ハンドメイドな危うさがヒューマンな“隙”を引き出す トラックメイカー&ドラマーによる日本人二人組のフル・アルバム
例えば4曲目の「バスストップ」。これにつなげるなら、コーネリアス~ミレニウム~フェネス~スティーリー・ダン~ジェフ・パーカー~ディアンジェロ……という流れだろうか。ジャズはもとよりAORやエレクトロニカをブラック・ミュージックとして解釈することを当たり前の前提とし、でも、それをイージー・リスニングとして聞き流される可能性だってあることを視野に入れた包容力ある音楽。1音1音が柔らかでバウンシーだということ、さらに野性と理性とが無意識のバランスの上で成立しているというところも共通しているところかもしれない。そういえば、レイ・ハラカミも自分の作品の置き場について、生前、そういう話してくれたことがある。今、このアルバムを聴きながらふと思い出した。
polptomはisagenという名前で活動しているトラックメイカーの提坂智之と、ドラマーの武田啓希によるデュオ・ユニット。互いに京都の大学生だった頃に出会い活動を開始(現在はそれぞれ離れて暮らしている)した二人にとって、制作物としては本作が2作目、フル・アルバムとしては初になる(初作『P』は4曲入り)。提坂がもともとスキルあるベーシストでもあり(有村崚によるin the blue shirtのバンド編成時のベースを担当)、生演奏で聴かせる醍醐味をよくわかっているということもあるのだろうが、どの曲にも偶発的な“隙”があるのが魅力。例えばミル・プラトー周辺のクリストフ・シャルルを少々思わせる「傀儡のタイル」のように、点と点が飛び交いながら滑らかな線を描く細やかな作法の曲であっても、アコギの音がデモ音源風情の「眠れない夜には」のようにラフな質感の曲であっても、ハンドメイドな危うさが“隙”を引き出している。そしてその“隙”に、さしずめ人間力のような愛嬌が宿っているところなど、ちょっと坂本慎太郎を思い出したりするのだ。(岡村詩野)
【INTERVIEW】「めっちゃ頑張って歌ってるけど何も言ってへんみたいなのがヤバい」 関西きってのトラックメイカー、in the blue shirtはなぜ人間成分を失わずに意味を消失させようとするのか
http://turntokyo.com/features/interviews-in-the-blue-shirt/
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