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フジロックのステージも大好評
ケンドリック・ラマーとのツアーも控えるアルゼンチンのラテン・トラップ・デュオを大解析

26 August 2025 | By Katsuaki Hanada

《Fujirock Festival 2025》の2日目、7月26日。朝イチ、アルゼンチンからやってきたカトパコことカトリエル&パコ・アモロソ(CA7RIEL & Paco Amoroso)は、メインステージのGREEN STAGEに立ち、最初から完璧に最高に盛り上げた。《Fujirock》での初来日ステージのライヴレポに続けて、カトパコの2人がここに辿り着くまでの来歴をカトパコ・ストーリーとして記した。



2025年7月26日AM11:00。まず、鉄壁の演奏をするバンド陣が先に登場し、ラテンのリズムで「DUMBAI」のイントロを奏でる。カトリエルは上下黒、パコ・アモロソはピンクの可愛らしい服で登場。ステージ中央で静止したと思ったら、2人の服がどんどん膨らんで、パンパンになっていく……なんだこれは。

毎回、衣装でも独特のユーモアを発揮する2人。《Fujirock》で何を着て登場するかにも注目していたが、予想を超えてきた上に、やっぱりいい感じ。解析班によると、「ANREALAGE(アンリアレイジ)」の空調服。日本のブランドだよ!!! 日本のブランドのおしゃれな空調服を着てきたよ! カトリエルは途中で脱いだけど、 パコは最後まで空調服を脱がなかったよ。

GREEN STAGEには、朝イチなのにヘッドライナー級に人が集まり、登場と同時に大盛り上がりで、ステージの2人もお客さんも心底楽しんだ。アーティストとファンがお互いへの愛に溢れていた。演出では、最初から火が吹きまくり、やりたい放題。単独公演では、空を飛んだりするし、際限なくお金をかける気合いの入った演出でも知られているのがカトパコだ。

歌詞の和訳がモニターに映し出されたのも総じて好評だったようだけど、結構下品なことも歌っているのが、日本人にバレた。

早速、公式が用意した日本での主要サブスク (Spotify、Apple Music、Amazon Music)でのセットリストも公開されたが、聴きたい曲は網羅できたよねという完璧な60分19曲(メドレー含)。

「ドゥンドゥンドゥンバイ」でお馴染みの「DUMBAI」から始まり、アルバムと最新EPのキラーチューンに、それから《Tiny Desk Concert》で演奏した曲は網羅した。20年代ポップ・アンセムになりつつある「EL DÍA DEL AMIGO」を大合唱で締めた後に、擬似アンコールもやってくれた。

去り際、「ありがthankyou」って、これまたセンスのいい造語を叫んだカトリエルの顔が泣きそうになっていたのを皆んな見逃さなかった。あの空間には、愛とリスペクトしかなかったよね。素敵だったよ。「ありがthankyou、カトパコ」!!!

ソニーミュージック洋楽のアカウントが、早速、代表曲のライブ映像をお届けしてくれてるし、見逃した人は、カッコ良すぎた《Fujirock》のカトパコの姿をチェックしてみて。



【カトパコ・ストーリー】
「2018年にデビューシングルをリリースして以来、才能にあふれ、音楽を深く学び、型破りで、そしてきらめきを放つ──世界が賞賛するアーティストです」と、司会者がカトリエル&パコ・アモロソ(CA7RIEL & Paco Amoroso)2人の功績を紹介しながら、ステージに迎え入れた。

2025年6月19日、カトリエル&パコ・アモロソの2人は、アルゼンチンにおける音楽界最高の栄誉とされる音楽賞、ガルデル賞(Premios Gardel)で、最高の賞、金のガルデル賞(Gardel de Oro)を受賞した。

最初にマイクを取ったのはパコだった。彼は長年の相棒との強い絆をこう振り返った。

「みんな、本当にありがとう。俺たちは、ほんとに小さいころからずっと一緒で、ずっと音楽をやってきたし、ずっと友達だったし、ずっとこの道に賭けてきた。そしてこうして賞をもらえると、ああ、やってきたことは間違ってなかったんだなって、この友情には意味があったんだなって思えるんだ」

その言葉のあと、パコはマイクを横に避け、カトリエルの顔を手でつかんでキスをした。その予想外の行動に驚きながらも、カトリエルは笑ってガルデル・デ・オロのトロフィーを高く掲げ、喜びを表した。

@tumusicahoy SE FESTEJA CON UN BESO💋 🙌🌟 estas fueron las palabras de @ca7rielypacoamoroso al ganar su Premio Gardel !! 🔝🏅 #tumusicahoy #tmh #ca7rielypacoamoroso #musicosentiktok #tiktokmehizover ♬ sonido original – tumusicahoy

続いてパコはチームの仲間一人ひとりへの感謝を述べた後、マイクをカトリエルへと渡した。カトリエルもまた同じ気持ちを込めて語った。

「俺たちは、ほんとに小さいころからの仲。サッカーにも行ってたけど下手だったし、バスケもダメ、水泳は溺れかけた(笑)。学校でも、旗持ち(優等生)にはなれなかった。だから、これをもらえるってのは、俺たちにとっての“旗”なんだ。本当にありがとう」

ハグとキスと歓声と友情に溢れた授賞式だった。

@tumusicahoy “Íbamos a futbol y éramos malísimos” 🤣🤣 estas fueron las palabras de @ca7rielypacoamoroso al recibir su premio Gardel 🔝🔝 #tumusicahoy #tmh #ca7rielypacoamoroso #musicosentiktok #tiktokmehizover ♬ sonido original – tumusicahoy


CA7RIEL & Paco Amoroso(カトリエル&パコ・アモロソ)カトリエル(写真左)、パコ・アモロソ(写真右)

カトリエル&パコ・アモロソ(CA7RIEL & Paco Amoroso)は、そのデュオ名の通り、カトリエルとパコ・アモロソの2人よる音楽ユニットだ。

カトリエル(CA7RIEL)の本名は、Catriel Guerreiro(カトリエル・ゲレイロ)。ステージ向かって左側にいることが多い背の高い方がカトリエル。パコ・アモロソ(Paco Amoroso)の本名は、Ulises Guerriero(ウリセス・ゲリエロ)。子役がそのまま大人になったような顔をした金髪の方がパコ・アモロソ。



世界的なポップスターへの階段を上りながら今年のフジロックに出演する25年前に、カトリエルとパコ・アモロソの2人は、ブエノスアイレスの同じ地域で育ち、小学校で出会っている。Guerreiro(ゲレイロ)と Guerriero(ゲリエロ)と似た名字で、先生や周囲の人から「兄弟じゃないの?」とよく聞かれていたそう。実際には血縁関係はないが、幼少期から長く一緒に過ごしたことで“兄弟のように”育った2人だ。

「他の誰かとデュオを組むなんて想像できない。6歳のときからの付き合いだから、お互いのことを全部知ってる」(カトリエル)

ユニットでの名前の順で、2人が、カトリエル&パコ・アモロソを結成するまでのそれぞれの来歴を紹介したい。



カトリエル(CA7RIEL)は、1993年12月5日、アルゼンチンのブエノスアイレス生まれ(2025年7月現在、31歳)。彼の父は、バンドのギタリストで、カトリエルが初めてステージに立ったのも父のバンドだった。ただ、カトリエルが言うには「父のバンドはまあまあ下手だったけど、彼はリーダーで、本当に凄かった。でも、やがて飽きちゃった」そうだ。いずれにせよ、家に音楽のある環境に生まれ育った。

中学卒業後に、音楽の専門学校の名門フアン・ペドロ・エスナオラ音楽院(Juan Pedro Esnaola)に入学。この学校で、クラシック音楽の音楽理論と実技の基礎をしっかりと学んで、音楽教師の資格も取得した。

続いて、パコ・アモロソ(Paco Amoroso)。「Amoroso」は、スペイン語で「愛らしい」と言うような意味で、「愛らしいパコ」といった感じの芸名だ。1993年8月17日、アルゼンチンのブエノスアイレス生まれ(2025年7月現在、31歳)。6歳からヴァイオリンを学ぶなど、幼い頃から音楽に親しむ。高校は、名門高校のブエノス・アイレス国立学校(Colegio Nacional de Buenos Aires)に通い、高校生時代の2010年に、カトリエルらとバンド、Astorを結成。バンド時代には、「ポストパンクとアルゼンチン・ロックの融合」と評される音楽性を志向していた。

バンド「Astor」では、カトリエルは、ギターを演奏していた(今もステージで弾くことがある)が、パコの担当楽器はドラムだった。

高校を卒業してもバンドを続けたが、観客は少なく、経済的に苦しい時期が続いた。それでも、2人はステージで自分の真価を発揮しようと努め、ピザをギャラとしてもらったり、観客にビールをおねだりしたりしながら活動を続けた。

2010年頃から7年ほど活動し、2017年にEP「Vacaciones Todo el Año」を発表したが、リリース後、バンドの活動は次第にフェードアウトし、カトリエルとパコはそれぞれの活動に向かっていく。バンドとしてフルアルバムは残していない。

バンドとしてアルバムが残せなかったことに関して、Pacoのこんなコメントがある。

「ライブの経験値をいっぱい積めたよ。あの頃は今と違って、自宅で簡単に録音なんてできなかったからね。バンドだったらなおさら難しかった。録音ってめっちゃお金がかかったから、アルバムなんて作れなかった。だから聴きたいならライブに来てもらうしかなかった」

バンドの活動中から、カトリエルは、新たな表現手段を求め、ソロでも活動を始めた。2015年、カトリエルは、彼なりにヒップホップに取り組んだソロアルバム『xCVE7Ex(Cve7e)』を発表した。もともとメタリカやパンテラなどのメタル・ギターに親しんでいたカトリエルによる、ロックの激しさとヒップホップのエモーショナルさが織り交ざった作品だった(ちなみに、カトリエルは パコとのAstor以外のバンドにも参加し、その中にはメタルバンドもあった)。

この路線でカトリエルは、2018年、トラックがソウルやジャズの要素が強まった2枚のEP『Povre』と『Livre』をリリースした。2つのEPからアルバムを完成させる構想もあったが、別々に発表されたのみとなった。

バンドでの活動から、自身の音楽活動が、より都会的な音楽に変化していったことについて、カトリエルはこんな風に話している。

「もっとシンプルで、速くて、効果的な方法で音楽が作れるんだよ。だから“アーバン”っぽい音楽を作り始めた。正直、“アーバン”って言葉にはちょっと抵抗あるけどね。やり方はこう……パソコンがあって、MIDIとか、ちょっとしたキーボードがあれば、それだけで作れる。僕はもともとクラシック音楽出身で、譜面を書いたり、オーケストラ、ギター、チューニングとかやってたけど……このやり方なら、いつも音程は合ってるし、常に自分が求める音で鳴らせる。安く済むし、それでいいんだよ。だからちょっとは必要に迫られて、ちょっとは頭使って、節約のためって感じだったね」

2021年11月、メタルのパワー、ソウルの滑らかさ、ジャズの繊細さ、都会的なビートやエレクトロなど、より「ジャンルレスな音世界」を構築した2作目のソロ・アルバム『El disko』を発表。Tiny Deskで取り上げた「Bad Bitch」は、このアルバムの2曲目だ。

アルゼンチンは2020年、コロナ禍の中、8ヶ月にも渡る世界で最も長く継続したロックダウンを行っており、そんな中、制作し発表されたアルバムだった。プロデュースは、ドラマー兼プロデューサーのTomás Sainz(トマス・サインス)。



さて今度は、パコ・アモロソも絡んだ活動についてだ。

2017年にEP「Vacaciones Todo el Año」を発表して間もなく、バンド、Astorの活動は終了し、それぞれのソロ活動中心になるが、カトリエルのライヴにパコも参加するようになり、カトリエル&パコ・アモロソとしての活動が始まる。

2018年には、カトリエル&パコ・アモロソ名義の最初のシングル「Piola」をリリース。その「Piola」や、「Jala Jala」(2018年)、「OUKE」(2019年)といったシングル曲がアルゼンチンの若者を中心にヒットした。

アルゼンチンでは、米国のトラップやヒップホップから影響を受けつつ、スペイン語のリリックと独自のスタイルを融合させた「アルゼンチン・トラップ」のシーンが形成されていて、“アーバン”なスタイルに転向した彼らの音楽は、アルゼンチントラップの土壌で若者に受け入れられた。

アルゼンチントラップの土壌の中で、2人の活動は勢いづき、2019年末には、ブエノスアイレスにある屋内アリーナ《Estadio Obras Sanitarias》での単独公演「La Celebración」を成功させ、2人の人気はアルゼンチン全国レベルへ拡大した。その時のライヴはYouTubeでフルで見ることができる。

ヒップホップのトラックを、バンドが生で演奏するという彼らのライヴのスタイルは最初から確立されている。

2020年に入ると、アルゼンチンでもCOVID-19が流行し、アーティストは活動を制限された。上記の「La Celebración」公演を含むツアーの継続が困難になり、2022年に再びカトリエル&パコ・アモロソとしての活動を再開するまで、「進化のための静止期間」として2人は、デュオとしての活動を一時休止することになった。結果的に、上記の「La Celebración」公演は、カトリエル&パコ・アモロソの第1フェーズを締めくくるイベントとなったと言える。



さて、今度は、パコ・アモロソのソロ活動について紹介したい。パコのソロ活動が本格化するのは、カトリエル&パコ・アモロソとして活動し始めてからである。

パコ・アモロソとしての初のソロ音源はシングル「Todo el día」で、2019年末にリリースされた。プロデュースは、シンガーソングライター/プロデューサーのAxel Fiks(アクセル・フィクス)。インディーポップ × ラテン・ポップの融合が得意なミュージシャンだ。

2020年には、《Tiny Desk Concert》でのレパートリーにもなったシングル「Mi Deseo」をリリース。ヒットした。この曲に限らず、カトリエル&パコ・アモロソのライヴでは、ソロ名義でリリースした曲も取り上げている。

2022年にデュオとしての活動が再開する少し前、2021年11月25日に、10曲入りのフル・アルバム『Saeta』を発表した。ジャンルの横断性が特徴で、ハウス、実験的ファンク、トラップを自在に融合したアルバムとなった。

実験的なヒップホップやトラップで知られるEl Doctorや、ヒップホップ/オルタナティヴR&Bの女性シンガー、Lara91kといった同世代の注目の音楽家や、幼い頃から憧れていたであろうアルゼンチン・ロック界の重鎮、Adrián Dárgelosと共演したりと、さまざまなコラボ曲も収録している。

カトリエルが、デュオとしての活動休止期間に発表したソロ・アルバム『El disko』(2021年11月)については、先ほど触れた。



さて、2021年後半からコロナ禍によるパンデミックから社会の活動が再開し始め、カトリエル&パコ・アモロソは、2022年3月16日にシングル「PAGA DIOS」を、3月22日にシングル「EN EL AFTER」をリリースし、デュオとしての活動を再開させる。

新しいツアー「PAGA DIOS TOUR」のスタート地点は、アルゼンチンではなくメキシコの首都メキシコシティ。3月31日から始まり、アルゼンチン国内はもちろん、メキシコ、チリ、ウルグアイ、パラグアイ、スペイン、ドイツの全7か国を巡る初の国際規模ツアーだった。ツアーは、2023年3月26日まで、1年以上続いた。そして、初のフル・アルバム『Baño María』をリリースするのだが……。

2024年4月18日に、初のフルアルバム『Baño María』をリリースし、これまで以上の快進撃が始まる。だが、まず完成したアルバムの先行披露を、2人は前代未聞の方法で行った。2024年3月、アルゼンチン、ブエノスアイレスのロックフェス《Lollapalooza Argentina》のステージに立った2人は、ライヴをするのではなく、完成したアルバムの試聴パーティーの場とした。

まるでボクサーのように黒いバスローブを纏ってステージに登場した2人。そしてこう言った。

「こんにちは、僕たちはカトリエルとパコ・アモロソです。きっとみんな僕たちがライヴをやると思ってたでしょ? でも本当にやりたかったのは、ジャグジーの中からちょっとしたパーティーを開いて、みんなと一緒にアルバム『Baño María』を聴くことだったんだよ。楽しんでくれよ、このクソったれども!」

  2人はバスローブを脱いで、ステージ中央に設置された本物のジャグジーに入り(そう、アルバムのジャケットのように!)、リスニングパーティーが始まった。2人はカメラに向かって、リップシンクして歌いながら(口パク)、ステージ上には大勢の人々が上がって一緒に踊り出すという、型破りな場となった。

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2024年8月16日には、15,000人収容のMovistar Arenaで、壮大で革命的な演出がほどこされた『BAÑO MARÍA』のお披露目公演を行った(もちろんソールドアウト)。この模様は、『BAÑO MARÍA (En Vivo – Buenos Aires)』として、音源とライヴ映像がリリースされている。映像も観るだけでぶち上がれる、とんでもないライヴとなっています。

ここまでで既に、アルゼンチン国内での人気を確固たるものにし、言語が同じで感覚が近い中南米でも人気を得ていた2人だが、世界的に発見されることになる「事件」は、《Tiny Desk Concert》への出演だ。



「準備期間は2週間。何も進まなくて焦ってたし、リハでは体調を崩すし……」とパコは言っている。《Tiny Desk Concert》への出演のチャンスが舞い込むと、彼らはすかさず動いて、アメリカのアレンジャーを起用。またブラスセクション、パーカッション、女性ボーカルを加えてバンドを強化し、収録に向けて米国でリハーサルを行った。

収録された映像には多幸感が溢れ、いつものバンドに囲まれリラックスした2人には友情が滲み出ている(ブラスセクション、パーカッション、女性ボーカル以外はいつものサポートメンバー)。当時、《Tiny Desk Concert》の視聴者層にはほとんど無名だったにも関わらず、2024年10月はじめに動画が公開されるや否や、大きな大きな反響を呼んだ。

この原稿を書いている2025年7月24日時点で3900万回以上再生されていて、この再生数は、この1年で《Tiny Desk Concert》が公開した動画の中でも圧倒的に多い。例えば、同時期に公開されているビリー・アイリッシュの動画の約1.7倍再生されている。数年前に公開されたフェスのヘッドライナー級のアーティストよりずっと見られていたりする。

あなたは、爆発的な反響を呼んだこの動画のコメント欄が、世界1ハッピーでユーモアある場所の1つであることを皆さんはご存知だろうか? いくつかピックアップして紹介したい。

@montserratfernandezhernand2091

HOLA, chicos soy de Barcelona, tengo 64 años y cada día tengo que poner este video, es algo nuevo y además me sube el animo, roza el alma . MUCHAS FELICIDADES
(こんにちは、皆さん。私はバルセロナ出身で、64歳です。毎日この動画を観るようにしています。これは新しいもので、気分を上げてくれますし、心に響きます。おめでとうございます)


@carmeloandresastesiano9763

Tengo 153 años, estos pibes me hicieron sentir joven de nuevo, hace como 130 años que no bailaba arriba de la mesa.
(私は153歳です。この若者たちのおかげで、また若返ったような気分になりました。テーブルの上で踊ったのは、約130年前以来です)


@MelinaDalmazo-j1u

Hola, no lo escuchen. Desde que lo escuche, no puedo dejar de ponerlo en loop al menos cuatro veces por día. Realmente es adictivo.
(こんにちは、これを聴かないでください。聴き始めてから、1日4回は繰り返し聴かずにいられません。本当に中毒性があります)


@MrJotens

I’m 75, i attended Woodstock 69. And Im proud of how music has evolved to this.
(私は75歳です。1969年の《Woodstock》に参加しました。 そして、音楽がここまで進化したことに誇りを感じています)

@nadapuedemalirsal.

Estaba cansada del trabajo y estudio. Luego recordé que hay un lugar donde soy feliz, y aca estoy
(仕事と勉強に疲れていました。その後、私が幸せになれる場所があることを思い出しました。そして、ここにいます)


@marianovilar4976

Fabuloso , felicidades a todos. Tengo 66 años y me habéis dado una marcha para vivir otros 66 años, los que pueden, pueden😊😊😊
素晴らしい!皆さん、おめでとうございます。私は66歳ですが、皆さんが私に、もう66年生きられるような活力を与えてくれました。できる人はできるのです 😊😊😊


《Tiny Desk》への出演の経験について、スペイン語版《Rolling Stone》誌でこう答えている。

「《Tiny Desk》は、俺たちがずっとやってきたことを世界に見せるための“ウィンドウ”だったんだ。俺にとっては信じられないくらい素晴らしかったし、やりやすくもあった。というのも、俺たちはもっとポップでトラディショナルな形で音楽を見せるやり方から来たからさ。
 でも、この楽器たちと一緒に、遊ぶように演奏するっていう、そういうやり方で“同じことを繰り返さないように”してきた。それってちょっとジャズ的な考え方かもしれない。演奏の仕方っていうより、考え方としてね。バンドの連中はちゃんとジャズも演奏できるし、控えめだけどね」

映像には、衣装にも、歌詞(字幕付きで配信された)にも、そして自然体のふるまいにも、彼らの“はみ出し者”らしさもにじみ出ていた。

左:パコ・アモロソ、右:カトリエル

南アメリカの現在の音楽シーンにおいて最も画期的なデュオであるアルゼンチン出身のアーティスト=カトリエル&パコ・アモロソ。昨年、NPRのタイニー・デスク・シリーズに登場し、YouTubeの世界トップ10トレンドリストに入り、最初の10日間で500万回再生され、現在は1250万回再生を突破するなど、今最も注目の集まっているホットなアーティスト。電子音楽、ヒップホップ、トラップなどジャンルの垣根を超えた実験的なサウンドと、エネルギー溢れるパフォーマンスが特徴。今年3月にミニ・アルバム『パポタ』をリリース(《Fujirock》のプロフィールより)。



2025年に入り、『Baño María』を携えたワールドツアーがスタート、中南米・北米・ヨーロッパなど11か国、30以上の会場で演奏した。ステージの模様がYouTubeで全世界に配信される世界最大級の音楽フェス《Coachella》には、4月11日と18日に出演し、この公演でも世界に彼らの名前を轟かせた。このフェスは、世界的トレンドの発信源でもある。

《Coachella》での体験について「観客はかなり手強いって聞いてたし、みんなただ突っ立ってるだけだって言われてたんだけど、実際にはすごく愛をくれたよ」と、カトリエルは振り返っている。「お客さんが曲を一緒に歌ってくれてさ、正直すごくクレイジーだった。まさか自分がこんな場所で演奏する日が来るなんて思ってもみなかったよ」とPaco。

7月には《Fujirock》フェス出演のための初来日した。《Fujirock》の後は、《Lollapalooza Chicago》(シカゴ、グランドパーク)、《Outside Lands》(サンフランシスコ)などアメリカ主要フェスへの出演が再び控えている。

また、ケンドリック・ラマーのワールドツアー「Grand National Tour」のラテンアメリカ諸国での5公演に、カトパコは、オープニングアクトとして出演する。2025年末にはヨーロッパを廻る「PAPOTA Tour Europe」が発表されている。

今年9月のブラジル公演の告知





最後に、現在のところの最新音源EP「PAPOTA」について、紹介したい(ちなみに「PAPOTA(パポタ)」という言葉はアルゼンチンでは「プロテイン」や「栄養補助食品」を意味するスラングのこと)。自分たちのブレイクを〝ドーピングしたかのように急激な成長〟として皮肉を込めたネーミングだ。

収録曲全9曲のうち、4曲が新曲で、後半の5曲は《Tiny Desk Concert》のライヴ音源だ。先の《Tiny Desk》の動画でのコメントにも、音源としてリリースして欲しいという要望は多く、後半の音源も嬉しいリリースだった。

新曲の4曲は、
①「Impostor」:ジャズ的音響による、成功後の自意識と自己不信の感情を描いた導入曲
②「#TETAS」:SNS文化/マーケティング戦略を揶揄。2000年代風R&B・ポップ調で展開
③「Re Forro」:自己価値とアイデンティティをシニカルに肯定
④「El Día del Amigo」:友情を祝福するグルーヴ感あふれるナンバー

と強力な曲が揃っているが、EPのリリースと同時に、この4曲を扱った16分のショートフィルムもリリースされた。

《Tiny Desk》での成功後の人生や業界のプレッシャーを皮肉たっぷりに描いた内容。突如として成功を掴んだことによる緊張感や戸惑いを、直接的かつ皮肉たっぷりに描いた自己批評・業界批評な内容になっている。独特のユーモアで注目を集めた上に、作品としても高く評価されている。



アルゼンチン、ブエノスアイレスで同じ地区で育ち、小学校で出会い、兄弟のような絆で結ばれたカトリエルとパコ・アモロソ。世界に発見された彼ら2人の音楽のケミストリーは、長年の音楽的探求の賜物だ。互いに対する創造的なライバル心は、彼らを前進させると同時に支え合う力にもなってきた。ロックバンドから始まり、アルゼンチンのトラップ・シーン/ヒップホップ・シーンで注目され、Tiny Desk での成功以降の生楽器志向への変化は、好奇心と必要性、そして創造の自由を求めた結果だった。彼らはいつもユーモアをたっぷりと込めつつも、本物であることで際立ってきた。型破りを恐れない新たな音楽世代の旗手として、ジェットコースターのような日々の中で、その存在感を益々強めるカトリエルとパコ・アモロソの物語は、今日も観客を魅了し続ける。(文/花田勝暁)



   

Text By Katsuaki Hanada


Ca7riel & Paco Amoroso

『Papota』

LABEL : Sony Music
RELEASE DATE : 2025.07.16
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