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対談
ミンモア 今野嵩朗 × ワールドスタンダード 鈴木惣一朗
―音楽に魅入られながら、音楽を奏で、現実に対抗すること―

31 March 2023 | By Yuji Shibasaki

2016年、ギター担当の今野嵩朗を中心に結成されたフォーク・ロック〜サイケデリック・バンド、ミンモア。片や、1980年代前半からキャリアを重ね、来年にはデビュー40周年を控える鈴木惣一朗主宰のワールド・スタンダード。世代は異なれど、様々なポップ・ミュージック〜ルーツ・ミュージックへの見識と愛情そして現代の音楽シーンへの鋭い眼差しを共有する両者が、来る5月27日、東京・神田小川町《POLARIS》にて、お互いの新作リリースを記念するダブル・リリース・パーティー『柔らかな、水のように』を開催する。

2019年のファースト・アルバム『帰郷の日』が高い評価を得た後、メンバー・チェンジを経てリリースされたミンモアの新EP「まどかな夜」。「歌のある環境音楽」「抽象的な存在としてのワールドスタンダード」というテーマのもと制作されたというワールドスタンダードの14枚目のアルバム『ポエジア…刻印された時間』。

リリース・パーティー開催に臨んで、お互いの新作を聴いて抱いた思いから、制作のこと、現代において「音楽に魅入られながら、音楽を作ること」の意義まで、今野嵩朗と、鈴木惣一朗が様々なトピックについて対談を行った。(インタビュー・文/柴崎祐二)

──今野さんがワールドスタンダードの存在を知ったのはいつなんでしょうか?

今野嵩朗(以下K):正直いうと、ワールドスタンダードという名前は知っていたんですが、数年前まで聴いたことがなかったんです。なにかのきっかけでファースト・アルバム(1985年作『ワールド・スタンダード』)を聴いて、いつどこで作られたのかわからないようなその音楽に惹かれてよく聴くようになったんです。いわゆる「ここではないどこか」へ運んでくれる音楽というか……。

それと同じ頃、惣一朗さんがTwitterでミンモアのファースト・アルバム『帰郷の日』を聴いたとツイートしてらっしゃったのを見つけて、驚いてしまって。

──惣一朗さんはミンモアの音楽をどうやって知ったんですか?

鈴木惣一朗(以下S):色々なストリーミング・サーヴィスに加入しているんですけど、AIに自分の趣味を完璧に把握されてしまっているので(笑)、日々僕の好きそうな音楽をレコメンドしてくれるんですよ。ミンモアもそれで知りました。聴いてみたらとても良かったので、自分用のプレイリストに入れて日常的に聴くようになって。

K:いやあ、ありがたいです。

S:偶然知ったアーティストについては、色々調べたりしないようにしているんですよ。何かにつけてすぐ分析しようとする癖があるので……(笑)。だから、ミンモアも初めはグループの情報を知らずに聴いていたんです。でも、どうにも気になってしまって、しばらくして今野くんとメールのやりとりをするようになって「僕の家の近所のとんかつ屋でご飯を食べませんか?」と誘ったんですよ。初対面だったけど、4時間くらい話したね(笑)。

K:気づいたら時間が経っていた感じでした(笑)。

S:予想してはいたんだけど、彼、ソフト・ロックだとかブリティッシュ・トラッドとか、古い音楽に精通しているんですよね。でも、オタクっぽくはないというか。世代的には渋谷系にも間に合っていないはずなのに、とても不思議な感じがしました。

──惣一朗さんは、ミンモアの新作EP『まどかな夜』を聴いてみて、いかがでしたか?

S:前回のソフト・ロック〜トラッドっぽいフェーズから徐々にアンサンブルに変化が生まれてきている感じがして、とても面白いなと思いました。最初に思い浮かべたのは、ギャラクシー500とか、あの感じ。かつてのワールドスタンダードもソフト・ロックとかトラッドとかの要素はあったと思うんだけど、どちらかといえば箱庭の中に閉じこもるような性質の音楽だったと思うんです。それに比べると、ミンモアの音楽はより開かれた空間に向かっている気がします。

──ファースト以降、今野さんとヴォーカルの艸香(沙恵子)さんを残して録音メンバーが一新されたというのも、音楽的な変化につながっているんでしょうか?

K:そうだと思います。特にドラムの森山(幹夫)くんの加入は大きかったですね。彼の持ち込んだものが、リズムのニュアンスをかなり変化させてくれた気がします。

──ワールドスタンダードも、基本は惣一朗さんだけが固定で、かなりフレキシブルに録音メンバーが変わっていくスタイルですよね。

S:かっちりメンバーが固定されていない形のほうが、その時々で自分がやりたいこと、音楽的な展開を描いていきやすいというのはあるんです。もちろん聴き手としては、ビートルズのような、四つ巴の個人がぶつかり合うスタイルも素晴らしいなとは思いますが。

──「まどかな夜」の制作にあたっては、作詞作曲に加えて、アレンジ面も今野さんが采配していったんですか?

K:実はアレンジに関してはそこまでこだわりがないんですよ。編曲という作業が苦手というのもあるけど、曲を作った後は割とメンバーの好きにやってほしくて。

──ワールドスタンダードの場合は?

S:昔は一人でコンピューターと向かい合って徹底的に作り込んだ時期もあるんですが、最近はここ十年で見知った参加ミュージシャンたちと作っています。彼らなら僕の考えそうなフレーズなり音色をあらかじめ提案してくれるようになってる(笑)。そこから出てきたものが自分の「音楽的な呼び水」となって、更にアイデアを加えてキャッチボールしながら作っていくスタイルですね。

けど、リズムのアレンジだけは音楽の支配力が強く、とても難しいなといつも思ってます。結果、今回もドラムがほとんどゼロに等しい感じになってしまった(笑)。僕は元々はドラマーで、今まで色んな試みを繰り返してきたから、今回の作品ではもういいかなって……(笑)。

──でも、新作『ポエジア…刻印された時間』は、リズム楽器が目立っていないサウンドとはいえ当然全くのノン・リズムではないし、むしろ随所に背景的なリズムが存在しているのを感じます。静謐で環境音楽的なのに、確かな律動感もあるというか。

S:それは細野(晴臣)さんの弾くギターを考えてみると分かりやすいかもしれないですね。いわゆる通常の「ギター弾き語り」のリズムとはまったく違って、決して音数は多くなくて静謐なのに、豊かなシンコペーションが確実に息づいているじゃないですか。

──細野さんも影響を受けたジェームス・テイラーの弾き語りに象徴されるような……。

S:そうそう。逆に言うと、ジェームス・テイラーのバッキングをしていたセクションというバンドのようにドラムが入っていても静謐な音楽というのもあるんですよね。音楽の構造が重層化してる感じ、そういうものに強く惹かれるんです。

K:白玉(二分音符や全音符)の使い方も、アンビエント的でいながら、一方で確かなグルーヴを感じました。それと、アルバムの中に「チクタク」という時計の音が入っているじゃないですか。あれもすごくリズミックに聞こえましたね。

S:あの時計の音は実際に曲のBPMに合わせているからね(笑)。深く考えずに音楽を作ろうとすると、とりあえず一拍目に定石的な音を置いていって……みたいなことになりがちじゃない? それがどうも僕はイヤで(笑)。「あえて3拍目の入りでよくない?」みたいな発想をしてしまう。白玉を使うにしても、小節の途中から入れたり、逆にふっと無くなったり、「型」を避けるような置き方をします。

これは、ドラムの話にも通じますね。林立夫さんや高橋幸宏さんといったトップ・ドラマーの方々の演奏を聴いていると、定石的なフィルが少ないし、ただの8ビートを叩いているように見えても、そこに強烈なドラマツルギーが生まれている。あれはやっぱりすごい。

──そういったリズムの観点からミンモアの音楽を自己分析するとしたら?

K:実際にやれているかは別として、リズムの派手さというより、そこに漂うニュアンスの豊かさを目指していきたいというのはありますね。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドとかヴァセリンズとか、さっき惣一朗さんが挙げてくださったギャラクシー500とか、そういったギターロック・バンドのフラット目のリズム感覚に、フェアポート・コンヴェンションのようなトラッド的なビート、さらにスラップ・ハッピー的な捻りを加えるというか……。

──ミンモアの音楽を聴いていると、ドラムの重要性は当然ながら、やっぱり今野さんのシンプルなギター・ストロークの支配力がとても強く感じます。それがあるから「プログレッシヴ」に振り切れない何かがある気がする。

K:まあ、僕がああいう演奏しか出来ないからっていうのもあるかもしれません(笑)。結局、どんな音楽に発展していこうと思っても、葛藤があるんですよ。根っこの部分に今挙げたギターバンドやシンプルなフォーク・ロックのスタイルがあって、そこへの憧憬も強いので。一方で、そのスタイルの向こう側に聞こえてくるリズムに体を乗せていくというか……。

──「型」や「スタイル」を愛でつつも、そこからはみ出ようとするというのも二組に共通する点かもしれませんね。

K:確かに、そうかもしれないですね。

──録音やミックスにおけるアンビエンスの処理、空間の描き方にも、定石的な技術を駆使しながらもそこからいかに離れられるか、という意識を感じます。

S:今はコンピューターに色々なプラグインが揃っているので、ある意味、録った後にいかようにでもエフェクトを調整出来てしまうんだけど、やりすぎると結局不自然なものになってしまったりする。それよりも、マイクの位置はもちろんのこと、ギターだったらそれを弾く指、ドラムだったらスティック、もっといえば演奏するミュージシャン自身の体の共振も含めて<音の響き>というものを捉えていくべきだと考えているんです。いうなれば、楽器と、それを操る人間の身体の関係というのが音へ影響を及ぼしている、という視点になります。

──データ化される以前の肉体と共振しつつ空間を満たす音をどうやったら録音物として捉えるのか、という意識……?

S:そうですね。またドラムの話になりますが、以前、自宅のお風呂場の横で録音していた時、シャワーを浴びていたらふとリズムパターンを思いついて、濡れた裸のままドラムを録音したことがあって。その時のプレイや録り音っていうのは、聴き直してみると「少なからず裸である!」という状態と呼応したものになっているように感じるんです(笑)。

K:(笑)でも、楽器ってあくまで自分の体が奏でるものですし、わかる気がします。

S:すごく若い頃、即興音楽のデレク・ベイリーとミルフォード・グレイヴスのワークショップに参加したことがあるんですが、彼らは「ユー、とりあえず何か演奏してみて」と言うんです。わけも分からなかったけど、とりあえず反応して音を出してみる。すると、セッションの中で思いがけないようなフレーズが出てくるんです。そこには、アスリートのように自分の身体性が刻まれているんですよね。で、今ではそうした身体感覚―いわば肉体の即興性をポップスに取り込むという時代になっていると感じます。

──もとより即興演奏が大きな比重を占めるジャズ等に限らず、「完成された楽曲」を突き詰めてきたようなアーティストが、そういう意味での肉体性へ回帰している流れは確かにある気がしますね。

S:最近の日本のミュージシャンの例でいうと、岡田拓郎くんの『Betsu No Jikan』やムーンライダーズの『Happenings Nine Months Time Ago in June 2022』も、そういう視点から素晴らしい作品だなと思いました。海外だと、サム・ゲンデルとかブレイク・ミルズの音楽からも似た意識を感じます。面白いのは、旧来の「あるがまま」的な即興演奏をそのまま固着するんじゃなくて、あくまで現代の録音や編集のテクノロジーを経由した上で、しかもそれをフル活用しながらポップにやっているっていうところですよね。

──ワールドスタンダードの音楽は必ずしも即興的なプロセスが前面化した音楽ではないと思うし、むしろ「ポップソング」的な構造も持っていると思うんですけど、それでもやっぱり、内側から流れ出てくるような「その場で起こっている」感覚、更に言えば、その音が発された時に固有の身体性を感じます。

S:なんだろう、40年ほどやってきて、結局、僕は音楽を様式建築的な発想/手順で作り上げていくのがあまり好きじゃないんだと思います。Aメロ→Bメロ→ブリッジ→サビ→間奏→大サビみたいに土台を作ってそこにアレンジを加えていって……みたいな。この国の音楽シーンではそちらの方が圧倒的に支持されてきたわけだけど。もちろん、ポール・マッカートニーだったり、そういう「音楽建築の名人」も好きなんだけど、一方で、それが崩れている形/瞬間に惹かれるんです。ミンモアの音楽も、そういう「様式建築的」な発想は薄いですよね。ミンモアの、良い意味でのゆるい音楽のほうが僕はグッときます。

──ミンモアの音楽には、ウェルメイドであると同時にどこか「一筆書き」の感覚があります。

K:確かに、「完璧に構築する」みたいな意識は薄いと思います。それよりも、あくまで体が気持ちいいと感じる、音の流れで体がどこかに運ばれていく感覚を大事にしたいなというのは常々思っています。

S:今野くんがアレンジを自分以外に任せてしまう、というのはまさにそういう感覚ともつながっているのだと思います。それで思い出したのが、はっぴいえんどとそのフォロワーについて。はっぴいえんどは本当にすごいバンドだし、構築的な側面もたくさんあったわけだけど、時代に対しては破壊的なグループだった。それを「分析」して、方程式を解くようにはっぴいえんどを再構築するような音楽は、ある意味、はっぴいえんど的ではないと感じるんです。例えば、パンクやニューウェーブを経由して、「崩すこと」や「壊すこと」を内在化している人たちの音楽は、それがいかにはっぴいえんどからインスピレーションを受けた曲であったとしても、とても面白く聴けるんだけど。

──わかります。はっぴいえんどの音楽はスタイルでありながら、同時に「脱スタイル」の実践でもあったから、前者の面ばかりにクローズアップすると、むしろその本質を取りこぼしてしまうという現象でもあると思います。

K:なるほど……。

S:僕が、渋谷系以降の「引用と編集」的な、ポストモダンな手法に馴染めなかったのもその辺りにあるんだろうなという気がしてます。「読めすぎてしまう」音楽というか……そういうのにはずっと馴染めなくて。この拘りは今もそう変わってないです。

──ミンモアの音楽は、そういう論理とは離れたところで鳴らされている感じがする、ということですか?

S:そうだと思います。もし僕がミンモアの音楽に「読めすぎてしまう」感覚を嗅ぎ取っていたら、今野くんにアプローチしていなかったと思います。

K:僕自身としても、何かへの憧れは持ちつつも、そこからいかに適切な距離をもって離れられるのかというのは考えていますね。

──「ミュージック・ラバー」であること=オタク的な知識を集積していることみたいな価値観は、考えてみれば空間的にも時間的にもかなり局所的なものなのに、気をつけていないと自分もたやすく侵食されちゃう……という意識があります(笑)。

S:そう、難しいバランス感覚なんです。そういえば昔、細野さんと出会った頃「鈴木くんみたいな音楽好きは昼間の仕事を絶対に辞めちゃダメだよ」と言われたことがあるんです。結局そのあとすぐ僕はフルタイムのミュージシャンの道を選ぶんですけど、「辞めちゃダメだって言ったのに!」と本気で叱られました。実際、業界に入った途端音楽を好きじゃなくなっちゃう人って多い。だから僕は意地でも「音楽を好きでい続けていてやろう」と誓ってここまで来てしまいました(笑)。

K:惣一朗さんのSNSを見てても、日々すごく色んな音楽をチェックしてますよね。

S:いつまで経っても「ミュージック・ラバー」なんですよね。自分の中で、音楽を作ることよりも、音楽を聴くという行為のほうが常に上にあるんです。日々音楽を聴く<おまけ>で音楽を作っているような感覚ですから。

──今野さんは、音楽を「聴く」のと「作る」ことのバランスはどんな風に捉えているんですか?

K:自分ももちろん音楽を日常的に聴いているわけですけど、そうしていると徐々に頭の中に自分の音楽が鳴り始めてきて、それを外に出さないとなんだかモヤモヤしてきてしまうんです。だから、時折それを作って吐き出すっていう。日々仕事して日常を過ごしていることよりも、その頭の中に鳴っている音の方にだんだんリアリティを感じるようになってきて……どうにかして形にしたくなってしまうんです。

矢継ぎ早にアウトプットしていってどんどん配信リリースしたりできたら面白いなと思う反面、それをそのまま出すと結局時流と重なりすぎたものになってしまって余計気持ち悪い感覚を抱くことにもなりそうで。だからこそじっくりと取り組むというのも大事だなと思っています。

S:今の時代、これだけ色々な音楽が溢れているけれども、「音楽で儲けよう」というモチベーションで音楽を続けている人は少なくなっていると思います。音楽業界の規模もどんどん縮小してますし、「音楽で生活をする」ということが困難になってきている。でも逆説的に見ると、そんな状況にも関わらず音楽を作っている人たちは、みんな「ミュージック・ラバー」ですよね(笑)。実際、世界的にみても「ミュージック・ラバー」の優れたミュージシャンが増えてきている気がします。

今野くんに会ってみたいなと思ったのも、今の時代の「ミュージック・ラバー」でありミュージシャンでもある人は一体どんなことを考えているのかなって興味があったからなんです。

──あまり今の時代こういう質問をする機会もないのであえてすると、ずばり、今野さんは音楽で食べていきたい?

K:うーん、もしそうできるならそうしたい思いもありつつ……。

S:老婆心ながらに言えば……(笑)。今野くんは絶対に仕事は辞めないほうがいいと思う。僕が勇み足で仕事を辞めてなんとかなったのは実力とかではなくてバブルの時代だったからっていうのが正直、大きかったと思うんです。

──素晴らしい音楽を生活の中で制作する人が増えているというのは、逆側からみれば、業界内のゲートキーパー機能が低下して、音楽制作や流通のリソースが民主的に分配されたということでもありますよね。

S:そう。音楽への関わり方が多様化しているってことだと思います。メーカーと契約して、コンスタントに作品を作ってライヴで売るということだけが音楽への関わり方じゃない。何よりも、音楽を聴くということがまず大事だし、そうした生活からアウトプットしてゆくもの。振り返ってみると自分も音楽を作るだけでなく、書いたりこうやって人と話たりしてきたけど「これも全部音楽だよな」って本気で思うようになりました。だから、この前、今野くんととんかつを食べたのもぼくの音楽活動の一部なんです。

K:ありがとうございます(笑)。

S:最近読んだ本に書いてあったんですが。人間はこの世界に生きて溜まっていくモヤモヤを、何かに変換して吐き出すことができたときに、現実へ対抗していく強い力を得るという話があって「なるほどなぁ」と思いました。僕たちにとって音楽はまさにそういう存在なんだと思うんです。

K:今の話で思い出したんですが、実は僕、夏目漱石の「草枕」の冒頭を自宅のトイレの壁に貼っているんですよ。

S:え、漱石?(笑)

K:「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る」っていう。自分にとって、ここでいう「詩」や「画」が音楽だなあと、読む度に感じ入っています。仕事をするにしても、バンドを運営するにしても、生きるうえで何ごともそうですが、人間関係の問題は理詰めでいってもだめだし、かといって情に流されても務まらないし……もう芸術するしかない、って実感とともに思っています(笑)。

──まさに、今野さんにとって音楽は「現実への対抗力」になっているってことですかね。

K:ホントですね。

S:今野くん、やっぱり面白いね(笑)。


<了>

Text By Yuji Shibasaki


【ライヴ情報】

『柔らかな、水のように』〈ダブル・リリース・パーティ〉ワールドスタンダードとミンモア

2023.5.27(土) 《POLARIS》(東京・神田小川町)
OPEN/START 19:00/19:30
前売り3500円、当日4000円
出演:
ワールドスタンダード[弾き語り編成]
ミンモア [Gt 今野嵩朗、Vo,Syn 沙恵子、Dr 森山幹大]
TICKET 前売 3,500円 当日 4,000円
詳細:https://polaristokyo.com/schedule/20230527


ワールドスタンダード

『ポエジア… 刻印された時間』

LABEL : STELLA
RELEASE DATE : 2023.03.25

購入はこちら(全てアナログ・レコード)
Tower Records / HMV / Amazon /


ミンモア

『まどかな夜』

LABEL : P-Vine
RELEASE DATE : 2022.12.23(配信)
※7インチ・レコードは2023年5月24日発売

購入はこちら
Tower Records(7インチ・レコード) / HMV(7インチ・レコード) / Amazon(7インチ・レコード) / Apple Music

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