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Haim: Something To Tell You

2017 / Polydor / Universal Music Japan
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ハイムの2作目は3姉妹とインディ・ポップ・コミュニティの成長を物語る、切なくて力強いポップ・アルバム

06 July 2017 | By Yuta Sakauchi

 アルバム全体を聴いた後だと、4月に公開された「Right Now」の映像を、ポール・トーマス・アンダーソンが監督していた理由がよく分かる。要するに“家族”ということだ。別れた相手について、あれこれ悩む時にも、隣にはお姉ちゃんや妹がいる。その心強さ、信頼感がハイムの音楽の根底にある。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』や『ザ・マスター』で、家族の困難について描いてきたPTAが、ハイムの映像を撮るというのは、逆説的な意味で、ものすごく必然的なことだったのだろう。

 『あなたに伝えたいこと』。つまり、別れた相手に伝えたいことが詰まったアルバムだ。ストレートで乾いた、この名前のセンスが彼女たちらしさを象徴している。R&Bやソフト・ロックといった、彼女たちの人生を彩ってきたサウンドのテイストは残しつつ、4年前のデビュー・アルバム『デイズ・アー・ゴーン』と比べると、より生演奏的なダイナミズムは押さえられ、緻密に組み立てられた大人びたポップス・アルバムに仕上がっている。作品全体は、前作やスカイ・フェレイラを手掛けたアリエル・レヒトシェイドがプロデュース。さらに、元ヴァンパイア・ウィークエンドのロスタムや、ブラッド・オレンジのデヴ・ハインズ、ツイン・シャドウのジョージ・ルイス・ジュニアも作曲で参加、人脈的には、カーリー・レイ・ジェプセンやソランジュとも重なる。かつて《Pitchfork》が「A Small Pop」と指摘した、インディとメインストリームの間隙で、少し風変わりなポップスを紡ぐミュージシャン達のコミュニティは、彼女達の成長や人生に寄り添いながら今も強固に保たれている。ハイムはそのスペースを活かして、痛みを耐え凌ぎ、明日へ歩を進めるための一枚を作ったのだ。(坂内優太)

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