INTERVIEWS : 28 June 2017

Formation

Boundary of the band living in the rap era

By Daichi Yamamoto

INTERVIEWS : 28 June 2017

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Boundary of the band living in the rap era

By Daichi Yamamoto

フォーメーション ~ラップ時代を生きるバンドの越境

バンド不況が長く続く英国シーンで孤軍奮闘するフォーメーションの言葉

 ギター・ロックの不況が続いて久しい英国では年を重ねるごとに若いバンドが成功を果たすハードルは上がっている。グライムやヒップホップが再燃しつつあるいま、インディー・バンドのシングルがラジオのプレイリストに入ることは簡単でないし、SNSやYouTubeなどのビデオ・プラットフォームを得意とする前者に対して、後者にとっては楽な時代ではない。そもそもここ5年ほどの英国の若手バンドは活気づいていた頃のバンドに見られた何かしらの “ ブラック“ な要素がどんどん欠けていっているように思える。それでは余計に居場所が無くなってくるだろう。そんな時代には、前者のシーンとの繋がりを見せるか、周囲のバンドと違う強烈な個性を見せるかがカギになる。

 そんな中、今年4月にデビュー・アルバム『ルック・アット・ザ・パワフル・ピープル』を発表し、話題を集めるのがフォーメーションだ。デビュー・アルバム『Gang, Sign & Prayers』が全英アルバム・チャート1位を獲得したストームジーを初め、Krept & Konan、Section Boyz、Novelisなど活きのいいMCが何人も登場し、完全にグライム/ヒップホップの街となっているサウス・ロンドンから登場した彼ら、ラップ・シーンに共感しながらも、ホワイトからブラック、60年代から10年代まで、これまで培ってきたあらゆるルーツを柔軟に落とし込もうとすることで、周囲のインディ・バンドと別な地点にいる。LCDサウンドシステムやザ・ラプチャーと度々比較されるサウンドは、まだ誰にでも伝わるような確固たるオリジナリティを獲得しているとは言い難いかもしれない。だが、細部には彼らにしか出来ないような、パンク的衝動性とプログレッシブ・ロック的知性、怒りにも近いエモーションとポジティヴな楽観性が同居している。

 今回、バンドの核となるウィル・リットソン(Vo)とマット・リットソン(Key)の双子兄弟に話を聞くことが出来た。2人の言葉からは、バンド不況が長く続く英国シーンにいる彼らならではの、幅広いルーツに向き合うことを臆しない柔軟性の真意が読み取れるだろう。彼らの発言の裏から感じられたのは「いまの英国のギター・ロック事情なんか何のその」、「こんな時代だからこそ好きなようにバンドをやっているんだ」くらいの楽観主義や解放感だ。決定的にシーンを動かす息吹を持っているとは言い難い。だが、孤軍奮闘する彼らの言葉を楽しんでほしい。(取材/文:山本大地)

Interview with Will Ritson & Matt Ritson

――2人は幼いころから教会の合唱団に参加していたそうですね。お家は敬虔なクリスチャンだったのでしょうか?

ウィル・リットソン(以下ウィル):全然そんなことないんだよ(笑)。

マット・リットソン(以下マット):それはただの無料の音楽レッスンだったんだ。

――そのときはゴスペルも歌われていたのではないかと思うのですが、その時の経験は自分たちのいまの音楽に影響を及ぼしてますか?

マット:ゴスペルではなくて、西洋のクラシックをやっていたんだ。だからその時の経験はいまの自分たちにも影響があると思うけど、宗教的な意味ではないね。

ウィル:クラシックと言っても、ヘンデルやモーツアルトのようなドイツやフランスの作曲家を中心としたヨーロッパで出来たクラシック音楽だね。

――オーケストラに入ってクラリネットやサックスもやっていたと聞いていますが、その教会の時に楽器もやっていたんでしょうか。

ウィル:いや、教会では歌だけだったよ。

――では、幼いころはクラシック音楽に親しんでいたあなたたちがポップ・ミュージックに向かうことになったきっかけというのは何だったのでしょうか?

ウィル:8歳のころから教会でクラシック音楽の歌をやって、オーケストラをやるようになったのが12歳ころから16歳くらいまで。だから8年くらいクラシック音楽のトレーニングをした。でもティーンエイジャーの頃になると周りの友達がバンドをやるようになったから自然とポップ・ミュージックもたくさん聴くようになったんだ。

――あなたたちがクラシック音楽をやっていたころ、周りの友達はどんな音楽を聴いていたのでしょうか?

ウィル:自分たちの周りも友達が音楽好きばかりだった。なんでも聴いていたよ。面白かったのが、よく友達と「誰が一番変な音楽を見つけてくるか」っていう遊びをしていたことだね(笑)。

――例えば、あなたがたの好きなバンドにイエスがありますよね。イエスの音楽というのは様々な楽器が重層的に重なって響いているという意味でオーケストラ音楽とも共通していると思います。あなたたちが小さいころにオーケストラでクラリネットやサックスをやっていた経験というのはいまのフォーメーションの音楽性にどう影響していると思いますか?

マット:うんうん、クラリネットやサックスをやっていたのは僕だけど、その経験は僕らの音楽に影響していると思うよ。アルバムの中にもクレイジーなサックスのパートがあるけど、その経験から来ているよ。

"僕らはいまの音楽シーンで特に闘うような相手はいないから、ただ自分たちが好きな音楽を取り入れて好きなようにやっているよ。―(ウィル・リットソン)"

――あなたがたは他にもジミ・ヘンドリックスやピンク・フロイドをはじめ60年代の古いロック・バンドもフェイヴァリットに挙げていますよね。しかし、あなたたちはむしろそれより後の時代のバンドであるクラッシュと比較されることもあります。そのクラッシュというと、それまでの60年代~70年代初めのロックを避け、英国を出てレゲエやアフロビートなど様々な音楽を追及していったバンドでもあります。そういう意味で、あなたたちの音楽性や音楽に対する向き合い方はとても柔軟だと思いましたが、あなたたちのそうした柔軟性の裏には何か明確な考えがあるのでしょうか。

ウィル:クラッシュが何故それまでのロックの要素を避けたかったかっていうのは、その時代のポップ・ミュージックが例えばピンク・フロイドのようなプログレッシブ・ロックが盛り上がり過ぎていて、ありきたりなものになっていたから、「何か別なものをやらなくちゃ」とか「何か全然違うことをすることで闘う姿勢を見せよう」という考えがあったからだと思うんだ。でも僕らはいまの音楽シーンで特に闘うような相手はいないから、ただ自分たちが好きな音楽を取り入れて好きなようにやっているってことなんだ。

――ええ、古いロック・ミュージックの影響もある一方で、やはり楽曲を聴いた限りではバンド・サウンドの一番の影響源は00年代にイギリスで流行っていたようなインディー・ロック、いわゆるガレージ・ロック・リバイバルと括られるバンドたちだと思います。

ウィル:00年代のイギリスのバンドも好きだったけど、イギリスよりもアメリカのバンドをよく聴いていたね。しかももう少し前の。ラム・オブ・ゴッドだったり、ナイン・インチ・ネイルズみたいな。

――へえ、意外です!

ウィル:兄はブロック・パーティのようなイギリスのバンドに夢中だったよ。でも、ブロック・パーティはイギリスではビッグになり過ぎていたから、僕らはむしろ、当時まだ規模の小さいところで演奏していたミステリー・ジェッツやジェイミー・T、ローラ・マーリングとかのほうにより興味を持っていたよ。

――でも、あなたたちはギターを使っていないですよね。ギターを取り入れようと思ったことはないのでしょうか。

ウィル:ちょっと前に新しい曲を書いてみたんだけど、ジョークでギターも弾いてみたらすごくよかったよ。でも、いまの自分たちのサウンドと離れ過ぎている気がしてやめちゃったね(笑)。いまのところはギターを使うことは考えていないね。

マット:例えばジミ・ヘンドリックスやパンテラのギタリスト、ダイムバッグ・ダレルは僕のトップ・フェイヴァリット・アーティストだ。ただ個人的にギターの演奏が出来なくて、だからどう自分の音楽に使ったらいいかもあまりわからないんだ。ギターのサウンドは好きだけど……ただそれだけって感じだね。

――その代わりにリズムやグルーヴがフォーメーションのサウンドの重要なポイントだと思います。

マット:その通りだね。メロディも大事だけど、強靭なドラムとベースのサウンドが入っている方がより大事だし面白いと思うな。

――そうした感覚は誰かからの影響なのでしょうか?

ウィル:うーん、元々マットはドラムを叩いていたし、俺はベースを弾いていたから。それらが自分たちの得意な楽器だったから。それだけかな(笑)。

マット:フォーメーションというバンド自体が自分たち2人から始まっているから、自然とドラムとベースというふたつの楽器を軸にサウンドも出来上がっているんだ。

――曲作りのプロセスも、そうした感覚に基づいているのですか?

ウィル:いや、曲作りは、まさに“困難”だね(笑)。いろんなパターンがあるよ。ドラム・ビートから始めるときもあるし、ヴァースのリリックから始めるときも、ベースのリフからの時もある。どんなやり方もありだね。

――アルバムのプロデューサーはレオン・ヴァインホールとベン・バプティという二人ですが、二人を起用したのも、そうした“いろんなやり方”に対応するためだったのでしょうか?

マット:ベンはウィルの昔からの友人なんだ。レオンはたまたま共通の知り合いがいたからさ。

――マーティン(ブレインフィーダー/ニンジャ・チューン)の主宰レーベル《3024》からソロ名義作も出しているレオンのいままでの仕事を見てみると、ハウス・ミュージック関連のものが多いと思います。いままでの彼の仕事とあなたたちの音楽性はどんなふうにマッチすると考えていましたか?

ウィル:レオンとは会う前から彼や彼がこれまで携わった作品の大ファンだったんだ。だから、彼の名前が浮かんだ時には、ただ彼と一緒に出掛けたりしたくてたまらなかったね。彼と一緒に作業をしたのは自然なプロセスだったよ。知り合って一緒に飲んだりして仲良くなって友情を築き上げて、それから作品に取り掛かったからね。彼は自分たちがやりたいことをしっかり理解してくれていたし、彼も昔バンドにいたことがあったから自分たちの好きな音楽も理解してくれたんだ。

――複雑で難解な側面もある理知的な音楽からの影響と、フィジカルで開放的な音楽という相反する音楽の影響が、一つに共存しているのがあなたがたの音楽の魅力であると感じています。そうした「知性」と「野性」の共存についてはどんな風に考えていますか?

マット:自分たちが音楽を作っているときのフィーリングによるものだから、特に意識しているわけではないよ。一つのスタイルだけをトライするわけではなくて、いろんなことを試しているから、10年後なんかはもっと好きなことを出来るようになると思う。いまの時点で「自分たちはいろんなことを取り入れて試すバンド」ということをみんなにわかってもらえているから、今後どんな音楽が出来るようになるかが楽しみだよ。

――かたや、もう一人のプロデューサー、ベン・バプティについてですが、彼はこれまでアデルやマーク・ロンソン、フローレンス+ザ・マシーンといったポップ・アクトとの仕事が多いイメージです。フォーメーションの音楽はグルーヴが魅力な一方で、どの曲もキャッチ―に仕上がっていることもまた大きな強みですよね。

マット:うん、それも意識しているわけではないんだけど、1曲は3分くらいの短い時間に仕上げなきゃいけないから、その中で聴く人を惹きつけるためにはキャッチ―であることが大事だと思っているよ。

ウィル:とにかくたくさん曲を書いてコンスタントにライブ活動を続けること。そこが大事にだと思ってるからね。

マット:それを皆で協力してやること、チームワークも大事だと思うよ。

ウィル:あとは運もね!

――しかも、あなたたちには黒人音楽からの影響もある。今のイギリスのインディ・ロック・シーンよりもむしろいまロンドンで盛り上がっているグライムやヒップホップ・シーンへの共鳴はどの程度ありますか?

マット:グライム・ミュージックのシーンとの繋がりは感じるよ。

ウィル:あのシーンは自分にとっても、バンドにとってとても大事なものだね。

マット:彼らの音楽はとてもユニークだから、自分たちとは音楽的にはあまり共有していないかもしれないね。共有していることがあるとするならリリックかな。アグレッシブであったり、強い思いがこもっていたり、ポリティカルだったりね。

――でも、あなたたちの場合は彼らの歌詞に繋がりを感じつつも、リリックでは具体的な固有名詞が出てきたりはしませんね。

ウィル:僕らの歌詞はよりオープンで、アイディアも一般的だね。パーソナルな体験をもとに書いているのだけど、それをジェネラルな言葉を使って普遍的なモノにすることでより多くの人に繋がりを感じてもらえるようにすることを意識しているよ。テーマは友情や、不条理に対して強く闘おうとすることについてが多いかな。だからアルバムの曲にはあまり固有名詞とかは使わなかったよ。

――「具体的な名前を使うのではなくよりジェネラルな言葉使いで表現することで、聴き手にもよりわかりやすく感じてもらおう、よりシェアしてもらおう」という意図からなのですね。

ウィル:うん、その通りだよ。あとは、歌詞のテーマがネガティヴなことであっても、クリエイティブに言葉を選んだりすることで「よりポジティブに表現しよう」っていうこともよく考えているよ。

――ところで、ミュージック・ビデオや作品のアートワークではモノクロで作られていることが多いようですが、そこにはどのような意図があるのでしょうか。

マット:僕が(モノクロのアートが)大好きなんだ。モノクロはシンプルだけど目立つことが出来る、簡単なフォーマットだから使ってみたいと思ったよ。

ウィル:ただ、モノクロっていうのは今回のアルバムに対してのテーマであって、将来的にはもっといろいろな色を使って表現したいと思っているけどね。

――モノクロで作られたアートで特に好きな作家や作品はありますか?

マット:作品だとフランス映画の『憎しみ(原題は “LA HAINE”)』がすごくいいよ。あとは写真家のロバート・フランクやルイス・ベルツ、エド・ルシェが好きだね。

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Text By Daichi Yamamoto

Photo By Riu Nakamura


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Look At The Powerful People

LABEL : Hostess Entertainment
CAT.No : HSE-6400
PRICE : ¥2,400 + TAX

■Hostess Entertainment HP内 作品情報
http://hostess.co.jp/releases/2017/04/HSE-6400.html

■Hostess Entertainment HP内 アーティスト情報
http://hostess.co.jp/artists/formation/

SONICMANIA 2017 出演決定!

2017.08.18(Fri)

http://www.sonicmania.jp/2017/


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