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《Warp》30周年〜LFOからDJ Mujavaまで…オルタナティヴ・ダンス・レーベルとしてのエッジーで凛とした軌跡

30 September 2019 | By Tetsuya Sakamoto

はじまりはダンス・ミュージックだった。1989年にイギリスの工業都市シェフィールドでスティーヴ・ベケット、ロブ・ミッチェル、ロバート・ゴードンによって設立された《Warp》は、ダンスを根本原理としないテクノ/エレクトロニック・ミュージックを模索し、1992年からの『Artificial Intelligence』シリーズでベッドルーム・ミュージック、あるいはリスニング・ミュージックとしてのテクノを提唱することでテクノに新たな潮流をもたらした。それはエイフェックス・ツインやブラック・ドッグ、オウテカといった才能を世に送り出したという点でも、重要な役割を果たしたといえるだろう。だが、そのはじまりは、まだ当時10代だったマーク・ベルとジェズ・ヴァーレイによるLFO(=トップ写真はLFOのマーク・ベル)や、キャバレー・ヴォルテールのリチャード・カークとシェフィールドのDJ/プロデューサーのリチャード・バラットによるスウィート・イクソシストなどが鳴らしたブリープ・テクノだった。デトロイト・テクノとシカゴ・ハウスの影響を背景に、重低音のシンセ・ベースとフィルター全開のシンセサイザーの信号音が交錯するこのサウンドは、レイヴ・カルチャーがピークを越える中で、ハードコア・テクノやブレイクビーツ、ジャングルなどと相互に影響を及ぼしながら、ダンス・ミュージックのムーヴメントを作ったのだ。このブリープ・テクノはイギリスだけに留まらず、デトロイト対岸のカナダ・オンタリオ州で育った若き日のリッチー・ホゥティンが始めたレーベル《Plus8》の設立に影響を与えている(1993年にリッチーはF.U.S.E.名義でLFOとの共作トラック「Loop」をリリースしている)。本国だけでなく、海を越えて影響を与えたこのブリープ・サウンドによるダンス・トラックのリリースがなければ、『Artificial Intelligence』シリーズがより広範に渡って受け入れられることはなかっただろうし、さらにいえばワープというレーベルが30年という長きに渡って既存のエレクトロニック・ミュージックを揺さぶり続けることはなかったかもしれない。

その後『Artificial Intelligence』シリーズが成功を収め、ベッドルーム・テクノの可能性を追求しつつも、さらにバトルスやチック・チック・チックなどバンド・サウンド的な側面の強いアーティスト、プレフューズ73やアンチ・ポップ・コンソーティアムなどのヒップホップ勢をリクルートすることでレーベルの音楽性の拡張を図った《Warp》。2000年代中盤にこのように音楽性を広げながら数多のリリースを続け、さらにエレクトロニック・ミュージックに新たな風を吹き込むような作品をリリースしていることは驚嘆に値する。かといって、決してレーベルの礎であるダンス・ミュージックを捨てたわけではない。バトルスの『Mirrored』がリリースされた2007年、その影でイギリスのハード・ミニマルの重鎮、SurgeonのミックスCD『This Is For Your Shits』が限定1000枚でひっそりとリリースされている。当時のマーケットではそこまで売り上げが見込めないゆえの限定リリースだったのだろうが、自身のBritish Murder Boysの曲を中心に、ルーツであるスロッビング・グリッスルやホワイトハウスなどのインダストリアル/ノイズ、初期のオウテカやエイフェックスの音源を交えながら、彼の本性を曝け出すようなサディスティックなハード・ミニマルが展開されるこのミックスのリリースは、ワープがオルタナティヴなダンス・レーベルとして健在していることを示すには十分だったといえるだろう。

DJ Mujava

そして、フライング・ロータスの『Los Angeles』のリリースが注目されていた2008年に、南アフリカはプレトリアのビート・クリエイター、DJ Mujavaのシングル「Township Funk」をリリースしたことを忘れてはならないだろう。トラックの構成は極めてシンプルながらも、ダンスホールやバイリファンキなどとは違うビートの跳ね方が特徴であり、昨今盛り上がりをみせるGqom(ゴム)にも通づるこのクワイトと呼ばれるダンス・トラックのリリースは、《Warp》のダンス・ミュージックに対する不気味なまでに鋭い先見性を示すものだ。そののちの2015年には、こちらも南アフリカのフォーク・ミュージックの伝統をエレクトロニクスを通じて再現するシャンガーン・エレクトロの先駆者、Nozinjaの『Nozinja Lodge』や、ポルトガルはリスボンのクドゥーロ、バティーダ、アフロ・ハウス、タハシンニャなど多様なサウンドを内包したダンス・ミュージックを展開するレーベル《Príncipe》のコンピレーション・シリーズ『Cargaa』をリリース。2018年にはその《Príncipe》の首謀者DJ Nigga Foxの『Cranio』をリリースするなどその勢いは止まることがない。

昨今《Warp》からはワンオートリックス・ポイント・ネヴァーやロレンツォ・セニ 、イヴ・トゥモア、ガイカなど、先鋭的な電子音楽作品が発表されており、ますますエレクトロニック・ミュージック・レーベルとしての重要性が高まっているといえるだろう。だが、決して《Warp》は、自身がダンス・ミュージックのレーベルでもあるということを忘れたことは今まで一度たりともないのだ。この30周年を機に、エイフェックスやオウテカ、スクエアプッシャーなど、レーベルの礎を構築してきたアーティストの諸作品を振り返るのももちろんありだろう。だが、改めてダンス・ミュージックのレーベルとしてのワープを振り返ったときに、そのオルタナティヴで凛とした佇まいもまた《Warp》のレーベル・カラーであることに気づかされるはずだ。(坂本哲哉)

■Warp Records Official Site
https://warp.net/

■ビートインク内 Warp30周年特設サイト『WXAXRXP』
https://www.beatink.com/user_data/wxaxrxp.php

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Text By Tetsuya Sakamoto


WXAXRXP DJS(ワープサーティーディージェイズ)


出演:
SQUAREPUSHER (DJ Set), ONEOHTRIX POINT NEVER (DJ Set), BIBIO (DJ Set) and more

東京公演
2019/11/01(金)
O-EAST / DUO

京都公演
2019/11/02(土)
CLUB METRO

大阪公演
2019/11/03(日)
SUNHALL

OPEN/START 23:30
ADV ¥5,500(※20歳未満入場不可。入場時にIDチェック有り。写真付き身分証をご持参ください)
https://www.beatink.com/user_data/wxaxrxp.php

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