INTERVIEWS : 13 February 2018

Father John Misty

The Art Realistic Theory Of Joshua Tillman a.k.a. Father John Misty

By Shino Okamura

INTERVIEWS : 13 February 2018

Father John Misty

The Art Realistic Theory Of Joshua Tillman a.k.a. Father John Misty

By Shino Okamura

目下来日ツアー中!
ファーザー・ジョン・ミスティことジョシュア・ティルマンのアート現実論

ファーザー・ジョン・ミスティ(FJM)の昨年リリースの最新作『ピュア・コメディ』は全米初登場10位を獲得している。そして、そのFJMことジョシュア・ティルマンがドラマーとして在籍していたこともあるフリート・フォクシーズのこちらも昨年の最新作『クラック-アップ』も9位に食い込んだ。各音楽メディアが選出した2017年度の年間ベストには、特にFJMの作品は数多くランクインし、そうした数字や結果だけ見れば嘆くほどには悪い状況なんかじゃないということはわかる。少なくとも、ヒップホップやR&Bの充実に比べるとUSのロックは壊滅的だ、と一概には言い切れない。

確かに、そうして評価された『ピュア・コメディ』や『クラック-アップ』に映し出されているのはいっそエンターテインメントに例えたくなるくらい乾いた笑いを誘うようなどうしようもなく病んだ現代社会ではある。特に、FJMのこれまでの作品は実にアイロニカルに、そして実にペーソス豊かに自分たちの足元を描いてみせた。わけても、ここ2作における表現の変化は実に鮮やかだ。言わば、“アメリカに飽和している時代”(「Bored In The USA」)から、“富める者も貧しき者もみんな等しく面白がられちゃう時代”(「Total Entertainment Forever」)へ。もはや格差社会どころか、目に見えない大きな力が遠くから自分も含めてすべての生きとし生ける者たちを動かすそんな時代の中で、ささやかな力しか持てない僕はそれでも表現するしかない。そのためには笑われてナンボの道化師にもなるし、割れたらおしまいの風船人形にもなる。そんな際どい環境のもと、張り詰めた意識のもとでFJMことジョシュアは制作とパフォーマンスに挑み続けていると言っていい。こういう表現者がインディー・シーンからヒーローとして登場してきている以上、私はやっぱりロック(と言っていいかはわからないが)が壊滅的だとは言いたくないのである。

メリーランド州ロックヴィル生まれのジョシュアは40歳が見えてきた世代。モデルのように洒落た格好に身を包んでステージに立つジョシュアは、確かに道化師にも風船人形のようにも見える。でも、彼は言う。僕という存在はまやかしなんかじゃなく現実だと。さあ、2018年、改めてこの人の音楽に接してみてほしい。昨年のフジ・ロック・フェスティバル出演に続く単独としては初となる来日ツアー真っ只中のそんなファーザー・ジョン・ミスティことジョシュア・ティルマンの、昨年来日時に行ったインタビューをお届けする。(取材・文・撮影/岡村詩野)

過去記事
【現代アメリカきっての千両役者ミュージシャンが、社会をヴァーチャル・リアリティとして描く日】
【フジロック・フェスティバル ’17 ライヴ・レポート第1弾】

Interview with Joshua Tillman

――前作『アイ・ラヴ・ユー・ハニーベア』に収録されている「Bored In The USA」と、最新作『ピュア・コメディ』からの「Total Entertainment Forever」、この2曲はどちらも現代社会に生きる人々へ向けられたユーモラスな警鐘ソングとして示唆的ですが、ここに何か関連性、連続性があると考えますか?

ジョシュア・ティルマン(以下、J):確かにどちらも社会を風刺した曲という点では共通しているね。でも、アングルがまるで違うんだ。前者を作った時、僕のリスナーの多くは中流階級の白人だった。つまり、ちゃんとした教育を受けている人たちが長く僕のファンでいてくれたわけだけど、あのアルバムが売れて、状況がかなり変わった。セカンド・アルバムくらいまでは、今の致命的にダメになってしまったアメリカの状況をしっかり見つめて受け止め、逃げずに自分と向き合って声を上げていってほしい、ということを伝えたかった。「Bored~」はその思いを集約させた曲でもある。でも、その後国際状況はさらに悪化したよね。アメリカもトランプ政権になってしまった。そうやって社会がより一層歪んでしまったことを示唆した曲、それが「Total~」なんだ。最近、ジャスティン・ビーバーがついに教会まで設立するなんて噂が流れてるけど、それどころかもはやジェイZが銀行を作ってもおかしくない時代だ。一部の億万長者が人生を謳歌し、中流の幸せはどんどん遠のき、それより下の階層はどうしようもなく指をくわえて見ているだけ…。その格差の広がりはさらに手がつけられなくなって、もう僕ら現代人の中のヒエラルキーがどうのこうのっていうより、貧富の差関係なくみんなショウビズの中で踊らされてるタレントみたいだなって思えてきちゃった。で、そういうことを考えるようになった時に、僕はルーツ音楽の意味を捉え直す必要があると思ったんだ。

――それは歴史の見直しをする必要があるということですか?

J:その通り。というのも、僕はソロ活動を長くやってきて歌とメロディというもののあり方を自分なりに勉強したし、フリート・フォクシーズの一員としてもそれを合奏として聴かせることの意味を考えてみたんだ。でも、ある時期から正統派シンガー・ソングライター、フォークロア音楽としてのソングライティングという在り方に少し退屈をするようになった。だから、今の僕の音楽はいい歌をコツコツ聴かせる良質なミュージシャンではないよ(笑)。そう思うに至った一番大きなきっかけは、フランシス・フクヤマによる著書『歴史の終わり』で描かれる“普遍的な歴史としての終焉”という現実的な考え方と、あるフォーク・アート系コミュニティの思想に出会ったことだったんだ。そのフォーク・アート系コミュニティっていうのは、ハンドメイドの刺繍を施したキルトを丁寧に制作するコミュニティの人々のことでね。でも、それは決して崇高な芸術という位置付けでやっている作業ではなく、あくまで機能性ある日用品として制作することをモットーとするような人々なんだ。彼らの存在を知った時に、芸術とは何? 歴史とは何? 当たり前に学校で学んだことに対して疑問を持つようになった。と同時に、アートは現実にあらず、現実は芸術ではない、みたいな考え方がつまらないものに思えてきた。そしたら、リアリズムとヴァーチャルの世界のコントラストを歌で表現してみたくなったんだ。で、ちょうどテレビをつけたらよくわからない架空のヒーローが偉そうにしていて、オバマ政権はまさに終わろうとしている時期だった(笑)。なんかもう、何が現実で何が夢の世界かわけわかんないなってね。

――もはやアメリカ国内の中、現代社会の中でヒエラルキーを競ってる場合ではないと。

J:そう。というより、もはやそんなヒエラルキーじゃ全く無意味なものになってきてるんじゃないかってこと。そういう意味では、オバマ政権が終わり、トランプが大統領になったのは、茶番ではあるけど、より引いてアメリカを見る機会を与えてくれたとも言える。だから、「Total~」ではオキュラス社のゴーグルをつけてヴァーチャルの世界へと逃げ込む人々を面白おかしく描いてみたんだ。だって、テレビや映画の中の架空のヒーローが僕らの生きる社会の中で何より影響力を持つってヘンじゃないか。それより、しっかり地に足をつけた生活の中から生まれた人や思想が社会を作り、日々の暮らしの中でその営みが継承されていくべきなんだ。僕はゴーグルをつけてゲームの世界に埋没し、現実逃避してる連中よりはるかに充実した毎日を送っているし、僕の作る音楽はある意味ですごく現実的なんだという自負もある。だから、僕のパフォーマンスはすごくエンターテインメント性に富んだものかもしれないけど、それは単なるハリボテの芸能じゃなくあくまでリアルなんだってこと。これが今、真の意味で歌であり音楽であるということを身を以て伝えていかねばいけないと思えたんだ。

"僕はアートも好きだしリアリストでもあるし、なんたって美しいものが好き。でも、美しいものは時として醜くもなるし、そのまた逆も然りなんだ"

――つまり、エンターテインメント再定義ですか。

J:そうなるね。でも、それは必ずしも歴史を否定することではなくて、あくまで捉え直すことなんだ。かつてアラン・ローマックスも提唱していたよ。フォーク音楽は夢ではない、現実だって彼は説いていた。だって、フォークやブルーズは労働の現場で生まれた音楽だ。何よりも生活の中にあった。そこに気づいた時、自分のスタイルがエンターテインメントであり、でも現実的な日常音楽でもあることが誇らしくなったんだ。僕がフリート・フォクシーズを離れた理由もそこにある。僕は今はハンドマイクでステージに立ったりして、全くミュージシャンらしくないように見えるかもしれない。動きもコミカルだしね。でも、それがアートじゃない、現実でもない、美しくないなんて一体誰が言える? 僕はアートも好きだしリアリストでもあるし、なんたって美しいものが好き。でも、美しいものは時として醜くもなるし、そのまた逆も然りだ。このアルバムはそういうことを相対的に伝えようとした作品だと言えるよ。

――なるほど。となると、そうしたアルバムのタイトルにコメディという言葉を載せたことの真意はどこにあるのでしょうか? コメディという言葉が象徴するものはありますか?

J:ふむ……難しいね、それを深く説明してしまうと幻滅してしまうだろうし聴き手それぞれの想像も剥奪してしまうことにもなりかねない。ただ、気持ち悪いタイトルではあるよね(笑)。でも、一方でとても魅力的なタイトルでもあるだろう。アグリーなものでも美しいものになりうるということを象徴しているのがコメディという言葉なんだと思うよ。だって、さっきから話してきたように、このアルバムのリリックにおけるモチーフ自体はどちらかというと憂鬱になるような、笑っちゃうしかないほどに絶望的とも言えるものだ。でも、不思議なことにサウンドや演奏自体は抜けのいいものだし、割と楽しめるものだと思う。そこがまた面白いじゃないか。自分の頭にあるものを何かに映し出そうとする時、形を自由に変えて出てきたりするよね。自分でも想像できないくらいに自由に。そういうところも僕にはコメディたるゆえんに思えるんだ。人生、コメディってな具合にね。

――では、そうした今のあなたが同じように“人生、コメディ”たる哲学を標榜している表現者でシンパシーを感じるのはどういう人たちになりますか?

J:まず絶対的なのは『Spacegoast』(『宇宙怪人ゴースト』。アメリカで60年代後半に放映されていたハンナ・バーベラ・プロダクションによるアニメ)だね! スーパーヒーローもののアニメーションなんだけど、万能の武器を手にして宇宙の悪と戦うんだ。スーパーマンとかアニメのヒーローは多いんだけど、地球ではない小惑星に住んでるのに地球人だっていうのがおかしいんだよ! それからコナン・オブライエン。知ってるよね? アメリカきってのテレビ司会者であり音楽家であり……でも、彼のトークっていうのはすごく自虐的でおかしくて、でもまるで朗読を聴かされてるみたいにソフィスティケイトされてる。存在自体がもう僕が考えるコメディそのものだよ。あとは……そうだなあ、ほら、空気を入れるとパンパンに膨らむけど、抜くとヘナヘナって萎んじゃう風船人形みたいなのってあるじゃん? よくデパートとかに置いてあるやつ。あれがいいな(笑)。ああいう風に、空気が入ってる時は勇ましいけど、抜かれちゃうと一体なんなのかわかんなくなっちゃうようなの、僕はああいう存在が今の現代社会の一部の人たちに重なって見えるよ!

Text By Shino Okamura


Father John Misty

来日公演情報

2018/2/13 (Tue) Umeda CLUB QUATTRO

OPEN 19:00 START 20:00
スタンディング 前売り:¥7,000

ドリンク代別

お問い合わせ
SMASH WEST 06-6535-5569

2018/2/15 (Thu) TSUTAYA O-EAST

OPEN 19:00 START 20:00
スタンディング 前売り:¥7,000

ドリンク代別

お問い合わせ
SMASH 03-3444-6751

来日公演詳細情報ページ
http://smash-jpn.com/live/?id=2775


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