Review

bonnounomukuro: My Pretty Pad

2019 / φonon
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ぶっきらぼうで懐の深い脱力エクスペリメンタル

18 April 2019 | By Shinpei Horita

2018年にEP-4佐藤薫主宰レーベル《φonon》(フォノン)が発表したオムニバス・アルバム『Allopoietic factor』は、選曲を担った家口成樹の手によって先鋭的な電子音楽/実験音楽の音楽家達が集い、日本各地の地下で育まれる“異種たち”の活動報告書の様相を呈していた。本作『My Pretty Pad』は、その『Allopoietic factor』にも参加していた神戸のトラックメイカー、bonnounomukuroによる2019年レーベル第一弾リリースの一つ。2007年から同名義での活動を開始したbonnounomukuroは、虹釜太郎との共同レーベル《ICE RICE》からの『TAPE DAYS』や、大阪の《birdFriend》からリリースした『MINDOWS』をはじめとして現在にいたるまで、主にカセットやCD-Rで数多くの作品を残しているが、2014年~2018年の間に制作された楽曲の中から選曲された13曲が収録された本作は、神戸、大阪、京都など関西を中心にライブも精力的にこなすbonnounomukuroの現在進行形がきっちりパッケージされており入門編的作品としても今後重宝される一枚になるだろう。

アルバムタイトルの『My Pretty Pad』とは、おそらく彼がメインの機材として使用しているMPC2000のことを指している。MPC2000特有の太くざらついた音や、『Frozen Chu Hi Block』で使用されるRPGゲームのサウンドトラックや、ヴォーカル入りのトラックなどのサンプリングが、スクリューされコラージュ的に素材が切り貼りされるエクスペリメンタルな電子音楽である本作の中に奇妙な脱力感を生み出している。MPC2000は90年代に発売されたサンプラーだが、現在でもヒップホップのトラックメイカーを中心に支持され名機として知られている。またゲーム音楽やポップスからのサンプリングも決して珍しいものではない。しかし彼の作品からは、機材や素材へのこだわりよりはどちらかというと身近なものに手を伸ばしたらこうなったというような飾り気のなさが感じられる。そして古い型で利便性も決して高くはないが、ライブでも制作でも使い倒している“My Pretty Pad”で作られたこの作品には彼のぶっきらぼうな愛着が漂っているようで、何度も聴きなおしたくなる不思議な魅力が詰まっている。

クラブ・ミュージックと実験を行き来するような音楽はここ10年ほどのアンダーグラウンドなシーンにおいて大きな潮流のひとつである。挙げればきりがないが、日本国内で言えばbonnounomukuroも含めた前述の『Allopoietic factor』に参加していた音楽家や、bonnounomukuroとも共演する機会が多いYPYや食品まつり a.k.a foodmanなど毎夜クラブやライブハウスで新しい音を産み出している。近年では例えば幡ヶ谷の《Forestlimit》や京都の《外》、 大阪の《environment 0g》といった場の存在がこうした動きを加速させているように思われる。《φonon》というレーベルはリリースというアウトプットを通して、こういった地下の蠢きを伝えてくれている。4月30日と5月2日には『DOMMUNE』も巻き込んでレーベル初のショーケースイベント《φonon 2days 2eras》( http://www.slogan.co.jp/skatingpears/ )が開催される。bonnounomukuroは勿論、これまでにレーベルから作品をリリースしたノイズ、テクノ、実験音楽、即興の境界を彷徨う多彩な顔ぶれが集う。是非目撃してほしい。(堀田慎平)

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■φonon レーベル Official Site
http://www.slogan.co.jp/skatingpears/

■φonon レーベル試聴リンク
https://audiomack.com/artist/onon-1

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