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サマーソニック出演!
フォールズを紐解くAtoZ & ロンドン最新ライヴ・レポート

03 August 2019 | By Yumi Hasegawa / Hiroko Aizawa / Eri Mokutani

2005年にイギリス・オックスフォードにて、フロントマンであるヤニス・フィリッパケスを中心として結成されたバンド、フォールズ。今年の3月に、実に4年ぶりとなった新作『Everything Not Saved Will Be Lost Part1』を発表し、10月にはその新作と対になるもうひとつの新作『……Part2』をリリースすることが決まっている。そのフォールズが、5年ぶりの来日で《サマーソニック 2019》に出演。そこでTURNでは、今年2枚目となる新作のリリースまで、3回に分けて彼らの魅力を今こそ紐解くための特集をお届けする。その第1弾はフォールズをもっと理解するためにキーワードで読み解くAtoZ、ロンドンでの最新ライヴ・レポート。これまでのフォールズをおさらいすると共に、新たな彼らの魅力を発見してみてはどうだろう。(相澤宏子)


Foals AtoZ

キーワードで読み解くフォールズがUKの重要バンドである理由

A Artwork

アートワークもアルバムを多角的に表現する一つの側面とし捉えているフォールズは、作品ごとにモチーフを変えている。これまでに複数人のデザイナーが関わっているが、その中でも重要なのが、ティンヘッドだ。ファースト・アルバム『Antidotes』(2008年)ではすべてのアートワークを手掛けている。イメージやブックレットに記載する歌詞を手掛けることもある。彼はオックスフォード出身かつ拠点として活動しているイラストレーターであり、前衛的な作品を生み出している。(杢谷えり)

C Concept

「演奏していて楽しい音楽」をコンセプトに持つ彼らは、常にそれを探求している。その手段としてサイケデリックなものやブレイク・ビーツといった様々な音楽を取り入れながらも、今活気のあるシーンへのアプローチを行っている。その一つの頂点となったのが、「My Number」(サード・アルバム『Holy Fire』2013年)や「In Degrees」(5作目『 Everything Not Saved Will Be Lost Part 1』2018年)である。踊れるグルーブを持つこれらの曲は、踊りたくなるようなリズムと覚えやすいメロディで構成されている。(杢谷えり)

D Dance

フォールズの曲は、どんな曲であっても、「My Number」のようなポップな曲からダークな「Café D’Athens」(5作目『 Everything Not Saved Will Be Lost Part 1』2018年)であっても、踊れる。なぜならば、彼らの曲作りにおけるコンセプトは、「ダンサブルで演奏していて楽しい音楽を作る」だからだ。リズムの根源はアフロ、ブレイク・ビーツ、ディスコと様々。売れ線を狙ったわけでもないのになぜか人気がある理由の一つだ。(杢谷えり)

G Genre

ダンサブルなリズム、独特な歌い回しのヴォーカルを特徴としているが、それ一辺倒ではなく、時にメランコリックなメロディやハード・ロックを思わせるようなヘヴィなサウンドも生み出せるのがフォールズの強みである。それは、メンバーたちの雑多な音楽的趣向にもあるだろう。影響を受けたアーティストに挙げられるのは、スティーヴ・ライヒ、アーサー・ラッセル、ハルモニア、トーキング・ヘッズなど多岐にわたる。これも、ファースト・アルバムからすでに10年以上経っているが、流行りに迎合することなく、かと言って古臭くもならない独自のフォールズらしさを貫けている要因の一つだろう。(相澤宏子)

H History

「シリアス過ぎた。もっと踊れる音楽をやりたい」ーそんな経緯で前身バンドを解散し、2005年にイギリス・オックスフォードにて結成されたフォールズ。ギターロック・バンド全盛期に、言ってみれば結構軽いノリで始まったフォールズ。そこから10年。同時期にデビューした数多のバンドたちの解散、初期メンバーの脱退、世の中の情勢の変化など、取り巻く環境が大きく緩やかに変わる中で、フォールズはある意味無関心にも見えるような淡々とした活動を続けてきた。(相澤宏子)

J Japan

アルバムをリリースするごとに日本でライヴを行うほど、日本で人気のある彼ら。単独公演はもちろん、2008年、2010年、2013年は《フジロック》へ、そして今年2019年は《サマーソニック》へ出演する。公演という形ではあるが、日本の音楽シーンへ積極的にアプローチをしているようにも思える。世界中の音楽を取り入れている彼らが日本の音楽を取り入れる日も遠くはないのかもしれない。(杢谷えり)

M Math Rock

フォールズのサウンドにはマス・ロック的な要素が一貫してある。鋭角かつ流れるようなギター・サウンドと変則的なリズムを刻むリズム隊。これらをベースに、メロディアスでありながらも独特な歌い回しのボーカルや浮遊感あるシンセのサウンドが重なり、フォールズ独特のサウンドを作り出している。(相澤宏子)

O Oxford

出身地でもあり、セカンド・アルバム『Total Life Forever』(2010年)作成時には共同生活を送ったのがイギリス・オックスフォードだ。ジミー(G、Key)以外は中退しているが、かの有名なオックスフォード大があることが象徴的な学園都市だ。また、彼らも所属した前衛的なDIYアート・コミュニティがあり、知的さの形成と音楽への探求心が開花した場だ。(杢谷えり)

P Producer

音楽への探求心が強い彼らは、今のところ、アルバムごとにプロデューサーを変更している。4作目『What Went Down』(2015年)はジェームズ・フォード(シミアン・モバイル・ディスコ)がプロデュースしたことで知られているが、イギリスにとどまらず、アメリカのオルタナティブ・ロックへのアプローチを試みる彼らにとっては、時には、ファースト・アルバム『Antidotes』をプロデュースしたデヴィッド・シーテック(TVオン・ザ・レディオ)といったアメリカ人のプロデューサーと組むことも厭わない。それが結果的に、イギリスらしからぬ音としてアウトプットすることに成功している。(杢谷えり)

T Turning Point

軽めのダンサブルなサウンド、浮遊するような流れるような幻想的なメロディが特徴的だったフォールズの楽曲に、重い鋭利なサウンドが登場したのが、サード・アルバムの『Holy Fire』(2013年)だ。特に「Inhaler」のイントロのギターが始まった瞬間、今までと何かが違う!と気づかされた感覚を今でも覚えている。(相澤宏子)

Z Zeal

彼らのデビューと同じ時期に出てきたインディー・ロック・バンドの多くは残念なことに消えてしまった。フォールズはメンバーの脱退を経ても新メンバーを迎えず残ったメンバーで活動を続け、前作から4年の時を経ても尚新しい方向性を見出そうとする、その熱意こそ、フォールズが10年間独自のポジションを保ち続けられる所以であろう。(相澤宏子)


Foals @ Alexandra Palace, London 22nd June, 2019

ロンドン最新ライヴを現地から徹底レポート〜「世界最高峰のライヴバンド」の名に恥じない怒濤の1時間46分

The credit is: Sam Neil Photo

夏至の夜、ロンドン北部《アレクサンドラ・パレス》、通称アリ・パリ。キャパ1万人2daysが即完となった『Everything Not Saved Will Be Lost Part 1』ツアー、ロンドン公演の2日目は、まだ陽の残る21時きっかりに幕を開けた。
ロック色を強めた前作『What Went Down』でさらなる高みへと到達したフォールズ。その衝撃から4年、5枚目のアルバムとなる最新作では、彼らの代名詞である変則的なマスロックのリズムやニューウェーブの系譜を再び踏襲し、シンセサイザーを主軸にしたエレクトロニックサウンドへの原点回帰を果たした。過去最高傑作との呼び声も高く、本年度の《マーキュリー・アワード》へのノミネート、更にはシークレット・ゲストとして、《グラストンベリー・フェスティバル》への出演(これは、次回のグラストンベリーのヘッドライナーに抜擢される可能性を示唆している)も実現している。
そう、彼らはこのアルバムで、よりソリッドなファースト・アルバムの音楽性へと立返ったのだと思っていた。ところが、今回のアリ・パリでのライヴパフォーマンスを観て、ループを繰り返すように出発地点に戻りながらも、実はまったく異なる次元へと進化を遂げていたことに気付かされるのである。

The credit is: Sam Neil Photo

1万人の熱狂に迎えられてフォールズが登場したステージを、アルバムのアートワークになぞらえたヤシの木が取り囲み、トロピカルなジャングルが再現されている。セットに加え、それぞれの楽曲の世界観を映像に落とし込んだVEで、灼熱の幻想世界を視覚化してみせる。昨今のロンドンでは、映画や映像作品が写し出されたスクリーンを背景に、ライヴでサウンドトラックを演奏するパフォーマンスが流行している。しかしながら、その逆ヴァージョンである「音楽性を映像と照明で、立体的に表現する」試みが、ここまで完璧にはまったライヴは他に類をみないだろう。
オープニングの「On the Luna」は、わずか数ヶ月の間に完璧なライヴフェイバリットへと成長し、人波で埋め尽くされた格納庫のような客席が一気にダンスフロアと化す。
その後、新曲と定番曲、アップテンポとミディアムテンポをバランス良く配置し、息をもつかせぬ緩急の渦に巻き込みながら、オーディエンスを酩酊させていく。

考えるな、感じろ。
感じるな、動け

衝動に突き動かされ、熱に浮かされた会場の空気が10曲目の「Spanish Sahara」で一変する。スクリーンには、深海を泳ぐ魚の群れのような映像。ヤニスの切ない声と、オーディエンスの手拍子が会場を、ひとつの大きな海にしていく。まるで仄暗い海の中で漂っているような、フォールズの奏でるサウンドに彩られた映像の中の主人公のような、不思議な感覚に襲われる。もしもこれを《サマーソニック》のような野外のステージで観られるのなら、きっと泣いてしまうだろう。
続く「Red Socks Pugie」で再び激しさを取り戻し、ダンスチューンにアレンジされた「Exit」、そして「White Onions」で、このアルバムを最初に聴いた時に浮かんだ情景を思い出す。それは、フィリップ・グラスのサウンドトラックが素晴らしい映像作品『コヤニスカッツィ』(1982年)の世界観だった。「均衡を失った世界」というタイトルが、フォールズがこのレコードで描きたかったテーマそのものなのではないかと錯覚さえしたのだ(実際、音作りの面でもディンバレスやマリンバといったエキゾチックな打楽器を取り込んでおり、それもまたフィリップ・グラスのアンサンブルを想起させる)。「Exit」で描かれた気候変動、そしてBrexitに見る政治情勢不安。「White Onion」で歌われる、精神のバランスを徐々に欠いていく社会の終焉。楽曲が描く心象風景は、アルバムのタイトルが示唆する通りの、脆く儚い世界の終わり、失われる太古の記憶にシンクロする。
そしてラストは、立体的なライヴアレンジがあまりにも扇情的な「Inhaler」。全員を床にしゃがませてからジャンプで爆発させる演出で、会場は鳥肌が立つほどの一体感に包まれた。

The credit is: Sam Neil Photo

アンコールの1曲目には、10月18日にUK国内リリースが予定されているニュー・アルバム『Everything Not Saved Will Be Lost Part 2』から新曲「Black Bull」をお披露目。重厚なギターリフとヘヴィなディストーション、フォールズ・クラシックと呼ぶべきタイトなリズムとファットなベースラインとのコントラストが印象的な、ライヴ向けのロックチューン。男性性の残虐性を炙り出した、問題作でもある。
フォールズは、以前よりもずっと早いスピードで進化している。超新星のように、自分たちが過去4枚のアルバムで試みてきた様々な音楽性を豪速で取り込み、ビッグバンを起こそうとしている。キャリアを重ねるにつれ自分たちの音楽の中に“赦し”を請うバンドも少なくない中で、より贅肉を削ぎ落とし、よりストイックに、純度と透過性を上げていく。「世界最高峰のライヴバンド」の名に恥じない、ライヴ・アレンジを効かせた全18曲、怒濤の1時間46分。そしてこの、いわば“エンドレスファイブ”の壮大なプランには、『Part 2』=第二章が用意されている。まだまだステップを止める訳にはいかない。(長谷川友美/Yumi Hasegawa)

セットリスト
1: On the Luna
2: Mountain at My Gates
3: Snake Oil
4: Olympic Airways
5: My Number
6: Black Gold
7: Sunday
8: Syrups
9: Providence
10: Spanish Sahara
11: Red Socks Pugie
12: Exits
13: In Degrees
14: White Onions
15: Inhaler

1: Black Bull
2: What Went Down
3: Two Steps, Twice


【NEW ALBUM】
Foals『Everything Not Saved Will Be Lost Part 2』
(WARNER BROS./ソニーミュージック)
2019年10月18日発売予定(日本盤同時発売予定)

収録曲
1. ‘Red Desert’ レッド・デザート
2. ‘The Runner’ ザ・ランナー
3. ‘Wash Off’ ウォッシュ・オフ
4. ‘Black Bull’ ブラック・ブル
5. ‘Like Lightning’ ライク・ライトニング
6. ‘Dreaming Of’ ドリーミング・オブ
7. ‘Ikaria’ イカリア
8. ‘10,000 Feet’ 10,000(テン・サウザンド)フィート
9. ‘Into the Surf’ イントゥ・ザ・サーフ
10. ‘Neptune’ ネプチューン



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【REVIEW】
Foals『Everything Not Saved Will Be Lost Part1』〜らしさを保ちつつ、より神秘的かつ複雑なサウンドで世界を俯瞰する野心作
http://turntokyo.com/reviews/everything-not-saved-will-be-lost-part1/

■ソニーミュージックFOALSアーティストページ
https://www.sonymusic.co.jp/artist/foals/

Text By Yumi HasegawaHiroko AizawaEri Mokutani

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