INTERVIEWS : 04 July 2019

all about paradise

Going To The Paradise In The Place Where "Parallel" Crosses. A Band That Transcends The Fence ~ all about paradise

By Nami Igusa

INTERVIEWS : 04 July 2019

all about paradise

Going To The Paradise In The Place Where "Parallel" Crosses. A Band That Transcends The Fence ~ all about paradise

By Nami Igusa

“パラレル”がクロスするその先にある楽園(パラダイス)へ——
垣根を超越していく気鋭バンド“all about paradise” 登場!

先日の《新宿MARZ》でのイベント《New Action! Vol.97》での壇上で「活動開始からちょうど丸2年」というMCを聞いて思わず「えっ、まだそれしか経ってなかったっけ?!」と驚いてしまった。というのもその2年で彼らは、これまでにデジタル、フィジカルを含む3枚のEPとシングル1作をリリース、《りんご音楽祭》や《SYNCHRONICITY》、《ap bank fes》等の大型フェス出演をも果たしているからだ。そんな注目株が、この東京を中心に活動するall about paradiseである。

ニューウェーブやテクノ、ディスコなどの要素を取り入れ、ライブハウスのみならずクラブイベントでも活躍する彼らの音楽は、基本的にはハッピーで踊れるダンス・ミュージックではある。だが、この度リリースされた初のフルアルバム『PARA』には、どこかシュールさ、不穏さも漂っているように思える。陰と陽、過去と未来が混じり合うことで既成観念を超越したいと語る彼らの音楽は、喩えるならば、ニュー・オーダーの『Technique』(1989年)、あるいは直近の例で言えば、先日急逝したCASSIUSのフィリップ・ズダールがプロデュースした、フランツ・フェルディナンドの『オールウェイズ・アセンディング』(2018年)あたりだろうか。つまりは、ヨーロッパ由来のエレクトロ・ミュージック的なプロダクションに、どこかオーセンティックなバンド感をも掛け合わせたような感覚だ。

それは、彼らのメンバー構成にも関係があるようだ。サトーカンナ(ヴォーカル・シンセサイザー・パッド)、飛田興一(ドラム・パッド・コーラス)、西原浩(ベース・シンセサイザー)、三山義久(ギター)、有澤太郎(ギター・コーラス)の5人のメンバーたちには、実に20~40代という年齢の開きがある。だがそんな年齢の差がもたらす音楽的な嗜好の違いやカルチャーの違いを、彼らは否定していない。むしろ、そんな違いを内包しながら続けていくことこそが彼らのコンセプトの1つでもあるというのだ。それは、飽和状態のバンドシーンはもとより、ひょっとすると、それぞれの価値観や正義が平行線を辿り、交わることを拒絶し合っているような世の中に漂う閉塞感をも突破するような可能性をも秘めているかもしれないと感じてしまう。

前述のライブでヴォーカルのサトーは、アルバム『PARA』の内容に触れ「パラレルなものがクロスする先にあるパラダイスってこういうことだと感じてもらいたい」と語っていた。そして、そのアルバムを引っさげたツアーのタイトルは“超越的旅行”。彼ら、all about paradiseが超えていこうとする垣根とはなんだろうか? 結成から現在まで、たっぷりと語ってもらったインタビューで感じ取ってもらいたい。 (取材・文 / 井草七海 写真 / 山下直輝)

Interview with all about paradise

ーー飛田さん、西原さん、三山さんはこれまでも一緒に別のバンドをされていて、今もされているということですが、まずはその3人がall about paradise(以下、A.A.P.)を結成するに至った経緯を教えてもらえますか?

飛田:実はこのバンドが3つ目か4つ目なんです。3人とも「諦めてたまるか!」という一心でやってきたんですが、ヴォーカルが、例えば結婚で脱退されたりとかで続かなかったりして。ただ、3人ともまだ伸びしろがあるという実感がある。昨日よりも自分が成長している感じが自分でわかったりするんです。そこを諦めないで続けてきたのが、今の形になっているという状態です。なので今、サトーカンナ、有澤太郎の二人に出会えたのは運が良かったと思っています。二人とは年齢の差はあるけれど、頑張ってて良かったな、と(笑)。

西原:ちょうど飛田がA.A.P.を始める前に作曲、楽曲制作の方に力点を置いてきたので、タイミングも良かったんです。その前は飛田は自分で作曲はやっていなかったんですよ。

ーーなるほど。ではいまはメイン・ソングライターは飛田さんが、ということですか?

飛田:僕はトラックの部分だけで。メロディは(サトー)カンナちゃんが作るので、その合作という感じです。細かいアレンジについては、メンバーみんなで。最近は、ワンフレーズだけ作って、あとはメンバーでスタジオに入って作っていたり。それぞれアイディアを持っている人たちなので、最近では自分はあんまり作り込み過ぎないようにはしてますね。
あと、カンナちゃんの作る歌メロが、僕の予想と違うところに着地するのもまた面白いなと思って。僕は、ヴォーカルを素材的に使いたいところが大きいんですが、彼女はそこにちゃんと歌としてのものを持ってくる。いい化学反応が生まれてるなと感じています。

ーー結成にあたって、バンドのビジョンのようなものはあったんでしょうか?

サトー:徐々に固まってきたんだと思います。最初の頃に比べると曲調なんかも結構変わってて。

飛田:このバンドとこのバンドの美味しいところ持ってきちゃえ! というような…タランティーノの映画みたいなイメージでしたかね(笑)。そのコンセプト自体で、少しコミカルな部分を狙っていたのはあるかもしれません。ただとにかく、最終的にはポップに聴こえるようにしたい、と。アンダーグラウンドなもので終わらせるのではなくて、ちゃんと多くの人に届かせたいというのは明確にありました。

ーーなるほど。今回のアルバムもそうですけど、過去の曲から一貫して、ハッピーで踊れるポップさもありつつ、不穏さやシュールさみたいな要素も同時に見え隠れしますよね。その辺のバランスも面白いです。

飛田:そうですね、A.A.P.は、あえて逆のもの同士を組み合わせたがる、というのはあります。1つの曲に、別のカルチャーや、陰と陽が混じるようなものにしたいというのが、コンセプトかもしれない。

ーーええ、それはアルバムを聴くとすごくよく感じられます。ちなみに、活動開始から丸2年ほどにもかかわらず、2017年の《りんご音楽祭》オーディションの“RINGOOO A GO-GO”の“ゴーゴーアワード”グランプリを獲られて、去年もそのグランプリ枠で出演され、今年も出演が決まっていますよね。それ以外にも、《CINRA presents exPOP!!!!!》や《SYNCHRONICITY’18》、《ap bank fes’18》 にも出られて。そうした大きなフェスに出た時には、何か得るものや手応えは感じられましたか?

三山:コンセプトが少しずつ固まったという点はあるんじゃないですかね。まだやりながら模索してはいますけど…。

サトー:去年まではライブをかなりやってて。今年からは本数は少し減らしています。去年は、フェスのオーディションをたくさん受けて、落ちたのもあり、受かったのもあり…という状況でしたが、意外とA.A.P.の音楽は広い人に届くんだな、と実感できました。

ーーとはいえ、結成からすぐに短期間でたくさん出られてるな、という印象はありまして。

サトー:ライブハウスって、やっぱり来る人が限られているという側面もあるので。そのシーンから出ないで活動している人たちもいっぱいいるし、それはもちろんそれで良いと思うんですが、私たちはそこから出てやっていきたいなと思っていますね。

ーー確かに。ところで、セカンドEP『A.A.P. 2nd. WORKS』は1度自主リリースをされた後に《agehasprings tracks》から再リリースされていましたね。これはどういう経緯だったんですか? どうも《agehasprings tracks》の方が、A.A.P.が出演されていた《exPOP!!!!!》を観に来られていたようでしたが…。

飛田:そうなんですよ! 《agehasprings tracks》は、代表の玉井(健二)さんがセレクトしたアーティストをリリースするというコンセプトのレーベルなんですけど、《agehasprings tracks》のスタッフの方が《exPOP!!!!!》を観ていただいていたみたいで、それで突然声をかけていただいたんです。

サトー:セカンドEPに入っていた「Mission」という曲をすごく気に入っていただいて。なんならそれだけを出したい! っていうような勢いで(笑)。

ーーやっぱり《exPOP!!!!!》のような注目度の高いイベントに出たことで得られたチャンスもあったということですよね。そして、今回初のフルアルバム『PARA』をリリースされるわけですが、先ほどもちょっと触れたように、この『PARA』にはハッピーさもありつつ、コミカルさやシュールさ、かつ不穏さもあって。決して一筋縄ではいかないけれど、ちゃんとポップにも聴こえる、というアルバムになっていますね。MVなんかも一貫してそういうコンセプトが踏襲されていますし。その中でポイントに思ったのが、サウンドや音の使い方、あるいはメロディなんかにどことなくレトロな懐かしさがあることで。これは意図的なのでしょうか?

三山、有澤:偶然ですかね~。

飛田、西原、サトー:いや、結構、意識的にですね。

ーーあれ? 偶然派と意識的派がいらっしゃいますが(笑)。

三山:僕としては最先端の音楽をやっていたつもりだったので、まあシンプルに歳をとっているということかもしれませんけど(笑)。

飛田:僕、DJをやっていたんですが、その感覚も影響しているかもしれません。あと、結構古い楽器を使っているんですよね。ヴィンテージな楽器を使ってテクノをやったらどうなるか、という意図で作ってました。だからそう言ってもらえるとすごく嬉しいですよ。

ーー例えば、最初に世にリリースされた楽曲でもある「Coup d’État」のリフで入っているシンセ・ストリングスのサウンド。スタイリスティックスとかオージェイズのようなフィリー・ソウルっぽい音で…あれはレトロでかっこいいです。

飛田:あれは、60年代の古いレコードのサンプリングなんですよ。他の曲でも、70年代前半のブラック・ミュージックとかジャズ、シャンソンのレコードからわざとサンプリングして、そこにテクノっぽいフレーズを乗っけたりしてます。基本的に5人とも古い音楽が好きなんですよ。でも結果、新しく聴こえさせたい。古い音楽と新しい音楽を一緒に垣根なく聴きたいという感覚が強い5人が集まっているんだと思います。

ーーとすると、参照点になっているのは、やはり70年代ですか?アルバムの最終曲「WYN」なんかはちょっとディスコっぽいアレンジになっていますし…。

飛田:そうですね、主には70年代かな。逆に、90年代はあんまり要素としては無いかも(笑)。最近のヨーロッパのシーンでも、古い感じの音楽を新しいツールを使ってやっているアーティストが多いので、そこから刺激を受けてます。ヨーロッパで流行っているものをどう消化できるかなっていうのを意識してますね。

ーー割とヨーロッパ志向が強いんですか?

飛田:そうだと思います。

西原:あとは80年代のニューウェーブの影響がかなり大きいと思います。70年代後半から80年代前半くらいの音楽が僕は好きです。

ーー私もアルバムを聴いていて思い起こしたのが、ジョイ・ディヴィジョンやニュー・オーダーだったりして。ニュー・オーダーの『Technique』(1989年)なんかまさに、イビサで制作されてテクノやクラブ・ミュージック…というかアシッドハウスに接近したニューウェーブなので、A.A.P.はそれに近いなと思いました。

西原:そうですね、まさにその辺は好きです。スタイル・カウンシルとかトーキング・ヘッズとか。あと個人的には、メトロノミーがすごく好きだったり。

カンナ:私はCSSなんかもですね。

有澤:僕は両親が音楽をやっていたので、その影響が強いかもしれません。父親が作曲家で、母親が歌手で。ただ、僕はどちらかというと母の影響を受けてます。80年代くらいのシティ・ポップとか、R&Bとか。

ーーなるほど。ただ、アルバムも曲によってはオリエンタルな感じのフレーズがありますよね。「Hidden Things」はギターリフが中東っぽかったり。それはどういうところから出てきたものなんですか?

飛田:サイケを意識しているからかな。サイケ・ミュージックってシタール使ったりとかあるじゃないですか。だからかっこいいなと思うフレーズが中東・アジア寄りになる傾向があるのかもしれないです。

西原:ニューウェーブの中でも、Japanとかはチャイニーズな感じもありますよね。僕は、シンセ・ベースを弾く曲もあるんですけど、飛田からシタールっぽいフレーズやってとか言われたり。

"決まった概念とか、これはこうあるべきだ、というものを吹っ飛ばしていきたい。固定観念で決めつけず、本当の意味での“楽観的”っていうのはこういうものじゃないの? っていうのがバンドで表現できたらいいのかなって"

ーー話は変わりますが、いろいろな世代のメンバーが一緒に化学反応を起こそうというバンドの在り方っていう意味では、個人的にA.A.P.はスーパーオーガニズムと似ているなと感じてまして。音楽的に、未来感と懐かしさが同居しているという点でも。

一同:おー、嬉しいですね。

ーーバンドって、昔から一緒に友達同士でずっとやってて…みたいなパターンが割と多いですよね。ただ、A.A.P.はそうではなくて、それぞれ別々の活動をしてきた、しかも世代の違いのあるメンバーで構成されている。そういうバンドっていうのもなかなか珍しいと思うのですが…。

飛田:メンバーの年齢が全然違うのが面白いじゃん、というコンセプトで初めは立ち上げたんです。あんまりそういうグループってバンドのシーンではあまりないから。カルチャーショックや考え方の違いはもちろんあったんですが、年齢の違いがあるからこそできる新しいことがやれたらなと思っていますね。うまくいかないこともあっても、ひっくるめて、A.A.P.でありたい。

西原:学生時代からメンバーがずっと一緒にやってるバンドとかだと、やっぱりメンバー同士、同じジャンルに偏りがちになっちゃうと思うんですけど、A.A.P.は5人それぞれ違う確立した音楽性がある個人の集合体だから、ミックスした音楽ができるというか。

三山:みんな歳が違うのが逆にやりやすいという部分もありますね。全員が違うことで、対等ではないという前提からやっていけるから。

ーー若い有澤さんとカンナさんはどうですか?

有澤:僕は年齢的には1番下なんですけど、逆に年の違いとかカルチャーの違いは気にしたことないですね。最初はもちろんちょっと遠慮もありましたけど、今はフラットに対応できてると思うんです。ただ、上の世代の人たちからはやっぱり、音楽的な知識はもらってるかなと思いますね。

サトー:難しいところはたくさんあるとは思うんです。その最初にメンバーが集まった時のコンセプトやテンションでずっと続けていくことってやっぱり難しさがある。でも、それを続けていくってこと自体や、それを見せていろんな人に届けていくってこと自体が、このバンドの1つの価値なのかなと考えています。

〔L→R: 飛田興一(Dr,Pad,Cho)、サトーカンナ(Vo,Syn,Pad)、西原浩(Ba,Syn)〕

ーー確かに。さっきも話に出ましたが、東京のバンドシーンって4~5年前はシティ・ポップ・ブームなんて呼ばれたりして、若いバンドがすごくたくさん出てきていた感じがありましたよね。ただ、今は一旦、ブーム的なものは落ち着いている中で、このいろんな世代のメンバーがいるA.A.P.から発信されるものが閉塞感を突破していく可能性があるんじゃないか、とも思っているんです。みなさんとしては、さらに今後、この東京のシーンにどうありたいか、何をもたらせる存在になりたいと考えていますか?

飛田:決まった概念とか、これはこうあるべきだ、というものを吹っ飛ばしていきたいですね。固定観念で決めつけず、本当の意味での“楽観的”っていうのはこういうものじゃないの? っていうのがバンドで表現できたらいいのかなって思っています。“年齢がバラバラなバンド”というコンセプトを僕らも初めに掲げたもんだから、それを乗り越えながら…。ネガティブなこともあるにはあるんですけど、その垣根を超えられるようにしたいんですよね。

ーー若い方がいいと言われる傾向はどうしてもやっぱりアーティストにはあるわけですけど、A.A.P.みたいな存在がいるのは頼もしいなと思います。ちなみに、A.A.P.はライブハウスにも出られつつ、《BATICA》や《clubasia》などでのクラブイベントにも出られているわけですが、それぞれの環境のイベントに出る中で違いって感じられてますか?

サトー:あまり違いは感じてないですかね。今はそれぞれのイベント自体がかなりクロスオーバーしてきていますし。だから自分たちとしては、あえてそこは分けて考えてないんです。

飛田:10年前じゃそういうのは全然考えられなかったですからね。今は、それぞれちょっとは差はあるけど、基本的には分け隔てなく、良いものがちゃんと「良い」と言われるようになっている。

サトー:最初の方はかなり、いわゆる“ザ・ライブハウス”というような場所でのライブが多かったけど、最近はやっぱりそういった感じのところよりは、DJとかが入るようなパーティーに呼ばれるようになってきていますね。

〔L→R: 三山義久(Gt)、有澤太郎(Gt,Cho)〕

ーーバンドとクラブのクロスオーバーという点でいうと、例えば、ギターのお二人のフレーズなんかにもそれを感じていまして。A.A.P.の楽曲でのギターは、単音をパーカッシブな感じで切ったようなフレーズを二人でユニゾンされてたり、打ち込みのような使われ方が多いですよね。そのあたり、ギターのお二人はどう思われます? あんまりギターっぽくないギターだと思うんですけど…。

三山:うん、ああいうフレーズはギターそのものにこだわっている人だったらやらないですよね。飛田さんに、ニュアンスや音色まで「そうじゃない、そうじゃない」って結構ツッコまれるんですよ。それを理解するまでには時間がかかりますね。自分の指が自然に動くようなフレーズとは違うものをお願いされたり…。結構大変です。

有澤:そうですね。最初の時とかは、まずは飛田さんの意図を理解するところからでした。ただ、僕たちが活動始めた頃からそんなにバンドのギターがギターっぽくなくても良いような風潮になってきてて、ちょうどそれが僕ら的には良かったんじゃないかな、と。

飛田:ただ、ライブ観にくると二人ともがっつり弾いてますんで(笑)。そこでちょろっと弾くギターが思いっきり、オーセンティックなギタリスト! という感じなんで、ギャップを楽しんでもらいたい(笑)。その二面性っていうのがバレていった時に、これからA.A.P.の1つの味になるかもしれません。

サトー:そういう意味で、ギターはこの二人じゃないとダメなんですよね、やっぱり。

ーーただ、そのギターっぽくないフレーズ作りにしてもそうですけど、打ち込みでさらっとやってしまわずにちゃんとギターで弾いているっていうところに、A.A.P.のこだわりを感じるんです。ライブを観ていると、シンセやパッド、サンプラーも手で操作したり叩いたりしてますし、ベースも打ち込みのところもシンセ・ベースでその場で弾いていたりと、ちゃんと人力でバンドで演奏しようっていう意思を強く感じるんですよ。

飛田:そうですね、そこはまさにめちゃくちゃこだわっているところで。

西原:僕らが20~30代だった頃ってみんなクリック聴きながらやってて。そういうのは個人的にはやりたくないなと思ってたんですよね。だから、なんとか人力でやりきるっていうのは、それはもう、頑張ってます。

ーー最後にリリックのことを、歌詞を書かれているカンナさんにお聞きしたいんですが、all about paradiseというバンド名もあってハッピーで享楽的なイメージも持たれがちだと思いますし、実際そういう側面もあるとは思うんですが、ただそれだけじゃない。閉塞感のある世の中にちゃんと真剣に向き合いつつ、でもまあ踊ってみようよ、というクスッと笑えるようなポジティブなメッセージがあると思うんです。

サトー:そうですね、そこはまさにおっしゃる通りです。

ーー「2020」という曲は、東京オリンピックを意識した楽曲ですよね。でも、ただオリンピックを礼賛しているというリリックではないですよね?

サトー:そうです。スポーツの祭典であるオリンピックですけど、世界情勢や政治、ビジネスと切り離せないものでもあって、問題もたくさん取り巻いている。でも、そういうがんじがらめなルールから離れて、スポーツをやる人間そのものに向き合いたいという気持ちが込められています。
*サトーカンナ本人のセルフライナーノートも参照

ーーそうですよね。カンナさんは、A.A.P.のリリックを全て書かれているわけですけど、それらを通じてどういうメッセージを伝えようと考えられてます? 特に“all about paradise”というバンドとして発信するものとして、その音楽性とどうリンクさせようとされていますか?

サトー:このバンドの音で「公園のベンチで…」みたいな日常生活を描くような歌詞は違うかなと(笑)。もうちょっと大きな視点を持った歌詞のほうがサウンドともマッチするかなというのはありますし、メッセージとしては、あんまり世の中に絶望したくない、っていうのがあると思います。歌詞にはこれまで自分が積み重ねてきたものしか出せないじゃないですか。だから、自分の積み重ねてきたこと、学んできたこととか、世の中の見方みたいなものをちゃんと音に乗せられたらなと思って書いています。

ーーA.A.P.を初めて知る人からすると、世の中の閉塞感へのメッセージという部分と“パラダイス”という言葉が一見ちょっとミスマッチな感じもしなくはない。でも今のお話を聞くとちゃんとリンクしているということがわかりますね。

サトー:「PARA」という言葉は、“パラダイス”でもあり“パラレル”でもあり、その他にも多くの意味を含んでいます。バンドの持つ多面性というか、様々な要素を表す名刺代わりのアルバムとして聴いてもらえると嬉しいですね。

■all about paradise Official Site
http://allaboutparadise.jp/

■P-VINE内 アーティスト情報
http://p-vine.jp/artists/all-about-paradise

Text By Nami Igusa

Photo By Naoki Yamashita


all about paradise

PARA

Release Date: 2019.07.03
Label: P-VINE Records
■amazon商品ページはこちら


MORE FEATURES

  • FISHING THE BESTS : 18 September 2019

    youheyhey

    Fishing the Bests #3 〜Another Perspective〜

    By Daiki Takaku

    「音楽の聴き方を変えているのは間違いなくインターネット」先日TURNで行ったインタビューでYoung-Gもこう語っていたように、実際インターネット上で音楽を聴く、あるいはクラウドで音楽を管理することは

  • INTERVIEWS : 17 September 2019

    川本真琴&山本精一

    対談:川本真琴 × 山本精一
    「いろいろな曲がたくさん聴ける雑誌のようなアルバムにしたかった」

    By Shino Okamura

    悪いけど私はデビューした時から川本真琴のファンだ。だからわかる。彼女は決して衝動だけのアーティストなんかじゃないってことが。 それに気づいたのは、もう今から20年くらい前、彼女の正式なライヴとしてはお

  • INTERVIEWS : 16 September 2019

    Give me little more / MARKING RECORDS

    感度の高いショップが密集する城下町・松本のインディー文化
    カギを握る2軒の人気ショップ店主に訊く

    By Dreamy Deka

    サブスクリプション・サービスの普及と巨大フェスの定着によって、ぱっと見では隆盛を極めているようにも見える音楽シーン。洋楽・邦楽のメインストリームが盛り上がるのはもちろん素晴らしいことだけど、クラウドサ

  • FEATURES : 13 September 2019

    Belle And Sebastian

    映画と漫画と音楽から届いた手紙、私たちが過去を物語る理由

    By Koki Kato

    2020年公開予定の映画『Days Of The Bagnold Summer』のサウンドトラックがベル・アンド・セバスチャンの新作だという。誰かの過去について描くことで完成した新作、というべきだろう

  • BEST TRACKS OF THE MONTH : 08 September 2019

    Foals / Thom Yorke / Flea / Tohji / Alessia Cara / DIIV / The 1975 / South Penguin / Spinning Coin / First Aid Kit / Konradsen / 折坂悠太 / Oliver Tree

    BEST TRACKS OF THE MONTH – August, 2019

    By Hitoshi Abe / Si_Aerts / Sayuki Yoshida / Dreamy Deka / Shino Okamura / Kei Sugiyama / Daiki Takaku / Koki Kato / Hiroko Aizawa / Eri Mokutani

    The 1975 – 「People」 スタイリッシュでポップ、現代社会をクールに、かつ痛烈に切り裂くメッセージ性の強い歌詞、どこをとっても今最強で最高のロック・バントの一つであるThe

  • BRINGING THE PAST TO THE FUTURE : 06 September 2019

    Music From Temple

    〈プログレッシヴ〉の捨象したものが蘇る
    83年福岡産自主制作プログレを聴く

    By Yuji Shibasaki

    これまで一般にというと、テクニカルな演奏、複雑な楽曲構成、壮大で主情的なメロディーといった要素ばかりが取り沙汰されてきたきらいがある。それを抽出することをもってとして(一部カンタベリー系やジャーマン・

  • FEATURES : 04 September 2019

    Bon Iver

    バラバラになった何かをつなぐ最後の希望
    ROTH BART BARON三船雅也が綴る『i, i』に向けられたどうしようもなく美しい物語

    By Masaya Mifune

    ボン・イヴェール『i, i』に寄せて—— “これは1人のアメリカ人の男が絶望と孤独の淵から回復し、戻ってくる物語だった” 美しい自然と、黒く清んだ川がある。ウィスコンシン、オークレア。ジョン・プライン

  • FEATURES : 03 September 2019

    Jay Som

    Jay Som『Anak Ko』から考える、アジアン・アメリカン女性による”私たちの音楽”としてのギター・ミュージック

    By Nami Igusa

    90年代のオルタナ・ロックというのはある種、サウンドの荒っぽさゆえ、雄々しいイメージとは不可分であることは否定できない。いや、もちろん、ピクシーズのキム・ディールやソニック・ユースのキム・ゴードンとい