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「すごくお金持ちになったらアメリカの土地を買収して先住民たちに返したい。それを人生の目標としている」
自伝的新作が伝えるルーシー・ダッカスのセンチメントと正義

25 June 2021 | By Kohei Ueno

少々意外だった。かつて《フロントマンになる必要はない/そうでなければ、私が一番のファンになるから》と歌ったルーシー・ダッカスは、ボーイジーニアスを構成するトライアングルの中でも、どこかナイーヴで控えめな印象を持っていたからだ。しかし、今回応じてくれたインタビューで彼女は、祖国アメリカに対する愛と失望と、途方もない夢を雄弁に語ってくれた。バーニー・サンダースの支援者集会に駆け付けて歌うリベラルな思想は(以前EPで「Dancing in the Dark」をカヴァーした)ブルース・スプリングスティーンに重なるが、もしかしたらルーシーの奏でる音楽もまた、「民衆の声」となるポテンシャルを秘めているんじゃないだろうか。

2018年の前作『Historian』から約3年ぶりに届けられたニュー・アルバム『Home Video』は、期せずして彼女のルーツや青春時代を #TBT タグで懐古するような自叙伝的な作品となっている。とはいえ、両親の目を盗んでヘヴィメタルにのめり込んだり(「VBS」)、高校をサボって映画館でイチャついたり(「Brando」)、自分を魅力的に見せたくて背伸びをしてみたり(「Partner In Crime」)……という日常の機微を綴ったみずみずしい筆致には、国境を超えて多くのリスナーが共感するところかもしれない。もちろん、ルーシーの十八番であるソリッドでささくれ立ったロック・サウンドも、親友の父親(クズ)を《ぶっ殺してやりたい》と妄想&暴走する「Thumbs」のようにヒネくれまくったストーリーテリングも健在だ。フィービー・ブリジャーズの傑作『Punisher』(2020年)と、今年2月にリリースされたジュリアン・ベイカーの『Little Oblivions』と並んで、いよいよボーイジーニアス以降のチャプターにおける最後のピースが揃ったことになる。

そんなルーシーは今夏、ブライト・アイズの実に10年ぶりとなるアメリカ・ツアーで前座を務めることが決定。コナー・オバーストはいち早くフィービーの才能をフックアップしていたし、2004年にはボスやR.E.M.と共に《Vote For Change Tour》に参加していたほどポリティカルな人物だけに、ルーシーにとっても得難い経験となりそうだ。「人生を綴ることは政治的でもある」――とはコナーの言葉だが、ルーシー・ダッカスが綴る人生を、歌を、どうか聴き逃さないでほしい。
(インタビュー・文/上野功平 翻訳/相澤宏子)

 

Interview with Lucy Dacus

──5月2日に誕生日を迎えられましたね。Instagramではテーブルがしっちゃかめっちゃかになった写真をポストしていましたが、これは一体、何を食べ散らかした後の光景なのでしょうか…?

Lucy Dacus(以下、L):あれは、蟹パーティをやったときね。大量の蟹を買ってきて、家で調理して、友達をたくさん招待した。全員ワクチンを接種済みだったから、実際にみんなと会うのも久しぶりだったんだ。私の誕生日パーティでもあったんだけど、みんなと再会できたお祝いでもあったの。

──日本はまだまだワクチン接種率が低いので、羨ましい限りです。26歳になって、いちばん最初に聴いた曲は何でしたか?

L:そんなこと考えてもいなかったわ(笑)。でも、たしかディアンジェロの『Black Messiah』を通しで聴いていたと思う。素晴らしいアルバムだもんね。

──ではさっそく、 3作目となるアルバム『Home Video』について聞かせてください。結果的にあなたの自叙伝的な作品となっていますが、COVID-19の影響によるロックダウン期間が作品の方向性を決定づけたのでしょうか。もともとはどんな青写真を抱いてましたか?

L:アルバムはロックダウン前に完成していたから、その影響はほとんどなかった。でも、ロックダウンがあったことで、アルバムの意味合いはさらに深まったと思うよ。とてもノスタルジックな作品だし、ロックダウン中は、多くの人々が実家に戻ったり、両親の元に行ったりしていたしね。だから、アルバム制作中の私のマインドでいえば、ロックダウンの時のそれに近いと思う。

──パンデミックが世界を覆い尽くすという、「現実がフィクションを超えていく」シチュエーションにおいて、ソングライティング…主に歌詞の面ではどんな変化がありましたか? 特にインスピレーションを受けた作品があれば教えてください。

L:ひとつは、エレナ・フェッランテが書いた『ナポリの物語』という小説。女性同士の友情について、2人の少女時代から人生の終盤の時期まで描かれている。彼女の友情についての書き方が好きで、自分以外の女性と共に成長していく様子が描かれているんだけど、その関係性の曖昧さや複雑さがとてもよく表現されているの。「友情関係」というものを非常に美しく表現した作品だと思う。もうひとつは、サボー・マグダというハンガリー人の作家による『ザ・ドア』という本ね。ある女性と、その女性が雇っているメイドとの友情についての話で、私があまり今までに読んだことのない関係性についてだった。とても美しい物語。そして、ものすごく残酷ね。お互いを見る目に異様な緊張感がある。

──後者はヘレン・ミレン主演で映画化(2012年の『エメランスの扉/家政婦の秘密』。日本では劇場未公開)もされていますね、チェックしてみます。あなたは大学で映画を専攻していましたが、『Home Video』に影響を与えた映画は何かあります?

L:フェデリコ・フェリーニが監督した『フェリーニのアマルコルド』(1973年)かな。これはフェリーニの自伝的な映画で、彼が自分の記憶を再現して、若い頃の自分を俳優に演じさせたのが最高だと思った。彼は芸術作品を監督していると同時に、自分自身が生きて体験したものを素材として使っている。でもその素材も、時間の経過によって変えられているの。だから映画のシーンによっては現実的なものもあれば、絶対にありえないものもある。“子どものマインド”というものが上手に表現されている作品だと思う。

──「Hot & Heavy」のミュージックビデオも映画館が舞台になっていますが、あなたが手に持っているSONYのカムコーダーは、実際に両親が使われていたものなのですか?

L:両親が使っていたのはVHSだから、MVで使っていた小型のカメラとは違うと思う。それに、当時のカメラは故障していたしもう処分しちゃったんじゃないかな。でも、MVの中で、私が映画館で観ている映像はすべて父が撮ったものよ。父もビデオに写っているし、母も祖母も弟も、みんなビデオに入れることにしたの。

──昔のビデオテープを再生していく中で、新たに気づいたことや、あなた自身について家族が教えてくれたことは何かありましたか。

L:ビデオカメラは、父が私たちの人生に関わるためのツールとして重要な役割を果たしていたんだということに気づいたわ。今までは、ビデオを「物」として捉えて、自分についての映像だと捉えていた。けれど、それと同じくらいあのビデオカメラは、父が社交的な場で、一歩離れた場所からフィルターを通して「傍観者」として状況を見るためのツールだったということ。彼はその場にあまり参加していなかったけれど、その場を記録していた。今はそれに共感できる。私も、自分の人生を記録するのが大好きだから。父は私のことを、私が生まれた日からずっと撮っていたから、「記録する」ということを最初に教えてくれた。彼があれほどの時間をかけて私たちを記録してくれたことに、今はとっても感謝してる。

──歌詞についても聞かせてください。「VBS」のストーリーには、休暇聖書学校(Vacation bible school)とスレイヤーが共存しています。敬虔なクリスチャンの家庭では、スレイヤーのようなヘヴィメタルは両親に隠れて聴くものなのでしょうか?

L:ふふ(笑)。すべてのクリスチャンの家庭がそうだとは言わないけど、休暇聖書学校は、子どもが学校に通っていない冬休みや春休み、夏休みとかに教会が開催しているもので、教会に泊まる場合もあれば、森や湖やビーチに泊まるキャンプのようなプログラムもある。通常は朝と晩に毎日教会での礼拝があって、それ以外の時間は聖書の勉強をしたり、ゲームをしたり外で遊んだりするの。私が子どもの頃は何度も行かされたな。子ども休暇聖書学校に預ければ、きっと健全だと親は思っている。でも、所詮、子どもは子ども。退屈したら何か面白いことを見つけるものよ。私はあの場所で色々な経験をしたし、処女を失ったのも休暇聖書学校だった。「VBS」は私が初めて付き合った彼氏の話で、彼とも休暇聖書学校で出会ったの。彼はスレイヤーとマリファナが大好きだった。だから、彼は休暇聖書学校いちの悪ガキだったのよ。それで、恋人の私は彼に悪いことをやめさせようとした。キリスト教徒が神を信じるように、彼を改心させるのが私の使命だと思ったんでしょうね。思い出すだけで恥ずかしい(笑)。

──休暇聖書学校って、実際どのくらいの期間行くものなんですか?

L:色々なプログラムがあって、週末だけのものもあれば、1週間から2週間のものもあって、私はそういうのによく行っていたと思う。たしか1ヶ月のものもあるよ。私は、親が子どもを家に置いておきたくないという理由で預けているんだと睨んでいるわ(笑)。

──あなたの友人であるジュリアン・ベイカーやフィービー・ブリジャーズもヘヴィメタルの大ファンですし、いつかボーイジーニアスとしてラウドな音楽をやってみたいという願望はあります?

L:もちろん! フィービーもジュリアンもそうだけど、若いときは特にヘヴィメタルとかノイジーな音楽が魅力的に感じるんだと思う。自分の中で起きている混乱と、そういう音楽が合致するからなのかな。両親に縛られて、実際に感じていることを表現するのが難しいと感じる年頃だから、自分が好きな曲を爆音でかけると、その感情を代わりに吐き出してくれると感じるんだと思う。音楽を通してそれができるのって、多感な時期にはすごく重要なことだと思うな。

──「Going Going Gone」にはそのジュリアンやフィービー、さらにミツキも参加しているようですね。ラストで聞こえるスタジオの会話は、人が集まることが許されないパンデミックの世の中だからこそグッと来るものがありますが、あえてこの音声を残しておいた理由は?

L:すごく素敵な瞬間だったし、実際に起きたことだったから。レコーディングの現場は大勢の人が集まっている状況で、ギターを弾く人が3人いて、私たちが歌っている。「録音」ボタンを押して、曲を演奏して、「録音停止」を押す。だから何も編集していないし、何も撮り直していない。そのままの瞬間を捉えたの。私にとってのタイムカプセルみたいなもので、あの音声を聴き返せば、あの日・あの場所にいたみんなを思い出すことができるんだ。

──素敵ですね。いっぽう「Partner In Crime」はハートブレイクの歌と捉えましたが、オートチューンを通したあなたの歌声は不思議な心地よさがあります。これは誰のアイディアだったのでしょうか?

L:あれは偶然の産物で、レコーディングをする直前に私は喉を痛めてしまって、1ヶ月間、声を出してはいけなかったの。レコーディングの時も、午後3時までは声を出してはいけなくて、午後3時からウォームアップして、午後5時まで2時間だけ歌うことを許された。要するに、残りの時間は一切声を出してはいけないという状況だったのね。だから使えるヴォーカルのテイクが録れなくて、将来的には録り直しをしないといけないと思っていた。でも実際には何の問題もなくて、アルバムで聴こえるヴォーカルの大部分はその時期に録ったもの。ただ、「Partner In Crime」をレコーディングした日だけは、すごく声の調子が悪かったから、暫定的な対応としてオートチューンを使ったんだ。そして他の楽器のレコーディングに移ったんだけど、オートチューンの声を何度も聴くにつれて、この曲にぴったりだと思えてきて。なぜなら、この曲は恋人にもっと真剣に自分のことを捉えてもらいたいから、自分をもっと魅力的に見せようとするけれど――これは偽りの姿だということについての歌で――それってまさにオートチューンよね(笑)。もちろん、自分が今までやってこなかった試みだから……というのもあるかな。

──《君の瞳に乾杯!》など名画のセリフや登場人物を散りばめた「Brando」の歌詞はすごく印象的ですね。この曲の舞台となったシアターが、「Hot & Heavy」のMVにも登場したリッチモンドの《Byrd Theatre》なのでしょうか? 

L:昔からよく行っていた映画館はふたつあって、《Byrd Theatre》もそのひとつね。4ドルという破格で映画が見られたし、場所としてもすごく気に入っていた。もうひとつの映画館は、私の高校から500メートルくらいの場所にあったから、高校をサボってよく映画を観に行っていたわ。

──《Byrd Theatre》は「Big Screen Classics」という素晴らしいプログラムも組んでいますが、あなたにとってどんな思い出がありますか?

L:たしか、初めてのデートがここだったわ。中学1年生くらいの頃だったかな? 男の子と一緒に映画を見たんだけど、彼の父親が2列後ろの席で私たちを見守っていた(苦笑)。あと憶えているのは、この映画館には舞台からせり上がってくるウーリッツアーの電子ピアノがあって、毎週土曜日にボブという人が演奏してくれて、色々な機能がついていたからカーニヴァルのように聴こえたわ。あとは、自分が気を引きたい人とか、色々な人と一緒に《Byrd Theatre》へ行って、そこで手を握ったりしていた。ここで観た映画でお気に入りだったのは、写真家のヴィヴィアン・マイヤーのドキュメンタリー(2013年の『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』)。彼女は膨大な数の写真を撮っていたんだけど、生涯で一度もそれらを公表しなかった。彼女の死後、そのネガはとある青年がオークションで380ドルで落札したんだけど、現像された写真はものすごく高く評価されたという話よ。

──個人的に気になったのですが、ラストの「Triple Dog Dare」(3匹の犬の挑戦)とは、ボーイジーニアスの3人のことを指していたり……?

L:アハハ! そうじゃないけど、その解釈はすごく良いね(笑)。フィービーとジュリアンに教えてあげるわ。アメリカには「Truth Or Dare (真実か挑戦)」というゲームがあって、聞かれた質問に対して真実を話すか、命令に対して挑戦するかを選ぶの。挑戦(Dare)を選んだら、絶対にそれをやらなければいけない。その上にあるのが「Double dog dare」で、その挑戦をされたら、もう何がなんでもやらないといけない。じゃないと、他の子どもたちにチキンだと思われる。そして「Triple dog dare」はその最上級で、もしやらなかったら、今後誰からも一切リスペクトされない。子どもたちにとっては結構シリアスな話で、もし「Triple dog dare」をやらなかった子は、信用ならないし、つまんない奴だとみんなから思われる。「権利を行使したい」という子どもの遊びなんだけど、この曲で私が挑戦しているのは、「私と一緒に家出しよう」と呼びかけることで、「もしやってくれないんだったら、あなたと私はもうこれまでよ!」って歌っているの。

──「Please Stay」にも《犬を飼う(Get a dog)》というフレーズが、ボーイジーニアスにも「Me & My Dog」という曲がありますが、あなたがたびたび“犬(Dog)”をモチーフとする理由は?

L:そうね、たしかにその曲たちには繋がりがある。フィービーもジュリアンも犬を飼っているし、2人ともすごく大事に育てている。「Please Stay」には彼女たちも参加してくれてるんだけど、あの2人をはじめ多くの人が犬を好きな理由は、「無償の愛」「無条件の愛」というものを教えてくれるからだと思う。人間の愛って条件付きなことが多いでしょ? たとえ無償の愛を与えたくても、条件付きになってしまうことの方が多いと思う。でも……条件付きであるべきなのかもしれない。人にはそれぞれ許容範囲や限度というものがあるし、そのほうが健全な人間だと思うから。でも、犬は人間と違って単純。犬はどんな時もあなたの側にいるし、それを疑うことさえしない。犬はあなたと別れたりしない。床にウンチはしちゃうかもしれないけど、特に個人的な理由があるわけじゃない。犬はブレないの。彼らが私たちに教えてくれるのは、人間でもそういう風に相手を大切にすることが可能だということ。だから、人間と犬との関係性はとてもパワフルだよね。私が犬を飼っていないのは、まだ心の準備ができていないから。私が犬を飼う日が来たら、それはきっと私の人生が変わる瞬間の象徴になると思うわ!

──前作『Historian』ではピアノの先生だったという祖母について歌った「Pillar of Truth」が収録されていました。このアルバムと『Home Video』は、あなたにとって地続きだと感じていますか?

L:うん、地続きだと思う。私は自分の周りにいる大切な人たちや、私に大切なことを教えてくれた人たちにオマージュを捧げたいといつも思っているから。『Historian』は私の価値観を理解してもらうための作品で、最も絶望的な状況にいるときに、私のマインドがどのように機能するのかというのを伝えたものなの。つまり、「私がどういう思考回路をしているか」ということ。そして『Home Video』は、私がどんなことを考えているのかを表現している。私が自分の過去についてどう思っているかとか、私の周りの人たちについてどう考えているか、私の生い立ちについてどう考えているか……とかね。だから、そういうことを伝える前に、私がどのような思考回路をしているのかをリスナーには先に理解してもらいたかった。今回のアルバムの方が、ディテールや人物がより多く入ってるし、物語的にも共感しやすくて、聴いている人も楽しめるんじゃないかな。

──Netflixで配信中の映画『モキシー ~私たちのムーブメント~』で、あなたが歌う「La Vie en rose」(エディット・ピアフのカヴァー)が流れるシーンは間違いなくハイライトのひとつでした。とあるファンジンをきっかけに、女性たちが学校内の差別や不平等に立ち向かうストーリーが素晴らしかったですが、あなた自身はどんな感想を持ちましたか?

L:まだ見られてないのよ! 監督のエイミー・ポーラーに曲を提供してほしいと頼まれたのは憶えているんだけど、映画がリリースされたときはちょうど忙しかったか、ネット環境が悪かったのかもしれない。今日さっそく見てみようかな(笑)。でも、とても可愛らしいストーリーだし、私の知り合いで映画を観た人たちはみんな、自分たちが若い頃にそういうジンがあれば良かったのにと言ってるわ。

映画本編には、先日《Epitaph》と契約したことでも話題となったザ・リンダ・リンダズも出演。


──「女性の連帯」という意味では、ボーイジーニアスの3人でヘイリー・ウィリアムスの「Roses/Lotus/Violet/Iris」に参加していましたね。ヘイリーとのコラボレーションを振り返ってみていかがでしたか?

L:その場の成り行きで実現したことなんだけど、ヘイリーと仕事ができたのは最高だった。私たちは「Please Stay」、「Going Going Gone」、「Triple Dog Dare」の3曲と、フィービーの「I Know the End」と「Graceland Too」、そしてジュリアンの「Favor」をレコーディングするためにナッシュビルに来ていたのね。私はジュリアンと現地に前乗りしていたから、ライマン公会堂にブリタニー・ハワードのライヴを見に行ったんだけど、会場で偶然ヘイリーと会った。そしたら、「よかったら明日、コーラスで歌ってみない?」って誘ってもらえて。フィービーは当日の朝ナッシュビルに着いたから、大急ぎでスタジオに向かったわ(笑)。ヘイリーは私たち3人にとってヒーローみたいな人だけど、今では友人としてものすごくサポートしてくれるから、それがインスピレーションになっている。

公式リリック・ビデオでは、ボーイジーニアスの3人がレコーディングするシーンも収められている。


──彼女と実際に会うまで、パラモアについてはどんなイメージを持っていましたか。

L:私がキッズの頃は、テレビでパラモアを見てすごく憧れていたし、YouTubeで「ヘイリー・ウィリアムズの歌い方を学ぼう」みたいなヴォーカル・レッスンの動画を見ていたのも覚えてる。ジュリアンもフィービーもパラモアのライヴを見たことがあって、他のどんなバンドのライヴよりも最高だって興奮しながら話してたっけな。私はまだパラモアを見たことがないから、2人には「絶対に見ないとダメ!」って口を酸っぱくして言われてる(笑)。とにかく、そんなヘイリーが私たちをサポートしてくれることに感謝しかないわ。

──最後にひとつだけ。昨年2月に地元リッチモンドで行われたバーニー・サンダースの集会でパフォーマンスを行いましたね。彼とはどんなことを話されましたか?

L:バーニーはその日だけで3件のイベントを予定していて、アメリカ中を飛び回っていたから、ちゃんと話す時間はなかったの。バーニーの到着前にすべての準備が整っていて、バンが到着すると彼はステージへと直行して、演説を行い、写真撮影に少しだけ応じて、再びバンに乗って、次の演説会場へ行く。私はバーニーのことをすごく尊敬しているから、一緒に写真を撮るときに「あなたの活動すべてに感謝しています!」と伝えたら、彼は私の背中をポンポンと叩いて、ただ微笑んでくれたわ。忙しい人だから世界の課題について深く話したりはできなかったけど、バーニーが大統領になってくれたらどれだけ良かったか。

──2020年のアメリカ合衆国大統領選挙は、最終的にジョー・バイデンがドナルド・トランプを破って第46代大統領に就任しました。これからのアメリカは、世界は、どうなっていくと期待していますか。

L:私は、アメリカという国は違法国家だと思っているの(笑)。植民地制度によってできた国だし、アメリカ先住民から剥奪した土地に私たちは住んでいる。だから、理想としては先住民に土地を変換するべきだだと思う。それに向けて活動している人は大勢いるけれど、課題が大きすぎて、私が生きている間にそれが実現されるかもわからない。でも、それに少しでも近づいているという進歩が見られたら良いなと思う。

──ルーシーさんは、バイデン氏の仕事ぶりをどう評価されていますか?

L:パレスチナ攻撃のためにイスラエルを経済支援する……みたいな暴力的なことよりも、彼が過去の演説で国民に約束したことをちゃんと実行してほしい。提案通り学生ローンの返済を免除してくれたらいいと思うし、トランスジェンダーの人たちをもっと守ってくれたらいいと思うし、大麻で刑務所に入っている人たちを無罪にして解放してくれたらいいなと思う。正すべき過ちは数え切れないほどあって、同じアメリカ人として非常に恥ずかしい。アメリカはとても美しい国で、私がずっと暮らしてきた国だから大好きなところもいっぱいあるし、愛する人たちもいるけれど、海外に行くと、自分が世界で最も暴力的な国のひとつの代表であるということを恥に思う。ただ、私には大きな夢があって。いつかすごくお金持ちになったら、土地を買収して、先住民たちに土地を返したい。まだそこまで到達してはいないけれど、それを人生の目標としているところよ。

<了>

Text By Kohei Ueno

Translation By Hiroko Aizawa


Lucy Dacus

Home Video

LABEL : Matador / Beatink
RELEASE DATE : 2021.06.25


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