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《Warp》30周年〜ヴィンセント・ギャロ、グリズリー・ベアからビビオまで…エレクトロと歌ものの進化による洗練されたカタチ

 
17 October 2019 | By Yasuo Murao

ブリープ・テクノ、IDM、エレクトロニカなど、《Warp》は時代の音に敏感に反応して、個性的なアーティストを輩出してきた。そんななかで、シンガー・ソングライターやバンドなど、歌を聴かせるアーティストに興味を持つようになったのも変化し続けるワープらしい選択だ。そういった「歌もの」をリリースする際も、《Warp》は時代の空気を意識しながら独自の路線を貫いてきた。

《Warp》の初期の歌ものを振り返った時、大きな注目を集めたのが2001年にリリースされたヴィンセント・ギャロ『When』だ。当時、映画『バッファロー’66』のヒットでギャロは役者として注目を集めていたが、彼は無名だった70年代後半に、画家のジャン=ミッシェル・バスキアとバンドを組んで活動していた。NYポスト・パンク・シーンの真っ只中にいて、音楽、アート、俳優など多才な才能を発揮してきたギャロが繊細な歌声を聴かせる本作は、ワープの作品のなかで異彩を放っていた。

そして、2003年にはステレオラブのレーベル《Duophonic》からデビューした男女デュオ、ブロードキャストがファースト・アルバム『The Noise Made By People』をリリース。ヴィンテージ・シンセを使ったサイケデリックなサウンドと浮遊感のある女性ヴォーカルは、初期ステレオラブを思わせた。また、2004年にはプレフューズ73のスコット・ヘレンのサイド・ユニット、サヴァス&サヴァラスがセカンド・アルバム『Apropa’t』をリリース。ジャジーなエレクトロニカだった前作『Folk Songs For Trains, Trees And Honey』(00年)から一転して、生楽器を中心に全曲に女性ヴォーカルをフィーチャー。異国情緒溢れるメロディーを聴かせる歌ものになった。

そんな風に少しずつ歌ものがラインナップに加わっていくなか、《Warp》が初めて契約したロック・バンドとして鳴り物入りで登場したのがマキシモ・パークだ。彼らがファースト・アルバム『A Certain Trigger』をリリースしたのは2005年のこと。当時はイギリスでポスト・パンク・サウンドがリヴァイヴァルしていて、その影響を感じさせるバンドは「ポエット・パンク」と呼ばれていたが、マキシモ・パークはポエット・パンクを代表するバンドとしてブレイク。『A Certain Trigger』は全英15位、セカンド『Our Earthly Pleasures』(07年)は全英2位のヒットとなった。

マキシモ・パーク『A Certain Trigger』と同じ年、ブリストル出身のシンガー・ソングライター、ニック・タルボットのソロ・プロジェクト、グレイヴンハーストが《Warp》から新作『Fires In Distant Buildings』をリリース。ニック・ドレイクを引き合いに出されるタルボットのフォーキーで内省的な歌を、エレクトロニックなバンド・サウンドで包み込んで重厚でゴシックな世界を生み出していた。そして翌年には、NYブルックリンのバンド、グリズリー・ベアが《Warp》と契約して新作『Yellow House』(2006年)をリリースする。当時、ブルックリンはアニマル・コレクティヴやダーティー・プロジェクターズなど個性的なバンドが次々と登場。そんななか、グリズリー・ベアの注目度は高かった。ルーツ・ミュージックを実験的なサウンドで現代的に再構築したグリズリーベアの音楽性は、グレイヴンハースト以上に革新的だった。そして、彼らが登場したあたりから《Warp》に歌ものが定着していった。

2005年には、《Warp》きってのブルーアイド・ソウル・シンガー、ジェイミー・リデルが『Multiply』をリリースする。テクノ・ユニット、スーパー・コライダーとしてキャリアをスタートしながら、シンガーとして歌うことに目覚めたリデル。60年代ソウル・ミュージックにエレクトロニックな要素も織り交ぜながら、こぶしの入った歌い回しは本格的だ。また、2010年にはマンチェスターを拠点に活動するジュリー・キャンベルによるソロ・プロジェクト、ローンレディが『Nerve Up』でデビューする。ポスト・パンクに影響を受けたアート色が強くパンキッシュなサウンドは、ワープにぴったりだった。

《Warp》は先鋭的なエレクトロニック・ミュージックを紹介してきたが、歌ものにおいてもメロディやポップ・センスを際立たせる実験的なアプローチやサウンドを重視してきた。その前衛志向や一貫した美意識はポスト・パンクやニュー・ウェイヴ期に登場したインディー・レーベルに通じるものを感じさせるが、なかでもエレクトロニックなサウンドをベースにして、ノイズからロックまで幅広く紹介したイギリスの老舗インディ・レーベル、ミュートを思わせるところもある。

最近の《Warp》の歌もので注目すべき作品といえば、スティーブン・ウィルキンソンによるソロ・ユニット、ビビオの『Ribbons』だろう。ビビオはフォークトロニカのユニットとしてスタートしたが、作品を出すごとにヴォーカル曲の比重が増え、今では《Warp》の歌ものを代表する存在になった。最新作『Ribbons』では彼が影響を受けた60年代の英米フォーク・ミュージックに改めて向き合い、ビビオの牧歌的で同時に未来的な歌の魅力が詰まったアルバムだ。また現在、《Warp》は《Duophonic》と共同制作で、ステレオラブの旧作をデラックス・エディションで再発するプロジェクトを進行中。バンドの代表作『Emperor Tomato Ketchup』がリリースされたばかりだ。アヴァンギャルドな音楽性と多彩なポップ・センスを持ち合わせたステレオラブは、《Warp》が歌ものを開拓していくうえでひとつの指針になったのかもしれない。ボン・イヴェールをはじめ、エレクトロニック・ミュージックと歌ものとの関係が日々進化している現在、これからも《Warp》が奏でる歌から目が離せない。(村尾泰郎)


Photo by Tom Hines(Grizzly Bear)

■Warp Records Official Site
https://warp.net/

■ビートインク内 Warp30周年特設サイト『WXAXRXP』
https://www.beatink.com/user_data/wxaxrxp.php

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Text By Yasuo Murao


WXAXRXP DJS(ワープサーティーディージェイズ)


出演:
SQUAREPUSHER (DJ Set), ONEOHTRIX POINT NEVER (DJ Set), BIBIO (DJ Set) and more

東京公演
2019/11/01(金)
O-EAST / DUO

京都公演
2019/11/02(土)
CLUB METRO

大阪公演
2019/11/03(日)
SUNHALL

OPEN/START 23:30
ADV ¥5,500(※20歳未満入場不可。入場時にIDチェック有り。写真付き身分証をご持参ください)
https://www.beatink.com/user_data/wxaxrxp.php

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