「場所を作り続ける」
Flat Line Classicsが乾杯を続ける理由
ファースト・アルバム『THROW BACK LP』大反省会
「タフでいなきゃならないぜこの街じゃ
影も形も無いものに追われてる
だから小さな喜びに乾杯するのさ
道徳を胸に飼い慣らすVenom」
目紛しく変わる東京の街を背に、焦燥感と孤独を抱いて、2013年の「BirdEyesView」(『Be In One’s Element The Remix』収録)で仙人掌がこうラップしたのを覚えているだろうか(ここから先はこの曲のMVでCENJUが何に火をつけているのかを確認してから読み進めて欲しい)。
そして時は過ぎ、2023年。仙人掌は年齢で言えば一回り以上離れたヒップホップ・クルーに、あの頃より深みを増した声で、素晴らしいヴァースをプレゼントした。そう、東京の夜に紛れて、ささやかな乾杯を続ける若者たちに。
受け取ったのはFlat Line Classicsと名乗る連中だ。東京は品川エリアで育った“ごく普通”な彼ら──BIG FAF、SoloBright、Weird the art、Daz、Sart(現在SoloBrightは活動休止中)にバックDJのRyo Ishikawa、HARUを加えた7人組──のヒップホップは、今、小さな喜びを祝うグラスの音の先で鳴り響いている。
これはレトリックなどではない。その証拠にFlat Line Classicsのファースト・アルバム『THROW BACK LP』のトラックリストに並ぶプロデューサーの名前を見てほしい。ビートメイクも担当するSart以外には、DJ SCRATCH NICE、GRADIS NICE、MASS-HOLE、DJ GQ、dhrma……。第一線で活躍する各地の名だたるプロデューサーたちと、Flat Line Classicsはいくつもの夜を経て、繋がり、その喜びを祝い、期待と信頼を得るに至ったのだ。
また、音に乗るリリックも、ときにストレートに聴き手を突き上げ、ときに鋭く日常に溢れる欺瞞へと切り込みながら、そんな無数の夜の情景を思い起こさせる。まるで、音の先にいるあなたへ手招きしているように。
『THROW BACK LP』がリリースされて少し間が空いてしまったので、Flat Line Classicsの詳しいイントロデュースはすでに公開されている他媒体の記事に譲り、今回のインタヴューでは『THROW BACK LP』のリリースを振り返るところから、彼らの思考や美学、今後の展望など語ってもらっている。ついでに言えば今作でブーンバップ・スタイルの印象も着いたように思う彼らが、自身らをどのように認識しているのかについても訊いているので、ぜひ最後までお付き合いいただければと思う。
《FNMNL》あえて合わせにいかない
《Qetic》2023年1月22日品川某所で素直に語り合う
取材場所に指定した渋谷のカフェへと、当然のように前日のパーティーの酒が抜けない身体を引きずって(彼らの名誉のために補足するとそこに悪意はない)やってきたFlat Line Classicsのフロントに立つ4名に、とりあえず気休めのアイスコーヒーを飲ませながら、多少はマシになった頃合いで話を始めた。
(取材・文/高久大輝 写真/Momoko Umezaki)
Interview with Flat Line Classics(BIG FAF, Weird the art, Daz, Sart)
──今日はファースト・アルバム『THROW BACK LP』の反省会からはじめましょう。まず率直に手応えは?
BIG FAF(以下、B):クルーとしてはこれまでずっと自主で出してきたんですけど、今回初めてレコード会社から出せて。見てくれる人、聴いてくれる人の量が段違いだなというのが最初の印象ですかね。実際の数字にも出ていたし、SNSでの広がり方もそうですし、今までとは全然違うなって。
Sart(以下、S):そうだね。アルバムを出してから聴いてくれてる人が感覚的にすごい増えてきていて。名刺ではないですけど、今作でやっとみんなに知ってもらえ始めてるかなって。もちろんまだまだなんですけど。
──作品のどのあたりを見てもらえている印象ですか?
S:一番はアルバムのプロデューサー陣ですかね。意外とというか、やっぱりみんな見てくれているんだなって。本当にやれるだけやったんで(笑)。
──リリースパーティーも大盛況でしたね?
Daz(以下、D):今まで自分たちのライヴに来ていなかったタイプのお客さんというか、一般の層が多めに来てくれていた気がします。しかもライヴだけを観に来たという感じではなくて、パーティーとして楽しんでくれていたので、そこが一番良かったかな。
──新しいリスナーのリアクションで気づいたことはありますか?
D:音源を聴いて観に来てくれた人はそのあと何回も来てくれているんで、「ライヴの雰囲気が良い」「ライヴを観た方が良いアーティスト」という面はやっぱりそうなんだなと。
S:「Flat Line Classicsはライヴを見て欲しい」ってSNSにも書いてあったね。
D:改めてライヴが一番大事なんだって気づきましたね。
──じゃあ今作はおおむね満足のいく結果を生んだと。
Weird the art(以下、W):満足とまではいかないですけど……。
S:みんな個人的な課題はいろいろあると思いますね。
D:6、7割くらいじゃないですかね、満足度的には。
──反省点はどんなところでしょう?
B:準備の時間が少な過ぎたってところですかね。
D:毎回なんですけど最初の方であーだこーだ言いつつダラけちゃって、結局締め切り間際に急ピッチになってしまって。終わってから「アレやっとけばよかった」と思うことがいろいろとあるんです。
W:仕事終わりにみんなで集まって、ほとんど1ヶ月スタジオ篭りっぱなしだったもんね。
D:レコーディングも締め切り間近まで詰め詰めでやっていたんで、録り直しも含めて、ラップの乗せ方だったりいろんなことを試す時間を取れるようにした方が良かった。振り返ると「もう時間がないから」と焦って決めてしまっていたなと。
──Flat Line Classicsはいろんなクラブで遊んでいるイメージもあります。東京の良さはどういったところにあると思いますか?
W:なんですかね、ある種ジャンルレスだから各々が輝ける場所があるのかなとも思います。俺らは比較的クラシックなスタイルですけど、トラップのイベントに出たらこっちが盛り上がっちゃうってこともあったりしたんで、ジャンルがいろいろごちゃっとしていて、だからこそ普段聴いているもの以外の音楽を聴いてより刺激を得られる環境なんじゃないかな。いろんな音楽を摘んで聴けるというか。
──たしかにそれはあるかもしれません。ただ東京はかなり細分化されている気もします。そういった境目をどうやって超えていくか考えたりしますか?
S:去年くらいから意識し始めたのが、自分たちの出番になったら一回全部止めちゃうことで。めちゃくちゃ縦ノリのインストを長めに流して、一回全体の流れを止めてから入るのを意識してますね。
──なるほど。出演するイベントは選んでいたりはするんですか?
B:基本的にオファーは断らないですね。
W:吟味はするんですけどね。「これ大丈夫か?」みたいな(笑)。
B:それで結局断らない(笑)。
D:やってみようが先行するんです。吸収したいというか。現場慣れはやっぱり大事だと思っていますね。
──「これは大変だった!」というライヴもありますか?
D:コロナの厳しい時期に《VISION》でライヴをしたんです。そのときはライヴがどんぐりずとWez Atlasがブッキングされていたんですけど、どちらもコロナの影響で出れなくなっちゃって。必然的に僕らが《VISION》のメインステージのヘッドライナーになりました。僕ら以外は、DJがokadadaさん、DJ WILDPARTYさん、BUDDHAHOUSEさんだったりで。そのときはね、絶妙な反応で(笑)。
B:絶妙というか、心が折れた(笑)。
W:「なにこれ?」みたいな。お客さんがポカーンとしていて。
──そういったいわゆるアウェイなライヴで意識していることはありますか?
D:あんまりレスポンスを求めないというか、あくまでショウケースとして自分たちの世界観を作るのを意識してやりましたね。
W:お客さんに求めず、こっちがまず楽しもうという感じでしたね。それでも正直しんどかったです。
D:でも大きな舞台を経験する機会でもあったし、そこから「こうしていこう」という意識も生まれて。okadadaさんも僕らのライヴに反応してくれていましたし、決してマイナスだけじゃなかったです。
──ここからはFlat Line Classicsの音楽的な部分について伺えたらと思います。違っている部分と共通する部分がある思うのでそれぞれに訊きたいんですが、ヒップホップを聴くときにまず何を重視していますか?
W:僕はまずリリックです。何を言ってるかは超大事にして聴きますね。文字起こしして理解できるというより、ブーンバップやトラップといったスタイルに関係なく、聴いてすんなり言葉が入ってくる曲がめっちゃ好きで。例えばCOVANさんのラップとか、すごく好きなんです、言葉を濁さないから。それは影響を受けて、自分も意識してやるようにしてます。頭の中にパッとイメージできるものが欲しいですね。
──Weird the artさんのリリックは色の描写も巧みに入れ込んでいますよね。
W:自分を表現しやすいんです。イメージしやすいものを合わせてますね。
──Dazさんは?
D:自分はまずビートですね。再生して一番最初に聴こえる音は基本的にビートじゃないですか。だからそこのインパクトがないと聴き続けない。一音目であっとなったら聴くから、まずそこからリリックだと思います。僕が影響を受けたのはやっぱりメシアTHEフライさん、もっと言うとJUSWANNAなんですよね。僕というか、城南エリアはJUSWANNAなんじゃないかなと思います。
──最近はどういったビートでやりたいと思っていますか?
D:極端なんですけど、めちゃくちゃ速いビートか遅いビートなのかなって、今求められているのは。スクリレックスの一番新しいアルバム(『Quest for Fire』)があるじゃないですか、あれかなと思ってますね。最近で一番自分がやりたいことをやってるのは。
──つまりダンス・ミュージック的なビートですね。
D:どんどんそっちの要素も入れていったらいいのかなと。クルーで、というよりは個人的な感じですけど。
──ちなみにリリックの話で、Dazさんの「目に物言わせろ 三品王朝 」というラインがありますけど、“三品王朝”というのはさんピン世代を指しているわけではないですよね?
Daz:あのリリックを書いたのはちょうどコロナが本格的に厳しくなる少し前くらいで。小池都知事が都庁やレインボーブリッジを赤く点灯する「東京アラート」を見てすごく腹が立っていたんです。だから世代の話ではなくて、政治批判というか。「さんぴん野郎」的な意味ですね(笑)。
──なるほど。BIG FAFさんはどうですか?
B:僕もビートですね。ビートの中でもベースですかね、最近だと、一番聴こえる音なので。ビートが良くないとリリックが入ってこないと思ってしまいます。プレイヤーだからかもしれないけど、リリックでどういったアプローチをするかは自分次第だと思ってしまって。
──自分がラップする気持ちで音楽を聴いてるということですね。
B:そうですね、そっちが多いかもしれないです。《GROW AROUND》でも、店頭でUSのヒップホップを中心にずっといろんな音楽が流れていて。「このビートいいな」と思ったら自分に置き換えて雰囲気でラップしてみたり。
──Sartさんはいかがですか?
S:僕の場合、ブーンバップだったらリリックですね。漠然と今思いつくのは、ANARCHYさんのファースト。「リアルだな」、そう言えば今あまりこういうものはないなって。聴いていた当時、特に日本のヒップホップに勇気付けられていたので、自分のリリックもそうやって刺さって欲しいと思って書いていたりします。あのときの自分と同じように若い子たちが同じ感情になってくれたら嬉しいですね。
──Sartさんはビートも手がけています。《WREP》の「Zeebra’s LUNCHTIME BREAK」ではジェイ・Zの名前を挙げていた記憶がありますが、東海岸のヒップホップの影響は大きいですか?
S:自分はジャスト・ブレイズが好きで、ジェイ・Zの『Blueprint』(2001年)とか、世代ではないんですけど、あの辺りの音楽がすごく好きなんです。意識していたのは基本的にポジティヴな音ということですね、サンプリングの中でも。だいたいあの頃の音はピッチを上げて、派手なドラム……みたいな。自分たちがやりたいのは90年代ではなくて、どちらかというと2000年代のヒップホップなんです。
D:だからジェイ・Zやカニエなんですよね。ファレルは行き過ぎっていうか(笑)。
S:ディプセットもね。本当にいなたい感じではないのが自分たちのビート選びの個性なのかもしれない。なるべくポジティヴな音を意識していますね。あまりダークなものができても作品にしようとはならないんですよね。
B:もしかするとビート選びの時点でライヴを意識しているのかもしれないです。
──Saltさん以外の方のビートはどうやって選んだんですか?
B:ストックを聴かせてもらって。
D:みんなで聴いて「どれがいい?」みたいな。
S:あんまり意見は割れなかったよね。
D:そこは共通認識がある程度あるんじゃないかな。Flat Line Classicsでやると考えたらこれという意見は割と合いますね。
S:MASS-HOLEさんとの「HOT MAGIC」や、DJ SCRATCH NICEさんとの「FLAT LINE CLASSIC」は満場一致で「これがいい!」となった気がします。
──今作でFlat Line Classicsにはブーンバップのイメージが着いたのではないかと思います。一方で「Classic Boombapでも無い recognize/俺らの音楽はFlat Line Classics」(「FLAT LINE CLASSIC」)とラップしてもいますよね。
S:ブーンバップ=俺らというわけでもないんです。それをわかりやすく表現できるのがソロ。ソロは各々が好きなことをやって、クルーで出すものは「やっぱこれだよね」というものが何曲かは必ずあるような形が良いと自分は考えていますね。
D:そもそも、それ(ブーンバップ)だけをやりたいわけじゃないんです。たまたま今回はそうなっただけで。ただ新しいことをやるにしても僕ららしさというか、その線をハミ出さないようにチャレンジをしていきたいです。
S:Flat Line Classicsだからといってスタイルを変えてやるのも、俺らのレベルアップにならない。みんなの中にあるFlat Line Classicsはこうだよねという意識のせいで、各自の個性が潰れちゃっていたらもったいないから、それぞれがソロで作品を出したり、他の人の作品に参加したりして受けた影響をもうちょっと出していきたいです。もちろん全然違う曲調をやるというのは怖さもあるし不安もあるんですけどね。でもこだわるべきなのはそこじゃないんじゃないかなって、アルバムを出してみて思いました。
D:Flat Line Classicsはこうっていうもう一個名刺じゃないけど、ブーンバップだけじゃなく、こういうクルーだと言えるもの作って、聴いてくれる人にちゃんと伝えられたらいいですね。
──アティチュードの面で、Flat Line Classicsにとって東京のヒップホップの諸先輩方を近くで見てきたというのも大きいと思います。その背中を見て受け継いでいきたいものはありますか? ある意味、それが東京のヒップホップ観にも繋がってくるのかなと。
S:先輩の動きを見ていて思うのは、まず現場主義ということですね。ライヴが上手い人、あとやっていることがブレない人、貫いている人。自分たちも意識しているんですけど、いくら有名な人でも楽屋にいないでフロアでずっと遊んでるんです。そこは無くしちゃいけないなって。
D:仙人掌さんとC.O.S.A.さんが《VISION》の朝5時くらい、人も少なくなったフロアの真ん中でベロベロで踊っていたことがあって。それをめっちゃ覚えてますね。かっこいいな、この人たち本物だなって。
S:だからこそ同じプレイヤーに対して「お前らどんだけ現場にいるの?」という気持ちもあるし、そこが唯一くらい俺らが続けてきたことの中で一番価値のあるところだとも思っています。俺たちは他に負けないくらい現場に立ってきたつもりで。全然現場では見ないけど名前は売れている人もいますし、そこの子達とどう差をつけるかというか。本当にたくさんの現場に出るとやっぱりいろんな客層がいるから、その中で俺たちを初めて観た人に「いいな」と思わせる自信もあるんです。
B:自分の場合、ヒップホップを始めたのが本当に《GROW AROUND》に入ったくらいで、ヒップホップ観としては物心つくときから“そこにいたらカッコよくなる”ようなところにいたんです。でも東京じゃなくてもそういうことがある気もします(笑)。
──たしかに東京だからというのは関係ないかもしれないですね。ただ東京に集まっているいろんな人の生活を見ていることが伝わってくるリリックだと思うんです。それこそ、みんな普段は働いていて、なおかつクラブで遊んで、ライヴをする中でたくさんの人を見ているんだろうなと。そういったリリックの書き方は意識していますか?
W:個人的にずっと意識していることなんですけど、やっぱり東京って忙しいじゃないですか。心に余裕がない人もたくさんいる。そういう人と接したりすると、当たり前なことって本当は当たり前じゃないのに、当たり前だと思い込んじゃっているんじゃないかと感じてしまうんです。だからそこを音楽で伝えるようにしてますね、忘れちゃいけないものというか。もっと視野をワイドにできたらなと考えてます。
──「Good bye 偏見の目 概念を覆す」(「UNTITLED 24/7」)などのリリックに滲んでいますよね。そういった“常識を疑う”ようなコンシャスさのあるリリックもアルバムの節々から聞こえてきます。
D:僕らって不良でもないし、かと言って引きこもっているタイプの人間でもないんで、言ってしまえばすごく“普通”なんです、みんな。意外とヒップホップをやっているのは“普通”の人の方が少ないんじゃないかと。だからこそ入ってきやすい層というか、伝えられる同じ気持ちの人たちがいっぱいいると思うんです。そこに届かせつつ、ストレートすぎても面白くないんで、ちょっと隠しつつ魅せられたらいいなとは考えています。それに僕らの中には正社員もいますけど、ほぼほぼフルタイムのフリーターなんで。社会の歯車、労働者としての気持ちも入っていますね。そんなスーパーヒーローみたいなリリックは書けないんで、それより普段フルタイムで働いている人たちのために書けたら良いなとも思っていますね。
B:周りが本当に“普通”のヤツが多いんです。学生時代の友達のほとんどは今サラリーマンやっていて、「やりたいことがない」「良いよなお前は」とよく言われるんですけど、そういう人たちの背中をポンと押せるようなリリックも書きたい。それって自分にも言っているんだと思うんです、自分を鼓舞するような感じで。自分はぶっちゃけストレートなことしか言えないというのもありますし、そこがいいところだとも思うんで。夢や目標のない人にうまく刺さったら嬉しいですね。
S:自分も東京で育ってきたんですけど、周りに音楽をやっている子が全然いなくて。それもあって“普通”に過ごしている子達に、俺らはこんだけ熱量持ってやってるぞというのを見せて、その子達が影響を受けてくれるか、というのはよく考えています。だからこそ、すごく距離の近い子に向けて歌っていたりもするんです。さっきWeirdが言ってたように、“当たり前だけど当たり前じゃない”ことを伝えたい。
──同世代でクラブで遊んでいた人も歳を取るにつれて様々な事情で少しずつ離れたりもしますよね。そういった一度離れた人にまた遊びに来てもらうにはどうしたらいいか考えたりしますか?
B:あいつらでもまだやれてるなら頑張ろうって思ってくれればいいですね(笑)。
S:どれだけ一線でやっているところを見せていくか、ですかね。
W:ラップをやっていない子から「アルバム聴いたよ、ライヴ行くね」と連絡があって実際に来てくれることもちょこちょこあったので、やっぱり良いものを作ってしっかり提示すればそういう人たちの刺激にもなるし、何かのきっかけにもなるのかなって。
D:場所を作り続けるしかないと思っています。だからこそパーティーを続ける。ここに居続けるしかないんです。それこそウチのクルーにも今一人離れている奴がいるんで、そいつも戻ってこれるように。
──SoloBrightさんですね。メンバーが一人欠けた状態でファースト・アルバムを作ることに葛藤はありませんでしたか?
B:25歳という年齢的にも節目のタイミングで、《P-VINE》さんからアルバムのお話が来たんです。SoloBrightは2年くらい離れているんですけど、もうそろそろ俺らもまとまった作品を作らなきゃいけないなと。ここは4人でやらないと前に進めないなって。
S:幼馴染なんで、正直そこまで心配でもなくなってきていて。生きてりゃいいなって。
W:安否確認さえ取れればね(笑)。
B:死んでなきゃいい。
S:変にやりたくないことやらせなくていいし、やりたくなったらいつでも戻ってくればいい。アルバム聴いてくれてたよね?
B:うん。アルバムの先行曲が出たタイミングで、その日に一年振りくらいのLINEが来て。「かっけーじゃん」って。で、「ありがとう!元気してるか?」と返したら返信がない(笑)。まあ、あいつらしいんですけどね(笑)。
W:でも最近になってメンバーみんなのインスタのストーリーを絶対チェックしてくれてるんですよ。たとえSNSだけでも出てきてくれて良かった。
D:生きてることだけはわかるからね。
W:SoloBrightはリリックのセンスも、ラップのスキルも、僕ら4人とちょっと違った感じで抜けてくるところがあるんで。「クルーとしてやるときは5人の方がまとまる」という話をこの前ちょうどSartとしていましたね。SoloBrightはFlat Line Classicsのジャンルの幅をもっと広げるような存在なんです。
──SoloBrightさんが戻ってくるのが楽しみです。今後の、いわゆる“売れ方”について考えたりしますか?
D:常に考えてはいるんですけど、決して1曲でバーンといきなり売れることはないとわかっているんで、少しずつじゃないですけど、地に足をつけながら、土壌を作っていく売れ方が合っているんじゃないかなと思っています。積み上げて最後に勝つイメージ。やり続けていたら結局売れたというのが理想ではありますね。ただそのスピードを少し早められるようにしたいなと。
S:自分たちはアングラな方向への憧れはあまりなくて、ここまでやっているからにはいろんな人に知ってもらえるようになりたいんです。やっと自分たちが聴いていたような人たちと現場で会う機会も増えてきているので、満を持して「あいつら、やり続けたから売れたね」と言ってもらえる状況が理想かもしれない。
──アングラというか、Flat Line Classicsからはイリーガルな匂いはしませんよね。
D:単純に向いてないんですよね、そっちに(笑)。だから無理はしないですね。音楽が好きでやってるから、それのみで。
S:ありがたいことに変なしがらみもないんです。本当に周りにプッシュしてもらってここまで来ている感じがしています。
──良い環境ですね。では最後に今後の目標を教えてください。
D:フェスに出たいですね、野外の。フジロック。ROOKIE A GO-GO (ルーキーアゴーゴー) に応募もしました。
W:作品でいうと3〜5曲くらいのサイズのものを一枚出して、アルバムを今年の年末か来年の頭くらいに出したいです。
B:次のアルバムを出したとき同じ反省をしないよう頑張ります!(笑)
<了>
Text By Daiki Takaku
Flat Line Classics
『THROW BACK LP』
LABEL : P-VINE RECORDS
RELEASE DATE : 2023.1.11
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