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2017年のポップ・ミュージック最大の謎?! 予想外のアクシデント?! 現行ポップの景色を変えるSuperorganismとは何者?!

25 October 2017 | By Daichi Yamamoto

“ポップ・ミュージック、Superorganismを発見”……それは2017年に起こった最も記憶されるべき出来事であり、最も予想外のアクシデントだ。もちろん良い意味で。そう断言していい。それは今年3月のことだった。きっかけはApple Musicの《Beats1》のフランク・オーシャンの番組『blonded Radio Ep.2』だ。  

緩やかに憂鬱を歌うAlex G、ジ・インターネットのギタリスト、Steve LacyのiPhoneだけで作られた軽やかなソウルに続けてプレイされたのは、それらに続けてプレイするには相応しいロウファイな、でも明らかに場違いかのように明るくカラフルな、Superorganismの「Something For Your M.I.N.D.」だった。

 

Something For Your M.I.N.D

 

ゆらゆらとしたビート、ドラッギーかつサイケデリックなギターの響き、海の中、森の中、あるいはフィクションのアニメーションの世界に飛び込んでしまったかのような心地。そして何より、社会情勢と呼応するようにコンシャスなものや憂鬱なものばかりになってしまった現代のポップ・ミュージックに慣れた耳にはあまりにも刺激が強い、“楽しげ”なムード。これは誰なんだ?どうやらツイッターで検索してみたところインターネットもまた私と同じリアクションのようだ。良かった、大丈夫。

  当時の私のリアクションはおおよそこんな感じ。それからというもの、“この中毒性の強いサイケデリック・ポップの正体は何なのか”、その謎が解けないまま、数ヶ月が経ち、またこのバンドの新曲が公開されればそれを何10回も繰り返しリスニングしての繰り返し。《The Line Of Best Fit》のライターも「誇張してなんかいない。私は昨日初めて自分のタイムラインに流れてきてから12回連続でこの曲を聴いた」と当時興奮気味に記事に書いていた。こうした感覚は熱心なポップ・ミュージックのリスナーでも年に一度あるかどうか、だろう。

  事実、この8人の顔の見えない(見えなかった)コレクティヴはポップ・シーンの新たな注目の的となった。フランク・オーシャンだけではない。彼女たちはヴァンパイア・ウィークエンドのエズラ・クーニグにも同じく《Beats1》の番組でプレイされ、BBCではその《Beats1》へ移ったゼイン・ロウの後を継ぐアニー・マックの番組で《Hottest Record in the World》にも選出。人気サッカー・ゲーム『FIFA 18』でも彼女たちの曲を聴けるという。そして、デビュー・アルバムの制作を控えアークティック・モンキーズやダーティ・プロジェクターズ等でお馴染み《ドミノ・レコーズ》と契約するなど着々とブレイクへの舵を切っていった。

  さて、Superorganismの何が特別なのだろう。このバンドの曲を聴いて浮かんで来る直感、それは“2017年にラジオから聴こえてくる音楽に聴こえない”ーそういったものだ。では、何がそうさせているのだろうか。

  そんな疑問の答えを考えるにはまず2017年のポップ・ミュージックの状況を改めて定義・共有しておかなくてはならない。第一にストリーミング・サービスの世界的普及を主要因に、トラップだろうがダンスホールだろうがある一つのサウンド・フォーマットが”世界の”メインストリームになることはもはや不可避の事態になっている。第二にメインストリームで流通しているポップ・ソングは何人ものソングライターやプロデューサーの力を結集してよりウェルメイドなプロダクションで作り込まれていることが常である。そんな時代においては、リファレンスが複雑であったり、そのフォーマットから距離を置いたように聴こえる音楽やはとにかく刺激的だ。昨年のフランク・オーシャンのアルバム『Blonde』がここまでアイコニックな作品になったのもそんな要因もあるはず。

Frank Ocean Nikes

 

さあそんな前提を前にして彼女たちのセカンド・シングル「It’s All Good」を聴いてみる。聴こえて来るのはMGMTやグループラブのようなエレクトロ・ポップ? あるいはテーム・インパラのようなサイケデリック・ポップ? いや、気怠いリズム感はペイヴメントだろうか? そしてプロダクションに強度はない。こんな風にサウンドのリファレンスや構造から考えてみてもいいだろう。

Superorganism It’s All Good

 

しかしもちろん初めて彼女たちの音楽を聴いた時にはそんなことはどうでもよかった。それ以上にインパクトがあったのは過剰なまでの“楽しげ”なムードだった。タンバリンの音、無造作なサンプリング、シンセサイザーのカラフルな音色…。ここではあらゆる偶然が溶け合っている。超絶キャッチーでありながらも音楽的にも楽曲が持つムードそのものも現代のメインストリーム・ポップのそれとは明らかに距離が置かれている。かといって不思議とここには“レトロ”といった言葉を想像させる要素は皆無だ。

つい思ってしまう。この音楽を聴いている“私が生きている時代は本当に2017年なのだろうか?”と。

  その“楽しげ”なムードと呼応するかのように歌詞も“世界がすごく重く感じるだろうけれど、君がしたいように変えられるんだ”(「It’s All Good」)と子供に語りかけるように前向きで、かつ“誰も気にしてないんだから好きに生きたらいいじゃないか”(「Nobody Cares」)と楽観的。画一化するポップ・ミュージックのトレンドをよそに、自分たちの好きなままにカラフルに作られたこのバンドの音楽は、何から何まで兎に角ユニークだ。

    ユニークなのは楽曲そのものだけではない。8人のメンバーはそれぞれイギリス、オーストラリア、ニュージーランド、そして日本から集まった。うち1人を除いて現在はロンドンの一つの家で共同生活。しかし、彼女たちは特定の土地やシーンに属することを拒んでいる。ヴォーカルのOronoは「自分たちもこれからロンドンで活動していこうっていう気も全然なくて。皆の共通の家っていうのはインターネットなわけで、一つの場所に頼って活動するっていう予定は全然無いので、色んな場所をツアーで点々として見て色んな刺激を受けながら色んな音楽を作っていくっていう感じですね」と話す。

    まさに彼女たちは2017年のポップ・ミュージックのシーンの景色をたったの一組の力によって変えていった。TURNでは彼女たちを更に深く知るため、インタビューを含めこの後2度に分けて特集記事を掲載する。まずは今年を振り返る時期が来てしまう前にあなたもSuperorganismに出会ってほしい。

■Superorganism OFFICIAL SITE
http://www.wearesuperorganism.com/

Text By Daichi Yamamoto


Superorganism

Something For Your M.I.N.D

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