「他のウィルコのアルバムみたいに聴こえないウィルコのアルバムが作れるかを彼女はわかっていた」
ネルス・クラインが語るケイト・ル・ボンのプロデュースによる新作
実に13作目のアルバムである。近年はまたリリース・ペースが早くこれで2年連続だ。だが、バンドの大きな転換点となったあの『Yankee Hotel Foxtrot』(2002年)からももう20年が経過した。ルーツ再定義、新たな啓発、を繰り返しながら、少しずつラウンドを重ねてきた。気がついたら、個人と社会の関係性は時にバンドの尺度の中で、時にはその領域を超えて浄化されたり緊密になったりしながら、ウィルコという螺旋の塔は上へ、上へと伸びている。アメリカという国の在り方が問われ続ける中、国民の誰もが納得できる回答が導き出せないまま……いや、そんな回答などあろうはずがない、という厭世的な意見はとりあえず置いておいても、それでもそこに抗おうと日常から、ただのアメリカ人という立場から発信し続けるバンド。それがウィルコだと思う。そして、それをもってして現代のロック音楽だとする彼らの……ジェフ・トゥィーディーの考え方には新たな作品に触れるたびに心を打たれるのみだ。
昨年の2枚組『Cruel Country』に続くニュー・アルバム『Cousin』は、久々に外部プロデューサーを招いて制作されている。しかも、ケイト・ル・ボン。ウェールズ出身でこれまでにアルバムを6作品発表している非常にラディカルでユニークなシンガー・ソングライターで、『Reward』(2019年)と最新作『Pompeii』(2022年)は共に高く評価された。プロデューサーとしてもディアハンター『Why Han’t Everything Already Disappeared?』(2019年)、ジョン・グラント『Boy From Michigan』(2021年)、カート・ヴァイル『(Watch My Moves)』(2022年)などを立て続けに手掛けていて今や引く手数多。現在はLAを拠点とするそんな彼女とガッツリとイチから制作したことによって、バンドにはまた新たなメスが入ることとなったわけだ。久しぶりにエッジーなウィルコの帰還。そう感じる理由を、今回はギタリストのネルス・クラインに語ってもらった。徹底してジェフをたて、自分はジェフを支える立場であることを明言するネルス。その謙虚かつ冷静なトークをぜひ読んでもらえればと思う。2024年3月には来日公演も決定している。
(インタヴュー・文/岡村詩野 通訳/丸山京子 Photo by Peter Crosby)
Interview with Nels Clein
──新作、聴かせてもらいました。とても尖ったエクスペリメンタルなバンドの姿勢を伝える、でも、ある種の親しみ、温かみも感じられるアルバムだと感じました。
Nels Cline(以下、N):素晴らしいね。そう感じさせているのは、ジェフのソングライティング、ジェフとプロデューサーのケイト・ル・ボン、そしてサウンド面ではジェフとエンジニアのトム・シックとの組み合わせに負うと僕は思うよ。曲の多くは『Cruel Country』と同じ時期には存在していたんだけど、異なるアイデンティティを持つ曲だったので、いったん脇に置いてたんだ。それをロフトでケイトと改めてアプローチした、ということさ。
──バンドの公式サイトには、「Wilco Cousin. More than just the band’s 13th studio album, it’s a new member of the family」と書かれています。「新たな家族の一員」という表現に特に気持ちを掴まれたのですが、それは「いとこ」というタイトルにも表れています。ジェフ・トウィーディー自ら「I don’t feel like I’m a blood relation, but maybe I’m a cousin by marriage(血の繋がりは感じないけど、結婚して従兄弟になったのかもしれない)」と語っている、このタイトルに込めた意味を教えてください。
N:ごめん、それはジェフのアイデアなので僕が代わって答えることはできないんだ。実際、「Cousin」というタイトルの曲はある。ただ、作業中は『Cousin』と呼ぶ予定ではなかったことだけは確かだ。つまり、曲を聴き、プロダクション、ミキシングを終え、曲順を決め、アートワークが完成し、すべてが形になって、これは『Cousin』だとジェフが感じたんだろう。
──ケイト・ル・ボンとバンドがいつ、何がきっかけで出会ったのか、教えてください。
N:僕はアルバムのレコーディングで彼女が(ロフトに)やって来た時が初対面だった。でもジェフとケイトは、ウィルコ主催のフェスティバルで会っているはずなので、その時じゃないかな。その前にも会っていたのかはわからないが、ジェフが彼女の作品のファンであることは確かさ。僕もとても好きだよ。まあ、ジェフからケイトをプロデューサーとして迎えるアイデアを提案され、バンド全員賛成したというわけさ。
──ケイトはとても先鋭的な音作りをするシンガー・ソングライターです。不気味なフォーク系もあれば、クラウトロック調もある、といった具合に……。
N:そう、彼女はドイツと日本のロックが大好きなんだ。どのアルバムかは言ってなかったが、彼女が好きだというドイツか日本のアルバムのサウンドを、僕も要求されたよ。今回に関して言うなら、ジェフとケイトのコラボレーションだったわけだけれど、最初ジェフは彼女がやりたいことをなんでも提案してくれていいと言ってたんだ。そこまでジェフに言わせたのは、おそらく彼女の音が持つある種の音色とかゆらぎみたいなもののせいじゃないかと僕は想像してる。単なるnote(音)ではないんだ。ケイトのお父さんが昔からのウィルコ・ファンだったので、彼女も若い頃からウィルコを聴いて、ウィルコの音楽とともに育ってきた。だからどうすれば、他のウィルコのアルバムみたいに聴こえないウィルコのアルバムが作れるかを彼女はわかってたんだ、おそらく。それがなんであれ、今回に関しての彼女の強みはそれだったんじゃないかな。
──ウィルコが外部プロデューサー/エンジニアを迎えて大きな成果を出した作品といえばやはり『Yankee Hotel Foxtrot』(2002年)です。あの頃のウィルコに大きなインスピレーションをもたらしたジム・オルークの存在と、今作でのケイトの貢献とにはどのような違いがあると考えますか?
N:『Yankee…』の制作時、僕はまだバンドにいなかったけれど、ジムの役割がケイトと全く違うものだった、ということだけはわかるよ。というのも、ジムはレコーディングには参加してなくて、引き継いだに過ぎなかったからだ。その場にいた人間が「とても複雑で必要以上にオーバーダブを重ね、込み入り過ぎてバカでかいモンスターみたいになってしまった」と表現してたものの問題を解決すべく、連れてこられたのさ。おそらくジェフの判断でね。それでジムは要らないトラックを大幅になくし、彼が重要だと思うものに的を絞った。そうやって最終的に完成したのが今、僕らが知る『Yankee…』のサウンドだ。それに比べると、ケイトは一番最初からいて、その瞬間瞬間で、メンバー各自のやれることに想像を巡らしながら、作り上げていったという感じだった。
──では実際に、ケイトとの作業はスタジオでどのような具合に進んだのでしょうか? 先ほど、「ドイツや日本のロックみたいな音」と言われたと言ってましたが、他にも彼女がスタジオで行ったディレクションで具体的に覚えていることはありますか?
N:具体的に覚えてることはそれほどないんだけど、たとえばある時はロフトいっぱいにエフェクト・ペダルを並べたこともあったよ。僕はかなりの数を持ってるんでね。たとえば、ケイトがイメージしたサウンドが、ものすごく薄っぺらくて、メタリック──と言ってもヘヴィメタルのメタルじゃなくて、金属的っていう意味のメタル──で、冷たいくらいのサウンドなら「じゃあ数あるペダルのどれかがその音に近いかもしれない」と、一つで試してみる…すると彼女が「いや、これじゃない。これとは違う。もしかしたらfuzzじゃなくて、単にEQの問題なのかも」「だったらこれで」……というように、とにかく彼女が頭の中で聴いていたサウンドを、それがなんであれ、探し出そうとしたんだ。その過程は僕にとっては楽しめるものだったよ。
──ウィルコはそもそもセルフ・プロデュースができますし、ジェフもあなたもグレンも、メンバー全員がプロデュース能力のある集団です。ケイトがプロデューサーとしてクレジットはされていますが、最終的にあなたがたメンバーからのディレクションのバランスはどの程度あったのでしょう?
N:レコーディングの終盤は、ケイトとジェフとエンジニアのトム・シックの3人でかなりの時間をかけて作業をしていたので、それはコラボレーションと呼んでいいのかもしれないね。でも自分達以外の誰かを外部から呼ぶことが、そもそもジェフが興味を持っていたことだった。当然、生まれるものは違ってくる。だから、今回はそれをやって、どうなるか見てみようということだったんだと思う。これは今回に限らず、ジェフのやり方だ。彼は同じことを繰り返すのは好まない。たとえば、僕が最初、このバンドに参加した時……ってもう19年前になっちゃうんだけど、その時のウィルコはすべてをテープで録音していた。デモを作るのもテープだった。『Sky Blue Sky』はすべてアナログ録音だった。ところが次のアルバム『Wilco』はすべてコンピューターで作った。そんなふうにジェフは毎回アプローチを変えるのが好きというか、一度やったことを繰り返したくないのだと思う。
──先ほど、『Cousin』は『Cruel Country』とほぼ同時期に書けていたとおっしゃってましたが、『Cruel Country』でルーツの一つであるカントリー・ミュージックにより踏み込んだことで一つの帰結点を見つけ、その次のアクションとして本作に向かった印象もあるのですが、実際に『Cruel Country』と今作との間には、接続、もしくはリセットなどどのような関係があるといえますか?
N:ジェフの場合、大抵いつもたくさんの曲が手元にあって“出番を待ってる”状況なんだけど、今回も大量の曲があって、その大半がパンデミックのロックダウン中に書かれたものだった。ジェフは家で書いた曲を、1ヶ月以上、1日1曲のペースで僕らに送って来たんだ。「これ、今日書けた曲だけど、どうかな?」と。で、それらを録音し始めてみたら、ジェフ自身、2つの異なるムードというか、スタイルが生まれて来ていることに気づいたんだと思う。つまり『Cruel Country』は最初からコンセプト・アルバムにしようと思ったわけではなくて、レコーディングをする中で、ある種のコンセプト・アルバムになっていった、そんな作品だったんだ。そのことをジェフが意識し、『Sky Blue Sky』 や『The Whole Love』の大半がそうだったように、ロフトでライヴ録音しようと決めたのは、嬉しいことだったよ。ずっとツアーもできず、お互い集まることができなかったパンデミック明けということを考えるとね。で、今回の『Cousin』では再び方法論を変えた。一緒の時期に書けたとしても、違う種類の曲だったからさ。もう一つ、今になって思うのは──これはジェフ自身、最初は気づいてなかったと思うけど──ケイトも、ライヴで一気に録るよりも『Cousin』を作ったやり方、つまりメンバー1人ずつ、アイデア1つずつを録音し、それらを使って徐々にトラックを作り上げていく方が好きだったということだ。
──オープナーである「Infinite Surprise」から象徴的です。冒頭から不穏な爆発音にも似たノイズと、時計のようなカウント音に始まり、このアルバムが何か緊張感のある状況を伝えているようにも聞こえました。歌が始まってから中盤まではメロディアスな曲調ですが、終盤に向けてまた不穏な濁り音が目立ち、最後はパルス音のようなノイズで終わります。こうしたアレンジ、展開、構成に対し、あなたのアイデアも大きかったのでは? と想像できるのですが。
N:実はそういうわけでもなくて(笑)。あれは結構前からあった曲で、ケイトがスタジオに来る前には、何度めかの変身を遂げてた曲なんだ。ギターはほとんどそうだったし、ジェフがやってるいろんなことも、あらゆる反復も何もかも。つまりは、ジェフが一度ならずとも何度も、曲を解体してはまた作り、それを繰り返した末に、あの過激なアレンジを施したんだ。ケイトが来てからは、それを使って、ジェフと二人で曲をを進ませていった。なので、元々は一枚岩のようなダイナミクスを持つ曲だった。パルス—-パルス—-パルス、重ねる—-重ねる—-重ねる、 厚く—-暑く—-厚く……みたいに。僕は海ほどのフィードバックを鳴らしたのを覚えてる。そのうちのいくつかはどこかに残っているんじゃないかな。ピュアなフィードバックとかノイズとか……ノイズっていう言葉は僕は好きじゃないんだけど(笑)、呼ぶとなるとノイズになるのかな……真ん中のブレイクダウンの部分ではジェフは一度は全部取っ払って、ヴォーカルを調整して……そんなふうに、最初のアレンジにはなかった部分もいっぱいだ。それをその後、ケイトが意見を出し、ジェフと二人で曲を前に進めた。その結果を君は聴いてるんだよ。
──先行曲である「Evicted」は一聴するとフォーキーで聴きやすいですが、こうした曲でも音が「汚れている」…もちろん悪い意味ではなく、「きれいになりすぎないように」している印象もあります。続く「Sunlighr Ends」では意図的にチープな打ち込みを使い、一方でクラシカルで流麗なギター音を鳴らしています。こうしたミスマッチとも思える組み合わせにも興味が惹かれますが、こうした興味深い実験は録音に入る前に思いつくものですか? それともレコーディング現場でスポンティニアスに浮かんでくるものなのでしょうか?
N:それって、まさしくケイトのインプットによる部分じゃないかと思うよ、少なくとも僕は。そういうミスマッチの組み合わせこそが、彼女の──彼女がジェフと一緒に作る──アルバムの作り方なんだよ。
──さきほども少し話しましたが、今のウィルコは自分たちの足元を確認し、時に振り返りながらも、そのキャリアに今一度疑いの目をもち、時にはその足元を崩してみようともしています。つまり、今のウィルコは自分たちを「再定義」しようとしているシーズンのように思えるのですが、あなた自身はどのように今のウィルコを位置付けていますか?
N:君の意見はすごく正しいと思うし、それが真実である可能性もすごく高いと思う。でも、そうだとしたら、それはジェフ個人がそう感じているからだ。この船の船長はジェフさ。彼が書く曲、それにどうアプローチするかは、ジェフによって表現されるんであって、バンドが「そのアイデアは好きじゃない」とか「むしろこうしよう」というようなことは滅多に、いや、全く起こらないと言っていい。バンドはどうすれば彼のヴィジョンを実現させられるか、ってことを考える。おそらくジェフは、常に自分を見つめ直してるんだと思う。それがジェフっていう人間だ。これまではどこにいたか、この先はどこへ行きたいか、ということを常に意識しているよ。
──あなた自身はどうですか? どの程度、そういったことを意識して活動していますか?
N:ウィルコに関しては、とにかくジェフのヴィジョンを実現したい。それだけだ。自分のグループはジャズの即興演奏のようなことがメインだが、それ以外での自分の役割はメインの人間のアイデアのための調整役だ。決して、必要以上に存在感を出そうだなんて思ってない。「山ほどギターが欲しい」「リードギターを弾いてくれ」と言われりゃもちろん弾くけれど、自分のアジェンダを押し通そうとかいうのはないんだ。むしろ僕がやるべきことは、ウィルコだったらジェフと残りのバンドがこうなって欲しいと願うものにするように弾くこと。でも自分の音楽をやる時は、常に、常に(苦笑)自分を追い詰めて「今どこにいるんだ?」「どこに行きたいんだ?」って問いかけて……。それは決して「他人がこの新しいアイデアやギタープレイをどう思うだろうか?」と気にするからじゃなくて、僕自身の自信のなさからくることが多くて。結局は、自分の描く夢を実現させようとするだけ。で、その何年も後まで心配し続ける……(苦笑)。
──でも私は、全くシンガーズではないNels Cline Singersの作品も大好きですよ。
N:(日本語で)アリガトウ。また日本でもプレイできたらと願ってるよ。もう何年も行ってないんでね。最後に出した『Share The Wealth』はロックダウン中にリリースしたので、ライヴでは一度も演奏してないんだよ。バンドは最初メンバーが3人だったのが、4人になり、今は6人だ。以前からいてくれたシーロとスコットとトレヴァーに、サックスとエレクトロニクスのスケリックと、キーボードのブライアン・マルセラを加えた。ブルックリンで2日間でレコーディングしたよ。ほとんど実験のようにね。そして親しい友人でありエンジニアのイーライ・クルーズと僕とで編集し、気づいたら2枚組アルバムができていた。さらに驚くことには、ドン・ウォズが《Blue Note》から出したいと言ってくれた。これまでドンには3回も「イエス」と言ってもらえてるんだから、僕はラッキーだよ。でもスケジュールが合わなくて、バンドとしてのギグをまだ一度も行えてない。全員が同じ場所に集まれることができずにいるんだ、1日たりとも。ぜひまたピースのバンドで《ブルーノート東京》でやりたいよ。
──ギターという楽器は色々な形で年々可能性を広げて進化し、新しいギター奏法が新しい世代からも開拓されています。若い世代のギタリストであなたが注目している人はいますか?
N:注目すべき若いギタリストは大勢いる。僕が聴いてない人もたくさんいるので、最初にそれは謝っておくよ。一人、すごく注目しているのがニューヨーク在住の素晴らしいギタリストで、まだ20代のGregg Belisle-Chiだ。彼がソロ・アコースティック・ギターで、僕の古い友人であり、バンド仲間であるサックス奏者でコンポーザーのTim Berneの曲を取り上げたアルバムを作ったので、知ったんだ。パンデミック後、ニューヨーク州キングストンから、かつて僕が住んでたブルックリンに戻ってきたところを、Timを通じて知った。年内に、ブルックリンで一緒にライヴをやろうという話になっているよ。他にも“若い”と思ってるプレイヤーはいるけど、思ってる以上に時が経つのは早くて、気づくとみんな若いとは言えなくなっている。Ava Mendozaはとてもうまいギタリストだ。知り合ってもう長いよ。Mary Halversonも若手とは言えないかな。他にも……きっと、後になって「言い忘れた!」と思い出すんだろうな。確かに君が言うように、ギターは常に進化し、発展し続けていると思う。今はかつてのようにポップ・ミュージックで多用されてはいないけど、常にギターは“戻って”くる。みんな好きなんだ、ギターが。僕もギターを選んでラッキーだったと思う。だってもし、トロンボーンとかフレンチホルンを選んで演奏してたら、誰も僕の存在なんて知らないだろうからね。もともと僕は「一番になりたい」と思って楽器を始めたわけじゃなくて、60年代から70年代、その後も含めて聴いて育った音楽、影響を受けた音楽に「どんな形でもいいから、自分も参加したい」という思いだけだったから。
──ジャズ、エクスペリメンタルなプレイヤーとしてのあなたに聞きたいのですが、ジャズは近年最もアグレッシヴに進化しているジャンルだと思います。最近の新しい世代のジャズ・プレイヤー、新しい動きに関してはどう感じていますか?
N:若手ということなら、友人で、今やすっかり有名になったジュリアン・ラージ。彼とのコラボレーションは自分にとっても大切なものだった。またデュオでやる機会をずっと作ろうとしているんだけど、ジュリアンがとにかく忙しすぎて。彼は人間性だけでなく、史上最も優れたギタリストの一人だと思う。あとは古い友人のビル・フリゼール、エリオット・シャープ、ディアフーフのエドとジョンはどちらもすごいギタリストだ。メルト・バナナのアガタはいまだに大好きだし(笑)……って彼はジャズじゃなかったね。ごめん。ラッセル・マローン、スティーヴ・カーディナスもいい……。
──ブレイク・ミルズはどうですか?
N:ジュリアンを介して知ってるけど、個人的には知らないんだ。音楽はものすごい才能を感じるね。恐ろしくうまいよ。多分、ティーンエイジャーの頃からすごかったんだろうなと想像がつく。ジュリアンもだけど、彼も僕と同じカリフォルニア出身だ。
──最後に、ウィルコの今作のジャケットでは、南青山の花屋「ジャルダン・デ・フルール」の東信(Makoto Azuma)がフラワー・アートを手がけ、椎木俊介(Shunsuke Shiinoki)が撮影した写真が使われています。美しくもシュールで不気味ささえ感じるアートワークですが彼らを起用した意図、きっかけを教えてください。
N:僕が知る限りでは、ジェフがネットで見て、感銘を受け……でもどうやってアーティストに連絡を取ったらいいか、誰もわからない。それで僕の妻の(本田)ユカに連絡を取ってもらえないかって言ってきたんだ。それでホームページのメールを送ったんだけど、ユカも結構大変だったらしい。君たちならわかるだろうけど、日本人はアメリカ人のように最初からカジュアルな手紙じゃダメだっていうんで、最初はビジネスライクに書いたんだよ。彼らから返事があり、最終的にはジェフや僕らの弁護士、マネージャー、そしてアーティスト側のチームとの間で同意に至ってうまく話はまとまった。で、本当に素晴らしいアートだと、全員意見が一致したんだよ。
<了>
Text By Shino Okamura
Photo By Peter Crosby
Interpretation By Kyoko Maruyama
Wilco
『Cousin』
LABEL : dBpm / Sony Music Japan
RELEASE DATE : 2023.09.29
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