INTERVIEWS : 15 April 2019

Galen Ayers

To The Late Kevin Ayers Loving Spanish & Japanese Culture 〜 The first Album Delivered From His Daughter, Galen, Is A Love Letter To The Father Through Songs

By Yasuo Murao

INTERVIEWS : 15 April 2019

Galen Ayers

To The Late Kevin Ayers Loving Spanish & Japanese Culture 〜 The first Album Delivered From His Daughter, Galen, Is A Love Letter To The Father Through Songs

By Yasuo Murao

スペインの風土、日本の文化を愛した故ケヴィン・エアーズへ―― 愛娘ギャレンから届けられた初のアルバムは歌を通じた父へのラブレター

UKプログレの聖地、カンタベリー・シーンのキーパーソンであり、世界中を放浪しながら歌を紡いだシンガー・ソングライター、ケヴィン・エアーズ。そんな吟遊詩人の血を受け継いで、父親と同じようにシンガー・ソングライターとして活動しているのがギャレン・エアーズだ。ソフト・マシーンを脱退して、マヨルカ島でのんびり暮らしていたケヴィンのもとに生まれたギャレンは、10代の頃から音楽活動をスタート。イギリスの寄宿学校に入学すると、バンドのオーディションを通じて知り合ったカースティ・ニュートンとシスキンというユニットを結成して、2008年にデビューを飾った。シスキンが自然消滅した後、ギャレンは絵画や彫刻など様々なアートに挑戦しながら音楽活動を続けていたが、2013年にケヴィンが死去。父親から強い影響を受けていたギャレンは、ギリシャのイドラ島にこもり、悲しみを癒すために曲を書いた。そして、そこで生まれた曲を、時間をかけて一枚のアルバムにまとめあげたのが、初めてのソロ・アルバム『Monument』だ。父親への愛情、音楽への探究心、死生観など、様々な想いが反映された本作を制作することは、彼女がミュージシャンとしてのアイデンティティを確立するための旅だったのかもしれない。そんな大切なアルバムの日本盤リリースにあわせて、ギャレンが3月に初来日。日本ツアーの合間に、アルバムについて、そして、父親について話を訊いた。
(取材・文/村尾泰郎 ライヴ写真/大石弘子)

Interview with Galen Ayers

ーー日本は初めてだそうですが印象はいかがですか?

ギャレン・エアーズ(以下、G):すごく豊かな文化を感じるし、みんなフレンドリーでツアーを楽しんでいます。

ーーイギリスの学校で日本の文化を学ばれていたそうですね。

G:仏教を学んでいました。父が仏教に興味を持っていて仏教美術を集めていていたので、小さな頃から関心があったんです。あと、父は俳句をやっていたんですよ。

ーーすごい! どんな句を詠まれていたんですか。

G:もう、覚えていませんが、私も俳句は大好きです。限られた文字数で、感情や自然、四季の移り変わり表すことにすごく共感できるんです。

ーーそうした俳句の手法は歌詞に影響を与えていますか?

G:確かに歌詞を書くことに通じるものはありますね。でも、それ以上に仏教的な世界観から影響を受けています。例えば「Into The Sea(Calm Down)」という曲は“海辺で人と会う”という内容なのですが、“会う”という出来事には輪廻転生のイメージが込められているんです。

ーー深い内容なんですね。海といえば、アルバムに収録された曲は海に囲まれたイドラ島で書かれたとか。

G:そうです。そういう環境も歌詞に反映されています。父が亡くなった後、自分を見失いそうだったので、いつもと違う環境に身を置きたいと思ってイドラ島に行きました。車も走っていないような静かな島なんです。

ーーイドラ島といえば、レナード・コーエンが住んでいた島ですね。

G:私が暮らしていた家の隣がレナード・コーエンの家でした(笑)。彼のほかにもアーティスティックな人達がたくさん暮らしていて、家族的な雰囲気な場所なんです。イドラ島で一年暮らして曲を書きました。数年前からニューヨークで暮らしているのですが、あまりにも人は多いし、いろんな情報が溢れていて自分の内なる声が聞こえない。だから、年に2回はイドラ島に行くようにしているんです。

ーーイドラ島での曲作りは、お父さんを失った悲しみから立ち直るためのセラピーのようなものだったのでしょうか。

G:ヒーリングのプロセスとして絶対に必要なことでした。私が小さい時。「心の痛みを感じた時にはアートで表現する」ということを父が教えてくれたんです。だから、父が亡くなって深い悲しみを感じた時、それをアートに昇華させたいと思ったんです。

ーーアルバムのオープニング曲「You Choose」は“私にまつわる本当の物語を聞きたい?”という一節から始まります。このアルバムは、あなたの自伝的な要素が反映されているのでしょうか。

G:はい。父が亡くなった時、ジャーナリストやいろんな人たちが私の話を聞きたがったのですが、その時、私には話をする用意が出来ていませんでした。とてもそんな状態ではなかったんです。だからこのアルバムを通じて、私がこれまで通って来た道を伝えたかったんです。

ーー人生にいろんな局面があるように、アルバムにはいろんなタイプの曲が収められていますね。

G:ポップス、ロック、プログレ、レゲエ、スペイン音楽……これまで影響を受けた音楽をすべて盛り込みたかったんです。あと、意識したのはスペースです。音をごちゃごちゃ入れずにシンプルなサウンドにしたかった。余白と静寂がある音楽が好きなんです。

ーーアルバムの制作には、どれくらいの時間をかけたのですか。

G:レコーディングはもちろん、ミックスやマスタリング、ジャケットのデザインまで自分が関わって、2年かけて作りました。日本盤のジャケットは、日本人のデザイナーと何度もメールでやりとりをしたんです。最近の新人ミュージシャンだったら、こんなに時間をかけられないでしょうね。アルバム作りの全行程に立ち会ったことはすごく勉強になったし、次の作品もすべて自分でやりたいと思っています。

ーー最初にレコーディングした曲はどれですか?

G:「Monument」です。父が亡くなって2週間後ぐらいに、ある朝、突然、天から降って来たんです。歌詞の90%は、その日の朝にメロディーと一緒に降ってきました。そんな風に、歌詞とメロディーが天から降って来ることが子供の頃からよくあって、私にとって歌詞とメロディーは切り離せないものなんです。ビートルズの曲と同じように。

"父はジミ・ヘンドリクスにもらったギターを、私の21歳の誕生日にプレゼントしてくれました。ギター・ケースに入れたまま私のほうに足で蹴って「ほら、やるよ。誕生日おめでとう」って"

ーー「Run Baby Run」はスペイン語の歌詞が挿入されていますが、スペインのマヨルカ島で生まれ育ったあなたにとって、スペイン語は特別なものですか。

G:私にとってスペイン語が母国語で、英語は第二外国語です。だから“スペイン語で歌わなきゃ!”という感情がわき上がってくることがあって、それでスペイン語で歌うことにしました。スペイン語で歌うとすごく楽しいんです。

ーーマヨルカもイゾラみたいにのんびりした土地なんですか?

G:自然に囲まれていますが、私が育った場所はヒッピーのコミューンだったので、ゴングやタンジェリン・ドリームがずっと流れているような賑やかな場所でした(笑)。

ーー楽しそうな場所ですね(笑)。日本盤のボーナス・トラックには、お父さんとデュエットした「Girls On A Swing」が収録されています。お父さんの生前最後の録音だそうですが、録音した時の話を聞かせてください。

G:確か2009年頃に慈善団体のチャリティ・アルバムのために録音したんです。私が父に「デュエットしない?」と誘って、父の曲をアレンジしてカヴァーしました。ロンドンでレコーディングしたんですけど、歌っているうちにどんどん父の声が低くなっていくんです(笑)。私の声は高いのに、父の声は低くなっていくので、そのコンビネーションをどうやって調整しようかと悩みながらレコーディングしました。

ーー思い出の曲ですね。あなたから見て、お父さんはどんな人でした?

G:ユーモアのセンスが最高で、もう父のユーモアで笑えないことがとても寂しいです。最後まで自分の生き方を貫いて、女性、音楽、ワイン、日本食、スペイン、フランスなど、気に入ったものを愛し続けました。

ーーミュージシャンとして影響を受けたことはありますか?

G:父はずっと「音楽学校になんか行くな」と言っていました。「自分で独自に学べば良いから」って。その教えは大きいですね。いろんなプログレッシヴ・ミュージックを聴かせてもらったんですけど、「拍子や難解なコードは考えなくていい。自分の好きなようにやればいいから」と言っていました。父がソフト・マシーンを辞めた理由のひとつは、ソフト・マシーンが実験的になり過ぎたからなんです。父は“歌(Song)”が好きだったし、私もそうです。実験的な音楽の良さもわかりますが、私は“歌”が好きなんです。

ーーお父さんにギターを教えてもらったりはしたんですか?

G:父は辛抱強くなかったので(笑)、全然教えてくれませんでした。小さい頃、子供用のギターで「ラ・バンバ」を教えてもらったくらい。そういえば父がソフト・マシーンのメンバーだった頃、ジミ・ヘンドリックスと一緒にツアーをしたことがあって。父はツアーに疲れて、途中でバンドをやめることにしたんです。その時、父はベースを弾いていましたが、そのベースをジミのバンドのノエル・レディングにプレゼントしたんです。「もうバンドをやめるから」って。そしたら、ジミがギブソンのギターを父にプレゼントしてくれたそうです。父はそのギターを、私の21歳の誕生日にプレゼントしてくれました。ギター・ケースに入れたまま私のほうに足で蹴って、「ほら、やるよ。誕生日おめでとう」って。これまで一度も、誕生日にもクリスマスにもプレゼントなんてくれたことがなかったのに(笑)。

ーー最高のプレゼントですね(笑) 良かったら、あなたが好きなお父さんの曲を教えてくれませんか。

G:選ぶのは難しいけど……じゃあ、3曲選んで良いですか? 今日の気分で選ぶなら、「Champagne And Valium」「Something in Between」「Am I Really Marcel ?」かな」

ーー「Champagne」はあなたの名前で(ギャレンの正式名はGalen Champagne Ayers.)、「Something in Between」はお母さんについて歌った曲ですね。お母さんはどんな方なんですか?

G:母はとてもパワフルで、美しく、知的で、エンジェリック。中国人で辰年の“ドラゴン・レディ”なんです。父はのんびりしていた人なので正反対の夫婦でした。父と別れた後、母が再婚した義父は父と仲が良くて、父は亡くなる直前に「娘と妻の面倒をみてくれてありがとう」という手紙を義父に書き遺したんです。

ーー優しいお父さんだったんですね。あなたとの共演を観たかったです。あなたは音楽以外にも、絵画や彫刻などいろんなアートをやられているとか。そのなかで音楽は特別なものですか?

G:私にとって音楽は、いちばん完璧なアートです。音楽は観客とコミュニケートできるところが素晴らしい。実は子供の頃、まわりに音楽が溢れ過ぎていたので、音楽から距離を置きたいと思って普通の学校に行ったんです。でも、自分を表現できるものを探していくうち、最後に音楽に辿り着いた。今はもう、音楽と自分は切り離せない関係なんです。

■Galen Ayers Official Site
https://www.galenayers.com/

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Text By Yasuo Murao

Photo By Hiroko Ooishi


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