Review

kauai hirótomo: Another Galaxy

2019 / TONOFON
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先進と懐古が心地よく同居する新鋭のデビュー作

26 August 2019 | By Dreamy Deka

1992年生まれの新鋭マルチ・ミュージシャン、kauai hirótomo(カワイ ヒロトモ)がトクマルシューゴ主宰のレーベルTONOFONからリリースしたデビュー・アルバム。

「あだち麗三郎と美味しい水」の一員として、あるいは東郷清丸のサポート・メンバーとして縦横無尽にヴィブラフォンやドラムを操る印象の強い彼だが、本作は打楽器奏者のソロ・アルバムというイメージを良い意味で大きく逸脱し、フォーク、ブラジル、エレクトロニカにポストロックといった多様性に富んだ音楽的要素が一つの生態系のように絡み合う、箱庭系小宇宙音楽とでも呼びたくなるような独自の世界を構築している。既成概念やジャンルに捉われることなく音色や言葉の一つひとつを発見・発明し、それを大胆に組み合わせていくことで未知の景色を描いていく姿勢は、彼の才能を見出したあだち麗三郎、トクマルシューゴ、東郷清丸とも重なるが、先進と懐古が心地よく同居し、表情を入れ替えながら輪郭を拡張していく音像から私が思い浮かべたのは、レイ・ハラカミ最後のオリジナル・アルバムとなった『lust』(2005年)とヴァン・ダイク・パークスのファースト・アルバム『ソング・サイクル』(1968年)という二枚の名盤だ。

しかし、この作品に対して特別な感情を抱く理由は、そうした音楽的クオリティの絶対的な高さや新しさと共に、河合宏知という一人の若者が内面に描いたパーソナルな心象風景を、聴き手にそっと共有するような親密さと誠実さにあるように思う。「明らめている」での繊細な告白のような歌声、表題曲「Another Galaxy」の秘密の宝石箱を開けたようなサウンドを聴くたびに、現在の彼が持つ全ての想像力を駆使して私たちに語りかけてくれているような感覚を覚え、そのまっすぐなひたむきさに胸を打たれてしまうのだ。(ドリーミー刑事)

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