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Sasami: Sasami

2019 / Domino / Hostess
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韓国にルーツをもつソロ・ミュージシャンが、心の底から鳴らす「あなた」への歌

25 March 2019 | By Yasuyuki Ono

ロサンゼルスのインディー・ロック・バンド、チェリー・グレイザーでシンセサイザー/ギターを担当し(現在は離脱)、ワイルド・ナッシング、ヴェイガボン、ハンド・ハビッツらの作品へ参加してきた、ササミ・アッシュワースのソロ第一作。

冷たく響き渡るドリーミーなエレクトロ・サウンドと、轟音で空間を充溢するシューゲイジング・ギターが本作の主軸。淡々としつつも勘所をきちんと抑えたボーカル・スタイルは、同世代であるビッグ・シーフのエイドリアン・レンカーと似た趣も感じさせる。加え、サイケデリックに多層化し歪むボーカル構築、ドラム・マシンの導入によってポスト・パンク的色彩も与えられており、サウンドに対する実験精神を感じるアルバムともなっている。

ミツキ、ジャパニーズ・ブレックファスト、ジェイ・ソムなど東/東南アジア圏にルーツをもつ女性シンガーソングライターの躍進が近年のインディーの一潮流であることに議論の余地はないだろう。韓国で生まれ、アメリカへとやってきたササミの本作もその流れの中に位置づくといえそうだ(ササミのインスタグラムを見るとミツキと交友関係が伺える)。ササミは本作で、何処までも自分自身の頭から離れることのない他者について悩み(「ジェラシー」)、目の前に二度と現れないかもしれない愛する人を待ち続けてしまう哀しみ(「ノット・ザ・タイム」)を描く。その姿は、『ビー・ザ・カウボーイ』で「愛を注げる/注いでくれる他者」を真摯に描ききったミツキの姿に重なって見える。

決してすべての人にこの音楽が届く必要はない。出会い、必要だと思ってくれた人にさえこの音楽がしっかりと届けばいい。そうササミ自身が語ったように、内省的で、トーンの落ち着いたこのアルバムは、私たちがこの音楽に耽溺し、再び世界へと帰還していく姿を静かに見守り、そっと背中を押してくれる。(尾野泰幸)

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