INTERVIEWS : 21 September 2017

The Horrors

Back To The Dark Side, And A New Journey Starting From There.

By Hiroko Aizawa

INTERVIEWS : 21 September 2017

The Horrors

Back To The Dark Side, And A New Journey Starting From There.

By Hiroko Aizawa

ザ・ホラーズ~ダーク・サイドへの帰還と、そこから始まる新たな旅路

3年ぶりとなる5枚目のアルバム『ヴィ』発表に寄せて

ザ・ホラーズが久々にダークな側面を打ち出して3年ぶりに戻ってきた。デビュー・アルバムである『ストレンジ・ハウス』は、ダークでオカルト的な雰囲気も持つガレージ・ロック。その時期、多くのガレージ・ロック・リヴァイバルと呼ばれるバンドが次々に現れたせいもあり、所謂“旬の音”ではあった。ゴス・ファッションに身を包んだ彼らの姿はインパクトがあり、音楽に深くフォーカスされることは然程多くなかったようにも思える。ところが、続くセカンド・アルバムの『プライマリー・カラーズ』は、シューゲイザーやサイケの要素をいかんなく取り入れ、ノイジーなギターと浮遊感のあるシンセの音に深みのあるヴォーカルが重なり、唯一無二の存在感を示した予想外の作品となった。その後も、幽玄な美しさを纏った『スカイング』、ダンサブルで開放的な『ルミナス』と、作品ごとに常に実験性を忘れずにコロコロ色を変えてきた。

そして今回の『ヴィ』。『ルミナス』の後、「さて、では次はどうする?」という疑問が、バンド・メンバーの中に生まれた。『ルミナス』で、ある種の達成感をつかんだ彼らが次に進むには、それなりの時間が必要だった。しかし、彼らはそこで止まることなく、十二分に時間をかけて次の道を見つけることができた。そう、ダーク・サイドへの帰還である。なぜ彼らは、またダークな面を表現することを選んだのか、そして彼らにとってダークなものが持つ意味とは何か? 《HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER》出演前日、フロントマンであるファリス・バドワン(なんとハーキュルズ&ラヴ・アフェアの新作『Omnion』にヴォーカルで参加!)とベースのリース・ウェッブに話を訊いた。(取材/文:相澤宏子)

Interview with Faris Badwan & Rhys Webb

ーー『ルミナス』は、楽しく踊れるレコード、上を向いているようなレコードで、明るいイメージのタイトルにしたかったと、当時語っていましたよね。今回のヴィは、前作とは真逆で、アートワークやVの文字の文字をモチーフにしたロゴ、ヴィという音の響きなど、尖った、鋭利な印象があります。また、ジャケットやミュージックビデオで一貫して使われている、臓物のような物体は、おどろおどろしさを感じさせます。アルバム全体の音もヘヴィーな部分が多く、ダークな雰囲気が全体に漂っていますよね。今回もアルバム全体のイメージを包括したタイトル、ということでの『ヴィ』なのでしょうか?

Faris Badwan(以下、F):今回のタイトルは直接的には音の面に関連している訳ではないんだよね。音に関しては、どちらかと言うと音があまりなく、でもヘヴィーで自分たちのライブ・ショーに通じるような生々しさ、荒々しさがある雰囲気にしたかったんだ。これまでは音を重ねて作ることが多かったんだけれど、それに反して今回は逆に裸にするような、そういうものを作りたかったんだよね。

Rhys Webb(以下、R):Vという字はローマ数字で5を表す文字でもあるよね。今回は5作目でもあり、僕らは5人だよね。それから、1作目を発表してから今年でちょうど10年経つんだ。ある種10年っていうのは区切りで、ここから新たなショーが始まる、新たなキャリアが始まる、新たなストーリが始まる、5人で今まで続いてきて、さらにこれからも5人で前進していく、そういうものを象徴したタイトルなんだよね。

ーーその“新たなストーリー”というのはどういうものを想定していたのでしょうか? 前作、前々作は、イースト・ロンドンの自分たちのスタジオで、自作した機材などを使用してセルフプロデュースで制作していましたよね。ある程度バンドとして制作の方法が確立されてきていたと思います。一方で、常に新しい手法を試みていく、というのは常にホラーズのポリシーであったとも思いますが、そこで、今回の全く新しい試みとして、ポール・エプワースプロデュース作品となり、非常に驚きました。起用のきっかけ、意図もその“新たなストーリー”の一環だったと言えますか?

R:クリエイティヴな部分でここまでプロデューサーを使って作ったのは今回が初めてなので、ポールとやることは自分たちにとってチャレンジだったし、重要なことだった。新たな手法を試みる、という意味でね。

F:彼は世間ではポピュラーなイメージがついてるけど、それ以前は、実験的だったりノイジーでパワフルなライブ感のあるアルバムを作っているんだよ。10年前に彼が手掛けたシャイ・チャイルドっていうバンドのレコードが好きで買ったんだけど、それもすごくノイジーなアルバムだった。今回、彼はもう自分自身でレーベルを持っているので、自分の好きなように実験的なアルバムが作れるっていうことで、僕らと一緒にやってくれたんだと思うんだ。

R:彼は結構アングラなシーンのものをやってるっていうのを僕らは知っていたし、だから彼に会いに行った時も、そういった話になったんだけれども、ポール自身もリスクを負えるバンドと一緒にやりたい、という風に思ってくれていてね。リスクを負うっていうことは自分たちにも出来ると思ったし、ソングライティングをさらに一歩先に持っていってくれるような人とやりたい気持ちがあったので、お互いの気持ちが一致していたんだよね。

ーー「一般リスナーを疎外しないような実験的サウンド」と評されているのを読んだのですが、確かにそういった音が実現されていると感じました。曲の展開などは、複雑で難解な曲も多いですし、ディストーションギターやシンセの重い音などが多く使われています。しかし、ダンサブルだったり、結果として聴きやすい曲に完成している曲が多いと思いました。実験性と大衆性の両立というのは、リスクが高い試みともいえると思います。

F:自分たちは昔から実験的なサウンドをで作ってきたわけだけど、実験的になりすぎないようにはしていたんだ。だから、もし今回の作品が今までよりも聴きやすいものになっていると感じられるとしたら、それは単純に僕たちの曲が良くなっているってことだと思うよ(笑)。今まで5枚アルバムを作ってきた、まさにその成長の成果なんじゃないかな。

R:ポール自身も実験的な人だから、自分たちをセーブするというより、逆にいっぱいある中からこれ、という風にフォーカスさせてくれる、集中させてくれる、自信を持たせてくれる、そういった手法でアプローチしてくれたんだ。そういう意味において、彼の力はすごくあったかもしれないね。

"何にせよ、僕はポジティブなものであっても、重さというか、奥行き、奥深さがあるものに惹かれるんだ。必ずしもヘヴィーなものでなくても、明るいものの中にも、そういうダークさが感じられるものが好きなんだよね。"

ーー確かに今作には『ストレンジ・ハウス』の頃を思わせるような荒削りな演奏を生かしたインダストリアル・ロック、あるいはアコースティック・サウンドでヴォーカルを聴かせる曲やデヴィッド・ボウイのようなキラキラとしたダンサブルなサウンドが詰まっていて、とても振れ幅の広い作品なのに聴きやすいですよね。それでいて、全体としてはダークで、重みのある作品だという印象を持ちました。前作から3年という時間を経て、原点回帰とは違うと思いますが、ダークなサウンドに再びフォーカスしたのはなぜなのでしょうか?

R:確かに、『スカイング』と『ルミナス』を作って、自分たちの一つの“円”が終わったんだよね。行きたいところまで行ってしまったので、この先行くとなった時に、新しい1ページをめくると、そこに欲しかったのは初期のヘヴィーさや荒々しさだったりしたんだ。それを戻したいと思ったし、今の時期だからそれができたんだと思う。

F:何にせよ、僕はポジティブなものであっても、重さというか、奥行き、奥深さがあるものに惹かれるんだ。必ずしもヘヴィーなものでなくても、明るいものの中にも、そういうダークさが感じられるものが好きなんだよね。

ーーそうなると、一周して、また新しい円がダークな部分にフォーカスすることから始まったと。では、今はまだ何とも言えないとは思いますが、今後はどう二周目に入っていくと思いますか?

R:『ルミナス』を作った後っていうのは、本当に一つ終わった感じがして。だからその次どうしたら良いんだろう?っていうのが分かるまでに実際ちょっと時間が掛かったんだよね。でも今回『ヴィ』を作り終えて、今はとても気持ちが次に向かっていて、行ける!っていうのがあるんだ。もちろん、どういった方向に向かっていくかは分からないけどね。

ーーホラーズはスタジオ作業以上にライヴでの表現も重視しているバンドだと思います。特に、2曲目の「プレス・エンター・トゥー・イグジット」などは、1曲の中でDJのプレイさながらの緩急があったり、後半にいくにつれてグッと盛り上がっていくような展開がライヴに映えそうだと感じました。重みのある曲、ダークな曲でありながらライヴでオーディエンスをエンターテインできる曲があるところがホラーズの強みでもあると思いますが、高揚とダークさの共存を可能にしているのは、どんな部分だと思いますか?

R:自分たちの曲は明るい曲だとしても集中してやってるから、重さがあるというか、ドラマがある明るさだと思うんだよね。

F:お客さんにチャンスを与えるというか、ダークでヘヴィーな曲であっても、そこにダイナミクスを共存させることは可能だし、ライブは長く観るものだから、その中には音が薄い曲もあればヘヴィーな曲もあるんだけど、ヘヴィーさの中から明るさを引き出すこともできるし、要はライヴはジャーニー……“旅路”だと思うんだよね。

ーーなるほど、今作は特にヴァラエティに富んだアルバムなので、アルバム自体が“旅路”とも言えるんでしょうかね。

R:自分たちの旅路とアルバムの中にある旅路と、どこか関連性はあるのかもしれないね。

ーーそうしたジャーニー、旅路を意識した全体像は、歌詞にも表れていると考えますか? 例えば、「マシーン」の歌詞は冷徹で攻撃的な内容だと思いましたが、一方で、「サムシング・トゥー・リメンバー・ミー・バイ」は失恋の曲のようで……と、まるで大きな物語…それは旅の流れを見ているような印象です。歌詞はどのようなプロセスで生み出されたのでしょうか? また、歌詞を通じて伝えたいテーマなどはあったのか、それとも曲の雰囲気などに合わせた物語的なものなのでしょうか?

F:歌詞の話はあまり得意じゃないんだ…(苦笑)。「マシーン」はテーマはあるんだけど、物事がトランスフォームするシミュレートする、そんなところかな。イミテーション、人工的に作られたもの、シミュレーション…本物に近づけて作ろうとすればするほどグロテスクになっていく、みたいなのはテーマかな。ジャケットも然りだけど。「サムシング・トゥー・リメンバー・ミー・バイ」に関しては、愛が終わる時を歌ってるわけだけど、愛が終わる時っていうのはネガティブなことしか残らないでしょ? そういう皮肉な曲なんだ。自分はそういうコントラストとか矛盾が好きだから、それがさっき言った物事の奥行きにも繋がってくるよね。日本語で言うところの“Setsuna”(刹那)っていう感じとかね。

ーーなるほど日本語の感覚ですか。先ほどジャケットの話もありましたが、これは日本盤LPのデザイン、帯をモチーフとしてるように見えますよね。そうした伝統的な文化にも興味があるあなたがたにとってヴァイナル・レコードも重要なファクターであるように想像できるのですが、熱心なヴァイナル収集家でもある立場から、今作でA面とB面を意識した曲順など、レコードで聴くことを意識した部分とかはありますか?

R:実のところ、今回は結構曲順には苦労したんだ。これまでもレコードのA面B面っていうのは意識して作っていて、今までは割と楽に選べたんだよね。今回は理由はよく分からないんだけど、結構苦戦したよ。聴く人が1曲単位で聴いてしまうのは分かってるんだけど(笑)、作る側としてはやっぱりこういう流れで、っていうのを意識して作りたいものだよね。

ーーところで、最後に一つ聞きたいんですが、タイトルの『ヴィ』はピンチョンの同名小説からとられているのでは? と、この『TURN』のプロデューサーが言ってきかないんですけど……。

F:はははは、それ直接は関係ないんだよ~。よく訊かれる質問なんだけどね(苦笑)。

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■Hostess Entertainment HP内 アーティスト情報
http://hostess.co.jp/artists/thehorrors/

■ The Horrors OFFICIAL SITE
http://www.thehorrors.co.uk/

Text By Hiroko Aizawa

Photo By Riu Nakamura


The Horrors

V

LABEL : Wolf Tone / Hostess
CAT.No : HSU-10162
RELEASE DATE : 2017.09.22
PRICE : ¥2,400 + TAX


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