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BEST 10 TRACKS OF THE MONTH – February, 2021

Editor’s Choices
まずはTURN編集部が合議でピックアップした楽曲をお届け!

Aldous Harding – 「Revival」

40周年を迎えた《4AD》が、4月2日にデジタルで、7月23日にフィジカルで発表する企画オムニバスから、第一弾として公開された1曲がオルダス・ハーディングによるディアハンターのカヴァー。ディアハンターの作品の中でも最もダウン・トゥ・アースな『Halcyon Digest』(2010年)収録曲をチョイスするアングル、しかもメロディに着眼しちょっとブラジリアン・テイストなアレンジで仕上げるセンスは、ニュージーランド出身ながらジョン・パリッシュと組みウェールズやブリストルで制作してきたオルダスらしい。フォークという文脈の中で様々な音楽性をさりげなくクロスさせてきた彼女の本領が発揮されている。(岡村詩野)

Capo Lee, Jme, Frisco, Shorty, [Norf Face] – 「Baitest Sound」

北ロンドン、トッテナム出身のグライムMCが集ったプロジェクト『Norf Face』からリード曲をチョイス。スケプタがプロデュースする裏通りの不穏さを湛えたバック・トラックに支えられ、それぞれの個人史をボースティング混じりにスピットして繋がれるマイクリレーは、彼ら自身がどこから来たのかの確かめているよう。昨年、東ロンドンのボー(郵便番号:E3)出身のディジー・ラスカルが『E3 AF』というアルバムをリリースしたことも記憶に新しく、グライムMCたちがルーツに立ち返り、改めてその歴史を更新せんとする向きも感じる。なお、『Norf Face』には各参加MCの“Pattern”と題されたソロカットも収録されているのでそれらも必聴だ。(高久大輝)

KeithCharles – 「Nobody but You」

以前は、別名義で地元アトランタの《Awful Records》からリリースを行っていたが、2016年にNYに移住、近年ではセルフ・リリースを続けるラッパーの新曲。静止画と動画を交互に差し込んだMVの映像に加え、インプレッションズの「People Get Ready」を思わせるコード進行や歌詞のオマージュが楽曲をより雄弁なものにするための重要な要素になっている。リリックに込められた、乗り物のドアは開け放ち誰に対してもオープンでありたいという想いは、時代を経ても止まない差別の不条理に対する問いかけのようでもある。語気の強いラップではないが、詩の朗読のように聴く人の耳にゆっくりと、たしかに届く曲。(加藤孔紀)

Rostam – 「4Runner」

6月4日に発表予定の新作『Changephobia』から3つ目となる先行曲で、抜けのいい12弦ギターの音色がいつまでも耳に残る、この人にしてはメロディアスな部類のものだ。「4Runner」とは北米トヨタで販売されている自動車。恋人を乗せて西海岸を逃亡しているようにも読める刹那的なリリックが、軽やかな曲調の中で悲哀を伝える。変化への嫌悪という意味のアルバム・タイトルからは、ヴァンパイア・ウィークエンド脱退後もプロデュース(ハイム、クレイロ他)などで多忙な彼が直面するトランスフォビア問題を通じた多様性の訴えが浮かんでくるが、一方でここまで公開されたリード曲に共通する一定の人懐こさからは、いたずらに主張するのではなく、和平で共に成長していこうとする開かれた意識も感じ取ることができる。(岡村詩野)

Skullcrusher – 「Song For Nick Drake」

LA拠点のシンガーソングライター、ヘレン・バレンタインが《Secretly Canadian》よりリリースする新作E.P.『Storm In Summer』に収録された一曲。ザクザクとしたアコースティック・ギターのストロークと粒の大きなシンセサイザー・サウンドが、うっすらとした霞のかかったようなエフェクト・ボーカルと楽曲全体の音像の中でアクセントとなり、体を揺らす。この曲は彼女の人生の様々な場面ととともにあったニック・ドレイクの楽曲と自身の関係性を歌い上げたもの。そこからも伝わる本曲の叙情性は《Bandcamp》に付与された《emo》という3文字のタグや、VHSライクなエフェクトのかかったMVからもにじみ出ている。(尾野泰幸)

Whereisalex – 「Shine」

ツイッターのバイオに依ればテキサス州ダラス在住(《Bandcamp》の位置情報は日本の富山市になっているが、所縁があるかは不明)のWhereisalexと名乗るエレクトロ・プロデューサーによるシングル。声ネタや笛やピアノのフレーズにクラップや重めの歪んだベースなどが混ざり合い、序盤からカラフルな音像で惹きつけ、展開してビートレスになる中盤ではジブリ映画のワンシーンのように壮大に。終盤は和のニュアンスを持った弦のメイン・リフが引っ張り、余韻を残しフェード・アウトする。さながら差し込む光の角度によって表情を変える絵画のごとく、3分45秒で鮮烈な印象を耳に焼き付ける饒舌な1曲だ。(高久大輝)


Writer’s Choices
続いてTURNライター陣がそれぞれの専門分野から聴き逃し注意の楽曲をピックアップ!

Hovey Benjamin – 「I Don’t Respect Myself」

ネタ系ではあるが、どこかで間違いが起こればドレイクになれるかもしれない神メロ職人。勝手に2018年のベストトラックだと思っている「Flexing On My Ex」では切な系メロディに乗せて、元カノの前でカッコつけるダメンズを好演(リアルか? )した。昨年リリースのドラッギーな「Never Too Much」も傑作だったが、最新曲「I Don’t Respect Myself」では「コメントやSNSで悪口言われても俺、自分のこと何とも思ってないし」という開き直りをカマす。自らをピエロと揶揄し徹する様は痛快。きっと何かあったんだろう。曲がめちゃ短い。なお、彼を推してSNSで何を言われても開き直るつもりだ。(望月智久)

SAFE ft. Kiana Ledé – 「CONTAGIOUS」

映画『Judas and the Black Messiah』インスパイア盤収録の一曲。全体的にシリアスなムードの同作の中で、幾分ポップな本曲は一服の清涼剤のような印象だが、ドラムのマットな質感のためか浮いては聞こえない。ドリーミーな声で魅せるSAFEは、カリード「Don’t Pretend」やYG「Play Too Much」などへの客演でも知られるトロントの新星。対するキアナ・レデはYouTubeのカヴァー動画で名を上げたフェニックス出身の23歳で、デビュー・アルバム『KIKI』の高評価も記憶に新しい。字面だけ見ればトキシックにも思える恋を爽やかに歌い上げる二人から目が離せない。(奧田翔)

yuma yamaguchi – 「Beautiful Wasted Melody feat. (feat. ラブリーサマーちゃん )」

デトロイトテクノの歴史的アンセム「HI TECH JAZZ」の影響を感じさせる楽曲としては、昨年リリースされたcero「Fdf」が記憶に新しいが、CM・映画音楽の分野で活躍するyuma yamaguchiがラブリーサマーちゃんをフィーチャーしたこの作品も、その進化における最新型の異形と言えるだろう。職業音楽家らしい堅牢な構築美と、そこから逸脱せんとする性急でフリーキーなフィルインとサックスによるスリリングな攻防。そしてラブサマちゃんの歌声はそのストラグルをさらに煽る熱情と切り捨てるような冷淡さが同居し、ゾッとするような凄みを感じさせる。わずか2分49秒の戦慄と興奮。(ドリーミー刑事)

いちやなぎ – 「日々の栞」

シルキーで幽玄な歌声を持つ京都在住の男性SSW。声色を例えるのは難しいが、トーンや節回しはすこしジュディ・シルを思い起こさせる。2018年の自主制作EP以降まとまったリリースこそなかったが、弾き語りでの精力的なライブ活動もあり、知名度は全国に及びつつあるようだ。

本曲はここ1、2年準備を整えてきたバンド編成でのシングルで、Homecomingsとのタッグで知られる荻野真也が録音を担う。コーラスにマリンバにマンドリン、メンバーとともにアンサンブルを組む楽しさがにじみ出たようなカントリー・フォークには歌うたいの範疇にとどまらないアーティストシップが感じられ、今月リリースのEPにも期待が高まる。(吉田紗柚季)

 

【BEST TRACKS OF THE MONTH】
アーカイヴ記事

http://turntokyo.com/artists/best-tracks-of-the-month/


Text By Sho OkudaTomohisa MochizukiSayuki YoshidaDreamy DekaShino OkamuraDaiki TakakuKoki KatoYasuyuki Ono

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