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遠回りをした方が得られる感動もある~ アメリカ・ツアーも大好評だった空間現代、初の海外リリース作であり7年ぶりのオリジナル・アルバム『Palm』を語る

13 May 2019 | By Shinpei Horita

ニュー・アルバム『Palm』は、空間現代にとって実に7年ぶりとなる単独名義でのスタジオ録音作品であり、初の海外リリース作品である。しかし彼らはその間、沈黙を貫いていた訳ではない。言うまでもなく、2016年9月、京都にてスタジオ兼ライヴ・ハウス《外》を立ち上げ、自分たちのライブもこなしつつ開催される全てのイベントで企画・ディレクションに関わってきている。同時に海外ツアーも積極的に行い3月にはUSツアーも実施。京都を拠点とする劇団《地点》との複数回にわたる共演や、『擦過』『オルガン』といった長編曲の制作などバンドにとってターニング・ポイントとなる出来事をいくつも経験してきた。一方で、Moe and ghostsとの『RAP PHENOMENON』(2016年)や、坂本龍一のリミックス・アルバム『ASYNC-REMODELS』への参加とそこからをきっかけに生まれた坂本との『ZURERU』(2018年)といったコラボ作などリリース作品も実は途絶えることがないという多忙ぶり。これほどまでに短期間で精力的に活動し、劇的に変化したバンドも少ないだろう。実際このような環境の変化の中で、彼らは京都でステファン・オマリーに出会い、ヨーロッパで親交を深め、オマリーが主宰する《Editions Mego》傘下の《Ideologic Organ》からのリリースが実現することとなった。

制作に至る動機からその手法までの全てが今までとは一変した新作『Palm』は、そんなバンドを取り巻く環境や活動の在り方の変化を象徴するような一枚だ。一方で、変化の一言だけでは、説明することの出来ない謎多き作品でもある。シームレスに淡々と流れていく本作の曲たちは、既存のジャンルで語ろうとすると指先から逃げていくようで全体像を掴むことが出来ない。人は音楽を聴くとき、どうしても作品に込められたメッセージやバックボーンを解読したくなるし、答えが提示されれば安心もする。対してこのアルバムは、聴けば聴くほど謎が深まっていく。そういった意味では、本作は聴く者を不安にさせるものかもしれない。しかし謎を抱えたまま生まれた『Palm』という作品は、だからこそ何度も繰り返し聴き返したくなるタフな強度を持っているし、想像力を喚起させるような音楽こそ自分たちを感動させてきたのだということを思い出させてくれる。インタビューでも語られているように彼らは、《外》でのイベントや海外でのツアーを経て、国内外の先鋭的な音楽に数多く触れ、その経験を蓄積してきた。一聴しただけではこの作品からそれらの影響を解き明かすことは難しいが、それは音色や音響の微妙な変化やリズムとなって表れている。録音・ミックスは、goatやテニスコーツなどの録音でもおなじみ西川文章。マスタリング・カッティングは数々の傑作を手がけてきたラシャード・ベッカー(Dubplates & Mastering)が担当。このインタビューが『Palm』という作品の謎に向き合うヒントになれば幸いだ。(取材・文/堀田慎平)

Interview with Kukangendai

――『Palm』がリリースされるまでの間でバンドにとって一番大きなトピックは、なんといっても拠点となる《外》の立ち上げだったと思います。国内外のエッジーなアクトを招いたライヴだけではなく、トークなども交えた独自の企画が存在感を放っていると思いますが、オープンから2年半ほど経ち、運営面での手応えはどうですか?

野口 順哉(以下、野口):前途多難感は未だにありますね(笑)。

山田 英晶(以下、山田):でも2年とかでどうにかなるとは最初から思っていなかったし、そんなに目論みが外れたっていうわけでもないです。とりあえず続けれてはいるし。

野口:集客とか少しずつ変化を感じるところもありますね。

古谷野 慶輔(以下、古谷野):自分たちがツアーとかに出ちゃうと《外》で全然イベントが出来ないってことにオープンしてから気付きました(笑)。そういう部分も試行錯誤しながら今後もやっていきたいと思っています。

――そういう中で空間現代としてもヨーロッパ・ツアーなど海外でのライブ公演も活発でした。今年の3月にはアルバム・リリースに先駆けてアメリカ・ツアーも敢行しましたが、各地での反応はいかがでしたか?

山田:ニューヨーク、ハドソン、サンフランシスコ、それとテネシー州のノックスビルでは《Big Ears Festival》というフェスにも出て。ほんと東から西に移動する感じでした。それぞれ違いがありすぎて、同じ国とは思えなかったですね。

古谷野:ニューヨークには割と長い期間滞在していたんです。そこで《外》の為の調査期間も設けていて現地のオルタナティヴ・スペースにも色々と足を運びました。今後アジアやヨーロッパでも同じようなことを行い、その結果を冊子などにまとめようと思ってます。プログラム自体はかなり前衛的だけど市や公的な機関から支援を受けているスペースもたくさんあったんです。《外》とは、お金の回り方が全然違うなとは思いましたね。

――お金の回り方が違うとは?

古谷野:助成金とかが、しっかり出ているというのもそうだし。あとパトロン的な存在もいてお金を持っている人がちゃんと投資できるシステムっていうのもあってチケット収入以外でもしっかり回していけるようになっているのかなって感じました。

山田:あと一般の人も気軽に寄付したり、サポーター的なことができるシステムがだいたいどこのスペースにもあって。

野口:でも募金箱とかそれを僕らが《外》でそのまま真似しようとすると、それも何か違和感があって。それは文化の違いも大きいと思うんですけど、アメリカは今まで積み重なってきた文化の土壌がしっかりあるんだろうなとか、そういうことも勉強になりました。

――実際、ニューヨークなどでは《外》のようにアーティストが運営しているスペースなどはあるのでしょうか。

古谷野:ジョン・ゾーンがやっている《The Stone》とかフィル・ニブロックの《Experimental Intermedia 》とか色々ありますね。

野口: 特に《Experimental Intermedia 》からは長い時間の蓄積、継続してるからこその凄み、みたいなものを感じられて、感動しました。

山田:今後《外》やバンドでの活動を通して、僕らもそうやっていけたらいいなと思っています。

――そうした《外》での活動、海外でのライヴなど多角的な活動が、7年ぶりの単独名義でのリリースとなった本作『Palm』にも現れていると思いますが、まず今回、ステファン・オマリーが主宰する《Ideologic Organ》リリースとなったその経緯から教えてください。

野口:ステファン・オマリーとは、2017年に彼が京都でライブをするというので僕らが京都メトロに企画を持ち込んでオマリーとジム・オルーク、空間現代の3組でライブをやったのをきっかけに出会いました。その時に初めてオマリーが僕らのライブを観てくれて、凄くほめてくれたんですね。

山田:ちょうどその時期に自分たちと吉増剛造さんとのヨーロッパ・ツアーを組もうとしている時で、オマリーはパリに住んでいるから「パリ公演を出来ないか」っていう相談を持ちかけたら「やろう」って言ってくれて。それで実際にパリ公演を企画してもらってそこでもライブを観てくれて。

古谷野:その後メールがきて、「うちから完全新作をだそうよ」って。

――7年間、空間現代単独の名義ではスタジオ・アルバムのリリースはなかったわけですが、オマリーから話をもらってすぐに制作へと動きだせたのでしょうか。

山田:タイミングとしてはすごくよかったんです。

古谷野:そういうきっかけみたいなものがないと、音源を作ろうというモチベーションになれなかったんです。《外》を立ち上げてからはここでパフォーマンスするということに重きを置いていたというのもあるし。曲のストックがあるわけでもなく、アルバムをつくるということもあまり考えられない状況で。それでオマリーから話をもらって、《Ideologic Organ》から出すということを考えてどういう曲がいいのかとか考えながら。今までアルバムを出す為に曲をつくるということをしたこと無かったんですけど今回はゼロからつくってみようかと。

山田:アルバム作らないといけないなという気持ちはあったんだけど、どういう風に作るのかとか、そもそもなんで作るんだってことに悩んでいた時にこういう話を頂いて、やるでしょみたいな。

野口:あのステファン・オマリーから声かけてもらったということで、興奮したし光栄なことなのでやろうという気持ちになれたというのもありました。

【REVIEW】 Sunn O)))『Life Metal』ケツァルの羽毛も永遠ではない
http://ai132qgt0r.previewdomain.jp/wp/reviews/life-metal/

――空間現代の過去のアルバムはそれぞれテーマというか制作の手法がはっきりしていたと思います。カットアップやコラージュ的な手法を多用したファースト『空間現代』(2009年)、一音ずつ録音した楽器音を編集によって再構築するという手法を用いたセカンド『空間現代2』(2012年)、それらと比べると『Palm』にはそういった分かりやすさはないなと感じました。

山田:過去の作品の話をすると、あの頃は自分たちの手法の開発を目指していたというか、色々実験していくなかでこれはおもしろいよねというのをライブで色々試してみて、ストックを作っていくということをしていたんです。

古谷野:ファーストの時はそれをストレートな形で一発録りで、それまでの記録としてアルバムを出すという感覚。セカンドは、アルバムを出すにあたって曲を録ってそのまま出すだけでいいのか、それならライブだけでいいんじゃないかっていう悩みが出てきて。なのでライヴで演奏していたものを解体して、一音ずつ録音してそれをもう一度再生成する手法をとっていて。

野口:ライヴでやっていたことをそのまま録音したのがファーストで、ライヴと音源とで全く違うことをやろうとしたのがセカンド。『Palm』はそのどちらでもない、もしくはその中間を目指していて。基本は一発録りなんだけどこの部分だけはギターを後で足そうとか、デスクトップ上で古谷野がちょっとしたエディットを施すとかというのをいいバランスで作ろうというのが最初に決めたことでした。

古谷野:制約を設けないというか、何やってもいいっていう。

山田:セカンドまでと大きく違うのはライヴの為にアルバムを作ってないということ。勿論、作っている途中にライヴで新曲をやったりはしていたんだけど、とにかくアルバムの為に曲を作るんだってことが今までとはかなり違う。

野口:今までは実際にライヴで演奏するにあたって、「こういう展開面白いよね」みたいなことしか考えていなかった。例えばいきなり演奏が止まるとか、いきなり違う曲の一部が入ってくるとか。一種のコラージュ的な手法を多用していたところもあるんだけどそれを音源化した時にドキッとしすぎちゃうみたいな(笑)。BGMにはならないというか。

古谷野:情報の圧が強すぎる。

野口:今回はそういう今まで多用していた手法は、封じてみようという話はしましたね。

古谷野:曲としては聴きやすいものというのを、志向して作っていたんですけど。けど結果としてなかなかジャンルで説明できないものになっていたという。

――今、お話にあった今まであった手法を封じるというのは、《地点》とのコラボレーションで劇伴を担当したことや『擦過』や『オルガン』といった一時間の枠組みを使った長編曲を作ったことが影響しているのかなと思ったんですが、そこで得た経験や手法がいかされているのでしょうか。

野口:活かされているというか、同じベクトルにはあると思います。

古谷野:セカンドを作っていた時と《地点》とやった『ファッツァー』は時期が近いんですけど、ギター、ベース、ドラムを同じ音として捉えてそれがどう一つのリズムを作り出すかってことをやっていて。厳格にルールを決めて3人で同じことをする。ギターとベースの違いは考えない。『ファッツァー』なんかはそれを極限にしたって感じですね。全員で叩くと人が死ぬみたいな(笑)。

野口:ギター、ベース、ドラムを無理やり対等な楽器として扱って作曲していったんです。

古谷野:その上で、そこからはみ出したものが面白いって感覚ですね。対等な楽器として扱うと言っても楽器が違うから当然同じにはならない。それをやっていたころに比べると、今は楽器それぞれの特殊性にフォーカスを当て出したんです。

野口:今までは、とにかく全部全力でっていう感じでしたから(笑)。特にドラムは。

古谷野:それぞれの楽器の面白さを追求し出したというのは、《地点》との作業もそうだし、『擦過』、『オルガン』の制作は大きかったと思います。それまでは1か0のデジタル感覚でやっていたけど、ハイハットとか色んな音の微妙な変化にも意識が向くようになりましたね。

山田:でもそれは《外》を立ち上げたというのもすごく大きくて。曲作りも録音もライヴも同じ場所だったことで、音の響きをどう聴かせるかというところを作曲に落とし込むことができた。同じ場所でいつも作っているから、だんだん音の響きが良くも悪くも気になってくる。今までは、貸しスタジオだったからそのたびに機材も違うものを使うことになっていたんですね。でも、今は違う。そうなると音の感じも気になりだしてこだわりが出てくる。音の響きをどう聴かせるかというところを作曲に落とし込んでいくっていうところが今までと大きく違うところかな。音色、響きというものにたいして神経を使うみたいな感じ。でもそこは言葉にしづらい世界だからそれが大変でしたね。

――楽器の可能性や、響きを追求したとお話にありましたが、《外》にも何度も出演している七円体やメンバーチェンジ後のgoat、池田亮司の『music for percussion』などもまさに楽器の響きを作曲に活かすような音楽だと思うのですが、これらを意識したり、影響を受けたりはしましたか。

古谷野:七円体からの影響はめちゃくちゃありますね。影響受けすぎないようにしようとしているくらい。

山田:七円体の二人は、こだわりが本当に凄いから勉強になるし感じる部分もたくさんある。だから《外》が出来てから影響をうけているものがたくさんあってそれが反映されているものになっているんだろうなとは思います。

――楽器の特殊性、可能性と向き合うっていう部分でも《外》が出来て練習する時間が増えたというのも大きいのではないでしょうか。

古谷野:それもあるし、《外》でたくさんイベントをやっていてそれをほぼ毎回3人で観て共有しているというのは大きい。毎回、言葉にして感想を言い合っているわけじゃないけど、いろんなジャンルの音楽をバンドメンバー3人で観るって普通はなかなか無いことじゃないですか。だからそういう経験は、曲作りにおいて結構大きいんじゃないですかね。

――一方で、《外》はバンド形態の出演者って圧倒的に少ないですよね。それを受けて楽器の役割にもう一度向き合おうという風になっていったのは、意外に感じる部分もあります。

山田:電子音楽でも、音の質感であったりこういう音を鳴らすとこういう風に響くんだとか、そういう音の聴こえ方を、3人で共有して蓄積していったものが作曲のときに活かされてるんだと思います。

古谷野:でも別に楽器使わなくても良いじゃん。なんでギター、ベース、ドラムを使ってやるんだと聞かれたら、分かんないっちゃ分かんない。でもそれも制約のひとつなのかなって思います。

野口:決められた形の中であがいていく、そのために制約や負荷を設けるというのはファーストの頃から変わらない作り方だと思います。

――これまで使ってきた手法をいくつも封じ、曲自体もかなり削ぎ落とされている印象があるのですがその中で、歌詞やヴォーカルの乗せかたもかなり変わっている気がします。

野口:セカンドの辺りから曲の作り方やトラックの方向性が変わってきて、なかなか言葉が乗せずらくなってはいたんです。けれど、今まではライヴで散々繰り返していく中で、なんとなくこういう歌乗せてみたらいいかなって、実際やってみてよかったら乗せる。でまたライヴでやっていくなかで少しずつ変えていくみたいな長いスパンで歌というものと向き合ってきたけれど、今回は録音するにあたって締め切りを設けて作っていたから、そういう意味でも、全然違うかなとは思います。今回もそれなりに詩を書いたし歌も作ってみたけれど、殆どが削られました。結果として言葉がどんどん削られていくことは、このアルバムの方向性を決定付ける事になったし、正しかったと思います。何かを言おうとしているのかもしれないけど言えていない。その言えなかった感じが、大事だったのかなと。

古谷野:声のミックスは相当気を使ってますけどね。

野口:声は異物だからね。

古谷野:ライブだとやっぱマイク立ててるし、目の前にいるから。この人歌うんだって観てる人も分かっているけど、音源で今回みたいな曲調だといきなりヴォーカル入るとわーってなっちゃうじゃないですか。

野口:それも切断とかそういうのをやめようという今回のコンセプトに繋がってくる。

古谷野:だからヴォーカルも音のひとつになっているような感じにしたかったんです。

"バンド活動のあり方自体が《外》を立ち上げる前と後では全くと言っていいほど変わった。今はとにかくいろんな人とコミュニケーションを取っている。そういうところから無意識に開いていったところはあるかもしれない。"

――『Palm』はアルバムや曲のタイトルも過去の作品とは、全く違いますよね。以前は「不通」や「痛い」など作曲の手法だけでなく曲のタイトルや歌詞からも断絶を感じさせるものが多かったように感じます。一方で「Chigaukoto wo kangaeyo」など能動性や開かれたイメージを与えるようなものが多いのではないかと思いました。

野口:それは、全く意識していなかったですね。けどそう言われるとそうなのかもって思わされる部分もある。やっぱりバンド活動のあり方自体が、《外》を立ち上げる前と後では全くと言っていいほど変わってしまったんですよ。物理的にも意識の面でも。例えば、今ってとにかくいろんな人とコミュニケーションを取っているんですよ。《外》という場所を媒介にして。イベンターやバンドマンから公的機関の方まで、いろんな人と関わっている。そういうところから無意識に開いていったところはあるかもしれない。

――その開かれた感覚が創作を自由にしたと。

野口:制作に入る前に、“○○的”なものを遠くに見据えることが出来るように作るのはどうだろうかという話を最初にメンバーでしたんですよ。

古谷野:分かりやすいファンクはだめだけど、ファンクに聞こえなくはないみたいなのはOKとか(笑)。

野口:近道をしないってことですね。例えば今までだと、ファンクでよく聴かれる和音を使ってるんだけど音飛びとかコラージュすることでまんまファンクっぽい感じになるのを避けてたんだけど。今回はそういう手法も封じていて。

古谷野:“○○的”なものが浮かび上がる感じになるといいかなって思って。でもそれは近道しちゃうとそうはならない。ジャケットに使用した細倉真弓さんの写真とか、まさにそうなんですけどこういう風にも見えるかもしれない、これは火だけど違うものにも見えるかもとか。そういう想像力を大事にしたい。『Palm』を聴いてみて凄い謎だけど、これはファンクなのかもとか。そういう遠回りをした方が得られる感動もあると思うんですよ。だから本当はインタビューで作品の解説とかしないほうが良いのかもしれないんですけど(笑)。

野口:そもそも『Palm』っていうタイトルも、手のひらでもあるしヤシの木でもあるというところが気に入ったというのもあるんですよ。見え方によってそれが何なのかが分からなくなる。ヤシの木の葉っぱを、手のひらと同じ形だということに気付くと、地面から手が生えているように見えなくもない。すると常夏の陽気なイメージに、不気味な質感が帯びてくる。それに、手のひらの形って見方によってはいろんなメッセージにもなるじゃないですか。「助けて」とか「止まれ」とか、あるいは「ハロー」「またね」などなど。曲名とアルバムのタイトルは後から考えたんですけど、全曲通して聴いていると、そういった様々な意味に転じるシンプルな形を表す言葉が、タイトルとしてしっくりくるなと思ったんです。

古谷野:だから、聴いた人とこれは何なんだろうと一緒に考えようという気持ちはありますね。そういう意味でもコミュニケーションなのかなとも思います。『Palm』を議題にしたコミュニケーション。

――最後に、今後も《外》を拠点に精力的にライブを行っていかれることと思います。空間現代のライヴといえば、曲をメガミックス的に繋げていくのが特徴だと思うのですが今後『Palm』の曲が中心になっていくなかで、こうしたライブの在り方も変化していくことになるのでしょうか。

古谷野:ライヴに関しては、昔の曲と『Palm』の曲の質感が違いすぎて、持っているアーカイヴを刷新しないといけない状態になっていますね。

山田:『Palm』の曲だけだと、30分強なんで1時間のライブをやるとなると足りないんですよ(笑)。

野口:今までは、曲の中に切断面があったからミックス的にもやれたんだけど、今回はそれが無い。だからどんどん新曲つくっていくしかないんだなと気付いたんです。だから今すでにレコ発のライブ用に新曲を作っていっている感じです。

山田:今後、《外》でのレコ発もあるので是非来てほしいですね。

左から、山田英晶(Dr)、野口順哉(G、Vo)、古谷野慶輔(B)

空間現代 “Palm” リリースパーティ

2019年6月9日(日)京都《外》

空間現代
YPY
行松陽介
odd eyes

開場 17:00 開演 17:30

予約 2,500円 当日 3,000円
*学生証提示で予約・当日ともに2,000円

詳細 http://soto-kyoto.jp/event/190609/

■空間現代 Official Site
http://kukangendai.com/

■Ideologic Organ(Editions Mego)内アーティスト情報
http://editionsmego.com/release/SOMA032

【INTERVIEW】空間現代インタビュー(過去記事)
《外》という身体の中で蠢く臓物/器官(organ)~新作公演「オルガン」とは何か?
前編
http://ai132qgt0r.previewdomain.jp/wp/features/interviews-kukangendai/
後編
http://ai132qgt0r.previewdomain.jp/wp/features/interviews-kukangendai-2/

Text By Shinpei Horita


空間現代

Palm

Release Date: 2019.05.10
Label: Ideologic Organ

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