FEATURES : 11 July 2017

Sam Gendel

Inevitable approaching of Black Music and Folklore

By Shino Okamura

FEATURES : 11 July 2017

Sam Gendel

Inevitable approaching of Black Music and Folklore

By Shino Okamura

ブラック・ミュージックとフォークロアとの必然的接近邂逅
インガから名を改め、サム・ゲンデル、本格的にデビュー!

INGA(インガ)と名乗って活動していたアメリカのユニークなシンガー・ソングライター/コンポーザー、ギタリスト/サックス奏者、サム・ゲンデルとは

 ここ数年のジャズやヒップホップを含むブラック・ミュージックと、フォークやカントリー、あるいは中南米やアフリカ、中近東などで鳴らされるフォークロア音楽の、どちらからとも言えない自然な接近邂逅を目の当たりにすればするほど、この男がゆるやかにシーンに浮上してきたのことの必然を感じずにはいられない。サム・ゲンデル。このあいだまで、INGA(インガ)と名乗って活動していたアメリカのユニークなシンガー・ソングライター/コンポーザー、ギタリスト/サックス奏者である。

 今、個人的に最も夢中になっている海外アーティストとして、筆者は《MUSIC MAGAZINE》誌2017年2月号の“2017年はこれを聴け!”特集の中で、まだINGAとして活動していたサムのことを紹介した。ローランド・カークから社会風刺コメディアンのジョージ・カーリンまで幅広いフィールドから影響を受け、実際にグリズリー・ベアのクリス・テイラーにプロデュースされたり、Madvillainの「Strange Ways」をとりあげたり、あるいは西海岸拠点のブラジリアン・グループ、Triorganicoのギタリストでありシンガー・ソングライターのFabiano do Nascimentoと共演したり……と、時代もエリアもジャンルも越境したハイブリッドなシンガー・ソングライターであることは、これまでに静かに積み上げてきた彼の活動が証明しているだろう。しかも、このサム・ゲンデルもそうだし、近年《Nonesuch》から作品を出しているサム・アミドン、あるいはボン・イヴェールと同じレーベルである《Jagjaguwar》と契約したモーゼス・サムニーらがかいま見せるのは、ジャズ、フォーク、ゴスペルへの極めて従順な、でも静かに歴史を上書きしていこうとする極めてニュートラルな姿勢だ。サム・ゲンデルがそのサム・アミドンやモーゼズ・サムニーと交流があるのも興味深い。

Fabiano do Nascimentoとの共演ライヴ(ソプラノ・サックスがサム・ゲンデル)

 例えば、マイルス・デイヴィスが、ジョン・コルトレーンが、あるいはボブ・ディランが、スライ・ストーンが時代の節目を切り取っていた頃に比べると、今は時代の動きをデフォルメさせること自体決して難しくないだろう。しかし、その分、混迷している状況の表面だけをなぞることに終始してしまう可能性も高い。ボン・イヴェールが昨年のアルバム『22、ア・ミリオン』で最終的に伝えていたのは、そうした小手先で社会の傷を舐めてしまうことへの危機感だったようにも思う。まだ、一般的には無名に近いこのサム・ゲンデルというクレバーで学究的でもある音楽家は、こういう時代に、今、何を問い、何を回答として活動していこうとしているのか。少なくとも筆者は、今、さりげなく音と音の隙間にスプーンを入れて、ゆるやかにかき回すようなこのサム・ゲンデルの作品に、今、どうしようもなく惹かれてしまう。

先ごろ、本名で活動を開始していくことを宣言したそのサムは、7月7日にBandcampにおいてCDとデジタル・アルバムで新作『Consentration』を発表した。《Apple Music》や《Spotify》はもとより、《YOU TUBE》にさえ公式アカウントがまだないこの彼の動きを引き続き追いかけていきたい。

Text By Shino Okamura


Sam Gendel

Concentration

購入はこちら
https://samgendel.bandcamp.com/album/concentration

■サム・ゲンデル OFFICIAL SITE
http://samgendel.com/
https://soundcloud.com/samgendel


MORE FEATURES

  • FEATURES : 15 August 2017

    Festival

    ビッグ・フェスへと成長中!
    米カリフォルニア州・ロサンゼルスで開催された《FYF Fest》をレポート!

    By Kohei Ueno

    《フジロック・フェスティバル》のちょうど1週間前にあたる7月21日(金)~23(日)の3日間、念願の《FYF Fest(以下、FYF)》に行ってきた。正式名称を《Fuck Yeah Festival》

  • FEATURES : 11 August 2017

    Festival

    フジロック・フェスティバル ’17 ライヴ・レポート第1弾

    By Shino Okamura / Yasuyuki Ono / Nami Igusa / Hiroko Aizawa

    今年で実に21年目を迎えたフジロック・フェスティバル。8月27日(木)の前夜祭を含めての4日間で延べ125000人を集めた今年2017年は、ずっと雨具が手放せない生憎の天候となってしまったが、一定の評

  • FEATURES : 03 August 2017

    Arcade Fire

    Arcade Fire 『Everything Now』
    ポップ・ミュージックのカルマを背負った自分たちをも嘲笑する、 消費社会とインターネット時代を痛烈に批判した5作目

    By Shino Okamura

     もう既に多くのリスナーが知っていることだろうが、もし、まだの方がいれば、まずはぜひこちらのページにアクセスしてみてほしいと思う。 アーケイド・ファイア自らが制作した架空の音楽サイト《Stereoyu

  • FEATURES : 26 July 2017

    Father John Misty

    現代アメリカきっての千両役者ミュージシャンが、
    社会をヴァーチャル・リアリティとして描く日

    By Shino Okamura

     アメリカにはウンザリしている、飽き飽きしていると嘆いていた男は、今、ヴァーチャル・リアリティの中で生きることの未来を揶揄するように示唆する。まるで、アメリカのみならず、世界のどこにももうリアルな居場

  • FEATURES : 25 July 2017

    LCD Soundsystem

    今、なぜ
    ポップ・ミュージックに対して再び沸き起こるジェームズ・マーフィーの野心と情熱

    By Tetsuya Sakamoto

     LCDサウンドシステムは、今思うと、一つの偶然によって生まれたバンドだったように思える。ジェームズ・マーフィーがティム・ゴールズワージーと共に始め、2000年代半ばのニュー・エレクトロやポスト・パン

  • SERIES : 25 July 2017

    Diplo

    BREAKDOWN THE POP
     ~時代を作るプロデューサーは誰だ?

    By Yuya Watanabe / Yuta Sakauchi / Daichi Yamamoto

     あらたなスーパー・プロデューサー時代の到来―そう、いまやプロデューサーとは従来の裏方的なイメージではないのだ。特に北米の音楽シーンを中心に、一曲に複数人のプロデューサーのクレジットが並び、「~~のシ

  • FEATURES : 21 July 2017

    Gorillaz

    そしてデーモンは世界共通語としての“ポップ・シーン”の中枢に立つ数少ない音楽家の一人となった~論考文とオリジナル・アルバム・ディスク・ガイドで読み解くゴリラズ

    By Shino Okamura / Yuta Sakauchi / Tetsuya Sakamoto / Yasuyuki Ono / Daichi Yamamoto

     こうでもしないと重い扉を開くことができなかったのかもしれない。それは何の扉か。世界の大衆音楽となりうるための扉であり、侵略を繰り返してきた傲慢な英国白人としてのアイデンティティを解き放つための扉かも

  • INTERVIEWS : 19 July 2017

    RAC

    もはやRACはただのリミキサーではない
    今、非凡なソングライターとしてポップ音楽へのフィールドへ

    By Tetsuya Sakamoto

    RAC(アール・エー・シー/Remix Artist Collectiveの略)。ポルトガル出身で現在はアメリカはイリノイ州ポートランドを拠点に活動しているプロデューサー/ソングライター、アンドレ・ア