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Los Retros: Retrospect EP

2019 / Stones Throw
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ストーンズ・スロウが送り出す弱冠19歳のメロディメイカー

27 June 2019 | By Kei Sugiyama

看板でもあるマッドリブ、J・ディラ、MFドゥームから、アニメ『キャロル&チューズデイ』にも楽曲提供しているベニー・シングスやメイヤー・ホーソーンなどのポップ・マエストロまでを擁するストーンズ・スロウ。96年にピーナッツ・バター・ウルフが設立したこの老舗レーベルと新たに契約して注目を集めているのが、19歳、Mauri Tapiaによるプロジェクト、Los Retrosだ。そのファーストEPが本作。ブラジル・ポップス界の大御所、ロベルト・カルロスのようなラテン・フレイヴァーも含んだ、70年代のビリー・ジョエルやギルバート・オサリバンのような心地よいメロディを聴かせるそのサウンドは、近年の流れで語ると、ザラついた音をワザと残しているところやグッド・メロウな風合いなどはマック・デマルコ以降……レックス・オレンジ・カウンティやCucoなどと近い感覚を持っているのではないだろうか。

本作に先んじで、今年に入ってからお披露目代わりの1曲「Someone To Spend Time With」が発表されているが、ロマンたっぷりな孤独の描写が秀逸なその曲を、より甘く恋人同士の囁きを舞台に広げたスローな「Never Have Enough」で本作は始まる。10㏄を思わせるシンセサイザーの音と彼の歌声は相性が良く、少し肩の力が抜けてシリアスになり過ぎないところが心地よさを演出している。ギターのフレーズやドラムの音色など70年代的なヴィンテージ・サウンドが印象的な「Friends」は、70歳・異端のロウ・ファイ・シンガー・ソングライターのTONETTAにも通じる部分もあり、時代が一回りした面白さがある。

そんな本作のクライマックスはEPの最後に収録されている「Last Day Of Earth」だ。メランコリックなメロディは少し悲しげだが、調子が外れたトランペットのような音を鳴らすシンセサイザーが高揚感を掻き立てるダンス・トラック。タイトル通り舞台は、地球最後の日。この物語の主人公は友達や大切な人と一緒にダンスをすることを選ぶ。非日常の高揚感や慣れ親しんだ所から去る哀愁など様々な感情が入り混じりながら踊っているかのようだ。それは楽しいパーティーの最後のようでもあるし、例えば荒廃した地球が舞台の映画『ウォーリー』のラストのダンス・シーンなんかも思い浮かぶほど。こちらの想像を存分に掻き立たせてくれる発想の跳躍力に彼のメロディー・メイカ―としての才を感じる。(杉山慧)

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