Back

83歳、奇跡の初来日!
トン・ゼーが語る日本

26 October 2019 | By Shino Okamura

トン・ゼーがやってくる。これにはさすがに多くの人がひっくり返ったことだろう。83歳。まさかの初来日だ。
トン・ゼーは、60年代末にブラジルの音楽、文学、演劇、アートといった様々なカルチャーに革命をもたらした芸術運動「トロピカリア」(トロピカリズモ)の中心的存在の一人。カエターノ・ヴェローゾ、ガル・コスタ、ジルベルト・ジル、オス・ムタンチスといった精鋭たちとともに、ブラジルの音楽の現場に新たな価値観を提唱した最重要人物だ。彼のこれまでの作品、活動のほどを短期間で網羅することは確かに難しい。カエターノ同様に多岐に及んでいる上、現役でもある彼は、つどつどで先進的な試みを作品や活動に反映させているからだ。
それでもあえて、これからトン・ゼーの世界に触れようとする方々に彼の作品を一つ紹介するとすれば、1976年に発表されたコンセプト・アルバム『Estudando o Samba』だろうか。日本語で「サンバを学ぶ」(『サンバ学習』というタイトルでリリースされたこともあった)という意味のとおり、サンバをトン・ゼー流にとらえ直したような作品で、一般的に熱狂的なイメージのあるサンバとは全く異なる解釈の曲が揃っているのが面白い。アンビエントのような室内的な作りの曲もあれば弾き語り調もある一方でブラスが挿入される曲もある。この大胆な解釈と再構築の哲学こそ、トン・ゼーのトン・ゼーたるイノヴェイティヴな真髄ではないかと感じるのだ。

さて、ご存知のように、そんなトン・ゼーがまもなく開催される『FESTIVAL de FRUE 2019』と単独公演(東京)のためについに日本の地を踏む。ステージでは彼の歌う詩や言葉を日本語訳しスクリーンに投影する予定だそうなので、ぜひ彼のそうした哲学を実感できればと思う。そこで、彼を招聘する『FESTIVAL de FRUE 2019』の厚意により、トン・ゼーの来日直前のメールによるショート・インタビューをここに公開することになった。達観しているようでユーモラス、まだまだホットな82歳の人となりを、先んじて少しでも実感してもらえたら幸いだ。しかし、こんなに日本のことに興味を持っている人だとは知らなかった。そう考えるとトン・ゼー自身にとっても待望の日本と言ってもいいのだろう。(岡村詩野)

質問作成・取材協力/FRUE
通訳/Naoko Takahashi

Interview with Tom Zé

——初来日になりますが、まず、あなたが日本について知っていることはありますか?

Tom Zé(以下、T):サンパウロ自体がオリエンタルな街です。日本人は最初にサンパウロ州の田舎に移住し定着した人たちでした。彼らの大地からの実りを得る栽培の技術は芸術的で、農家でありながら、科学者のようで敬意をはらうべき存在です。彼らは、ブラジルに多くのことを教えてくれました。
また、日本人は、オリエンタルな医療の恩恵をブラジルにもたらしました。私は、小さな頃から喘息持ちだったのですが、そのことが私を日本人移住者とつなげるきっかけとなりました。そして、そのおかげで、喘息を治療することができました。
まず、私が感動したのは、日本人の身体とその動きに働きかけるセラピー・メソッドの価値でした。また、私はヨガもやっていましたが、ヨガもオリエンタルなものですよね。
私は、バイーア連邦大学とH.J. Koellreutter氏が監督を務める音楽の学校で音楽を勉強したのですが、彼は、音楽、クライミング、日本の伝統、ポップ・ミュージックの筋金入りのファンでした。彼との家族のような関係が、私のサンパウロでのある種の生活への窓口になったのです。1985年にマクロビオティックを始め、その食事法は、私にとても合っていて、今日まで続けています。
このような出会いが、私のオリエンタルな人たちに対する理解を深めてくれました。例えば、健康に問題がある時は、まず針治療をします。

——音楽だけではなく日本のカルチャー全体を見ていらっしゃる、大変興味深い話です。

T:さらに、文学を通して「日本」という世界について多くのことを学びました。『枕草子』や『源氏物語』はじめ、川端康成、村上春樹、三島由紀夫が自宅の本棚にあります。膨大な数の日本人作家、作品を考えるとそれはほんの少しなんですけど。芭蕉の詩からも学びました。世界的に賞賛されている芭蕉です。私は、いつも彼の俳諧を思い出します。例えば、マヌエウ・バンデイラによる芭蕉の「閑さや岩にしみ入る蝉の声」とかです。これですね…。



A cigarra… Ouvi:
セミ、聞いた:
Nada revela em seu canto
あの声に匹敵するものはない。
Que ela vai morrer. (tradução de nosso poeta Manuel Bandeira)
死んでいくという



とても感傷的。でも美しいでしょう?

ネウザ(トン・ゼーの妻でありマネージャー):トン・ゼーは、日本人がIrará(ブラジルはバイーアにある町)にやってきた時、Iraráの人たちは綺麗な、赤い、大きなトマトを初めてみたと語っています。日本の芸術です。日本は、私たちの記憶に沢山あります。

——毎日でも毎週でもいいから習慣づけてることはありますか?

T:毎日の習慣で言えば、オリエンタル体操マニュアルを使用して、毎日体を動かします。厳しくやっており毎朝やります。私は「体操マニュアル」とポルトガル語で呼んでいます。インドのヨガのポーズ、中国の太極拳、do-in(自分でするマッサージで中国が起源のよう)が組み合わさったもの。日本のものではないですけどね。サンパウロの自宅のそばには、アーグア・ブランカ公園があり、毎日のように東洋人が太極拳をしています。その多くは日本人ですが、でも太極拳は中国のものだと思います。

——プライベートで一番落ち着く場所とか過ごし方とかはありますか?

T:人生の中で最もリラックスできるのは、音楽の仕事をしている時です。音楽に完全に没頭します。この職業の一番いいことは、引退しないでいいところです。

——では、信念と大事にしてる言葉は?

T:「健康」は、私にとってとても大切な言葉です。喘息持ちだったので小さなころは苦しみましたが、すでに言及したように、それは私の青春時代、若い頃を大きく変えました。だからオリエントの人生の大切の仕方に私はとても興味があるのです。私は瞑想的ではなく、認知するために作曲すると言いたいです。日本について言えば、それは私の中のオリエンタルな部分ではないかと思うんです。

——音楽だけではない様々なカルチャーやエンターテインメントで、プライベートで一番楽しんでるものはありますか?

T:趣味は読書です。私と妻のネウザは、声に出して毎晩何かを一緒に読みます。小説は昔から大好きでした。今人類学者、詩人であるAntonio Risérioの『A Casa no Brasil』を読んでいます。ブラジルの植民地時代からのたくさんの種類の家屋についての記述があり興味深いです。そこに住んでいた人々についても描かれているんですよ。<了>

Text By Shino Okamura

Photo By André Conti

Interpretation By Naoko Takahashi


FESTIVAL de FRUE 2019


2019年11月2日(土) & 3日(日)
※雨天決行


11月2日(土)
開場 11:00 / 開演11:00 / 終演 27:00(予定)


11月3日(日)
開場 9:30 / 開演 9:30 / 終演 25:00(予定)


※予告なく変更する場合があります


<開催場所>
静岡県掛川市 つま恋 リゾート彩の郷


<出演>
Tom Zé
ACIDCASE:
  Acid Pauli
  Geju
  Aex
Ajurinã Zwarg
Billy Martin
Carlos Niño
Carista
Cedric Woo
cero
Daniel Santiago & Pedro Martins
Don’t DJ
Geju
Itiberie Orquestra Fameilia Japão
Marco Benevento Trio
miAs
Quartabê
Laraaji
Sam Gendel
Svreca
Vessel & Pedro Maia present Queen of Golden Dogs
Wata Igarashi
YAKUSHIMA TREASURE(水曜日のカンパネラ×オオルタイチ)
大友良英
悪魔の沼:
  Compuma
  Dr.Nishimura
  Awano
and more…


<詳細>

http://frue.jp/
1 2 3 17