Review

Kevin Morby: City Music

2017 / Dead Oceans / Hostess
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《白昼夢》なんて言葉を思い出すポップスの魔法に包まれた都市の音楽

07 July 2017 | By Shino Okamura

 今作もまたどうしようもないほどチャーミングなアルバムだ。放っておくとどんどん語尾が下がり気味になってしまう気怠さ満点のヴォーカルからは、例によってヴェルヴェット時代のルー・リード、モダン・ラヴァーズ期のジョナサン・リッチマン、ソフト・ボーイズの頃のロビン・ヒッチコック…もちろんシド・バレットやアレックス・チルトンだって浮かんでくる。

 だが、例えば同じように緩い自然体の歌を伝えるマック・デマルコが、確信犯的にプロフェット5を導入したり、ソウル、ファンクとの合流を目指すような意識的な試みがこの人の作品には本当にない。ソロとなって4作目となるこの本作でも、彼の歌がシャキッとすることはないし、今時のサウンド・プロダクションに依ることもなければ、あからさまなブラック・ミュージック指向をハッキリ外に見せることもない。けれど、彼が現在参加しているザ・ベイビーズのメンバーも参加、ツアー先での体験などを元にした曲をカリフォルニアの自宅で録音したという内容は、今ここに楽器があるからとりあえず鳴らしている、ここにマイクがあるからとりあえず歌っている、という偶然がポップス生成に欠かせない魔法であることを伝えてくれる。そんな本作のタイトルに“都市の音楽”と名付けてしまう粋なことといったら! 

 共同プロデューサーがフォクシジェンやテニス、ダミアン・ジュラードなどとの作業で知られるシンガー・ソングライターのリチャード・スウィフト、というのもパーフェクト。ヴェルヴェットとフィル・スペクターが出会ったような「Pearly Gates」のような曲を聴くと、普段は忘れてしまっている、白昼夢、なんて言葉を思い出してしまうのだ。(岡村詩野)

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