FEATURES : 13 August 2019

Foals

The path of fusion of enjoyment and seriousness
Foals disc guide for all original albums

By Masashi Yuno / Kei Sugiyama / Daichi Yamamoto / Hiroko Aizawa / Eri Mokutani

FEATURES : 13 August 2019

Foals

The path of fusion of enjoyment and seriousness
Foals disc guide for all original albums

By Masashi Yuno / Kei Sugiyama / Daichi Yamamoto / Hiroko Aizawa / Eri Mokutani

サマーソニック出演目前!享楽とシリアスの融合の軌跡
フォールズ全アルバム・ディスク・ガイド

《サマーソニック ’19》出演までいよいよカウントダウン! そこで、フォールズを紐解くAtoZ、最新ライヴ・レポートに続き、今回は彼らのこれまでの作品を1枚ずつ振り返ってみよう。
ダンサブルでグルーヴィーだったフォールズは、その特徴を活かしたまま、シリアスさと骨太なサウンドを携えて現在に至る。マスロック的な変則的なリズム、歯切れ良いサウンドが特徴的だったデビュー作『Antidotes』から、ジャケット写真の通り、深海に緩やかに沈んでいくような神秘的なサウンドが印象的だった『Total Life Forever』への変化はには少し戸惑ったファンもいただろう。さらに、ヘヴィーな音も出せるんだぞ、とばかりにロック色の強い楽曲が登場する『Holy Fire』ではその大胆さに驚かされた。さらに勢いを失わないまま、そして初期からのダンサブルでビートの効いたサウンドも持ち合わせてスケールアップした『What Went Down』では、彼らの自信すら垣間見えた。そして長い時が経ち、よりサウンド面では複雑さを備え、かつ神妙で重い雰囲気も持ち合わせる『Everything Not Saved Will Be Lost Part1』が今年発表された。そんな、享楽とシリアスの融合の軌跡とも言えるこれまでのフォールズの全作品を、それぞれ異なるライターによるレヴューでお届けする。そして10月には今年2枚目となるアルバムがリリースされる予定だ。(相澤宏子)


『Antidotes』
2008年 / Transgressive / Warner Music Japan

デビュー作となる本作は、現在の確立された彼らのスタイルからすると、少しダンス・ミュージックより過ぎている印象を持つかもしれない。しかし、本作以降徐々にサウンドが骨太になると共に楽曲のリミックス作を充実させてきたことを踏まえると、ヘヴィーな本編とそれを元ネタにダンス・ミュージックに変換するリミックス群という今の彼らが持つ2つの側面の結節点であった考えることができる。

彼らの初期代表作で本作のCD盤ボーナス・トラックに収録された「Hummer」や「Mathletics」に表れているように、デビュー当時の特徴は、ギター、ベース、ドラムなど細かく区切った音の断片が作り出すグルーヴにあった。そういったサウンド・プロダクションに定評のあったデイヴィッド・シーテック(TV On The Radio)をプロデューサーに迎えたのは、全てが上手くいった訳ではなさそうだが、それが本作のバランスを生んだと思う。

「The French Open」や「Cassius」、「Balloons」など、ベースがより強調され、グッと音圧も上がり、デイヴィッド・シーテックらしいブラスが挿入されることで、サウンドはさらに厚みが増した。そのサウンドは、全部の楽器を歯切れ良く鳴らすことで生まれるグルーヴを大事にするファンクの祖ジェイムス・ブラウンに対するロック・バンドからの解答ではないだろうか。そして、そのサウンドの要は、2018年まで在籍していたWalter Gerversの骨太でグルーヴィーなベースだったと思う。そんな彼の脱退という大きな変化を乗り越えたフォールズの第二章は今始まったばかりだが、本作を聴くとこのように彼らの原点が見えてくる。変化の軌跡を理解する上でも重要な一枚だ。(杉山慧)

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『Total Life Forever』
2010年 / Warner Bro. / Transgressive / Warner Music Japan

アートワークにティンヘッドのイラストではなく、ダイビングプールに飛び込んで撮影した写真を使い、その後の作品のアートワークがすべて写真であることが象徴されるように、この作品が変化の1枚になったことは間違いない。オックスフォードの一軒家でのメンバー全員での共同生活と作業、当然のことながら、ストイックに制作は進み、時には緊迫した空気も流れたという。しかし、かつては、ヤニスの独裁政権で進んでいた曲作りもメンバー全員が意見を出し合う民主主義に移行したこと、それにより、彼らの目標としていた、演奏していて楽しいダンス・ミュージックを作るということが実現でき、その後の音楽性を位置付けたように思う。マスロックの緻密さ、アメリカのオルタナティヴ・ロックが持つ泥臭さ、エレクトロニクスが持つ音の美しさ、大御所といわれるロック・バンドが持つ壮大さ、サイケデリック・ロックが持つ幻想的な逃避性、それらがバランスよく融合することで、一ひねり二ひねりある音楽が生まれたのだ。

様々な音楽を取り入れることは、ともすれば、互いの特徴を打ち消しあって、クリーンで聞きやすい、流れるような音楽ができる可能性がある。しかし、ドロッとした音をあえて残すことで、聞き手を立ち止まらせ、飽きさせない効果を生み出している。民主主義で演奏していて様々な音を詰め込んだ楽しいダンス・ミュージックを作るという方向性が定まり、マイ・ナンバーのような究極のポップ・ソングを生み出すこととなった。イギリスのバンドなのにイギリスのバンドらしからぬバンド、さらには、ロック・バンドの形をしながらも、ダンス・ミュージック・バンドやもしかしたら、ポップ・バンドといわれてしまうかもしれない、なんとも形容しがたいバンド本作やバンドの在り方は、さらには、サウス・ロンドンの若手ミュージシャンの様々な音を融合させて新しい音楽を作り出す、といった動きにつながっていくのだ。(杢谷えり)

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『Holy Fire』
2013年 / Warner Bro. / Transgressive / Warner Music Japan

私にとって、フォールズと言えば『Holy Fire』だ。まず1曲目の「Prelude」でこれまでの作品との違いに気づく。どこか不穏なメロディと浮遊感のあるサウンドが続き、後半部分、ヤニスのシャウトに近いヴォーカルが入る直前の静けさは、これから始まるこの作品への期待と不安が同時に生まれる。その後間髪入れずに始まる「Inhaler」はハード・ロックさながらのイントロのギター、サビの大味とも言えるメロディとヴォーカルは、え?これフォールズだよね?という戸惑いを誘発するが、その戸惑いは、聴けば聴くほど1作目と2作目あってのこの作品だな、という確信に変わった。突然変異ではなく、これまでの作品を踏まえた変化と進化だ。

「Bad Habit」の流れるようなメロディは、「Spanish Sahara」的な哀愁と煌めくような美しさがあるが、それと同時に力強さもある。「My Number」の独特のリズム感とダンサブルなサウンドは1作目から変わらずフォールズが貫いているスタイルである。アルバム後半の「Providence」を聴く頃には、ただ踊れる、ただメロディが綺麗、だけじゃない、タフさを兼ね備えた新しいフォールズに夢中になった。(相澤宏子)

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『What Went Down』
2015年 / Transgressive / Warner Bro. / Warner Music Japan

行け、行け、突き進め。そんな合図の元、分厚い壁が追いかけて来るような。図太くて、迫力のあるギターをひたすら走らせるオープナーの「What Went Down」からしてただただ爽快にロックだ。「Snake Oil」のどう猛でエネルギッシュなギター・リフには思わず腰が突き動かされる。デビュー時の彼らの、音の線の細さ、マスロック的な小難しさは後退し、隠し持っていた「俺たちはあくまでロック・バンドだから」という強い主張が溢れている。

一方で、ダンス曲の「Bitch Tree」や「Night Swimmers」、初期の代表曲の一つ「Spanish Sahara」(『Total Life Forever』収録)にも通じるスロウで壮大な「Give It All」では、重層的なシンセや複雑なエレクトロ・ビートで、”メロディックで踊れる”というそれまでのフォールズらしさもスケールアップ。力任せに音を重くするだけでなく、メロディやリズムでも楽しませてくれる。本作でのプロデューサー、ジェームス・フォード(シミアン・モバイル・ディスコ)の功績は『Humbug』〜『AM』期のアークティック・モンキーズとも重なるだろう。このアルバムはロックの醍醐味を共有する全ての人たちへリーチした。その証拠にシングル「Mountain at My Gates」は遠く離れたアメリカでもオルタナティヴ・ロック・チャートで1位を獲得している。(山本大地)

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『Everything Not Saved Will Be Lost Part1』
2019年 / Warner Bro./ Sony Music Japan

まずはデビュー作から現在のところの最新作である本作まで順を追って聴き返してみた。このフォールズというバンドはDFAに代表されるダンス・パンクとマス・ロック、ポスト・ロックを直接的な影響源として出発しながらも、2作目以降は徐々にバンドから自然に発生するグルーヴの割合が高まっていき、独自のサウンドを形成していったが、本作と対となる次作と共にひとつの境地に達している。その過程は自然なものであり、これまでの作品はその時々のバンドを映し出す鏡のようなものであったと言っていい。前作はシミアン・モバイル・ディスコのジェイムス・フォードをプロデューサーに迎え、彼らしい洗練されてまとまりのある楽曲が並んでいるが、一方でフォールズの膨張していくサウンド展開が一定の枠内に押し込められている印象も拭えなかった。しかし、本作ではフローレンス・アンド・ザ・マシーンのプロデュースで知られるブレット・ショウを起用。全方位に伸びていくフォールズらしい音の展開が破綻することなく見守るようなプロダクションで、これまでで最もバンドのエネルギーが解放されているように感じ取れた。次作と併せて最高傑作なる予感大のPart1だ。(油納将志)

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フォールズを紐解くAtoZ & ロンドン最新ライヴ・レポート
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Foals『Everything Not Saved Will Be Lost Part1』〜らしさを保ちつつ、より神秘的かつ複雑なサウンドで世界を俯瞰する野心作
http://turntokyo.com/reviews/everything-not-saved-will-be-lost-part1/


Everything Not Saved Will Be Lost Part 2

Foals

Everything Not Saved Will Be Lost Part 2

LABEL : Warner Bro. / Sony Music Japan
RELEASE DATE : 2019.10.18予定(日本盤同時発売予定)

収録曲
1. ‘Red Desert’ レッド・デザート
2. ‘The Runner’ ザ・ランナー
3. ‘Wash Off’ ウォッシュ・オフ
4. ‘Black Bull’ ブラック・ブル
5. ‘Like Lightning’ ライク・ライトニング
6. ‘Dreaming Of’ ドリーミング・オブ
7. ‘Ikaria’ イカリア
8. ‘10,000 Feet’ 10,000(テン・サウザンド)フィート
9. ‘Into the Surf’ イントゥ・ザ・サーフ
10. ‘Neptune’ ネプチューン


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