Back

ROTH BART BARONニュー・アルバム『HEX』大好評! 人間も機械も。オフラインもオンラインも。目に見えないモノをも信じ、ゆるやかにつながる“僕たちの音楽”とは

22 December 2018 | By Nami Igusa

ROTH BART BARONは“Folk”=民草のための“僕たちの歌”を歌うバンドだーーそれは、これまでの彼らの活動や作品にもずっと抱き続けてきた確信だ。『化け物山と合唱団』(2012年)や『ロットバルトバロンの氷河期』(2014年)といった初期の作品では、人間の何気ない生活を見つめながら世の中の不条理を私たちに提示していたし、エレクトロニックなサウンドが登場するようになった前作『ATOM』(2015年)では、都市の中に押さえつけられた私たちの中の衝動を目覚めさせてもくれた。2016年の自主企画イベント《BEAR NIGHT》をはじめ、ライブにはいつも血の通った手作り感があり、その最後には必ず代表曲「アルミニウム」をアコースティック・ギター一本で観客とともに歌うのが彼らのスタイルだ。

 けれど、最新アルバム『HEX』における“僕たち”は、ちょっとそのを様相を異にしているように感じられる。開放的なサウンドと、“僕ら”という言葉を多用するようになった歌詞から伺えるのは、「人と繋がりたい」という気持ちではなく、実はもうすでにあなたの中にも僕がいて、あなたと僕は繋がっているのではないか? という問いかけだ。彼らはそうやって、二項対立では世界は決して割り切れないことを、私たちに気付かせてくれている。

 だからこそ本作では、人間も機械も、そのすべてが、“僕たち”なのではないだろうか。私たちが想像していたよりずっと早く、デジタルの世界は魔法のように便利になった。人工知能はもうすぐ私たちの思考力を追い抜くだろう。人間の身体の一部だって機械になるかもしれない。感情だってテクノロジーで再現できるようになるかも…。そんな時代だからこそ、ラップトップに取り込んで加工した声や楽器の音で、フォーク・ミュージックを奏でてもいいのだ。いや、それこそがまさに現代のフォーク・ミュージックなのかもしれない。

 いよいよ、年をまたいで2月にかけ本格的にスタートするアルバム・ツアーを前に、そんなROTH BART BARONの三船雅也にメールでインタビューを行った。アルバム・レビューとともに、彼らの3年ぶりのアルバム『HEX』をじっくり紐解いていこう。(インタビュー・文 / 井草七海 トップ写真 / Kazumichi Kokei)

Interview with Masaya Mifune

――これまでのROTH BART BARON(以下、RBB)の楽曲のサウンドには、それらがレコーディングされたフィラデルフィアやモントリオールといった場所柄の空気感もあってか、どこか神秘的な雰囲気を感じさせる部分があったように思います。ですが、今作では、より力強さに重きが置かれた、骨格のはっきりとしたバンド・アンサンブルが聴けるように感じました。三船さんのヴォーカルもより近くに聴こえますし、太さと生っぽさが増したようにも思います。
 前作『ATOM』以降、バンドは渡英をしたり、岡田拓郎さんの参加によってサポートメンバーが増えたりという出来事もありましたが、こうした今作での音像の変化の背景や、きっかけになった出来事について、さらに具体的に教えてください。

三船雅也(以下、三船):今回バンドはまちがいなく変化を必要としていたんだと思うんです。経験も重ねて音楽も作って来て、《BEAR NIGHT》(2016年のバンド主催イベント)や自主イベントもくぐり抜けて、これまで『化け物山と合唱団』(2012年)、『ロットバルトバロンの氷河期』(2014年)、『ATOM』(2015年)をリリースして。アメリカ・ツアー、アジア・ツアー、カナダ、イギリスといろんな国をバンドは独自の道で制作、演奏をして来たのですが、そこで体験したこと、話した人々、歩いた町の匂い、おっしゃっていただいた空気感、それを全て自分の中に取り込んで消化して、今まで僕らのために尽くしてしてくれた人たちのことをもっと感動させたり、びっくりさせたり、その人の人生を根底から覆すには、今までの方法ではダメだったんです。

 まず出来た曲に自分自身が感動しない状況がだいぶ長く続いてしまって、(これがいわゆるスランプってやつだと思うんですけど)自分の音楽でどうしようもなく涙が止まらなくなったりとか、歌っている自分を極端に嫌いになったり、好きになったりする力を持った曲をたくさん書く必要があったのです。

 だからいろいろな方法を試しました。楽器をたくさん買って、食べ物を変えたり、一人でロシアへ旅に出たり、話す言葉を変えたり、ジョギングをして、今思えば自分の皮を脱ぎ捨てるようにこの3年間は生きていたなと思います(誤解しないで欲しいのはその過程を僕は楽しんでやっていたのです)。変化のための変化ではないんですが、気が狂うほど世の中は日々変わって行くし、そこに振り回されたり、その世の中を見つめることを諦めたくしたくないなと考えながらライブをして、曲を作ってました。

 そんな中、岡田(拓郎)くんがちょうどソロで『ノスタルジア』(2017年)のレコーディングに参加してくれないか? と声をかけて来てくれて、とてもいい曲だったしいいじゃんやろうよって歌わせてもらったんです。

 彼は僕の出会って来た日本人の中で最も尊敬するミュージシャンの一人です、森は生きているの時からの出会いなんですが、当時彼もバンドをひとまず終えて、僕もアジア・ツアーとか忙しい時期をちょうど終えたばっかりなのでタイミングがあったんですね。結果素晴らしい化学反応を感じたんです。僕らのバンドには僕以外にギターを弾く人がいなかったので、彼の突き抜けるようなギターや、彼の頭の中に広がっているアイディアをバンドに入れてみたかったんです。

 僕は好奇心の塊なので。(笑)

 彼がバンドにもたらしたものは今までざまざまな国でバンドが培って来た経験と共に今作にとても良い影響をもたらしてくれていると思います。

 今までの経験をもとに、もう大丈夫、自分たちはどこにいても自分たちのサウンドが作れるんだという確信を手に入れることができて、今の日本で現代と向き合いながら音楽をしっかりと作れるようになったのだと思います。

photo by Kazumichi Kokei

――今作の中で「HEX」と「SPEAK SILENCE」をミックスしているのは、チャンス・ザ・ラッパーの『Acid Rap』や『Coloring Book』の数曲、最近ではノーネームの『Room25』を手がけるなど、まさに今のシカゴのヒップホップ・シーンを牽引するエンジニアのL10Mixedit(Elton Chueng)ですね。実際、リズムセクションやベース・ラインの厚みや、コーラスのレイヤーの華やかさは、他のRBBの楽曲にはないものになっていました。とはいえ、一般的には“フォークロック”と形容されるRBBのファンには、ヒップホップには馴染みの薄いリスナーも多いかもしれません。
 ですので、まず彼にミックスを依頼することに決めた意図を教えてください。また実際、ミックスされて帰って来たものを聴いて、ご自身が期待していたものから良い意味で裏切られた部分などはあったでしょうか?

三船:前からシカゴには憧れがずっとありました、マディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフ、バディ・ガイといった僕の好きなブルーズの聖地でもあり、中でもウィルコは十代後半の僕に衝撃を与えたバンドです。子供の時から母が海外ドラマのER(ノア・ワイリーが出てるヤツ)を毎日のように見て育って来たし。そんな音楽的ににもビジュアル的にも僕にとって重要な町です。

 今のシカゴのヒップホップ・シーンは本当に面白くて、ウィルコを始め、セン・モリモトくんとか トーキョーとかジャミラ・ウッズ、ノーネーム、ホイットニーがいて、年齢も人種も関係なく生活を音楽が密接に結びついてて、ここ10年のUSインディー・ロックのフィルターを通った新しいサウンドが鳴っているのにとても感動を覚えました。このシーンがどのくらい大きなうねりになるのかはまだまだ全然わからないけど、間違いなく何かが起きている町だと思います。

 あの周りの音楽を僕は”ヒップホップ” とどうしても思えなかったんです。ただ素晴らしい”song”がそこにただあってそれに感動したんです。そして、僕がいいなと思う音楽は必ずL10Mixeditがミックスしてたんです。

 L10(エルトン)くんは中国系アメリカ人なんですけど、センくんとかトーキョーもそうですが、ヒップホップ、ブラックのコミュニティを飛び出して、「どの人種だってやっていいんだ」という今ならではの価値観のブレイクスルーがとても気持ちがいいし、フィジカルでリリースしない、できたらすぐデジタル配信でリリースしちゃうそのフットワークの軽さ、何より音楽を楽しんでいることも。

 今の滅茶苦茶なアメリカで希望を見た気がしたし、そんな彼らと音楽を一緒に作りたいと思ったのです。彼には「HEX」と「SPEAK SILENCE」をミックスしてもらったんだけど本当に素晴らしいサウンドにしてくれて、裏切られたことはそうだな、「HEX」の間奏のサックスの音を思いっきり小さくして、僕の声のサンプリングのピッチをグイーってあげてものすごいホーリーな感じにしちゃったのはびっくりしました。夏にアップした僕のミックスとはまた全然違うアプローチで本当に最高だった。(笑) また何か一緒にやれたらなと思ってます。

――RBBはこれまでもテクノロジーを決して排除せずむしろ積極的に取り入れてきたバンドですし、今作ではサウンド面でもよりエレクトロニックな要素が増えています。一方で、三船さんの今作の歌詞には「どうしようもない“人間”という存在を受け止めながら、人間の持つ生命力や衝動を賛歌する」ようなテーマ性が、これまで以上にストレートに表現されているようにも感じます。
 そんな今作の中で印象深かったのが「HAL」です。これは『2001年宇宙の旅』の“HAL 9000”を意識したのかな? と個人的には推察していますが、あの作品の中では、人間の指示に混乱をきたした人工知能のHALは最終的には人間の手でシャットダウンされ宇宙に放置されることになりますね。SFの世界では“人間と機械の違いとは何か?”という命題が度々扱われますが、「HAL」という楽曲はまさに、“HAL 9000”の哀しい顛末に“人間”と“機械”の距離について重ねて、投げかけているようにも思いました。
人工知能のようなテクノロジーがますます身近になりつつある現代で、RBBは(三船さんは)テクノロジーとヒューマニティーの距離について、今作の中でどう捉えようとしたのでしょうか?

三船:今の所はテクノロジーとヒューマニティーは否応なく混ざって行くと思います、それを僕たちが緩やかに無意識に快楽のうちに生活の中に取り込んでいる以上、何か問題が起きる限り僕らはグラデーションのように融和してゆくのだと思います。

 最近友人とこんな話になったんですけど。ハリー・ポッターに出てくる“ホークロックス”って魔法を知っていますか? ハリーの両親を殺した敵、ヴォルデモートは自分の命をいくつかのモノに分散させて(アクセサリーとか、他のものに)永遠に生き長らえようとする禁忌の呪文なのですが。

 僕らは日々色んな SNS やアプリに自分の記録をアップしてゆきますよね? それが膨大にたまって、いつかあなた本人が死んでしまった時に、あなたのアカウントが消されずに残っていたら。それは今はほんのすこしですがあなたの一部はこの世に残るはずです、これが5Gの普及した世界になって、もっと膨大なデータが外部記憶としてあなたの命のコピーを取れるとしたら、『トーマの心臓』(萩尾望都・著)の言う“二度目の死(肉体の死ではなく、他人の中にある自分が消えてしまうこと)”というものが永遠になくならないとしたら。僕らはもう自分の意思では死ぬことができない時代を近い将来迎えるのかもしれません。

 テクノロジーとヒューマニティーという言い方で綺麗に二つに分断できる時代ももうすぐ無くなるんだと思います。

 テクノロジーも自然の生き物である僕たちが生み出したものなのです、もしかしたらテクノロジーやデジタルなものは自然物の一部なのかもしれないなとすら思えるときすらあるのです。歌舞伎の女形が時に女性より女性らしくなってしまうように、テクノロジーやデジタルなものがヒューマニティーやアナログなものをまとって本物を超えてしまう。それはコインの裏表、生と死と一緒なのかもしれないし。

 だからこのアルバムには一見普通に聞こえるかもしれない僕の声やピアノのアコースティックなサウンドもわざとコンピューターに取り込んでソフトウェアで AI 処理させたり、ソフト上で編集して、人間では絶対やらないような処理がどの曲にも施されています。このアルバムでたまに聞こえるバグのようなサウンドはそのためです。コンセプト的にも音楽的にもテクノロジーとヒューマニティーが両方存在しているのです。

 10年前にスマートフォンはなかったんです、たった10年で僕たちの世界はこんな風になってしまったんです。

 僕が『HEX』を作りながら向き合っていたのはその一見相反すると思っていた2つのものが実は一緒に混ざり合っていてそのグラデーションをちゃんと見つめて何が起きているかを見定める、心と瞳を持ち続けたいと言うことです。それを拒絶するのか、受け入れるのか、見ないふりをするのか、無視するのか、答えを出して生きるのはこのアルバムを聴いた人それぞれの采配です。

 いつかその見定める心を持つことができれは僕は機械にだって愛情を抱いて生きていけるようになれると思うのです。スパイク・ジョーンズの映画のように、誰かがAIに恋に落ちてもいいと思うのです。こんなラップトップ・ミュージック全盛の時代にフォーク・ギターを持っててもいいのです。

ヴォーカル、ギターの三船雅也

"モノじゃなくて体験を、目には見えないものを共有してゆきたい。音楽って目に見えない。そういう意味でバンドの音楽は今一番“FOLKMUSIC”だと思います"

――今作の三船さんの歌詞には、たとえば<本当の気持ちを君に/見せることができるだろうか><君が鬼の子供でも/妖怪の子でも>(「VENOM~天国と地獄~」)というフレーズがあったりと、これまで以上に目の前の相手(それがどんな相手であっても)とつながりたい、対話をしたい、という気持ちが滲み出ているようです。
 ですが一方で、“つながり”という言葉は3.11の後にはとても希求された概念であったわけですが、今や、SNSに支配されたようなこの社会において“つながり”に疲れている人も少なくありません。そんな今、RBBというバンドがあえて必要だと考える“つながり”とは、どんなかたち、どんなものだと言えそうでしょうか?

三船:僕はつながりと対話は別のものだと思っています。バンドの歌詞には必ず君と僕が出てきているのですが、今回は”僕ら”というワードが増えました。  最近思ったのはこんなに1日の大半スマートフォンを見つめている僕たちでも、オンラインで、SNSで繋がれないことがたくさんあり、それによって繋がれない人たちが沢山いるということです。

 でも自分の肉体のラインを超えたらそれは他人で別の存在なのでしょうか? アラン・ワッツが正しければ質問してくれたあなたは僕の中にいて、それは僕が生み出した存在でもあるのです。ということは僕の生きる世界はもしかしたら僕自身が生み出したものなのかもしれない。あなたは僕の一部かもしれないということです。

 仮にその考えが正しかったとするなら、僕を取り巻く全ては繋がっているかもしれないでしょう? 望もうが望まなかろうが。僕の体を超えた全ての存在が僕の一部ということになります。70億人いる気が狂うほど一人一人違う人たちのことを考えると僕の人生を一生かけても間に合わないのでほどほどにしているんですが(笑)。

 個人的に、日本という近代国家の中では異種婚姻譚に寛容な国だと思っていて、自分の外の世界を、生活のどこかにスペースを取っといてある人種だと思うんですが。それもつながりを感じて生きるってことですよね? 雪女とか、鶴とか、狐のお嫁さんとか、よく混ざっちゃうし。

 繋がっている人と必ず対話をする必要もないと僕は思います。家族と毎日話したいわけでもないし、恋人と四六時中一緒にいる必要もないし、繋がることそれ自体は大層な目的ではありません、この世にただ存在している現象です。

 だからバンドが歌っている”僕らに”俺を入れてくれないでくれよって人沢山いると思うんです。 それでいいと思うんです、でもどっかで繋がっちゃってるんです多分、それがテクノロジーによってオンラインとオフラインで見えるようになっちゃったんです。  日本語の縁って言葉もそれに近い気がします。人を分断せずに縁と情にどうしても残酷になれない日本人の弱点が僕はなんだかんだ好きなのです。

 ただ日本人のこの輪を大切にし過ぎて人間性が無視され、重みに耐えきれず一人一人苦しんでゆくのも答えじゃないし、西洋的に個を優先して人と人を分断してゆくことも何か答えではないなと感じています。『HEX』が見つめているものはその先の第三、第四のアイデアだと思います。

 要は僕らの間にある目には見えない何かをどのくらい信じていられるか? それを信じられる人を僕は信じていたいなってことです。

ドラム、パーカッションの中原徹也

――前の質問と少しかぶりますが、“つながり”といえば、『HEX』の制作にあたっては、クラウドファンディングを実施し参加者をPALACE(β)というFacebookコミュニティに招待されていますね。私も参加者の一人なのでその活動を拝見していますが、PALACE(β)は普通はアーティストからファンへ“与える”意味合いの強いファンクラブと違って、むしろ参加者の皆さんが様々な形でバンドに貢献できることそのものを喜んでいる空間だな、と感じています。
 一方で、もし有名にさえなればいいなら、既存のシーンやプロモーションの枠組みに乗っかった方がもっと効率がいいのでは、とも言えてしまいます。けれどロットはそれを選ばず、コミュニティの参加者と一緒に『HEX』を広めていこうとされていますね。
 そんなPALACE(β)で、今のところ1番手応えを感じられた出来事や活動は、何でしょうか? また、参加者の皆さんを、リスナーやファンという言葉を使わないとするならば、どういう存在だと考えていますか?

三船:PALACE(β)のみんなを一言で言うと“FOLKS”ですね。仲間や友達でもいいけど…

 例えると映画『君の名は』って見たことありますか? あの映画で人と人は糸で繋がると言うのが物語の大きな鍵になってますよね。その見えない糸のような緩やかなつながりを感じながら断ち切らないよう大切に繋がってゆくと言うイメージです。

 今年はだいぶ平和だったなと思うんですけど、ついこの間、2、3年前はかなりヨーロッパも、アジアもアメリカもざわざわしてて、トランプが出て来て、憲法改正があって、テロがあって、ヨーロッパも移民だブレグジットだ、ル・ペンが出て来て、そんな選択肢が僕らにもたらされて、「君はそれにYES / NOなの?」 って突然世の中が二分されてしまった。戦わなくてもいいことに随分振り回されたなと個人的に思ったんですね、でも答えなんてそんな簡単に割り切れるものじゃあないでしょう?

 人の答えには様々なグラデーションがあるはずだし、タイミングによって違うし。最近日本の教育でも LGBTと言われるようになったけど当たり前ですが同性愛者も絶対4種類じゃ割り切れないでしょう。

(だからそんな波乱の世界を一度見ておこうと思ってイギリスへ行ったんです、ヨーロッパで何が起きているかを体感しないと次の作品作っちゃいけない気がして)  この、YES / NOを叩きつけて人々を強制的に分断させる動きはやりたくないと思ったんです。

 僕らには一人一人様々なアイデアがあって、それを緩やかに繋がりながら混ぜていって一つの作品や、ものことを生み出す力を持っているんです。だから僕らはそれをみんなでやれる環境を作れないだろうかって考えたんです。

 だからPALACE(β)はただのファンクラブではなく、研究所のようなものだと思います。ロットの音楽を中心にして、僕らができることに枝葉を伸ばしてゆくこと、義務教育のようにトップダウンで上から押さえつけるのではなく、オーディエンスとバンドが新しい形で繋がってゆく、この見えない何かを信じることを具体的に始めようと思ったのです。

 PALACE(β)でやってはいけないことはないんです、なんでもやっていい。最近参加してくれているメンバーの子が実はイラストかいてるんですって言って来てくれて、そのイラストがとても素晴らしかったので直ぐに工房に駆け込んでバンドの新しいグッズに採用したりしました。こういう小さな個人レベルのことから、PALACE(β)で作るバンド主催のフェスティバルを東京以外の街でも出来るようにしていきたいですね。

 みんなで何かを作り上げるの、楽しいですよ。みんな個性とか得意技持ってるんですよ、隠して教えてないだけで。(笑) それをアウトプットする言い訳にPALACE(β)を使ってくれたらすごい嬉しいですね。

 モノじゃなくて体験を、目には見えないものを共有してゆきたいです。音楽って目に見えないですからね。そういう意味でバンドの音楽は今一番“FOLKMUSIC”だと思います。

アルバム、ライヴに参加している岡田拓郎(G)と三船

――最後に、『HEX』のリリースツアーについてお聞かせください。これまでも、会場の装飾や物販、あるいは国の重要文化財である山形の文翔館でのライブ企画のように(今回のツアーでも酒蔵でのライブがあったりしますね)、ライブという体験そのものへの試行錯誤を重ねてきていて、その活動は本当に独創的です。
『HEX』という作品を携えた今回のツアーでは、オーディエンスにどんなライブを見せたいと考えていますか? またどんな風にライブを感じ取ってもらいたいと思っていますか?

三船:HEX ツアーの準備はとても順調です。バンドも今までにないくらい一体感があるし、音楽を鳴らすことが今とっても楽しいんです。

 僕らにできるのはライブという数時間をオーディエンスと繋がって共有してゆく、というシンプルなことをいかに丁寧に楽しく、一生忘れないようにするかということだと思うのです。心を震わせるような瞬間を世界中で沢山の人と音楽で沢山生み出せるのがライブだと思っています。

 そのために僕らはトライし続けると思います。ライブハウスで東名阪回ることがバンドじゃないし、武道館でやったら終わりじゃないし、バンドが出来る事ってまだまだ沢山あると思うんです。

 このバンドはおかげさまで沢山の東京以外の人たちに救われているので、その人たちとPALACE(β)の中も外も巻き込んで大きなうねりをしっかり作って、新しいライブ公演の形を手作りで作ってゆきたいです。まだまだ出会っていない人が沢山いますしね。

 オンラインとオフラインを同時に使いながら、テクノロジーとヒューマニティーに悩みながら、いつか機械人間になって感情もAIなのか自分なのかわからなくなる世界が来ても、真実を見定めで音楽を鳴らしてゆきたいですね。

 まだまだやりたいことも沢山あるし会いたい人も沢山いるし、我ながら忙しい人生ですね。(笑)

 これからツアーで会う人も楽しみに待っててほしいし、いつかこのバンドに巻き込まれてくれたら嬉しいです。

■amazon商品ページはこちら

◼️ROTH BART BARON OFFICIAL SITE
https://www.rothbartbaron.com/

◼️Felicity内アーティスト情報
https://1fct.net/artists/roth-bart-baron

◼️ライヴ情報
3年ぶり3rd Album『HEX』をリリースしたばかりの ROTH BART BARON と、結成20周年を迎え独自の活動の幅を広げる sleepy.ab 成山剛が一夜の合体。両アーティストの既発曲、そして新曲を ”BAND + 弦楽四重奏” 編成で披露します。
札幌に拠点を構える Cameleon Label “tuLaLa” を始め、 Strings を愛する豪華なミュージシャン達が集結。須原杏・銘苅麻野・梶谷裕子・林田順平による弦楽四重奏に加え、キーボードは西池達也、tuLaLa、Shizuka Kanata、パーカッションにエミリオ。 ”札幌 + 東京”のミュージシャンが一堂に会する特別な一夜。どうぞお楽しみに!
また、ビジュアルアートワークはドイツの童話集「グリム」「アンデルセン」の挿絵やデンマークのホテルのデザインを手掛けるイラストレーター、シンヤチサトが担当。
彼女のアートワークを中心に元映画館であったWWWにて、ビジュアルと共に届けします。

出演者

ROTH BART BARON
三船雅也 – Vocal/Guitar –
中原鉄也 – Drums –

成山剛 – Vocal/Guitar –

須原杏 – Violin –
銘苅麻野 – Violin –
梶谷裕子 – Viola –
林田順平 – Cello –

エミリオ – Percussion –

tuLaLa – Piano Strings Arrangement –
Shizuka – Kanata Keyboard Strings Arrangement –
西池達也 – Keyboard –

2019.2.13(水)
渋谷WWW [ 150-0042 東京都渋谷区宇田川町13-17 ライズビル地下 (03-5458-7685) ]
OPEN 18:15 START 19:00
¥4,000 + 1d
学生割引(学生証提示にて¥1,000キャッシュバック)
主催 / ROTH BART BARON・tuLaLa
問合せ:info@rothbartbaron.com

TICKET:e+ / LAWSON / ぴあ / Peatix

特設WEB
https://www.rothbartbaron.com/strings

Text By Nami Igusa


Roth Bart Baron

『HEX』

LABEL : Felicity
RELEASE DATE : 2018.11.07
井草七海によるレビューはこちら

1 2 3 73