INTERVIEWS : 04 July 2017

空間現代

What is the new performance "organ" ?

By Kota Takenaka

INTERVIEWS : 04 July 2017

空間現代

What is the new performance "organ" ?

By Kota Takenaka

《外》という身体の中で蠢く臓物/器官(organ)
空間現代の新作公演「オルガン」とは何か?

 昨年9月、バンド空間現代が東京から京都に拠点を移し、自らのスタジオ兼ライヴ・ハウス《外》をオープンした。

スタートから半年と少しが経った《外》では、彼ら自身の企画はもちろん、ラシャード・ベッカーやイーライ・ケスラー、ZSのグレッグ・フォックス、ダキムやジャロッド・ファウラーといった一癖も二癖もある海外勢の来日公演が開催されたほか(未発表だが、来る8月にはインガ・コープランドやDon’t DJの来日公演も決定しているとのこと)。goatのYPYや行松陽介、Madegg、odd eyesなど、関西を拠点に活動する同時代のアーティストの切磋の場としても機能している。また、大友良英やジム・オルーク、内橋和久、PHEWなど、偉大な先達を京都において近接な空間で良質な音響と共に観ることのできる稀有な場所でもある。滞在可能なスタジオ兼ライヴ・ハウスという意味では、音響/美術作家・梅田哲也による滞在制作が行われ、来月には、バストロ、ガスター・デル・ソルのデヴィッド・グラブスと宇波拓による録音合宿とコンサートも予定されている。

 あえて固有名を列挙してみたが、《外》という場所の特異性が少しでも伝わればと思う。関西圏の方や京都に旅行に行く際には一度足を運んでみてほしい。

 そして、上記のような企画もぜひチェックしていただきたいのだが、《外》=“空間現代のスタジオ”という本来の意義に即したイベントがこの7月に開催される。彼らが2016年に発表した公演『擦過』に続く、全編書き下ろしの新作公演『オルガン』。《外》7月の6日間を割いて催され、東京では《スーパーデラックス》にて一日限り開催されるこの公演とは一体……?! 現在、当公演の制作の追い込みで《外》に籠っている空間現代に話を聞いた。まずは『オルガン』の公演開催を控えて、インタビューの前半をお届けする。(取材/文:竹中コウタ アーティスト写真:竹内洋平)

Interview with Kukangendai

――『オルガン』の話を伺っていく前に、まず前回公演の「擦過」について教えてください。

山田英晶(以下Y):あれは元々は、愛知県芸術劇場の《サウンドパフォーマンス・プラットフォーム》というプログラムのために作った公演です。持ち時間30分と言われていたので、30分で一つのリズムを作ってみようという。近年のライヴで僕らが試みているこれまでに作ってきた楽曲をシームレスに繋げて一本のライヴにするというのではなくて、30分で一曲というのをやってみようと。その後に《外》ができて、オープンしてすぐに、京都で行われる舞台芸術祭《KYOTO EXPERIMENT》のオープン・エントリーという公募枠があると聞いて、その枠でまた「擦過」を《外》で再演しようというアイデアが出て、それで元々30分の作品だった「擦過」を更にビルドアップして60分にしてみよう、と。

Photo By 石塚俊

――では《外》でゼロからクリエイションをして発表するという意味では今回の「オルガン」が初めてなんですね。

Y:そうですね。しかもそもそも《外》で上演した60分版の『擦過』は、僕らは公演の直前までヨーロッパ・ツアーに出ていてかなりバタバタだったので、そのツアーの最中に作っていた。ツアー中に現地でスタジオを借りて。

古谷野慶輔(以下K):だから現地の人からお前ら日本人はどんだけ練習好きなんだよ、って(笑)。そういう意味では《外》でちゃんと作るというのは今回が初めて。

野口順哉(以下N):今回は完全にゼロからだしね。

K:『擦過』は30分の作品を一時間にしようというのが枠組みとしてあったんだけど、『オルガン』の場合は時間の枠とかもないし、『擦過』の場合は一つのリズムを一時間でどうみせていくかということを考えていたけど、『オルガン』はそういう枠もない。

Y:『擦過』は、一つのリズムで60分演奏することができるのか? という。一つのリズムをいろんな角度からみてみるとか、抜き差しでヴァリエーションを作っていくっていうことだったけど、それはあれでやり尽くした感じもあるから、だから今回はそういうことじゃないことにしようと。

K:じゃあなんなのか? というところから始めて…。

N:元々、『擦過』を作る以前、《外》を作る前から、普段のライヴに出演する際に一時間なり30分なりという与えられた持ち時間をライヴ・ハウスで演奏するときに、そのライヴのはじまりから終わりまでを、既存の楽曲を織り合わせて一つのものとして演奏できないかという試みをここ数年やっていて、その変化形で、一時間で一曲でしょっていうのが『擦過』なんです。今回はまた『擦過』とも好対照な作品にしたい、という話はしていて、正確には長編楽曲というよりは、元々普段のライヴでやっているようなことに近づいているのかも。

K:全部新ネタのライヴ、みたいな。そのほうが近いのかな。

N:普段のライヴも、既存の曲目だけど、曲の連ね方をいい具合に考えて、全編通して一つに聴こえる、というのをやってきていたから、今度はそれを、既成の曲目じゃなくてゼロから作った曲たちでやろう、と。でもそこで苦戦したのは、今までのライヴでは、それぞれの曲は関係のない曲なので、それをうまくむりやり繋げちゃうというコラージュ的な感じがあってそれはそれで良さがあったりする。でも今回は一時間弱のライヴをやりますとなったときに、全部新曲だから流れも考えて作れる。でも流れを作るためにそのフレーズを作るってなると今度は逆にいったい何を考えて作ればいいのか…。

K:可能性が無限に拡がりすぎる。普段のライヴだったら持ち曲があるから、この曲の後にこの曲をつなげるという選択肢が選べる状態なんだけど、選ぶことすらできない。作らないといけない。

Y:そして作るときには無限に可能性がある。

K:じゃあ何を基準に作っていくのか…と。それが「擦過」の時にはリズムのヴァリエーションで構築していった。

Y:核となるリズムが最初にあって、それをどうするか? ということでやっていったけど、今回はそういうことでもない。そうなったときにどこに拠り所をもとめるかっていうのが本当にわかんなくて、結構苦戦して。

N:普段のライヴではこういう流れのものにしたい、一つのものにみせたい、とは思いつつも、実際にどういうものなのかっていうのはわからない部分がすごいある。バラバラの持ち曲のパーツの中から選択して作っていくから、ああこんなことになっちゃいました、みたいなのが結構おもしろい。

K:平たく言うとDJ的なね。

N:曲を選んでいって、こういう繋ぎかたおもしろくね? ってやっていったら、なんとなく最後の終わり方はじゃあこういう終わり方にしたほうがいいんじゃね? って、一つのバランスが生まれて、それが今日のライヴの特徴だったねみたいなふうになっているっていう順序なんだけど、新作になるとその順序じゃないんだよね。

Photo By 石塚俊

――空間現代のライヴは先ほどもおっしゃっていましたが、そもそも、普段のライヴで、ライヴ全体が一つらなりになるようなライヴをやってるじゃないですか? でも『オルガン』は、全曲新曲のライヴと近いとは仰ってはいましたけど、でも全曲新曲のライヴとはやっぱり違いますよね? その部分をもう少し訊きたいです。

K:そもそも何で普段のライヴじゃなくて、これをやろうと思ったかっていうのは…どういうことなんでしょうね…? 曲を集めてやるということと近いことはやってはいるんだとは思うんだけど、それを全部新しい要素でやることの意義っていうはどこにあるのか? っていうのは…。

Y:でもやっぱり普段のワンマンはあくまでコラージュの域を出ない…むしろコラージュの面白さみたいなところをやっているはずで。

N:それをやりまくっちゃったんだよね。

K:可能性が消尽してきたということかな…。持ってる曲の組み合わせの可能性を結構使い尽くした感があって、でも普通だったら、全編新曲新作公演とはならずに、新曲を一曲二曲作ってってなりますよね。

Y:普通はそうだよね。

K:でもそうじゃなかったっていうのは、それは場所を作って、時間が確保できるようになったというのは出発点としては大きいよね。

N:大作にチャレンジできるっていう。

K:チャレンジ精神っていうのが一番最初にあるのかな、と。

Y:まあ《外》ができて制作時間が取れるっていうのもあるし、自分たちのホームでワンマンができるっていう環境を考えると、ライヴ公演自体が一つの作品、みたいなこともできるんじゃないか、と。他のライヴ・ハウスで一つの作品やりますってなったら、誰だおまえ? みたいなことになるじゃん。でも自分たちの箱で自分たちのワンマンでってなったらそういう試みをやってもいいし、あんまり聞いたこともないから、いいんじゃないかなって。

――確かに、タイトルを付けて、新作の公演ですっていうのは、所謂バンドのライヴではあまり聞かないですね。

K:でも例えばcore of bellsは『怪物さんと退屈くんの12ヶ月』とかで、毎回タイトルをつけて、毎回アイデアを変えて公演としてやってましたよね。あれは音楽というかコンセプトも含めての話だとは思うけど。あとは現代音楽とか作曲作品では普通にありますよね。スティーヴ・ライヒ「ドラミング」みたいな。

――確かに作曲作品としては思いつきますけど。バンドだと…。

k:バンドでっていうのはあんまりいないのかな…。

後編に続く

Text By Kota Takenaka


空間現代

地面

Self Release
RELEASE DATE : 2016.09.17

■購入できるウェブサイト
https://kukangendai.stores.jp/items/57e0d853a458c0da660018e8
https://kukangendai.bandcamp.com/album/jimen

空間現代

Live at Waseda 2010

Self Release
RELEASE DATE : 2017.02.08

■購入できるウェブサイト
https://kukangendai.bandcamp.com/album/live-at-waseda-2010

空間現代《オルガン》

7月8日(土)@京都・外
7月9日(日)@京都・外
7月15日(土)@東京・スーパーデラックス
7月22日(土)@京都・外
7月23日(日)@京都・外
7月25日(火)@京都・外
7月26日(水)@京都・外

http://kukangendai.com/schedule/1707/

空間現代《擦過》

9月23日(土)@名村造船所跡地/クリエイティブセンター大阪
9月24日(日)@名村造船所跡地/クリエイティブセンター大阪

http://kukangendai.com/schedule/1709/


MORE FEATURES

  • FEATURES : 23 July 2018

    Bob Dylan

    The Young Person’s Guide To Bob Dylan
    ディランこそ時代の革命家で歴史の継承者だ

    By Shino Okamura / Nami Igusa

    15年ほど前のことだが、あるイギリスの若手バンドに取材をした時、そのメンバーはこんなことを話していた。「アメリカにはボブ・ディランがいる。それが何より羨ましいんだ。アメリカ人は……音楽をやっている人じ

  • FEATURES : 20 July 2018

    Parquet Courts

    ”DIYのお手本”が遂げた変貌!パーケイ・コーツが”今こそ”見せた溢れる”ポップ愛”

    By Daichi Yamamoto

    アルバム中のほとんどの曲は3分以内。ニューヨークの先達、ラモーンズやテレヴィジョン~ストロークスの影響を強く感じさせるギター演奏はコードをジャカジャカ鳴らし、ソロだって単音を追っていくだけのシンプルな

  • FEATURES : 11 July 2018

    Post Malone

    The Answer ~ポスト・マローンが軽やかに導くひとつの答え~

    By Daiki Takaku

    ポスト・マローンという23歳の白人の男はラッパーなのか。ロック・スターなのか。昨年リリースされた「rockstar ft.21 Savage」は全米で8週に渡り1位を記録する大ヒット、直近では4月27

  • FEATURES : 10 July 2018

    Nathaniel Rateliff & The Night Sweats

    フジロック出演決定!
    酔っぱらいたちが集ったアメリカの田舎町のダイナーがよく似合うナサニエル・レイトリフ、日々の暮らしにすり減っていく普通の人びとを輝かせるために歌う

    By Tsuyoshi Kizu

    おじさんたちが楽しそうにソウル音楽をやっている……あなたがナサニエル・レイトリフ・アンド・ザ・ナイト・スウェッツからはじめて受けたそんな印象は、まあ、半分くらいは間違っていない。いや8割くらいかも。こ

  • BEST TRACKS OF THE MONTH : 07 July 2018

    Various Artists

    BEST TRACKS OF THE MONTH -June, 2018-

    By Shino Okamura / Yuta Sakauchi / Yasuyuki Ono / Nami Igusa / Daichi Yamamoto / Daiki Takaku

    BLACKPINK – 「뚜두뚜두 (DDU-DU DDU-DU)」 BTSのニュー・アルバムが先月全米1位を獲得したことを受けて「K-Popももっと聴きたい」と思った人が次に必ずトライす

  • FEATURES : 15 June 2018

    Ry Cooder

    ライ・クーダーとゴスペルの蜜月関係を聴く

    By Takuro Okada

    スタジオ録音作品としては6年ぶりのライ・クーダー最新作『ザ・プロディガル・サン』は、ゴスペル・カヴァーと3曲のオリジナルからなるアルバムとなっている。ここでは、ゴスペル・カヴァー曲に注目し解説。本作を

  • BEST TRACKS OF THE MONTH : 11 June 2018

    Various Artists

    BEST TRACKS OF THE MONTH -May, 2018-

    By Shino Okamura / Yuta Sakauchi / Yasuyuki Ono / Daichi Yamamoto / Daiki Takaku

    Anderson .Paak – 「Bubblin」 前作『Malibu』は、ブラック・ミュージックの歴史を探究するようなアルバムだった。ソウルからファンク、ヒップホップまで幅広く取り込ん

  • FEATURES : 28 May 2018

    J. Cole

    一夜にして富と名声を手に入れる時代。J.コールの言葉を無視できない理由

    By Daiki Takaku

    先日、チャイルディッシュ・ガンビーノことドナルド・グローヴァーが発表した「This Is America」は、度重なる警察官による黒人への理不尽な暴力行為など顕在化する人種差別問題と、娯楽的なコンテン