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さとうもか: GLINTS

2020 / SOUND SKETCH
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夏のガールズ&ボーイズたちへ

05 August 2020 | By Dreamy Deka

これまでもこれからも、夏は永遠に若者たちのものである。そう高らかに宣言するようにキラキラと輝く10篇のポップ・ソングたち。耳の早いインディー・ポップ/ロック・リスナーを唸らせてきたさとうもかが遂に、ユーミンやaikoの系譜に連なるスケールの才能を開花させた。そんな感慨を覚えるアルバムである。きっとこの作品の真の価値は、スマホやラジオから流れる彼女の歌声を偶然耳にしたガールズ&ボーイズが、語り続けてくれることだろう。彼らのエンドレスサマーの記憶と共に……。ついそんな気持ちになってしまう、真夏の決定盤である。

今作を語る上でまず触れるべきは、ソングライティングの爆発力について、であろう。ツアーの合間もiPhoneで作曲しまくり、正規のアルバムとは別に多くの音源を自主流通で発表するほど多作な彼女なので、今作に収められた10曲が熾烈な予選を勝ち抜いてきた精鋭たちであることは想像に難くない。しかし今作における楽曲の強度はこれまでとは明らかにレベルの違うものである。

例えばTENDREが編曲を手がけたタイトルトラック「Glints」は彼らしい洗練されたビートをベースにしつつ、80年代の歌謡曲や90年代のミリオンセラー・ソングすら彷彿とさせるような思い切りの良さがあるし、松浦正樹(ANATAKIKOU)による「パーマネント・マジック」には、完全にテクノポップ/ニューウェイヴ歌謡としての振り切り感がある。入江陽プロデュースによる前作『Merry Go Round』(2019年)やデビュー作『Lukewarm』(2018年)には一点ものの洋服を仕立てるような繊細さがあったが、今作の核を成す楽曲にはラジオのヒットチャート番組やコンビニの有線から流れてきたとしても、決して埋もれることのないタフな輝きを放っているのである。

さらには青春ドラマ風のセリフを乗せた「Strawberry Milk Ships」や昭和のCMソングのような「アイスのマンボ」など、やりたい放題のアイデアをぶち込みながらも、ポップ・ソングの品格と王道を守り抜くセンスとマナーには、かの大瀧詠一巨匠の面影すら感じさせる……と言ってしまっても大げさではないはず。

しかし、このアルバムがこれまで以上のポピュラリティーをまといつつ、さらに聴き手とプライベートな感情を共有する関係にまで踏み込んでくるのは、夏の日差しの裏側に広がる、影の暗さも克明に描いているからだろう。「愛ゆえに」「ラムネにシガレット」といった身を焦がすようなやるせない感情、「あぶく」の決して誰にも打ち明けられない秘密。残酷なほど冷静に人間というものを見つめた描写の数々に、作詞家・さとうもかの凄みを見るのである。しかもこれらの楽曲を共に作り上げたのが、地元・岡山で長年にわたり活動を共にしてきた仲間達(さとうもかバンド)であるということも、ファンの心を熱くさせるサイド・ストーリーであると共に、楽曲が持つリアリティを裏付けているようにも思う。(ドリーミー刑事)



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