「サンプルの時点で勝負は決まっている」
Fla$hBackSやKANDYTOWNとの共作でも知られるビートメイカー、Noshが初のEP『MORFH』を語る
KID FRESINO、febb as Young Mason、JJJ、KANDYTOWNとの共作でも知られ、『Red Bull 64 Bars』や『RAP STAR 2025』へのビート提供などでも注目を集めてきたビートメイカー/プロデューサーのNoshが1月9日に自身名義として初のEP『MORFH』をリリースした。
客演にはCOVAN、C.O.S.A.、仙人掌、ACE COOLという間違いなく日本語ラップ・シーンを牽引するスキルフルなラッパーたちが集い、DJ SCRATCH NICEというシーンの巨匠ともコラボレーション。7曲で約15分ほどのコンパクトな作品ではあるが、2026年の初めに発表された傑作として多くのリスナーの記憶に刻まれることになるだろう。彼のキャリアの始まりから、『MORFH』の音楽的背景まで、たっぷりと語ってもらった。
(インタビュー・文/高久大輝 写真・グラフィック/Kazuhiko Fujita)
Interview with Nosh
──まずはNoshさんがどんな人物かという部分から伺えたらと思います。どんな音楽を聴いて育ったんでしょう?
Nosh(以下、N):地元が神奈川なんですけど、『billboard TOP40』という番組がTV神奈川で放送されていて。そこでラップが流れているのを観ていたのが大きいですね。1992年生まれなんですけど、2005年とかだから、中学1年生くらいかな。ヤング・ジージー、T.I.、ファット・ジョー、あとリル・ウェインとかも聴いていましたね。
──サウスが中心ですね。どこに惹かれて?
N:中学生なんで、やっぱり悪そうなのカッコいいなっていう憧れもありますし、日本でも流行っていたのかな? まあ、そこまででもなかった気もするんで、本当に偶然かも。あとは叔父が洋楽好きでアリシア・キーズやメアリー・J・ブライジだったりのCDを持っていて、それを借りて聴いていたのも大きいのかもしれないですね。
──人生の転機になった存在をあえて言うなら誰でしたか?
N:なんだろ、エミネムかな。でも嫌ですね、同年代はみんな言ってそう(笑)。ただ僕はマルーン5やレニー・クラヴィッツとかも好きで聴いていたんですよ、だからバンドマンになっていた可能性もあるんですけど、そうじゃなくてエミネムを取ったというか、服がダボダボな奴らの音楽を取ったんですよね。あとは楽器が弾けないからな。キーボードも弾けるようになりたいと思ったけどやっぱりできなくて、できないできないで今ここにいるんで、何か一つの楽器を友達にもらっていたりしたら変わっていたかもしれないです。
──自分で音楽を作り始めるのはいつ頃でしょうか?
N:16歳くらいです。《REFUGEE MARKET》という池袋《bed》でやっていたイベントでFebbやKID FRESINOに出会って。その頃の《REFUGEE MARKET》には学生っぽい人とか全然いなくて、お客さんもいかつい人ばっかりだったんで、同年齢がいたらすぐわかるんですよね。それで仲良くなって。
彼らは当たり前のようにやっていたんですよね、リリックを書いたり、ビートを作ったり。グラフィックをデザインしたり、DJしたり。地元の友達も日本のラップを聴いていたりしたけど、実際に作ったりしているのは彼らが初めてで。彼らはやるかやらないかというよりは何をやるかを考えていて、「好きならやるでしょ?」ってテンションだったから、「じゃあやろうかな」と思えたのがデカいです。自分も最初はラップをやっていたんですけど、徐々にビートメイクに移行していきましたね。
──ラッパーだったんですね。初めは誰に憧れていたんですか?
N:仙人掌さんですかね。当時からカッコ良かったです。でも僕はラップが芳しくなくて。ビートメイクもしたいと思って機材を調べたりしていたから自然とそっちに流れていったんです。ビートメイクは家でできるっていうのが大きくて。ラップだとレコーディングをしにスタジオに行かなきゃいけないし、当たり前だけどライヴするにもイベントに出なきゃいけないけど、ビートなら家で完結するんで、そういう部分の手軽さが自分の性格に合っているなって。
──その頃はどんなビートが作りたかったんですか?
N:当時はアルケミスト(The Alchemist)やエビデンス(Evidence)辺りのサンプリングで作るビートが好きで。YouTubeとか観て真似して作っていましたね。当時も今も楽器は全く弾けないし、サンプリングで作れるのがいいなと思って。最初の機材はMPC2500ですね、でも使いこなせなくてすぐに売っちゃいましたね(笑)。ハードは難しいです。すぐにPCに移って、それからずっとPCでやっていますね。今はFL Studioで作ってます。
──そこから実際に曲を作っていくわけですね。
N:最初に完成したのはKID FRESINOの「Kingeye」(ミックステープ『Shadin’』収録)って曲ですね。プリプロが返ってきたとき、すごく嬉しかったのは覚えていますね。自分のビートに声が乗るというのは初めてだったので。最初のリリースも嬉しくて。友達にビートを聴いてもらってはいたんですけど、やっぱり当時から彼らはそれなりに注目されていたから、リリースされると聴いてくれる人は友達の範疇では収まらなくて。だからこそ認められるビートができたんだなって手応えもありました。
──そもそも作るビートにはラップが乗るというのが前提としてあるんですか?
N:基本的にそうですね、ラップをするためにビートが必要だからそのビートを作る感覚でずっとやっています。だから声を乗せるための余白も意識していて。それは自分で作っていってこれまで使ってもらえたビートがどうだったか考えてそうなっていったんだと思います。「これは使えるんだ」「これは誰も反応してくれないな」とかリアクションを積み重ねて、振り返って、例えば声ネタがうるさ過ぎると使えないし、声ネタを使うなら削る帯域を考えなきゃいけない、とか。最初は何もわからなかったんで、ただひたすら作っていましたね。
──インストを好んで聴いていたわけではなかったんですね。
N:ビートテープ的なものはあまり聴かなかったですね。J・ディラやピート・ロックのインストがすごく好きな人も多いと思うんですけど、僕はあんまりその辺、同じサンプリングでもラップ抜きで聴いていて心地良い系は実はあまり通っていなくて。だから音楽遍歴で言えば90sもしっかり全部聴き切れていないというか、例えばコモンとか、絶対みんなが聴いているクラシックをちゃんと知らなかったり。でもウータン・クランもブート・キャンプ・クリックも好きだったし、ナズも好きだったりするんで、押さえているところと押さえていないところがある。満遍なく聴くみたいなことをしなかったんですよね。
DJプレミアはアルケミストの師匠的なポジションだから間接的にお世話になっている感じですね。アルケミストを好き過ぎた故に彼のようなビートも作っていたんで。あとアルケミストってスタイルに変遷があって。一時期からサンプルやドラムブレイクをシンプルにループさせているような時期に入って、「こいつはレコードを流しているだけだ」とかめちゃくちゃ言われていたんです(笑)。でもそれをやり続けていたら今はそれが当たり前になって、全世代に尊敬されるプロデューサーになっていった。たぶん「昔の方が良かった」とか散々言われただろうけど、それでも変化を止めずにやり続けた姿勢もグッときます。正直僕も昔の方が好きですけどね(笑)。
──なるほど。時系列で言うとNoshさんビートの「Turn.(who do)」などが収録されたKID FRESINO『Conq.u.er』、KANDYTOWNとのタッグ作『Kruise』が2015年にリリースされ、2017年にfebb as Young Mason『BEATS & SUPPLY』がリリースされてから、Noshさんの名前をしばらく目にしない期間に入ります。
N:単純に離れていたんですよね。制作そのものがあまり面白くなくなっちゃって、ちょっと休もうかなって。言葉にするのが難しいですが、恵まれていた分、それに対応する準備が自分にできていなかったというか、『Conq.u.er』でもビートを使ってもらって、それなりに反応も良くて、KANDYTOWNの作品もできて……。最初の目標が誰かのアルバムを一枚やるってことで、それができたら辞めてもいいくらいの設定だったんですけど、それが早々にできてしまったのもあり、若かったですし、仕事も含めて自分の身の振り方も考えてしまって。
──音楽制作に戻ってくるきっかけは何かあったんですか?
N:音楽を聴くのはやめていなかったんです。それにビートを作る動画もどんどん増えていて、そういうの観ていたら、また楽しそうだなと思うようになって。
──それから2022年にhokutoさんとの共作『MUTHOS Season 1』で戻ってくるわけですね。
N:hokutoとは『Kruise』が出たくらいのタイミングで知り合ったんですけど、地元が同じだったんです。近くにビートを作っているヤツなんていないと思っていたから嬉しかったですね。家が近かったんで、僕が音楽制作から離れていた時期もHokutoとは遊んでいて。それで元々あったビートや遊びで作っていたビートがあったんで、それを一旦出そうってことになって出した作品ですね。
作業的には家が近かったときは遊びに行っていっしょにやったりしていたんですけど、hokutoが引っ越してからはデータのやり取りになって。だいたい僕がループを組んで、飽きちゃってそれを投げて編集してもらって、返ってきたものをまた編集するような流れでした。お互いが飽きたら投げる感じで。インストの作品を作るのには意外と抵抗はなかったですね。ヴォーカルなしでいけるならまあいいかなって。『MUTHOS Season 1』を出した時期くらいにJくん(JJJ)だったりとまた会うようになって今に至ります。
──2023年にリリースされたJJJさんのアルバム『MAKTUB』に収録された「Eye Splice」への反応は大きかったんじゃないですか?
N:ありがたいことにリアクションは良かったですね。Jくんの存在もすごく大きくて。ブランクがあったんでうまくやれるか不安もあったんですけど、戻ってきたときすぐに「ビート送ってよ」「これいけるわ」と反応してくれて。KID FRESINOもそうなんですけど、Jくんは僕が以前いっしょにやっていたときよりずっと有名になっていたけど、雰囲気が全然当時と変わらなかったんです。全然違うところに行ってもいつもと変わらない感じがすごくあったかくて。また始めるに当たってかなりデカかったです。
──「Eye Splice」はUKドリル以降の音で、現行の音楽の影響も受けていることが明らかでした。
N:割といつも現行の音楽を聴いてますね。流行っているものが好きってわけではないんですけど、ヒップホップってやっぱりニュー・リリースが多いから、自ずとそうなっていくというか。
──そして昨年2月にはソロでインストのシングル「Opti」をリリースしました。こちらにはAraabMuzikの影響もあったそうで。
N:AraabMuzikはすごく若くて、MPCを叩くのもすごい人って感じで出てきたときから好きで。フリーのインスト集とか出していたときですかね。エレクトロっぽいサンプル使いも良くて。ファボラスともやっていたし、ディプセット(The Diplomats)周りでもやっていて、そんな彼の影響を自分なりに昇華してみようかなって。EPに入れる予定も特になく、とりあえずインストで聴けるものとして作ってみた感じです。彼はサンプリングして作っている曲も多いですし、影響は確実に受けていますね。
──それから今回のデビューEP『MORFH』への動きも始まると。
N:レーベルから作品を出そうと言ってもらえたんで、アルバムの前にまずはEPだなと思って。ラップが入っている曲とインストで構成しよう思い、最初にできたのがC.O.S.A.さんとの「Till I Die」です。
──プロデューサーの作品としてどのような意識で制作していましたか?
N:海外のプロデューサーのアルバムって、そのプロデューサーならではの、このラッパーとこのラッパー、普段はいっしょにやっていないけど、このタイミングなら、みたいな珍しい組み合わせの曲が多い気がしていて。でも僕はああいうのがあまりしっくりきていなかったんです。よそよそしいというか、ツギハギな印象があるんですよね。もちろんそうじゃない曲もあるし、メトロ・ブーミンの作品なんかはそういう印象は薄いけど、「お金だけ貰ってやらされてる?」と思ってしまうような突飛なコラボを自分の作品ではやるのは避けたかったんですよね。だから僕の今回の作品は全部マンツーマンというか、客演で呼ぶラッパーの方とがっちり一対一でやりたかった。その方が純粋にそのラッパーの良さが出ると思っているんです。変なことをさせないというか、イメージとしては、そのラッパーのアルバムにビートを提供していたら入っているんじゃないかくらいその人のスタイルに寄せて作るというのは意識しましたね。
──ある意味、自分のエゴを意図的に出していない部分があるということですね。どういった流れでラッパーの方たちとはやりとりを?
N:やりたかったけどこれまでいっしょにやったことのない人とやってみたかったというのが今回は前提としてあって。誰とやりたいかをまず考えて、その人の印象に合わせてビートを作って、ビートを投げるのと同時に交渉したんです。やる/やらないで時間をかけずに、みんな「やるよ」と快諾してくれたのはすごく嬉しかったですね。
C.O.S.A.さんとは過去にすごく間接的にはいっしょにやったことがあるんですけど、ちゃんとした形でやるのは初めてで。昔から好きなラッパーですし、ヤバいラップが返ってくるだろうなと思っていたけど、EPの中で最初に完成した「Till I Die」に本当にシビれるラップが乗って返ってきたときに、しっかり作品にしなきゃって気合いが入った記憶はありますね。
──「CV Intro」では同じ愛知からCOVANさんも参加しています。
N:COVANさんが歌っていくれている通り直接の面識はなくて、これからライヴがあるんでそこで初めて顔を合わせるんですけど、『nayba』も出るずっと前からめっちゃ好きで。知らない人にビートを送ったりは滅多にしていなかったんすけど、COVANさんには以前メールアドレスにビートを送りつけたりしていたんです。COVANさんは作品の頭か最後に持ってきたいっていう構想があって。ビートスイッチを入れる前の状態のビートがあったんでこれは最初だなと思い、さらにビートスイッチ後の流れを追加してリリックを書いてもらいました。
──参加しているラッパーの方たちに事前にオーダーしていたことはあったんですか?
N:リリックの時点では全くなかったです。曲によるんですけど「Till I Die」はヴォーカルをレックした後にC.O.S.A.さんからの要望もあって調整していて。普段あんまりやらないんですけど、音抜きやエフェクトの感じを調整して変化をつけています。COVANさんは意識的にブレスを残していると聞いて、綺麗に聞こえるから一般的には消すのが当たり前だと思うんですけど、あえてすべて消さず弱めつつも残していたりします。仙人掌さんはミックスの段階でヴォーカルの位置を何度かやり直したりしていて。出過ぎず、引っ込み過ぎずな良い部分を探りました。ACE COOLさんはレックの後の編集で曲全体の体感というか、速度が落ちないような印象にしました。
仙人掌さんとはヴォーカルのレック前に会ってゆっくり話をさせてもらったりもして。そのときにさっきも言ったように、自分がPCだけで何も繋いだりせず作っていることを話したらすごく驚いていて。仙人掌さんの「十分だぜラップトップ一台」というラインはそのことを歌ってくれているんです。
──ビートを投げる段階ではお題やタイトルもなかったんですか?
N:タイトルもなく、完全にビートだけでした。タイトルは向こうに考えてもらったりこっちでつけたりって感じで、COVANさんとは相談して決めていたり、それぞれ違うんです。「Till I Die」はC.O.S.A.さんに決めて貰っていて、仙人掌さんとの「Meanwhile」とACE COOLさんとの「智衆」は自分で決めましたね。
──今作にはDJ SCRATCH NICEさんとコラボした「R2TB」も収録されています。
N:この曲を作ったのは1年前くらいですかね。テツさん(DJ SCRATCH NICE)は昔から好きなビートメイカーでもあって、連絡を取り合っている流れで「いっしょにビートを作ろう」という話になり。今回は僕がサンプルを作って、それをテツさんに投げて、ベースとドラムを入れてもらっています。完全にSCRATCH NICE感が出ていて、最高ですよね。パッドで弾いているベースというか、動物的な感覚のあるベースというか。たぶん僕にはああいうベースができないんですよね。
──この曲と「Chato」と「Part Dim」というNoshさんのソロのインスト2曲で、全体的にハードな作品でありつつ幅が出ているなと。
N:結果的に意図せず全体がハードな雰囲気になったんですよね。人選的にハードにはなるんだろうけど、がっつり強めなムードになったので、柔かいニュアンスの2曲というか。
──何か今作のビートを作る上で意識したポイントはありますか?
N:今回は音がクリーン過ぎない、ちょっと割れているというか、掠れている感じにしたかったんです。今UKとかでもたぶん自主でやっているものが多いからなのか、そこまでクリアじゃない感じがあって。
──UKのラップも聴いていたんですね。
N:USとUK、同じくらい聴いていますね。でもUKの割合が増えました。UKだとジム・レガシーとかも好きですし、ジョイ・オービソン(Joy Orbison)といっしょに「bastard」という曲をやっているJoe Jamesというラッパーもめっちゃ好きで、彼がビートメイカーのoaklandとWilfredと組んだ『love riddims』という作品があって、サンプリングで作られているんだけど、いなたくない、ちょっと変わった雰囲気があって、これ好きだなと思って調べていたら、マスタリングをTed Turnerという人がクレジットされていて。「もしかしたら頼めるかも!」と思って交渉してお願いしました。
──ジョイ・オービソンはダンス・ミュージック・シーンの重要な存在ですよね。
N:ジョイ・オービソンには共感する部分もあって。『still slipping vol.1』をリリースしたときのインタヴューで、「これはアルバムなんだけど、アルバムじゃない」みたいなことを言っているインタヴューを読んで。曲数的には絶対アルバムなんですけど、アルバムじゃなくてミックステープのように気軽に聴けるものなんだという話をしていたんです。もちろんやっている音楽のスタイルや感覚は全然違うんですけど、それがすごくいいなと思って。それもあって僕もすごく短くしていて、たぶん1枚通して聴いても15分くらいで終わるんですよね。曲の内容的にはラフではないんだけど、意外と一瞬で聴き終わる。だから当初から1曲あたり2分くらいで終わらせるっていうコンセプトがあって、そこは忠実に守ってやりました。
昔は3ヴァース、3フックだって感じもあったと思うんですけど、今は短い曲も受け入れられていますよね。ただそれは若い人にも聴いてもらえるんじゃないかって理由ではなく、単純に聴き足りない方が繰り返し聴くきっかけになると思ったからで。頭から聴いて、聴き終わって「休憩しよう」となるより、また頭からループして聴いてほしい。僕も高校生の頃とか、アルバムを繰り返し聴くというよりはEPとか短い作品をめっちゃループして聴いていた気がするんで、その影響もあるかもしれません。
──ラップ・ミュージック以外もたくさん聴いているんですね。
N:ラップ以外だとミニマルなところでSNDだったり、あとはOvermonoも好きですし、エレクトロ、ダンス・ミュージック寄りのものが多いかもしれないです。
──『MORFH』(変形させる)というタイトルにしたのはどうしてですか?
N:記号的なタイトルにしたかったんです。あまり意味を持たせないというか、メッセージの発信や意思表明ではなく、ただそこに作品があるようなイメージで。ただ、僕が個人としてやっていくために必要な過程のような、変化のような意味もあります。だからジャケもかっちりした感じではなく、何かにも見えるし見えないみたいなニュアンスでお願いしていて。今変化しつつある、自分の状態ですね。
──たしかにMarfa by Kazuhiko Fujitaの手掛けているジャケットも印象的です。
N:色と線のみというか、リファレンスにモンドリアンの絵画とかを渡して、青とか白っぽい色の指定しかなくて。はっきりしない、抽象的なものを描いてもらいました。
『MORFH』Art Work
──個人的にはジャケもそうなんですが、SF的な感覚や都市の感覚もある作品だと思ったんです。それもニューヨークとも東京とも違ってロンドンっぽい、曇り空のストリートに佇むオブジェのような。
N:本当ですか、意図したわけではないんですけどロンドンと言われたらめっちゃ嬉しいです。音的には冷たい感じ……僕はヒップホップだといなたくなりがちというか、普通にやっていると勝手にいなたくなっていってしまう部分があるんで、それは意識して抑えていて。ドラムの選び方もそうですし、そういうのが好きなんですよね。ただ音楽的にはそういう、余白というか、言い切らない、考えてくれって感覚があるんです。
──ここまで話を聞いていて、Noshさんにとってサンプリングという手法がキーであることは間違いないですよね。ズバリ、サンプリングする上で重要なポイントはどこにありますか?
N:サンプルの時点でめっちゃ良いものが多いですね。だから良くないものを引っ張ってきて、どうこう加工して良くしようとすることはほとんどない。良いものを持ってきて、ちょっと手を加えて出す、みたいな。見つける時点でほとんど勝負は決まっている感覚です。
昔はディスクユニオンに行って視聴して探していましたけど、ほとんど行かなくなってしまって。今はDJの作るミックスや、プレイリストから見つけることが多いです。
──ちなみに今回の制作の中で最も苦労したのはどのプロセスでしたか?
N:ミックスをエンジニアの方にお願いする時にイメージをうまく説明しなければいけないんで、自分のイメージをどうやってうまく言語化するかはかなり考えましたね。
お互いに好きなものがわかっている関係であれば、説明しなくても伝わる部分があったりすると思うんですけど、今回は仕事としてプロのエンジニアに依頼したので良い経験になりました。
──おそらくライヴもこれまであまりやってこなかった部分ですよね。福岡と東京でリリース・パーティーが予定されています。どのようなライヴになりそうですか?
N:これまでライヴはほとんどやっていないので、あんまり想像できないんですけど、みんな来てくれるんですごい楽しみですね。バックDJ的な位置で、自分の曲だけでやる予定で、客演の人にも入ってもらう形にできればなと思います。自分は基本的に喋らないと思います(笑)。福岡はナイトで、東京はデイでやるので、たくさんの人に来てもらえたら嬉しいです。
──ビートメイカーとしての将来的なヴィジョンはありますか?
N:ビートの提供もそうですし、自分の作品も同じくらい出したいですね。あとはタッグ・アルバムのような作品も好きなのでやりたいですし、いろんな人を呼んで作るのも興味はありますね。
音的にはちょっとjerkっぽいのをやってみたいなって。ただjerkはこれからやるならちょっと遅いのかなって思いますね、習得しているうちに流行りが終わっちゃいそう(笑)。あとサンプリングではなく、自分で打ち込んで作ってみたいなって思ってますね。自分でメロディーももっと作ってみたいです。
──では最後に今後いっしょにやってみたいラッパーを教えてください。
N:JellyyabashiさんとCFN Malikさんですかね。今若くてカッコいい人を探しているんです。『RAPSTAR 2025』にも出ていたFisongさんはビートも自分で作っているみたいでカッコいいなと思いました。
<了>
Text By Daiki Takaku
Photo By Kazuhiko Fujita
Better Than Yesterday presents
Nosh “MORFH” Release Party Fukuoka
2026.01.17(土)
at The Voodoo Lounge(福岡)
OPEN 22:00 / END 5:00
前売りチケット販売店は以下
APPLE BUTTER STORE / FOOLS GOLD / stockroom
Nosh「MORFH」Release Party Tokyo
2026.02.23(月・祝)
at 代官山 ORD.(東京)
前売りチケットの購入は以下から
https://livepocket.jp/e/6ju5q
Nosh
ビートメイカー、プロデューサー。
現在のヒップホップシーンにて活躍する数々のアーティストへのビート提供で知名度を上げ、独自な制作活動を行なっている。サンプリングから打ち込みなど、ジャンルにとらわれず最新のサウンドを追求しながら自身の制作スタイルを常にアップデートし続けるアーティスト。
2023年、JJJ「Eye Splice」にプロデューサーとして参加、その後もRed Bull 64 Bars、KEIJUへの楽曲提供などで注目を浴びる。
近年は様々なアーティスト作品への参加、RAPSTAR 2025へのビート提供などに加え、自身の名義でのリリースなど活動は多岐にわたる。
Selected Biography
KID FRESINO「Turn. (who do) ft. jjj」
KANDYTOWN「Kruise」
IO「Lalo feat. MUD」
febb as Young Mason「HONEY」
JJJ「Eye Splice」
C.O.S.A.「FLOR DE MOLTISANTI」
KEIJU「Checkers Skit」
X:https://x.com/nosh_mp3
Instagram:https://www.instagram.com/nosh.wav
Prod. Nosh Playlist
https://ssm.lnk.to/Prod_Nosh
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