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in the blue shirt: Convex Mirror e​.​p.

2024 / The wonder laundry
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in the blue shirtのロマンティックなポップネスについて

24 July 2024 | By Haruka Sato

in the blue shirtの音楽のポップネスは、大部分がロマンティックさで​​占められていると思う。そのロマンティックさはギターや鍵盤での演奏がベースにあるような、安心感があって気持ちのいい和声によるもののような気がしている。ほかにもチルウェイヴの気楽で浮遊感のある雰囲気や、フューチャー・ベースのメランコリックでキラキラとしたシンセのサウンドなどを起点に考えてみることもできるかもしれない。

今作は、ヴォーカルをカットアップする技法探索の過程で生まれた習作集だという。前作『Park with a Pond』と聴き比べると、ヴォーカルがより人間の歌うさまに近づいたように聴こえる。そのためなのか「Into Deep (What I Need)」冒頭のカットアップの一部がエフェクティヴなものに感じられた。また、人間の歌唱に近いカットアップされたヴォーカルが、キャッチーで耳馴染みのいい歌メロ、前述のようなハーモニーと一体になることで、これまでよく聴いてきた音楽のような気がするのに決してそうではない、という雰囲気が生まれているとも感じた。以前のインタヴューで自身のカットアップの技法について、普通ではない声になるからこそ斬新な手法を使って、(普通に)歌っているように聞かせたいという逆転現象みたいなものと話していたが、再度逆転が起きているように思える。

「Windfall」や「Over」のドラム、「Boo-Boo」のさまざまなフレーズがたたみかけられる展開は予感や期待の音のようである。それらは、何を歌っているのかわかりそうでわからないカットアップされたヴォーカルの音と、意味を持った言葉とのあわいにあるものに似ている。タイトルのConvex Mirrorとはカーブミラーのことで、街中のカーブミラーはそこから見えていないもの、なかでも近づいてくるものを映して見せる役割を持っている。ある種の実際的な予感を引き出す役割とも言えるだろう。in the blue shirtの活動を見ていると、決まった条件がある中で手を動かすことや、練習の積み重ねが導き出すものがあるという姿勢を感じる。それは、ものづくりのロマンティックさだと思うし、彼の音楽からロマンティックなポップネスが聴き取れるひとつの理由なのかもなと思った。(佐藤遥)


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