Review

The Cribs: 24-7 Rock Star Shit

2017 / Sonic Blew / Hostess
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より勢いを増して帰ってきた、躍動的で荒削りな「ザ・クリブス節」

05 September 2017 | By Hiroko Aizawa

新しさ、実験性など皆無。5日でレコーディングが終わったというのも納得の、勢いに満ちた作品である。スティーヴ・アルビニがクリブスをプロデュースということで、オルタナ/ジャンク・テイストの荒削りなサウンドになると想像していたが、想像通りの…いやそれ以上の仕上がり。特に音の生々しさという点においては、期待以上だった。とにかく無駄な加工やアレンジは一切なし。ポップネスとは対極にあるようにも思える、解釈の余地のないストレートな音の数々が散りばめられた作品である。

2015年に発表した前作『フォー・オール・マイ・シスターズ』に続き、「ああ、やっぱりクリブスはこうでなくちゃね」と思わずガッツポーズしたくなる内容だ。キャリアを通して変わらずポップネスを持っているバンドではあった。しかし、ジョニー・マーの加入あたりから、変にひねったアレンジなどが余計というか蛇足というか、チグハグな音というか、もっとシンプルにやった方が良いのでは?と懐疑派だったので、純粋に掻き鳴らされるギターと下手クソな双子ボーカルの熱唱を再び聴けたことに嬉しさでいっぱいだ。案の定、1曲目「Give Good Time」はあまりにも単純なギターとドラムで始まるが、そのひねりのなさが実に彼ららしい。後に続くポップでキャッチーなメロディに以前より重さが増したジャギーなギターが乗る曲の数々。「これがクリブスだよな」という安心感と高揚感に包まれ、その気持ちがアルバムの最後まで続いた。

5年前にもアルビニと数曲制作し、ポップ・アルバムとパンク・ロック・アルバムの2枚を発表すると宣言していた彼ら。結局、途中からポップ・アルバムである前作の制作に注力したため、パンク・ロック・アルバムはお蔵入りになると思いきや、ファンにとっては満を辞してリリースされた…といういきさつもある。前作は、彼らのポップネス・センスを見せつけるような内容だった。しかし、それに続く作品として、ポップネスだけに留まらない躍動感に満ちていて、タイトルの通り彼らは24時間週7日、荒く衝動的な音を掻き鳴らしていたいという感情を爆発させている。ギター・ロック・バンドは、こうでなくちゃ。(相澤宏子)

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