INTERVIEWS : 20 October 2017

kitty, Daisy & Lewis

There Are Alabama Shakes, Robert Grasper in the United States. In The UK There Are This Brother And Sister!

By Shino Okamura

INTERVIEWS : 20 October 2017

kitty, Daisy & Lewis

There Are Alabama Shakes, Robert Grasper in the United States. In The UK There Are This Brother And Sister!

By Shino Okamura

アメリカにアラバマ・シェイクス、ロバート・グラスパーがいるならイギリスにはこの兄姉妹がいる! キティ・デイジー&ルイスが1月来日決定

キティ・デイジー&ルイスのことを、いまだに1950年代前後のルーツ・ミュージックに傾倒するロンドンのレトロ・キッズたちだと思っていたら、それはもうとんでもない損失だ、ということをまず断言しておきたい。届いたばかりの最新作にして通算4枚目『スーパースコープ』は、例えばアメリカのアラバマ・シェイクスやヴィンテージ・トラブルや、あるいはサンダーキャット、ロバート・グラスパーあたりが、ブルーズ、R&B、ジャズ、ソウルなどを再定義しているのとほぼ同じベクトルで歴史を上書きしていることを伝える力作だ。アイランド・レコードなどでマスタリング・エンジニアとして活動してきた父に、グラッツ・ダーハムと、レインコーツのメンバーであるイングリッド・ウェイスを母に持つこの3人の兄姉妹によるユニットは、元クラッシュのミック・ジョーンズがプロデュースした前作『ザ・サード』で既に“独立”する傾向にあったが、この新作では新たに移設して本格的な録音場所へとしつらえたオリジナル・スタジオにおいて完全セルフ・プロデュースでレコーディングを敢行。リスナーとしての幅をこれまでになく広げながら、自在に音を出しては意見を交換するような気のおけないムードのまま自分たちのロックンロールを音像化してみせた。こんなに躍動的で、自由で、気ままで、でも自分たちの音に責任をしっかり与えるような作りのアルバムは彼女たちの歴史においても初めてかもしれない。

来年1月には来日公演も決定した。そこで、最新インタビューとしてキティが語る今作のエピソードをお届けする。彼女たちもまた今の時代にブラック・ミュージックをアップデイトする重要バンドであることを改めて認識しておきたい。(取材・文/岡村詩野)

Interview With Kitty Durham

――あなたがたにとって保護者であり録音技術の大先輩であるお父様やミック・ジョーンズと一緒に作業する時期を経て、4作目であるこのニュー・アルバムではいよいよセルフ・プロデュース、セルフ・エンジニアリングとなりました。このアイデアは前からあったのでしょうか? それともこの時期、この作品だからこそセルフでやろうと考えたのでしょうか?

Kitty Durham(以下、K):そうね…うん、確かに父親も大きな役割を果たしてきたし、とりわけ活動初期の頃はそうだった。とは言っても、初期の頃だって父の役割はレコーディングのテクニカルな側面での補助というのがうしろ大きくて、そこを彼とルイスが一緒にやってくれていたって感じだったの。だからその意味では、彼はいつだって私たちと一緒にレコーディングの場に立ち会っていた、そんな感じだったわね。ミック・ジョーンズにしてもそれと似ていて、あれはなんというかな、私たちとしても試しにやってみたかったのね。外部の人間をもうひとりその場に含めてみたらどうなるんだろう? じゃあ、やってみようか?ってな感じ。そうは言っても、私たち自身もここに一番うまくハマってくれるのは誰だろう? というのはわかっていなかった。で、ミックのことは私たちも色んな場で会ったことがあってちょっとは知っていたし、それにすごくウマも合ったのよね。そんなわけで彼に「スタジオに遊びに来て、何曲か聴いてみてくれます?」と声をかけることになったんだけど、そこから結局、彼はレコーディング作業に最後まで付き合ってくれることになった、みたいな感じだったの。だからあれはそもそも、「プロデュースしに来てください」ってこちらから頼んだというより、彼が私たちと一緒に仕事してくれた、みたいな感じだったのね。自分たちの音楽を聴いて反応してくれるもう一組の耳を手に入れた…てな感じ。だけど今回のアルバム『スーパースコープ』に関しては、自分たちが何をやりたいのか、そこがとてもはっきり分かっていたのね。で、これまでのようにもっと多くの人間がレコーディングの場に立ち会うと、そのぶん物事も複雑になっていくな、と感じていて。もちろん、そのやり方はその前の『ザ・サード』ではとてもうまくいったんだけど、ただ、今回の作品に関してはそのアプローチは違うな、と。それもあったし、作品を作っていた頃にデイジーには赤ちゃんも産まれたし、それで彼女は少し背景に引っ込んでいたというのか、スタジオに顔を出すのもたまにちょっと、という感じで。だからこのレコードのほとんどは、私とルイスだけで作った、みたいなものだったの。で、それはやってみてとても興味深い体験だったというかな、というのも、私たちは大体の点で同意できたし、そのぶん作業をもっと楽に進めることができた、という。確実に以前よりも作業に時間がかからなかったし、たとえば私が何か別のことを試しにやってみたいと思いついたら、ルイスに「オーケイ、ちょっと弾いてみるから、あなたはコントロール•ルームに入ってこのパートを聴いてみて。で、良いとか悪いとか、リードしてちょうだい」と声をかければ良くて。だから、うん、今回のアルバムで私たちふたりはとてもうまく仕事できたわね。

――前作はケンティッシュ・タウンに移したあなたがたのスタジオで16トラック・レコーディングしていましたが、今回も環境は同じだったのですか?

K:ええ、今回も同じように作ったわ。セッティングという意味ではいくつか前作とは変えたところもあるけれど、ほぼ同じ風に作ったわね。

――そのスタジオはどんな音響特徴があるのでしょう?

K:まあ、どのスタジオもそれぞれに違うものよね。ただ、スタジオ空間のサイズ次第、というのはいつだってあると思う。たとえば、広いスタジオであればそのぶんもっとエコーが生まれるし…だから、どんな音楽をレコーディングするか、その内容次第ってことよね。たとえば大人数の、メンバー60人のオーケストラを録音しようとしたら(笑)、やっぱりとても広いスタジオ空間を使うわけで。逆に、ひとりの人間とギター1本であれば小さなブースでも録音できる。だからほんと、自分が何をやろうとしているか、それ次第で“理想”も変わる。でも…うん、自分たちのスタジオにはすごく満足してる。だって、私たちの最初の2枚のアルバムは母の家の奥の一室で作ったようなものだったし(笑)。だから、間違いなくその違いは聴き取れると思う。もっと広い、ちゃんとしたスタジオで作ったものとの差、ということよね。それもあるし、その場のヴァイブ、雰囲気っていうのも関わってくると思う。私は他のスタジオに入ったこともあったけど、そのうちのいくつかは少々居心地が悪いな、みたいな。

――そのあなたがたのスタジオに置かれている機材や音響効果はあなたがたのヴァイブにフィットしたものを揃えたわけですね。

K:そうね、今はそうなったと思う。というのも、私たちは10年前の自分たちとは違うことをやっているわけだし、今は自分たちが使ってみたいと思ったものならなんでも使えるようになったんじゃないかな。それって良いことでね。たとえば誰かが「こんな機材がある」とか「こんなクールなシンセがあるよ」と言ってきて、「試しに使ってみたい?」と言われたら、こちらも「もちろん! 私たちはなんだってトライしますから」というもので。その意味では私たちは新しいものに対してオープンだし、それに私は新しい機材等々を試してみるのが好きなのよね。そうやって、自分たちの曲にそれらをどうやって活用できるか試しにやってみるのが好き。だからほんと、なんだってウェルカム、試してみるわ、という感じね。

――ということは、あなたがたのスタジオもKD&Lの成長にともなって進化している、と。

K:ええ、それはその通り! いつだって、何か新しいものを試しているから。

――そうした新たなスタジオで作業を重ねるようになってから、KD&Lとして、例えば作る曲、演奏、音楽に向き合う全般的な姿勢など変化してきたところはありますか?

K:んー……そうね、ある意味ではきっとそうなんだと思う。私たちはあの場所にいつまでもいれるし、何かプレイしてみたい、試したいと思ったら昼夜問わず実践可能なわけで。その意味で、何がやれるか/やれないかの制限が自分たちにはなくなった、ということだしね。だから、ある意味で影響はあったんだと思う。私が曲を書く時というのは、多くの場合は自分のベッドルームでギターを片手に書く、というものだったわけだけど、今はそうやって思いついたらすぐにスタジオに降りて行って、そこであれこれ試したり、ビートをプレイしたりできる。だから、その意味ではほんと、好きな時に使える自分たちのスタジオがあるというのは役に立っている。だから、創造性を感じて、クリエイティヴになりたいと思ったらそれを実行できる、そういうオプションを与えてもらっているって感じ(笑)。

――もちろん、制作現場にはご両親もいたとは思いますが……。

K:いいえ! 両親はまったく、一切現場には立ち入ってこなかったわ。

――え、一切?

K:(笑)ええ、ほんとに。今回は、父も母も演奏ですら参加していないの。ほぼ私たち3人だけでやったし、デイジーはさっきも言ったようにスタジオに来たり来れなかったりだったから、ほんと、基本的には私とルイスのふたりだけ、大半がそんな感じだった。スタジオにいたのはふたりだけ、みたいな。

――でも、休憩時にご両親がお茶を淹れて持ってきてくれた、くらいはあったんじゃないですか?

K:いいえ、それもなし!(笑) 基本的に、親たちは寄り付かないでいてくれたわ。

――(笑)では、セルフ・プロデュースで進行するにあたり、3人それぞれの領域というか、3人の役割みたいなのはどのように分かれていたのでしょうか?

K:そうねえ…まあ、とにかくその場で何をやっているか、次第じゃないのかな。だから、私とルイスは音楽的な面でほぼ意見が一致しているし、それにさっきも話したように、違ったことを試しにやってみることに関してもオープンな姿勢を持っているわけで。たとえば私に何かアイデアが浮かんだとしても、彼(ルイス)は平気でそれをボツにできるというか、「その思いつきは全然良く聞こえない、やめた方がいい」と言ってくる。だから…とにかく、私たちは一緒に仕事しながらうまくやれているし、色んなことも試しながら作業してる。だから、この曲はこういう響きにすべきだ、あるいはこのトラックはこういう方向に持っていきたい、と言った点等々の多くに関しても、私たちは同じ考えを共有しているのよね。そんなわけで、うん、大体そんな調子で、うまく分担できている、という。だから……そう、食い違いはそんなになかったわね。だから、よく起きるのは、自分で書いた曲については、やっぱり「自分の曲だから」って風に、他の曲よりももっと過保護にしてしまいがちなわけよね? だから、以前のアルバムでは、「自分の曲だから、ここはこういう風にしたい」とか「このセクションはこういう流れじゃなくちゃダメだ」なんて話によくなったし、言い合いになったりもした。しかもその頃はレコーディング現場で関わっている人間の数ももっと多くて、彼らも彼らで「いやいや、これこれ、こういう風にした方がもっと良くなるよ」なんて言ってきて、そこでますます自分の曲に関して守りの姿勢に入ってしまったり。でも、今回のアルバムに関しては、現場にいた人間の数も前より減ったし、なんというか…私たちの側ももっと自由になれたんじゃないかしら。だから、「そうだな、このやり方をトライしてみたらどうだろう?」って風に試してみて、それがうまくいかなかったら、じゃあまた別の方法にトライするか、という感じで。そうやって、私たちももっと曲を解放して自由にさせてあげた、という。それは良かったなと思ってる。

――名実ともに独立して作った最初のアルバムというわけですね。

K:ええ! ただ、もちろんそのために私たちがちゃんと一致団結する必要があった。やっぱりこう、パズルの重要なピースというのか、レコーディングの最初の段階で大事なのは言うまでもなく、サウンドを決めていく、ということよね。ただ、それをやるためには、まずその前の段階で曲ができているっていうのが必須だし、ということはある意味、その曲のアレンジもレコーディングに取りかかる前にわかっていなくちゃ何も始まらない、ってことになる。ということは、ある意味サウンド作り/作曲/アレンジは同時に起きている、ということよね。だから、最初のもっとも大事なポイントというのは、それをレコーディングできる状態にまで曲を持っていく、そこなんだと思う。そうは言っても、シンプルな曲、たとえばアルバムの最後に入れた「Broccoli Tempura」みたいな曲の場合は…あの曲は、私とルイスのふたりきりでスタジオにいた時に「何かレコーディングしようか」ということになって、それでその場でふたりで即興で思いついてすぐ仕上がったものだったわけ。だから、ああいう曲はやっぱりちょっと話が違うけれども、アルバムのそれ以外の曲は、なんというか、自分たちがレコーディングを始める前の段階で、楽曲としてかなりちゃんと形になっている必要があった、みたいな。その意味では、アレンジはキーになる、最初の段階でかなり決め込んでおかないといけないものだって思うわ。

――これまで演奏者、作り手の立場で作品作りを捉えていたと思いますが、今回は客観的にその演奏者である自分たちを見る目線も加わったのでは?と想像します。そのチャンネルの切り替えで難しかったのはどういう部分でしたか?

K:うん、きっと、ある意味ではそうだったんでしょうね。ただ、今回みたいにルイスと私のふたりだけでやる場面が多いと、逆にとにかく楽だった、というところもあって。というのも、他に誰も関わっていないとお互いにもっと率直に遠慮なく意見を言えたし、たとえばルイスが何か演奏していて、それが私にはどうもイマイチだなと思ったら、彼に「んー、あんまり良くないと思うんだけど」って言えたし(笑)。でも、だからって彼はその意見を彼個人への批判って風には受け取らないのよね。というのも、そうやって私たちはただ、こうやったらどうだろう、ああやったらどうだろう、という風に試していただけの話なんだし。それもあったし、自分の能力は自分でもわかっているっていうか、自分に何が演奏できるか、どれくらいの技量があるかは自分自身で承知しているわけで。だから、自分の頭の中に何かパートが浮かんだとして、自分としては「これはイケる」と考えて、それで実際に演奏してみるわけよね。でも、思った通りにうまくいくこともあれば、実際にやってみたらダメだ、違うな、ということもある。その意味で、自分には何ができて何ができないかはちゃんと把握しておく必要がある、という。というわけで、もしも純粋にプロデューサーとしてだけの役回りで何かに取り組むとして、そこで様々なミュージシャンたちと仕事することになったら、なんというか、プロデューサーは彼らの力量を把握しようとする必要がわるわけでしょ? だから、彼らに「これを試しにやってみて」といった感じで見極めていかなくてはいけない。ところが私はもう、自分に何がはれる/やれないかはわかっているわけで(笑)、だから躊躇なく作業に取り組めるし、やってみて何がうまくいくか様子を見ることもできる、という。だから…そうね、プロデューサー/プレイヤーを兼任するのはある意味楽ではないけれど、それと同時に便利だ、というのもあるわね。というのも、何か思いついたらそのアイデアを口に出してみて、あまり深く考える必要なしに、自分の感じた通りに形にしてみることができるわけだから。

――つまり、プロデューサーであり、またプレイヤー/ソングライターであることがあなたたちには有利に働いているようですね。曲や作品の全体像を見ることができる、という。

K:そう。まあそうは言ったって、他の人々と一緒に仕事する、ということに対して私たちは常にオープンなんだけどね。ただ、このプロジェクト、こと今回のアルバムは、とにかくこう、他の人々の参加を必要としていなかった、という。

――では、プロデューサーとしてのKD&Lから見て、演奏者、作り手であるKD&Lを評価してみてください!

K:(笑)なるほど…そうだなぁ。それは面白い質問だな…。

――彼らは良いミュージシャンだと思いますか?

K:(笑)ええ、そう思ってるわ! ただ…私たちに関して興味深い点っていうのは、とにかく、3人それぞれにプレイの仕方が違うのよね。たとえば、ドラム。3人ともドラマーとしてはまったく違うタイプなの。だから、純粋にプロデューサーとしてスタジオに入って、私たちのバンドをプロデュースしようとしたら…もしかしたら、それってかなりの難題になるかもしれない(苦笑)。プロデューサーの側もアレンジをちゃんと理解していない限りは。というのも、さっきも話したけれども、ある意味アレンジというのはまず最初に必要なものなわけで。で、デイジーがプレイするのと、あるいは私がプレイするのとでは、同じ曲でもまったく違うものになり得る、ヴァイブがまったく変わることもある、という。だから、プロデューサーも誰に何ができるか/できないかを知っていないといけないし、と同時にプレイヤーごとに出すヴァイブも異なるといった点を始めとして、把握しないといけない要素も本当にたくさんあるバンドだから、うん、きっとかなり面白い体験になるでしょうね(笑)。

――では、プロデューサーとしてのLD&Lが、演奏者、作り手であるLD&Lに今回最も望んだのはどういう部分でしたか?

K:そうね…まあ、今回の制作プロセスの間ずっと、私の頭のどこかにひとつあったことというのは、「今回の自分たちはもうちょっとシンプルに留めておきたい」ということで。あまりごちゃごちゃと多過ぎる、様々な異なるパーツのせいで混雑した作品にしたくはないな、と。だから、自分の曲向けに様々なパーツを考えついてはいたし、それらを試しにやってみたいなという思いはあったけれども、だからといって必ずしもそのアイデアすべてを実際に使ったわけではなかった、という。それに演奏者としてのエゴというのもあるわけだけど、ある曲で出ずっぱりで弾きまくるだとか、「私はこの曲でこれをプレイしたい、それにこれもやりたい」なんて風に自己本位になることは避けたいわけで。だから、私の頭の片隅には常に「シンプルに留めよう」という思いがあったし、「やり過ぎは良くない」と考えていた。あれこれ欲張ってやり過ぎずに抑えた方が、返ってもっと良い成果を生む、ということよね。うん、今回のアルバムで私たちがやろうとしたのはそういうことだったんじゃないかと思う。あまりにもごっちゃでとりとめがない、そういうものではなくて、この作品をかなりシンプルに留めておくよう心がけた、というね。

――結果として、今回のアルバムは前作同様に曲調にも演奏にも広がりのある、ルーツ・ミュージックへの愛情と敬意を持ちつつも、すごくアップデイトされたコンテンポラリーなポップ作品になっていると思いました。今回のアルバム制作前に、あなたがたが新たにバンドにフィードバックさせた音楽的アイデア、要素、リファレンスにはどのようなものがあったのか教えてください。

K:全員がそれぞれ個別に曲を書くから、「これ」といったものは上げにくいんだけれど…私の書いた曲は、どれもかなりスタイルの違う、多様なものなんじゃないかな。私個人がよく聴いていたのは、70年代の黒人女性ソウル歌手なんかだった。で、もちろんそれらの音楽のグルーヴ等々にも耳を傾けてはいたけれど、それだけではなくて歌詞、彼女たちの歌い方、そして歌っているテーマは何か、そういった点にも注意して聴いていた。それだけ突出しているというか、本当に強く、パワフルなメッセージを持つ音楽だったのよね。自分の書いた歌に“Slave”というのがあるんだけど、あの曲では特に…そうだな、初期のキャンディ•ステイトンだとか、それにマリー•ライオンズ(マリー•“クィーニー”ライオンズ)という名前の女性アーティスト、彼女の作品はとてもよく聴いていたんだけど、そういった音楽のメッセージの力強さや歌詞からインスピレーションをもらったわ。それ以外だと…そうね、このアルバムを作っている間は、私はファンクやソウル音楽をよく聴いていた。だからそういうヴァイブだったわね、自分が感じていたのは。

――レトロスペクティヴな部分ばかりが初期の頃は強調されていましたし、私も最初に取材をさせてもらった時に、蓄音機2台でDJをしているというルイスの話には衝撃を受けたクチです。ですが、4作目を迎えた今のあなたがたは、むしろ他にはないモダーンなポップ・アマルガムをちゃんと意識したバンドなのだということがわかります。歴史を継承し、敬意を持ちつつも、現代に上書きしていくにあたって、どういうところが難しい作業でしょうか?

K:そうね、どんなタイプの音楽もすべてもちろん、過去の音楽や歴史から影響を引っ張ってきているものだろう、私はそう思っているの。ただ、近頃の自分たちにとってかなりフラストレーションを感じさせられるのが、人々から「ああ、あなたたちは50年代の音楽とか、その手のものしか聴かないんですよね」なんて言われることで…そういうことを言う人たちって、ある意味、私たちにずっと昔のままでいてほしいと思っているんじゃないの、みたいな? だけど、私たちはもう子供じゃないんだし。確かに50年代音楽やオールド•ファッションなサウンドは、私たちが聴きながら、そして演奏しながら育った音楽のいくつかではあった。ただ、それにしたって今から17年も前の話であって、言うまでもなく(苦笑)その頃から多くが変化したし、私たち自身もまったく違う人間になっている。私たちは音楽的にも進化しているわけじゃない? だから…そうね、自分はフラストレーションを感じることもある。そうやって人々から、「どうして古い音楽を聴くんですか?」と尋ねられるだけではなく、インタヴューをやっていて「古い音楽を聴くんですってね」と向こうの思い込みを聞かされるのには、ちょっとイライラしもするの。「あなたがたはこういう音楽ばっかり聴いているんですよね?」なんて言われると、こちらとしては「そんなことはない、ヒップホップだってロックだって、もっと色んなものを聴いてるから」と言いたくなる。それってとにかく、ある音楽がどこから生まれたか、その点について人々はもっと心をオープンにして見方を広げるべきだ、そういうことじゃないかと思う。というのも、今の若い世代には、自分たちの好きな音楽がどこから生まれたのか、ルーツはどこにあるのか、そこをわざわざ調べようとしないって子も多くて。だから、彼らは何かを耳にして、そこにある過去からの影響を聴き取っても、そこでただ「ああ、古い音楽なんだな」で終わってしまったり。

"以前からお気に入りだったジャズの曲を、ヒップホップを通じて少し違う風に聴くことができるようになった。そういう発展や進化が自分たちの作品にもあるといいな"

――例えば、あなたがたが好きかどうかはわかりませんが、アメリカではアラバマ・シェイクスのように、R&Bやソウルをエネルギッシュに伝えるバンドが大きな評価を得ています。こうした傾向について、あなたがたはどのように見ていますか? 

K:うーん、正直、どちらのグループの音楽も私はよく知らないから、答えにくいわ。だからちゃんと聴いてみる必要がある、ってことでしょうね。私たちは何だって聴くし、うん、これを機会に聴いてみるのもいいかもしれない。

――じゃあ、あなたがたの指向するジャズとは違う形で、サンダーキャット、ロバート・グラスパーといったアーティストたちが新しいジャズのあり方を提示しています。ジャズに限らず、歴史を作ってきたルーツ音楽が形を少しずつ変えて発展していることをあなたがたはどのように捉えていますか? 

K:ああ、うん、そうやって何かをキープして持続させていくのはいいことだと思ってる。そうは言っても、もちろんジャズやルーツ音楽が死に絶えつつある、という意味ではないんだけれども。そんなことはありっこないし、たくさんの人間がまだプレイしている音楽なわけで。だから、それって初期のヒップホップみたいなものなんじゃないかしら? というのも、昔のヒップホップってジャズ他を多くサンプリングしていたわけでしょ。で、私はジャズをたくさん聴きながら大きくなったし、それに初期のヒップホップもよく聴いていて、すごく気に入ってしまったわけ。というのも、ヒップホップを聴いていると、自分にも「この曲だ」と分かるジャズのサンプルが聞こえてくることがあって、それってジャズを新しいやり方で聴くようなものよね。ヒップホップがジャズを利用することでジャズを劣化させるということではなくて、とにかくそれで今までとは違うジャズの聴き方がもたらされた、そこにまた別の光が当てられた、という。あの経験を自分が気に入ってるのはその点だったわね、以前からお気に入りだったジャズの曲を、ヒップホップを通じて少し違う風に聴くことができるようになった、という。そういう発展や進化が自分たちの作品にもあるといいな。すごくいいことだもの。もっとも、今あなたが名前を上げてくれたアーティストのことは、私は正直言ってよく知らないんだけれども、それらが優れた音楽であれ、あるいはそれほど良くない音楽であれ、そうやって伝統のある音楽をやり続けていくこと、その中から新たなフォルムを備えた音楽をやっていくのは良いことだなと思ってる。

――まさに、今回のアルバム・タイトルの『スーパースコープ』の意味さながらですね。

K:ええ、そう。今回のレコードはもちろん、前作でもそうだったんだけど、私はなんというか、こう…「自分たちの音楽を一語で言い表してくれるフレーズ」、そういうものを探していたのね。で、今考えると、私たちのやっているような多彩な音楽を一語で表そうとするなんて、そもそも無理な話だったんじゃないか(苦笑)、とも思うわけだけど(笑)。まあ、でも、そう思うくらい、とにかく様々でたくさんのものが含まれた、色んなもののごた混ぜなわけだしね。私たちの音楽は多岐にわたっているし、常に様々な方向に向かっているものだから。でもまあ、私はタイトルをあれこれ考えていたし、「Scope」(範囲、視野)という言葉ってとても幅が広い、という意味なわけじゃない? 自分の視界には色んなものが入ってくる、色んなものが見えている、という。そこで私はこの「Scope」という言葉をいじってタイトル案を色々と考えていたんだけど、そうしているうちにルイスが「そうだなあ…なんか、星と関係あるものってどう? スーパーノヴァ(超新星)とか、そういう感じ?」と言い出して、そうやって結局、そのふたつの言葉、スーパーノヴァの「Super」と「Scope」とを組み合わせたものに落ち着いた、という。だから、私は気に入ってる。クールな響きのあるフレーズだし、でも、それと同時にこのレコードで私たちのやっていることを要約したような、そういう言葉だし。このレコードには色々と異なる要素がたくさん含まれているし、様々なフレイヴァーの音楽が詰まっているわけだしね(笑)。それに、「これが今の私たちよ」って風に伝えてもいるタイトルなんじゃないかと思うわ。

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■来日情報
http://smash-jpn.com/live/?id=2773

■ビートインク内アーティスト情報
http://www.beatink.com/Labels/Sunday-Best/KDL/BRC-552/

■Official HP
http://www.kittydaisyandlewis.com/

Text By Shino Okamura


Kitty, Daisy & Lewis

Superscope

LABEL : Sunday Best / Beat Records
CAT.No : BRC-552
RELEASE DATE : 2017.09.29
PRICE :¥2,200 + TAX


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