Review

Ezra Collective: Dance, No Ones Watching

2024 / Partisan / Big Nothing
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周りは気にせず、自由に生きていい

24 November 2024 | By Rumi Miyamoto

現行UKジャズを牽引するエズラ・コレクティヴが9月27日に《Partisan》よりリリースした2年ぶりのサード・アルバム。メンバー全員が音楽教育機関《Tomorrow’s Warriors》出身の実力派な彼ら。2023年には前作のセカンド・アルバム『Where I’m Meant To Be』でジャズ・アーティストとして31年の歴史上、初めてマーキュリー・ミュージック・プライズを受賞し絶賛された。そんな輝かしい彼らがリリースした今作もエズラらしさ全開。ジャズ、アフロビート、ソウル、ダンス・ミュージックなどのジャンルが溶け合った約1時間、たっぷり全19曲収録のファン待望の1枚だ。

コロナ渦を乗り越え、昨年の来日公演も大盛況。これまで数々のライヴでポジティヴな音楽を体現し届け、たくさんの人々を踊らせてきた彼ら。マーキュリー・ミュージック・プライズを受賞後の2023年に、バンドが世界中をツアーしながら制作された今作は、彼らが出会ったダンスフロアと人生を記録しているという。「ダンスは人生」「音楽は喜び」と公言してきたように、エズラにとってキーとなる“Dance”をテーマにしたコンセプト。直訳で“踊れ、誰も見てない”というタイトルは、たくさんのダンスフロアや音楽を通して体感してきた彼らから、現代を生きる人へ向けた“周りの目を気にせず、自由に生きていい”というポジティヴなメッセージも込められている。

日本人は日常の中でダンサーでもない限り気軽に踊ることは少ない。私たちが自制心から解放される数少ないシーンの一つには音楽がある。今作もアルバムを通して伝えるメッセージがなんとも粋で、1曲1曲サウンドのテイストは違うがそのメッセージをぎゅっと詰め込んだような、彼ららしい“ダンス・ミュージック”がDJかのようにシームレスに展開される。

サンプリングを用いたゆったりとした「Intro」から始まり、エズラらしいアフロビートの「The Herald」、ホーン隊のユニゾンや個人の活動も目覚ましく現在来日中のジョー・アーモン・ジョーンズ(Key)の鍵盤が美しい「Palm Wine」と続く。

中でも今作は豪華なフィーチャリングがポイントで、新世代UKジャズ/ソウルシーンで注目を集めているシンガー・ソングライターのヤズミン・レイシーとコラボした「God Gave Me Feet For Dancing」は今作のハイライトのひとつ。打って変わってアップチューンな「Ajala」から「The Traveller」「in the dance.(Act 2)」そして「N29」。今作はストリングスの効いたナレーションのようなインタールードが本当に秀逸で、アルバム全体を通してしっくりと完璧な流れを作っている。まるでDJかオーケストラを聴いているかのような感覚に陥る。1曲ごとでも最高だが、アルバムをまるっと是非聴いてみてもらいたい。

そこからもうひとりのネオソウル・シンガーのオリヴィア・ディーンを迎えたコラボ曲「No One’s Watching Me」から「our element.(Act 3)」。終盤の「Why I Smile」「Have Patience」の流れなんてジョーの心に染み渡るソロが泣かせにくる。紆余曲折、様々なダンスフロアや人生が想像できる流れで、最後にユニゾンに温かみと情熱を感じる「Everybody」。底から湧きでる彼らの音楽魂はきっと聴くものに伝わるだろう。(Rumi Miyamoto)

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