FEATURES : 05 September 2018

Rex Orange County

Attitude To Inherit Timeless Pop Star Shown By SUMMER SONIC

By Daichi Yamamoto

FEATURES : 05 September 2018

Rex Orange County

Attitude To Inherit Timeless Pop Star Shown By SUMMER SONIC

By Daichi Yamamoto

サマソニで見せた、タイムレスなポップ・スターを継承する姿勢

東京のサマーソニック、2日目のお昼過ぎのソニック・ステージ。爽やかな青色の背景にアルバム・タイトル通りアプリコット(杏)を描いたバック。そこに登場したのは短パンにタイラー・ザ・クリエイターのブランド<Golf Wang>のTシャツを着た青年。そのタイラーの商業的にも批評的にも成功したアルバム『Flower Boy』に参加、その年期待の新人の登竜門<BBC Sound of 2018>のリストでも第2位に選ばれるなど、期待のかかるロンドンを拠点とする20歳、アレックス・オコーナーによるソロ・ユニット、レックス・オレンジ・カウンティだ。遠くから見ただけなら少年のような出で立ちだったが、そんな見た目とは裏腹に、それはもう「エルトン・ジョンか、彼自身も影響を公言しているスティーヴィ・ワンダーを見ているのだろうか」なんて気にさせる、ロックやソウル・R&Bなどが地続きで大衆的なポップスを形成していた70年代のポップ・ミュージックの姿を継承するようなパワフルなステージだった。

photo by Yusuke Sasamura

ライブはアルバム『Apricot Princess』の序盤を飾るタイトル曲「Apricot Princess」で幕を開けた。寝起きのような歌い方のスロウな出だしだが、1分もすれば、曲はボサ・ノヴァ調の陽気なムードに変わっていく。そう、ジャンル折衷的なサウンドはレックスの特徴であり魅力だ。だがそれ以上に惹かれるのは彼の歌とそれが生み出すムードそのものだろう。ガールフレンド、セオとの愛を誇らしげに歌うこの曲に続き歌われたのは「Television / So Far So Good」。新しい恋への高揚感を歌うこの曲だが、レックスが叩く鍵盤は、歌の世界に浸るように、心なしか先走ろうと忙しなく動いているように聞こえた。この2曲だけで集まったオーディエンスは一気にアレックスに引き込まれるだろう。レックスは既にSpotifyやYouTubeで数千万回以上の再生回数を数える曲をいくつも持っているが、彼がデビューからたった2年ほどの短いキャリアでこれだけの人を惹きつけて来た秘密を味わえた気がしたのだ。素直に、エモーショナルに表現される恋のドキドキや甘い気持ち。その場にいる全ての人たちがコネクトされていくようだ。

中盤には2016年のアルバム『Bcos U Will Never B Free』収録曲も披露された。この時期の曲には、失恋の悲しみや憂鬱がテーマに多く、少しシニカルで悲観的な感じさえするのだが、そんな楽曲たちもアレックスなら他のシンガー達とは一味違う。「Paradise」や「Uno」では鉄琴の音が優しく響くし、アレックス一人で披露された「Untitled」、「Corduroy Dreams」では彼の吹く口笛が私たちを夢心地にさせる。

photo by Yusuke Sasamura

そして終盤は「Sunflower」、「Best Friend」、「Loving Is Easy」と人気曲を出し惜しみなく披露。「彼女のおかげで自分らしくいれる/一人の時も悲しくなる必要ない」と歌う「Sunflower」、「恋人になれると思ったけど彼女は自分を愛してはいくれない」「Best Friend」などここでも歌のテーマは一貫している。ここではオーディエンスに手拍子させたりジャンプさせたりと、しっかり短いライブの中で盛り上がりの緩急も意識されていた。

初来日となる今回のパフォーマンスで気付かされたのはアレックスの音楽なタイムレスなポテンシャルだ。彼が歌う曲には、2018年の「いま」をドキュメントするような政治性は無い。ただただ、愛に溺れ、愛に飢え、愛の美しさを感じるという普遍的なポップ・ソングのテーマが歌われる。サウンドにしてもロック、ヒップホップ、ボサ・ノヴァ、ジャズなど多様なリズムを柔軟に動員することで、EDMやトラップのような同時代の主流な音に頼らずとも、オーガニックな音の感触のままタフなポップ・ソングとして成立している。それこそが冒頭で挙げたエルトンやスティーヴィーが活躍し出した半世紀前から大きく変わらないポップ・ソングの形を感じさせるのだ。

photo by Yusuke Sasamura

そんなポップ・スターたちのことを思い出していたら、一度彼がステージに立てばその場のムードが一変するような不思議なオーラをアレックスからも感じてしまった。観衆の数も終盤にかけてどんどん増え、気づけばそれは前日の同ステージのヘッドライナー、テーム・インパラの時を優に超えていたと思う。レックス・オレンジ・カウンティはどこにも、どんな枠にも収まろうとしない代わりに、過去にも未来にもアクセス出来る真のポップ・スターなのだ。(山本大地)

■amazon商品ページはこちら

■BEATINK内アーティスト情報
https://www.beatink.com/artists/detail.php?artist_id=2396

■Rex Orange County オフィシャル・サイト
https://rexorangecounty.com/store


MORE FEATURES

  • FEATURES : 12 July 2019

    Tycho

    フジロック出演決定!
    ザ・エックス・エックス『アイ・シー・ユー』に対する、ティコからの回答

    By Tetsuya Sakamoto

    エレクトロニクスとバンド・サウンドの融合、もとい、エレクトロニック・ミュージックのプロデューサーによる有機的なバンド・サウンドの可能性の探求ーーサンフランシスコを拠点にするスコット・ハンセンのソロ・プ

  • FEATURES : 12 July 2019

    New Order

    Joy DivisionからNew Orderへ、New OrderからJoy Divisionへ 

    By Tomoko Takahashi

    『∑(No,12k,Lg,17Mif)』。暗号のようなこの文字列は7月12日に発売されるNew Order(以下NO)のライヴ・アルバムのタイトルだ。察しのよい読者なら、この文字列が何を言わんとするの

  • INTERVIEWS : 10 July 2019

    GUIRO

    「ここでもそっちでもない、そのあいだ。それゆえにすごくいい空間である。『A MEZZANINE (あ・めっざにね)』はそういう作品であってほしい」
    名古屋の秘宝・GUIROの絶景たる“美しさ”

    By Dreamy Deka

    GUIROは1997年からヴォーカル・ギターの髙倉一修を中心に愛知・名古屋を拠点に活動するグループで「名古屋の至宝」と称されることもある存在だ。長い活動休止期間を終えた2015年以降は、彼らへのリスペ

  • BEST TRACKS OF THE MONTH : 09 July 2019

    Various Artists

    BEST TRACKS OF THE MONTH – June, 2019

    By Dreamy Deka / Shino Okamura / Kei Sugiyama / Daichi Yamamoto / Nami Igusa / Koki Kato / Sinpei Kido

    Brittany Howard – 「History Repeats」 ドラムがネイト・スミス。もうそのクレジットだけでこの曲がどういう位置付けにある曲かがわかる。現在44歳のネイトは、最

  • BRINGING THE PAST TO THE FUTURE : 09 July 2019

    Dennis Young

    ポストパンクとニューエイジ、内向と享楽が併せ立つ、異形のベッドルーム・ダンスミュージック

    By Yuji Shibasaki

    アーリー80’sのNYアンダーグラウンド・シーンに漲っていた脱ジャンル的なエナジーについては、近年でこそ様々な証言や研究によって徐々に明らかにされつつあるが、今その重要性が認識されている程度に当時から

  • FEATURES : 08 July 2019

    Vince Staples

    フジロック出演!
    ヒップホップ・シーンきってのへそ曲がりな男が提示する、ぼんやりと、だが確かに存在する可能性

    By Daiki Takaku

    ヒップホップという音楽ジャンルはたびたび“競争”や“ゲーム”と呼ばれることがある。それは類似した無数の音楽がその優劣を競うこと、アーティストが地元に根を張りその地域を代表せんとプロップスを高め合うこと

  • INTERVIEWS : 04 July 2019

    all about paradise

    “パラレル”がクロスするその先にある楽園(パラダイス)へ——
    垣根を超越していく気鋭バンド“all about paradise” 登場!

    By Nami Igusa

    先日の《新宿MARZ》でのイベント《New Action! Vol.97》での壇上で「活動開始からちょうど丸2年」というMCを聞いて思わず「えっ、まだそれしか経ってなかったっけ?!」と驚いてしまった。

  • INTERVIEWS : 02 July 2019

    Light In The Attic

    “細野晴臣は過去半世紀の日本のポピュラー音楽において
    大きな役割を果たしていることに気づいた”
    Light In The Atticの再発プロデューサーに訊く

    By Shino Okamura

    『Even A Tree Can Shed Tears』、『Kankyō Ongaku』、『Pacific Breeze』という日本のアーカイヴ音源を集めた3種類のコンピレーション・アルバムが半年ほど