INTERVIEWS : 28 June 2017

Forest Swords

Forest Swords the Way of Sampling and Comunication

By Tetsuya Sakamoto

INTERVIEWS : 28 June 2017

Forest Swords

Forest Swords the Way of Sampling and Comunication

By Tetsuya Sakamoto

自分本位になっている暇はないーーフォレスト・ソーズにとってのサンプリング、そしてコミュニケーションのあり方

約4年ぶりの新作『コンパッション』を発表

 フォレスト・ソーズことマシュー・バーンズは今、他者とのコミュニケーションを欲している。確かに2013年にリリースされた前作『エングレイヴィングス』はその名の通り音響彫刻のようで、素晴らしい作品だった。だが、その深い森に誘われていくようなサイケデリック・ダブ・サウンドは、内省的で、コミュニケーションを拒んでいるようにも思え、そこにはどこか彼の苦しみが表れているようでもあった。それから約4年経ち、彼から届けられた新作『コンパッション』は、彼がこの4年間、世界の様々な土地を訪れたり、様々なアーティストと共同作業する、つまり他者とコミュニケートする中で発見した生命力に満ち溢れたアルバムである。その生命力は、アルバム全体に渡って、”ヴォーカル”を使用していることからも感じ取ることができる。とりわけ、「パニック(Panic)」の《I feel something is wrong / The panic is on》という”ヴォーカル”は非常に生々しく聴こえてくるのだ。そんなアルバムを完成させたバーンズにメール・インタヴューを試みた。(取材/文:坂本哲哉)

interview with Matthew Barnes

ーーアルバム・タイトルの『コンパッション/Compassion(慈悲心)』はとても示唆的であるように思いました。慈悲心とは、仏教の言葉として、他の生命に対して自他怨親のない平等な気持ちを持つことをいいますが、このような意味とは関連しているといえるでしょうか?

マシュー・バーンズ(以下M):そうだね、かなり関連しているよ。アルバム・タイトルを「種」として使うことに興味があったんだ。というのも、”Compassion(慈悲心)”という着想は本当に大事なものに思えたんだ。特に、最近ではヨーロッパやアメリカで政治的・社会的な激変が起こっているからね。僕たちはこれから、互いにどうやって影響し合い、接していくかを見つめ直すことがより必要になっていくと思う。自分本位になっている暇はないんだよ。それから、単純にこのレコードの音の鳴り方が、音響的にその言葉(compassion)にフィットしていると思ったんだ。

ーーあなたのサウンドはまるで深い森という環境のもとで作られたようにも感じます。あなたは英国北西部のウィラルというところに住んでいると聞いたことがありますが、そこは一体どんな環境なんでしょうか?

M:リヴァプールから30分ほどの海岸なんだ。林や森がたくさんあるけれど、ビーチもあるし、大きく開けた景色もあって。すごく多様な環境で、自分の音楽の中でどのように音やテクスチャを選択するかということに関しては、間違いなく影響を受けているね。リヴァプールに近いから、子供の頃からたくさんの良い物に接することができた。大きな都市は音楽やアートなどを提供してくれるからね。でも、ひとたび家に戻ると、自分だけの場所にいるような気分になれるんだ。

ーー今回のアルバムの制作はいつ、どのくらいの期間で行ったのかを教えてください。

M:前回のツアーを終えてから18ヶ月以上かけて曲を書いたよ。前回のアルバムを何度も聴き直して、なんて暗くて自閉的なサウンドなんだと思ったんだ。だから、もっとずっと開けていて友好的なサウンド、かつもう少し拡張性があって雄大なものにしたかったんだ。

ーー前作『エングレイヴィングス』はもともと野外で録音を完結させようと試み、結果的に録音はラップトップで、ミックスのみ野外で行ったそうですが、これは本当ですか? また、今作『コンパッション』は、どのような環境のもとでレコーディングを行ったのでしょうか?

M:今回は、意図的に違った方法でレコーディングをしたんだ。前のアルバムは、とても濃密な時間の中で作られたもので、野外で完成させた。今回は、たくさんの時間をかけて色んなところを旅して、自分の環境を変えてそれが音楽にどんな風に作用するかを見ていったんだ。例えば、トルコやスコットランドの山々へ行ったよ。ライティング・プロセスにどう作用して行くかを見つめていくうちに、色んな地を探索していくようになったんだよ。

ーーあなたは『エングレイヴィングス』リリース後に、人気ゲームを実写化した映画『アサシン・クリード』に、ロバート・デル・ナジャ(マッシヴ・アタック)、ヤング・ファーザーズとコラボレートした楽曲「He Says He Needs Me」を提供したり、コンテンポラリー・ダンス作品『シュライン』のスコアを制作されてきました。このような作品への参加は、今作『コンパッション』にどのような影響を及ぼしたと思いますか?

M:確かに今回のアルバムは、『エングレイヴィングス』よりももっと自由で、息をつける場所があるね。でも、これらの多くのコラボレーションやプロジェクトは、落ち着ける場所から僕を追い出して、少しばかり怖がらせるようなものだったよ。でも、ベストな作品が生まれる時っていうのは、時としてこういうことなんだ、と気づいたんだよね。だから、僕はこれらのコラボレーションで学んだ全ての新しいスキルを取り入れて、『コンパッション』に何らかの形で落とし込んでいくことにしたんだ。

ーー特にコンテンポラリー・ダンス作品の『シュライン』のスコアを書いたことは今作に大きく影響しているように思いました。この作品のスコアを書くきっかけやどのようにして構想して、曲を書いたのか教えてください。

M:ビートやメロディーを作るために電子的にシーケンスされた呼吸や身体の音から、アルバム全体を作るアイデアがあったんだ。3、4曲作ったところで、「メタル」というリヴァプールにある芸術団体がコンテンポラリー・ダンスの曲を作らないかと僕にアプローチをしてきたんだ。だから、これらの曲を代わりにダンス用の曲として使うことが理に適っていたんだよ。そうやって曲が表に出てすごくハッピーだよ。でももちろん、『シュライン』が『コンパッション』に与えている影響はあるし、リンクしているよ。これらの作品はまさに互いに生きていて、抱擁しあっているようなものだよ。

"特定の言語を使わずに感情や意図を伝えようとすることは、とても興味深いことなんだ"

ーーこの『コンパッション』というアルバムは、ある意味で“ヴォーカル”のアルバムのようにも思いました。前作よりも声や歌の比重が増えたということもありますが、今作での声や歌からは生命の力強さを感じます。ここまで声や歌をフィーチャーした作品に昇華させたのはどのような思惑からだったのでしょうか? また、本作から聴こえる声や歌は、すべてサンプルからなのですか?

M:ヴォーカルは、サンプルと僕自身の声と両方のミックスだよ。レコードを作るために色んな場所を旅しているうちに、言語や言葉にすごく興味が湧いてきたんだ。僕は他の言語をきちんと話すことはできないけど、僕が会話を試みた誰もが、何とか共通点を見出すことができていたことに気づいたんだ。言語の中間地点のようなものだよね。だから、僕はそれをヴォーカルで探ろうとしたんだ。一つの曲を除いて、英語でのヴォーカルはほとんど意味を成してないんだ。単に気分が良くなる音、一緒になった時に良く聴こえる音のミックスでしかないんだよ。特定の言語を使わずに感情や意図を伝えようとすることは、とても興味深いことなんだ。

ーー例えば、「ザ・ハイエスト・フラッド(The Highest Flood)」や「パニック(Panic)」といった曲には、エンニオ・モリコーネからの影響を少なからず感じました。これらの楽曲はどのような構想のもとに作られたのでしょうか? また、「パニック」の「I feel something is wrong / The panic is on 」という歌詞はとても生々しい歌声のように聴こえ、このアルバムを象徴する歌詞の一つであるように思いましたが、本当にサンプルからなのでしょうか?

M:「Panic」のサンプルは、古いソウルのレコードから取っているんだ。アルバムを書いている時の感情を要約したようなものだったので、それを使うべきだったんだよね。それは僕にとって非常に即時的で、本能的な反応だったんだ。僕はエンニオ・モリコーネが大好きだし、君が曲から影響を感じ取ったことは、驚くことではないよ。彼は歌詞を使わずメロディーだけを使って感情を伝える真のスキルを持っている。彼からはたくさんのインスピレーションを得ているよ。彼は真のマスターだね。

ーー今作ではストリングス・セクションやをブラス・セクションも非常に多いように感じました。これは非常に挑戦的な試みであるように思いましたが、どうしてそうしようと思ったのでしょうか? またこのブラスやストリングスの音は実際に録音を行ったものなのですか?

M:フェイクとリアルの混合だよ。コンピューター・プラグインで金管楽器や弦楽器の音を真似て出すのが本当に好きなんだ。コンピューターはいつも少しばかりの間違いを冒すからこそ、テクスチャーとトーンにクールな部分があるよね。だから、リアルな楽器の音と電子的な音のヴァージョンを一緒に入れて、リスナーにどれがリアルな音なのかそうではないのかを言わないままにしておくのを楽しんでるんだよね。究極的には、それは大した問題じゃないと思うんだ。単に、音を得る方法でしかないからね。

ーーとはいえ、あなたのサウンドからはルーツ・ダブ、とりわけオーガスタス・パブロやキング・タビーのまるで水中を漂っているようなダブ・サウンドの影響があるようにも思えます。実際ダブを好んで聴いたり、サウンドの参照点としているのでしょうか?

M:ダブは大好きだけど、自分のカルチャーではないとわかっているんだ。だから、ダブの要素を取り入れて、自分の音楽に落とし込むのが好きなんだ。でも、それは100%のダブになることはあり得ない。なぜなら、文化は自分のものじゃないからね。ベースや、ダブの音楽作品にある間が大好きなんだよ。僕の作るたくさんの曲には、それらが落とし込まれているのが聴いてわかると思う。あちこちにヒントがあるし、ちらっと見せたりしているからね。

ーーあなたのサウンドはどれがサンプリングでどれがオリジナルの素材なのか、判別することが難しい側面もあるように思います。それは意図的なものなのでしょうか?

M:そうだよ。たくさんの作品をサンプルを使って作っているけど、それを完全な形で音楽の中に入れることはほとんどしない。いつも歪めたり、変えてみたり、リプレイしたり、そういうプロセスを経て、ほとんど認識できないものになっていくんだ。他の人の音楽の一部を使っているというよりは、サンプルを道具と捉えて使っているから、この方法にはプライドを持っているよ。DJシャドウみたいなアーティストは大好きだけど、僕はもっと曲の持ち主だっていう感覚を持っているんだ。サンプルは大きく変えられて、ほとんど認識できないからね。粘土を使って彫刻を作るようなものだよ。

ーーあなたはこのアルバムではマスタリング以外、つまり作曲やプロデュース、アート・ディレクション、デザインまで行っています。そういう意味ではあなたは単なるミュージシャンではなく、トータリティのある芸術の表現者であるようにも思います。

M:全てを自分でやるのは楽しいけど、今はもっと前に進んで、よりオープンなコラボレーションに取り組んでいるんだ。それは一つには、もう少し年取った時に、疲れ切ってしまう前に、やれることは限られていると気づいたからなんだ。もう一つには、例えば『シュライン』のようなプロジェクトで新しいコラボレーションの経験をしたことによって、他の人たちと一緒に作品を作ることに本当の価値があるとわかったからなんだ。でも、自分で全てをやるのは本当に楽しいことだよ。なぜなら、音楽、アートワーク、ヴィジュアル、の全てが適切に一緒になってフィットしていくことを確認していくことになるからね。全部自分でやることによって、聴く人たちが探求して楽しめることが、もっと完全に実現されたアルバムがあるように感じるんだ。

ーーあなたは以前ハウ・トゥ・ドレス・ウェルのデスマスクのアートワークが印象的なアルバム『トータル・ロス』に参加していますが、その事実はゴーストリーなサウンドでありながらも生に溢れたこの『コンパッション』というアルバムを聴く上で非常に重要なことだと思いますが、どう思いますか?

M:トムは僕の良き友人で、一緒にツアーも回ったんだ。僕たちは互いに生命についての思想、生きること、それらを音楽的・視覚的にどうやって探求していけるか、ということにすごく興味があるんだ。死についての思想を理解せずに生命についての思想を完全に探求することはできないと思うんだ。それらは、同じ時間に存在しているからね。

ーー例えば、そのハウ・トゥ・ドレス・ウェルのトム・クレルはあるインタヴューで「ジャスティン・ティンバーレイクもフランク・オーシャンも僕にとっては全く別の音楽だとは思えないんだよね」といっていました。あるいは最近のフランク・オーシャンやケンドリック・ラマー、カニエ・ウェストの作品でもそうですが、彼らは自分の立場や本音を明確にして、優れたサウンド・プロダクションで素晴らしいアルバムを作っています。あなたはこうしたことについてどう考えていますか?それを踏まえて、あなたは音楽家、もといトータリティのある芸術の表現者として、今後どのように活動していきたいと考えていますか?

M:彼らは僕も大好きだし、尊敬しているよ。彼らは自分自身が誰なのか、彼らの音楽やアートがどうありたいか、ということに関して明確な意識を持っているからね。完全に彼ら自身のヴィジョンの中でコントロールされているんだ。その点において、すごく尊敬している。彼らのようなアーティストに比べると、僕はもっと小さなスケールの中で活動しているけれど、人々が探求し、楽しむことができるよう、世界とコミュケーションできることはすごく重要だと思っているよ。フランク・オーシャンやカニエ・ウェストがやっているように、僕も将来はもっと多岐にわたって違う分野で活動していきたいと思っているよ。映画やファッション、アート、つまり全てのものから新しいことを学ぶのは、本当に好奇心をそそることだからね。

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Text By Tetsuya Sakamoto


Forest Swords

LABEL : Beat Records / Ninja Tune
CAT.No : BRZN243
RELEASE DATE : 2017.05.05
PRICE : ¥2000 + TAX

■フォレスト・ソーズ OFFICIAL SITE
http://www.forestswords.co.uk/


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