FEATURES : 01 July 2019

Janelle Monáe

The Reason Why Janelle Monae makes the huge funky dance party for you

By Tsuyoshi Kizu

FEATURES : 01 July 2019

Janelle Monáe

The Reason Why Janelle Monae makes the huge funky dance party for you

By Tsuyoshi Kizu

初来日&フジロック出演決定!
ジャネール・モネイがあなたのために、ファンキーなダンス・パーティをぶちあげる理由

日本でも7月に公開されるロバート・ゼメキス監督の『マーウェン』をとくに前情報なしに観ていたら、見覚えのあるチャーミングでクールな姿を発見して驚いた。我らがジャネール・モネイである。彼女の役どころは……いや、その前に『マーウェン』について簡単に書いておこう。クロスドレッサー(異性装者)であると知られたことで5人の男に暴行を受け、記憶を失うなどの重い障害とPTSDを負い、のちにジオラマ・アーティストとなったマーク・ホーガンキャンプの実話を基にした物語で、もともとはドキュメンタリーだったものを大胆に劇映画化した作品である。ホーガンキャンプはトラウマを克服するためにジオラマでフィギュア人形の撮影=空想の冒険を繰り広げるのだが、映画では人形がゼメキスお得意のCGの力を借りて生き生きと動き出す。ホーガンキャンプは空想ではタフなG.I.ジョーとなるのだが、彼は高いヒールの靴を履いていて、女性戦士たちと共闘している。そのうちのひとり、G.I.ジュリーに扮するのがジャネールなのだ。

フィギュアの姿で銃をぶっ放すジャネールを見て、彼女が自身の作品で演じていたアンドロイド、シンディ・メリウェザーのことを連想するひとは少なくないだろう。すでに『ムーンライト』(2016年)、『ドリーム』(2016年)で俳優として活動し高い評価を得ているジャネールだが、『マーウェン』のキッチュなキャラクターこそ、むしろ彼女の表現のホームに近いものなのかもしれない。見た目は風変わりだが、そこら辺の人間よりもハイパーに強くて信念を持ち、いつだってアウトサイダーの側に立つG.I.ジェーンはわたしたちがジャネール・モネイに感じ取るカッコよさと一致する。奇妙な映画ではあるが、ジャネールのファンにはぜひ観てほしい一本だ。

予告編でもジャネールはなかなかフィーチャーされています

あるいはこんな話もある。昨年ドナルド・トランプがトランスジェンダーを排除する方針を明らかにして話題になったが、トランス排斥の風潮は何もトランプ政権のような極端に男権主義的な場所でのみ現れるわけではない。たとえば「トランス排除的ラディカル・フェミニズム」——通称TERF――が近年問題になっている。「トランス女性は女性ではない」とする過激なフェミニズムのことで(自分としてはそれはフェミニズムだと思えないのだが)、この理論で言えば『ホープレスネス』(2016年)で女性の連帯を訴えたアノーニも女性ではないということになる。なんと偏狭な見解だと思うが、性的少数者のなかでもマイノリティであるトランスジェンダーは攻撃対象になりやすく、このような例はけっして極端なものではない。トランスジェンダーが日常的に受けている偏見や差別である。

トランスジェンダーの側に立つ者たちは#WontBeErased(「わたしたちは消されない」)の合言葉とともに反論した。だが、それ以前にもっともポップな形でトランス女性を含む女たちの連帯を視覚化したのがジャネールだ。グライムスとコラボレーションしたエレクトロ・ポップ「Pynk」はセクシーなイメージとともにプッシー・パワーを訴えたものだが、そのミュージック・ヴィデオでは大胆にもピンクのヴァジャイナを模したパンツを履いた女性たちが並んでヘンテコなダンスをする。そのシュールでファニーなイメージに強烈な印象を受けたひとも多いだろう。僕も大好きなヴィデオだ……というか、観るたびほとんど泣きそうになってしまう。ヴァジャイナ・パンツを履いていないダンサーがそこにいたことを覚えているだろうか。それはヴァジャイナを持たない女性も女性である――というはっきりとしたメッセージで、だが、ジャネールはそれをどこまでもパーティとして打ち出している。

R&B、ソウル、ロックンロール、ファンク、ラップ/ヒップホップにダンスホールにシンセ・ポップに……と、とにかくまあたくさんのジャンルを奔放に横断するジャネールのポップ・ソングはいつもパーティ・ミュージックだ。重要なのは、そのパーティが誰のためにあるのか、ということである。「Make Me Feel」におけるジェンダーとセクシュアリティをやすやすと乗り越える官能や、エリカ・バドゥとシスターフッドを示した「Q.U.E.E.N.」が“Q.U.E.E.R.”を仄めかしていたことを思い出してほしい。ジャネールはクィアの黒人女性であるアイデンティティを拠りどころにして、つねにマイノリティが中心で踊ることのできるパーティを作り上げようとする。彼女がプリンスの正統な後継者であるのは、サウンドの面だけではない。21世紀の視座から彼をクィア・アイコンとして捉え直し、称賛したからだ。それは企業がイメージのために打ち出すとってつけたようなダイヴァーシティではない。世のなかが簡単にのけ者にする人間たちにこそ光を当て、その内側の輝きを最大限に引き出すことだ。

だからこそ、ジャネール・モネイのパーティには誰だって参加できる。今年の《コーチェラ》でのステージをストリーミングで観たひとならわかってくれることだろう。来日のステージを楽しみにしているひともいるだろうから詳しくは書かないが、時間がそれほど長くない分(1時間弱。フジでのステージもきっとそれくらいだろう)、とにかくアッパーでファンキーな祝祭であったことは保証する。衣装やダンス、演出も楽しみにしていてほしい。ライヴでのジャネールはいつものようにストレンジで、そしてだからこそ最高にかわいくてカッコいい。

ようやくの初来日……ずいぶん待たされたが、機運がようやく彼女に追いついたとも言える。フジでのステージは間違いなく3日間のハイライトになるだろう。日本人はあまり得意ではないかもしれないが、そこではみんな自分自身を限界まで解放してみてほしいと思う。歌って、踊って、叫んで、騒ぎまくろう。それがパーフェクトな歓迎にちがいない。きっと、パワフルなファンクネスとともにあなた自身が輝いていることに気づくだろうから。(木津毅)

■Janelle Monáe Official Site
https://www.jmonae.com/

■ワーナーミュージック内アーティスト情報
https://wmg.jp/janelle-monae/

Text By Tsuyoshi Kizu


FUJI ROCK FESTIVAL’19

2019/07/26(金)〜28(日) ※ジャネール・モネイは26日(金)出演
新潟県湯沢町苗場スキー場
https://www.fujirockfestival.com/


MORE FEATURES

  • FISHING THE BESTS : 18 September 2019

    youheyhey

    Fishing the Bests #3 〜Another Perspective〜

    By Daiki Takaku

    「音楽の聴き方を変えているのは間違いなくインターネット」先日TURNで行ったインタビューでYoung-Gもこう語っていたように、実際インターネット上で音楽を聴く、あるいはクラウドで音楽を管理することは

  • INTERVIEWS : 17 September 2019

    川本真琴&山本精一

    対談:川本真琴 × 山本精一
    「いろいろな曲がたくさん聴ける雑誌のようなアルバムにしたかった」

    By Shino Okamura

    悪いけど私はデビューした時から川本真琴のファンだ。だからわかる。彼女は決して衝動だけのアーティストなんかじゃないってことが。 それに気づいたのは、もう今から20年くらい前、彼女の正式なライヴとしてはお

  • INTERVIEWS : 16 September 2019

    Give me little more / MARKING RECORDS

    感度の高いショップが密集する城下町・松本のインディー文化
    カギを握る2軒の人気ショップ店主に訊く

    By Dreamy Deka

    サブスクリプション・サービスの普及と巨大フェスの定着によって、ぱっと見では隆盛を極めているようにも見える音楽シーン。洋楽・邦楽のメインストリームが盛り上がるのはもちろん素晴らしいことだけど、クラウドサ

  • FEATURES : 13 September 2019

    Belle And Sebastian

    映画と漫画と音楽から届いた手紙、私たちが過去を物語る理由

    By Koki Kato

    2020年公開予定の映画『Days Of The Bagnold Summer』のサウンドトラックがベル・アンド・セバスチャンの新作だという。誰かの過去について描くことで完成した新作、というべきだろう

  • BEST TRACKS OF THE MONTH : 08 September 2019

    Foals / Thom Yorke / Flea / Tohji / Alessia Cara / DIIV / The 1975 / South Penguin / Spinning Coin / First Aid Kit / Konradsen / 折坂悠太 / Oliver Tree

    BEST TRACKS OF THE MONTH – August, 2019

    By Hitoshi Abe / Si_Aerts / Sayuki Yoshida / Dreamy Deka / Shino Okamura / Kei Sugiyama / Daiki Takaku / Koki Kato / Hiroko Aizawa / Eri Mokutani

    The 1975 – 「People」 スタイリッシュでポップ、現代社会をクールに、かつ痛烈に切り裂くメッセージ性の強い歌詞、どこをとっても今最強で最高のロック・バントの一つであるThe

  • BRINGING THE PAST TO THE FUTURE : 06 September 2019

    Music From Temple

    〈プログレッシヴ〉の捨象したものが蘇る
    83年福岡産自主制作プログレを聴く

    By Yuji Shibasaki

    これまで一般にというと、テクニカルな演奏、複雑な楽曲構成、壮大で主情的なメロディーといった要素ばかりが取り沙汰されてきたきらいがある。それを抽出することをもってとして(一部カンタベリー系やジャーマン・

  • FEATURES : 04 September 2019

    Bon Iver

    バラバラになった何かをつなぐ最後の希望
    ROTH BART BARON三船雅也が綴る『i, i』に向けられたどうしようもなく美しい物語

    By Masaya Mifune

    ボン・イヴェール『i, i』に寄せて—— “これは1人のアメリカ人の男が絶望と孤独の淵から回復し、戻ってくる物語だった” 美しい自然と、黒く清んだ川がある。ウィスコンシン、オークレア。ジョン・プライン

  • FEATURES : 03 September 2019

    Jay Som

    Jay Som『Anak Ko』から考える、アジアン・アメリカン女性による”私たちの音楽”としてのギター・ミュージック

    By Nami Igusa

    90年代のオルタナ・ロックというのはある種、サウンドの荒っぽさゆえ、雄々しいイメージとは不可分であることは否定できない。いや、もちろん、ピクシーズのキム・ディールやソニック・ユースのキム・ゴードンとい