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「EDMの核心は、「どうだっていい」という態度だけじゃない」
Frost Childrenに訊く、EDMの変遷と最新作『Sister』

13 September 2025 | By Tsuyachan

ニューヨークを拠点に活動するきょうだいデュオ、フロスト・チルドレン。ハイパーポップ以降の存在として注目を集めてきた二人は、インターネット発のDIY精神を具現化した活動スタイルが評判を呼び、ここ数年で一気に国際的なステージへと歩みを進めてきた。数々のフェスに引っ張りだことなったフロスト・チルドレンが最新作『Sister』で示したのは、意外にもEDMへの回帰とアップデート。かつて世界中の観客を躍らせたこのジャンルを再解釈し、新しい世代に向けた感情豊かなダンス・ミュージックを提示している。インタヴューでは、彼らにとってのEDMの核心や、ステージが変化することによって生まれた創作の衝動、キム・ペトラスやベイビーモロッコとのコラボレーション、さらには自主企画フェス《Frost Fest》での経験が与えた影響についても語られた。現実のステージに立つアーティストとしての自覚、そして常に変化し続ける姿勢――そのすべてが『Sister』には刻まれている。ビルドアップとドロップの快感に、ギターで書き上げられた普遍的なソングライティングを掛け合わせることで生まれる熱。さあ、『Sister』を聴きながら二人の言葉に耳を傾けてみよう。
(インタヴュー・文/つやちゃん 通訳/原口美穂 Photo/SASHA CHAIKA)

Interview with Frost Children(Angel Prost and Lulu Prost)


 

──2年ほど前に東京でインタヴューさせてもらった際、「最近はバンドサウンドに夢中」とおっしゃっていました。しかし『Sister』を聴いてみると、強烈なEDMやブロステップが展開されていて驚きました! この2年間で何があったのでしょう?  

Lulu(以下、L):本当に色々なことがあった。すごく刺激的な2年間だったから。その理由の一つは、たくさんのツアー。色々なショーを、色々なオーディエンスの前でやった。シューゲイズバンドのJulieとのツアーもあったし、ジョージ・クラントンとのツアーもあったし、自分たちだけのヨーロッパツアーもあったから、本当に色々なことを経験したんだ。それを通じて、私たちは本当に自分たちが作りたい音楽がどんなものかを明確に理解するようになっていった。それはつまり、素晴らしいダンス・ミュージック。人々を飛び跳ねさせるような、そして同時にたくさんの感情を感じさせることができる音楽を作りたいと思うようになったんだよね。

──改めて、お二人にとってEDMとはどういった音楽で、どういう点に惹かれてきましたか?

L:EDMは、呼吸みたいなもの。私たちは、EDMと共に成長してきたと思う。つまり、私たちには独自の解釈があって、我々特有のものなんだよね。自由と解放の最も純粋な表現だと思う。

Angel(以下、A):私がEDMを好きな理由の一つは、緊張と解放の繰り返し。それは、私たちがDJセットで意識していることでもある。特にここ2年で一段とDJをやるようになったから、EDMの何がそんなに魅力的なのかをより感じるようになったんだ。EDMの黄金期と呼ばれる時期の特徴はというと、オーディエンスの反応を把握しながら、本当に長いあいだ緊張感に満ちたビルドアップが繰り広げられること。あの感覚は私がEDMを聴き始めてから変わらずずっと好きなもので、すごく刺激を受けた。EDMではない曲を作る時でも、そういった曲構造を参考にしてるしね。Luluが言ったように、EDMは私たちの本質の一部で、私たちの中に刻み込まれているものなんじゃないかな。

──そんなEDMは、これまでポップ・ミュージック史において軽視されてきた面もありますが、それについてはどう思いますか?

L:確かに、2010年代後半、特に2018年ごろから多くの人たちがEDMに対して批判的になったと思う。ほとんどのジャンルがそうだと思うけど、ある時点で何事もどこへ進めばいいか分からなくなる瞬間が来るんだよね。「もしかしたらここが限界かもしれない」とか「この先どうしたらいいんだろう」って感じる瞬間に必ずぶち当たる。私自身もEDM以外の音楽にハマり始めた時にそう思ってた。もしかしたら、これがこのジャンルの行き着く先なのかもしれないって。でも、そんな感覚は長くは続かなかった。なぜなら、私はEDMというジャンルに本当に深く繋がっていたから。そしてコロナが始まって、私たちはすぐにEDMの世界に戻った。その頃、私たちは長年に渡って形にならなかったアイディアが手元に山ほどあることに気がついたんだけど、EDMがそれを実現するための多くのインスピレーションを与えてくれたんだよね。コロナの1年間は、まるで脳が爆発したような状態で、色々なものを同時に作って壁に投げていた。でも今、私たちはその壁から気に入ったものを拾い集めて、より一貫性のある物語を築き上げてるような感じ。より目的を明確にしたものを作っている、という。EDMは、その点ですごく役に立ってくれてる。だから逆に、カテゴリー化をしたがる人にはEDMがよく映らないのかも。

A:あと、2010年代半ばから後半にかけてEDMが軽視されるようになったり、人々がEDMを前ほど好きでなくなったりした理由は、私自身もそうだったけど、本当にEDMを愛していたからこそというのもあったと思うよ。EDMが大好きだったんだけど、ある時点で、ポップ・ミュージックにおいてEDMの影響を受けた曲がものすごく増えたんだよね。たとえば、ゼッドがレディ・ガガのためにプロデュースしたり、タイオ・クルーズやエイコン、グウェン・ステファニーとか、皆がEDMに手を伸ばし始めた。2016年頃にヒップホップがポップソングのテクスチャーとして使われるようになったけど、それはポップソングをよりリアルで感情的にするという点で受け入れられたと思う。でも、EDMは2000年代後半に、暗黒の時代から逃避するという理念から始まった音楽。経済的な世界史の暗黒期から逃れるためのパーティーのような、「最高な夜ならあとはどうだって良い」みたいなヘドニズム(快楽主義)的なボーカルや歌詞が特徴の音楽だった。でもある時点で、人々がヘドニズムそのものに共感しなくなったのかもしれないし、EDMのその要素だけが目立つようにポップ・ミュージックの中で消費されるようになったのも原因かもしれない。本当のEDMの核心は、「どうだっていい」という態度だけじゃないんだよ。私はむしろ逆だと思っていて、もっと深いものを表現していると思うんだ。たとえば、自由や友情、愛、ダンスといったものはEDMを通じて表現できるものだし、それこそが、私たちが焦点を当てていたもの。ただ快楽のことだけを表現しているんじゃなくて、EDMには人々が思っている以上に深い部分があると思う。

──近年、チャーリーXCXの一部のトラックやニーナジラーチなど、EDMを2020年代風に解釈する動きを感じます。ノスタルジックなEDMと比較して、フロスト・チルドレンの2020s EDMは、どういった点がアップデートされていると思いますか?

L:私たちにとって重要なのは、時代を超えた曲を書く力。過去のEDMには素晴らしい曲構成のトラックもあるけど、一方で初期の段階のものは曲作りの面でかなり怠惰なものも多いと思う。私がティーンエイジャーの頃は曲構成なんて特に気にしていなかったし、私だけじゃなくほとんどの人々がEDMに最高の歌詞やメロディは求めていなかった。でも私たちは、ギターで演奏できるような曲を書きたいし、そこを強調したいんだ。今回のアルバムの曲の多くは、まずギターで書き始めてからビート・バージョンにアレンジしたもの。そうすることで、時代を超えた普遍性を持たせることができると思う。アヴィーチーのクラシックな曲たちが今でも色褪せないのは、彼がクラブやフェスのための音楽を作っていたわけじゃないから。彼は自分の魂に正直な音楽を作っていたよね。だからこそ、美しい曲として人々の心に残っているんだと思う。

A:個人的に、EDMは2010年代後半に方向性を見失ったと思う。その時期に本質が失われ、単なるノイズみたいになってしまったよね。たとえば、スーパーで買い物をしている時にただそこで流れている音楽、みたいな。それはEDMに限らずどのジャンルにとっても自然な流れで起こることで、ある時点で人気が出ると、業界がそれを取り上げて広めるようになる。そして、それが過剰に広まって飽和状態になる。でも、私たちのバージョンのEDMは、もっと歌える曲、意味のある曲、ソウルのある曲で、かつプロダクション面でも完成されているもの。それは、私たちがあの時期のEDMにもっとそうであってほしいと考えているものに近いと思う。私たちのバージョンは、もっとビッグなヴォーカルで控えめなビート、そんな感じかな。もっと全体が温かい壁みたいな感じで、一体になっているような。

L:そうだね。私たちはそれを楽しんでる。アルバムの要素が私たち自身で、私たちの全てのが一つに集まったのが今回の作品。プロデュースも、作詞も、ミックスも全部自分たちでやってるし、その全てが誠実だと思う。それが独自のタッチを加えているだろうし、だからこそ、聴いた時にアルバムの全てが私たち自身だと感じられるんじゃないかな。友達と書いた曲もあるけど、彼らも私たちの一部だしね。

──『Sister』というアルバムタイトルの由来は?

A:私たち自身も分からないんだよね(笑)。とにかくアルバムにぴったりな感じがしたから直感でそのタイトルにしたんだ。アルバム内に「Sister」って曲もあるしね。

L:なんとなくそのタイトルがいいなと思って。それに、“sister”っていう言葉は、世界中の人々にとって本当に普遍的な言葉だし。私たちは、シンプルながらも複雑な要素を含むものが大好きなんだけど、“sister”はまさにその一つだと思う。私たち自身はきょうだいだし、同じような絆を感じている人々もたくさんいる。それは、このアルバムが持つ親密さや真実味と一致していると思うよ。

A:そうだね。まさにその通り。そういった関係は、親密で、理解しあっていて、複雑で、安心感があって、そして激しくもあるから。

──今作ではキム・ペトラスやベイビーモロッコとのコラボレーションもあります。もともと二人とは、どういったきっかけで知り合ったのでしょうか。

A:ベイビーモロッコとは同じレコード会社に所属していて、彼の音楽を聴いてファンになったのがきっかけ。そしてセッションをやることになって、曲を作るためにスタジオに入った時に初めて会ったんだ。その時書いたのは、今リリースされている「SXC」という曲。それ以来彼とは連絡を取り合っていて、彼は私たちのフェス《Frost Fest》でも演奏してくれてる。キムに関しては、私がプライベートで去年の12月に日本にいた時に、彼女からフロスト・チルドレンのアカウントにDMが届いたんだ。「一緒に音楽を作ろう」ってメッセージだったんだけど、信じられないくらい嬉しかった。それで、今回のコラボが実現した。一緒に作業をしたのはお互いLAにいる時だったんだけど、多分3月頃だったと思う。

L:私たちはその時「Freak It」を作りながら「Radio」も作ってたから、その2曲は似たような世界観を持ってるんだ。そこがすごくクールだと思う。

──今《Frost Fest》の話が出ましたが、フェスを主宰し、ダニー・ブラウンやリップ・クリティックといった人たちと共演してきました。イベントの開催が本作に与えてきたインスピレーションはありますか?

A:自分たちでフェスをやりたいなと思って、実行してみたんだ。フェスって結局、連続した複数のライブイベントみたいなものだから、自分たちでもできるんじゃないかと思って。それで、ライブナイトとDJナイトの計画を立てて実際にやってみたんだよね。ダニー・ブラウンとはコラボを通して親友になったんだけど、ダニーがフィーチャーされた私たちの曲「Shake It Like A」がリリースされた直後だったから、ライブで一緒に新曲を披露するのを快く引き受けてくれた。あの経験では、本当にたくさんの時間をショーに費やしたから、影響はやっぱりあると思う。特に、2日目のDJナイトで1日目と同じレベルの満足感と充実感を感じることができたのはインスピレーションの一つだったと思う。バンドの演奏なしで、電子音楽だけでも同じくらいのパワーがあることがわかったから。《Frost Fest》はまた絶対にやりたいな。日程は未定だけど、必ずまた開催すると思う。

──フロスト・チルドレンの音楽は、インターネット文化から強く影響を受けてきたと思います。今回のアルバムでも、そういったインスパイアはありましたか?

L:良い意味で、私たちは自分たちだけの小さなバブルみたいなものの中にいて、自分たちと友達、つまりコラボレーターだけの世界が存在している。つまり、外の世界で音楽を聴くことはもちろん今でもまだあるけれど、このアルバムの作っている最中も、私たちは主に自分たちが好きな古い音楽や友達の音楽を聴いてた。それが今私たちが住んでいるゾーンで、その外側の音楽はほとんど聴かないし、今はその中で制作活動をすることが自分たちがやろうとしていることだと思う。私たちの音楽には、私たちを刺激する音楽と友達が作る音楽、その二つの美しい調和が常に存在してるんだ。

A:そうだと思う。インターネット文化の影響は今回少し控えめで、もっと物語のような感じで、私たち自身がインスパイアされた音楽により影響を受けていると思う。アルバムに収録されている曲の一つは実体験からインスパイアされたものだし、タイトルトラックは物語のような内容で想像上のシナリオみたいな感じの作品になってるしね。最新のシングル「What Is Forever For」も映画のストーリーみたいな曲で、中には(TVドラマの)『ギルモア・ガールズ』のエピソードからインスパイアされた曲もある。物語の展開や登場人物の関係性が、美しい感情を捉えていると思って、すごく興味深かったから。兄弟や家族、恋人同士の関係性。このアルバムでは、それがEDMとどう結びつくかという点を追求していると思うんだけど、その点ではすごく影響を受けた。あと、ファッションからも本当にインスパイアされたと思うよ。

──今作でもサンプリングは取り入れていますか?

A:自分たちの音源をサンプルしたものはあるよ。前回のアルバムに収録されてた「Bernadette」をサンプルした曲が今回のアルバムには入ってる。

L:他には何かあったかな? 私たちっていくつかバージョンを作るんだけど、いつも気づかないうちにたくさんサンプルを入れちゃって、最終的にそれらが使えないことに気づいて、使えるものと交換するってことがよくあるんだよね(笑)。

──今回の制作で、いちばん奇妙なサンプリング素材は何だったのか訊こうと思って。

L:YouTubeのサンプルがあったはず。私たちはよくYouTubeをスクロールして、ランダムな映像やビデオゲームからクールなサウンドを見つけて、それをエアドラムにしたりするんだ。

A:何があったかな。キムとはスタジオで色んな音をサンプルしてたから、今何がいちばん奇妙だったかを思い出そうとしているところ。Luluが座っていた椅子のギーギーとなる音をサンプリングしてめちゃくちゃ変な音にしてみたり、色々やったんだよね。著作権の問題は避けたかったから、そういう音をサンプリングしてた。

L:このアルバムでもYouTubeからのサンプルはたくさん使っているけど、著作権が付いていないものばかり。Spliceといったサンプル配信サービスにもあるような、クラシックなEDMで定番の“ドロップ直前で使う超ビッグなスネアドラムのような音”も、毎回同じサンプルを使った。同系の音はYouTubeでも見つかると思うよ。

──《プリマヴェーラ》や《ガバナーズ・ボール》など、世界中のフェスに引っ張りだこですが、世界各地でパフォーマンスするようになって、どのような聴かれ方の違いを感じますか? たとえばアメリカとヨーロッパでの盛り上がるポイントの違いは?

L:違いは結構あると思う。実際にやってみて気づいたことだけど、アメリカやヨーロッパでは私たちの曲の中でもより早いテンポの音楽が強く響いているように感じる。特にヨーロッパは、皆本当に速い音楽が大好きだから。でも全体的に、私たちのファンの皆は色々なスタイルの音楽が好きな人たちのような気がする。私たちの曲のどれか一つを気に入ってくれたら、それ以外の曲も全部楽しんで聴いてくれるような人が多いんじゃないかな。でも、特定の国や都市では少しシャイで控えめな反応が返ってくることもある。それは彼らが私たちの音楽を嫌いという意味ではなくて、文化的にシャイな傾向があるからだと思う。例えば、ロンドンでは私たちのコンサートでは皆オープンにそれを楽しむ傾向があるけど、デンマークでは皆少し控えめでシャイになる。もちろん堂々と楽しんでいる人たちもいるんだけど、ロンドンやパリ、ポーランドでライブをする時に感じる超激しいエネルギーとはちょっと違うんだよね。

A:その街が抱えているものが多ければ多いほど、そこから逃れたいと思う人が多くて、ショーが盛り上がるように感じる。例えば、抑圧されたような街で8ヶ月も私たちのコンサートを楽しみにしていたような人たちは、「自分以外にこの音楽が好きな人がいない」という状態でライブを見に来てる。そして、「皆が私を変だと思っているから」とか、「この音楽が好きだっていうと皆が私を奇妙だと思う」とか、そういった気持ちを持ってる人が多ければ多いほど、そのショーは彼らにとってより意義深いものになるんじゃないかな。「私はずっとこれを求めてた!」と彼らが感じ、感動する瞬間は本当に素晴らしいと思う。世界の一部では、良い意味でも悪い意味でも音楽が人々を救える場所がある。自分の人生に満足している人たちは幸せで、音楽が彼らを救う必要性はない。でも、その人たちがいたいと思っている世界に連れていくことができるような場所もあるんだよね。彼らが心から自分の世界にいると感じることができているその瞬間は、世界で一番素晴らしい感覚だと私は思うよ。

──フロスト・チルドレンの音楽はインターネット的であったからこそ、これまでローカルな背景を感じにくいと思われてきたかもしれません。逆に海外に出ることで、初めて自分たちのアメリカらしさに気づいた瞬間はありますか?

A:アメリカには、何か特別なものはあると思う。でも私たちはアメリカの政府を全く支持していないし、自分たちがアメリカ人って感じがあまりしないんだよね。もちろん人々に愛着はあるけど。やっぱりここは私の故郷だし、育った場所だから。でもアメリカ全体としては、あまり自分たちがアメリカらしさを持っているとは感じないかも。純粋な理想主義とか、未来への希望といった感覚が曲に表現されている、とかはあるかもしれないけど。私自身は自分がアメリカのアーティストみたいな感覚はないけど、もしドイツや日本で育っていたら曲の感じはまた違っていたのかな。

L:私たちは世界中の色々な場所が大好きだから、できるだけ多くの場所に同時に存在しているアーティストでありたいんだよね。ニューヨークももちろん楽しいけど、ツアーで移動して新しい場所に行く時が一番楽しい。正直、アメリカ以外の場所からの方が多くのインスピレーションをもらってると思う。アメリカ文化には美しいものもあるけれど、他の場所では本当に素晴らしい、超クールなことがたくさん起こってる。私たちは、日本の文化からもかなりインスパイアされているんだ。私たちが特に好きなのは、日本のアーティストとフランスのアーティスト。あと、このアルバムの多くはメキシコシティで制作されたし、私たち二人だけでレコーディングの旅に出た時もあった。私たちの中で時々これは話題になるんだけど、メキシコの都市文化と日本の文化には多くの共通点がある気がする。少なくとも私の経験では、特に音楽に関して、そしてメロディや歌詞のテーマ、ビジュアルのテーマという面でたくさんの共通点があると思う。質問の答えとはちょっとずれてしまってるかもしれないけど、海外に出ることで、私たちは逆に自分たちがアメリカの外からもっと影響を受けていることに気づくことのほうが多いんだ。

──俯瞰して見ると、DIYミュージック→インターネットカルチャーの寵児→国際フェステイバル常連組と、あなたたちの活動はどんどん変化してきています。活動のステージが変わるたびに、重視することも変わってきましたか?

A:私たちはだんだんと現実世界のアーティストに近づいていて、インターネット上のキャラクターやインスタグラムのプロフィール上の存在といったものから離れていっていると思う。私たちはインターネットを通じて成長し、自信を身につけてきた。インターネットでは、壁の向こうに隠れたりしていたけど、今は表に出る自信がついてきたと思うね。インスタグラムやインターネット上のキャラクターとして振る舞うことは簡単だけど、でも現実には、私たちは目の前でステージに立っている人間であり、皆が自分の存在を知っている人間。だから今は、自分自身に確信と自信を持つ必要があるんだよね。なぜなら、それが私たちがやっていることだから。今のような形でアーティストとして活動するということは私たちの選択であり、この世に生まれた目的だから。私は、これは世界的なアーティストになる過程で必要な要素の一つだと思ってる。

──では逆に、これだけ音楽性が変化してきた中でも、フロスト・チルドレンの最もコアにある「らしさ」とは何だと思いますか?

A:いい質問だね。昨日、本当にエキサイティングなプロジェクトのリミックスを完成させたばかりなんだけど、曲の仕様が私たちの音楽とはかなり違っていたから、それがかなり難しい作業で。でも私たちは挑戦して結果的に完成させることができたんだけど、それを聴くと、なぜか初期のフロスト・チルドレンの時代が思い出された。あの頃の遊び心や大胆なプロダクションやアレンジ、エネルギーといった要素はフロスト・チルドレンの世界から決して消えることはないんだなと、ちょうど感じたところだったんだ。

L:その曲がソフトでもハードでも、その中間でも、私たちが取り組む音楽は、常に探求的な響きを持つと思う。私たちは決して、曲の中で一つの瞬間を長く放置したり、手を抜いたりはしない。曲の毎分毎秒が本当に大切で、私たちはどの瞬間も慎重に、特定の目的に向かって作業してる。たとえ超アンビエントな方向に進んだり、かなり伸びやかな音が入ったりしても、そこにはなぜその音を作りそこで使いたいかというはっきりとした目的があるんだ。私たちの意図と探求は、フロスト・チルドレンの音楽において本当に重要な要素だと思う。

──今回のツアーは、日本のPeterparker69が10月からジョインするそうですね。彼らの音楽のどういう点に惹かれていますか?

L:私たちは、彼らのニュー・アルバムの大ファンだったんだ。彼らのヴォーカルスタイルは本当にクールで、特に、ピッチは同じままでヴォーカルを全部取り込んでスピードが上がるところがすごくて、2倍速くらいの速さになってロボットみたいな感じになるんだけど、なぜか落ち着くというか、心地よく聴こえるんだよね。TikTokで人が言葉を話しているような感じに似てる。でも彼らは話してるんじゃなくて歌っているし、なんかそれが面白くて。私たちは日本語を話さないから、彼らが何て言ってるかはわからないけどさ。

A:私は彼らの声が大好き。英語もたくさん入ってるし、彼らのプロダクションスタイルが大好きなんだよね。私たちの音楽とは全然違うけど、すごくクールで、踊れて、自由で、探求的な部分もある。まだ彼らに会ったことはないけど、共通の友人で素晴らしいプロデューサーのキム・ジェイを通じて知り合ったんだ。彼らとのツアーがすごく楽しみ。

<了>

Text By Tsuyachan

Photo By SASHA CHAIKA

Interpretation By Miho Haraguchi


Frost Children

『Sister』

LABEL : True Panther / Dirty Hit
RELEASE DATE : 2025.9.12
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Tower Records / HMV / Amazon / Apple Music

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