Review

Mark Fosson: Solo Guitar

2017 / Drag City
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ジム・オルーク、カブサッキ、山本精一らとも共振しそうな 不遇なベテランの情緒豊かかつミニマルなギター・プレイ

01 August 2017 | By Shino Okamura

これは驚きのリリースだ。70年代にジョン・フェイヒィにデモを送ったことをきっかけにして米《TAKOMA》から作品を発表していたアコースティック・ギター奏者が、ジム・オルークやジョアンナ・ニューサムらの作品を発表するシカゴの人気レーベル《Drag City》から新作を発表した。近年はマイ・ペースに活動しているが、《Drag City》からは《TAKOMA》に残されていた未発表音源によるアルバム『The Lost Takoma Sessions』(2006年)以来となるリリースで、新録作品はこれが初。とはいえ、劇的に内容が変わるわけでもなく、アルバム・タイトルにもあるように、一人で12弦と6弦のアースティック・ギターを使って、巧みなフィンガー・ピッキングを聴かせるスタイルで、歌も含めて他になにもない。

なのにどうだろう、舌を巻くほどに達者であり、うっとりするほど色気があり、弦の振動や軋む音で饒舌に感情を伝えてくる。しかも、繰り返し聴けば聴くほどに、レオ・コッケ、ロビー・バショー、ボラ・セチといった同タイプのソロ・ギタリストよりも、ドローンやフリー・ジャズとの共振も見せる英国の若き世代を代表するギタリスト、ジェームス・ブラックショウや、それこそジム・オルーク、あるいは山本精一やアルゼンチンのフェルナンド・カブサッキのような、ミニマルなスタイルをも武器とするコンポーザー、プレイヤーとしてのアイデンティティが浮き彫りになる。全く今までとは異なるプロダクション、スタッフィングで制作をしてみたら、これまでの不遇なミュージシャン人生にはない新たなステージが訪れるかもしれない。(岡村詩野)

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◾️Drag City HP内 アーティスト情報
http://www.dragcity.com/products/solo-guitar

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