Review

Robert Hood: Paradygm Shift

2017 / Dekmantel
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いたずらに原点に固執ないロバート・フッドの今の姿

30 June 2017 | By Tetsuya Sakamoto

 2007年にアムステルダムでパーティとしてスタートし、今やレーベルやフェスティヴァルも手がける《Dekmantel》。今はフェルティヴァルとしてその名がよく知られているが、レーベルとして、ヴァクラやファティマ・ヤマハの作品をリリースしていることも見逃せない。そんなレーベルの特徴は形に囚われないということ。ディスコ、ハウス、テクノを根底に据えながらも、ダンスフロアでの機能性に拘ることなく、ノイズやアンビエントなどの実験音楽に接続していく奔放さがその強みだ。
 そんな《Dekmantel》から新作『Paradygm Shift』を出すのが、ミニマル・テクノの先駆者でもあるロバート・フッドだ。彼がフリー・フォームな《Dekmantel》からリリースするのは意外なようにも思われるかもしれない。だが、その自由奔放な姿勢に惹かれたのは、俺はただのミニマル・テクノだけの男ではないということを表明したかったからではないか。もちろん、彼のディスコ/ハウス・サイドのプロジェクト、フロアプラン名義で昨年リリースした『Victorious』もその表れだが、ロバート・フッドという名でそれをやることが重要だったように思える。そんな彼の新作は、リズムの中に別のリズムが存在するかのような自由なリズム構造を持つ硬質なビートの上で、メロディックだがどこか冷ややかな質感を持つシンセのリフが躍動するトラックで占められ、我々は間違いなくダンスフロアへ誘われるだろう。確かにそこからは彼の原点であるデトロイト・テクノへの回帰も見え隠れする。だが、今作には原点を意識しつつも、そこに固執しない彼の姿勢があり、それが自由度の高いミニマル・トラックとなって表れているのだ。

■ロバート・フッド FACEBOOKページ
https://www.facebook.com/RobertHoodFloorplan/

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