登場するGareth. Tと新世代アーティストカップルとしても注目を集める。可愛いがごた混ぜになったミクスチャーセンス、「Nobody hates you like I do」と独占欲が逆さまになった愛情表現のリフレイン、ギターのフィジカルなグルーヴ。未分化で混沌とした魅力を湛えるmoon tangは自ら語りだすことを恐れない。(Yo Kurokawa)

Kabanagu – 「いつもより」

2017年からこの名義での活動を始めた、神奈川県出身シンガーソング・トラックメイカー。セカンド・アルバム『ほぼゆめ』より先行シングル。ファースト・アルバム『泳ぐ真似』が現実の外側へと手を引いているのなら、こちらは目の前の現実を見つめている。その中でも本楽曲は、生活のにおいがする。ゆったりと文節が途切れる譜割りや、少し詰まった譜割り、スネアのリズム、フレーズごとに差し込まれる音などは、外の様子を受容しながら流れる思考や、渦巻き湧き出る思考など、いつも考えているわたしたちの、そのスピードや質感を表現している気がする。生活が続いていくということをやさしく受け止め、その深刻さを柔らかくしてくれる一曲。(佐藤遥)

Reece – 「NO CRYING IN A HO PHASE」

EPを3枚出すなど着実に活動を続けてきたSSWのReece。そんな彼が夏に予定されている待望のデビュー作『It Boy』からの先行シングル。本作は、彼が「Boy, Don’t Cry」でみせたメランコリックな魅力を残しながら、カリードやダニエル・シーザーなどいまのシーンの顔となるようなシンガーたちと比べても全く引けを取らないポップネスを手に入れた。本作は、ホールジーのサポートメンバーもしているキーボーディスト/プロデューサーWhite Noiseが全面的に関わっており、彼がPerre「Westside」でもみせたエスケーピズムを刺激するサウンドがReeceの歌声を引き立てている。(杉山慧)


【BEST TRACKS OF THE MONTH】


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Text By Yo KurokawaHaruka SatoKenji KomaiShoya TakahashiIkkei KazamaShino OkamuraMasashi YunoKei SugiyamaDaiki TakakuYasuyuki Ono

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