FEATURES : 14 July 2017

Noname

A Female Poet Of Chicago That Also Attracts Chance the Rapper

By Yuta Sakauchi

FEATURES : 14 July 2017

Noname

A Female Poet Of Chicago That Also Attracts Chance the Rapper

By Yuta Sakauchi

チャンス・ザ・ラッパーをも魅了するシカゴの女性詩人
ノーネーム(NONAME)待望の来日公演に寄せて

10月7日 渋谷WWW Xにて待望の来日公演

 シカゴ出身の女性ラッパー/詩人、ノーネーム(NONAME)の来日公演が、10月7日に渋谷WWW Xにて行われる。はっきり言って待望の来日公演だ。《Twitter》のフィード上でこのニュースを見た時、思わず声を上げて驚いてしまった。

 ノーネームことファティマ・ワーナーは現在25歳(9月生まれなので、来日時には26歳になっている)。生まれはイリノイ州シカゴ。 彼女の名前が、ここ日本のリスナーを含めて広く知られるようになったきっかけが、昨年7月にリリースした初のミックステープ『Telefone』だ。愛らしいタッチと、髑髏を頭に載せた女性というモチーフのギャップが印象的なイラスト。そして、ネオソウルを現代風にアップデートしたようなジャジーで風通しの良いトラックに、ノーネームの独特のトーンのラップが乗るサウンドの新鮮さと、リリックで見せる鋭い洞察力と想像力。2016年の指折りの傑作として、多くのリスナーの記憶に残っただろう。

 彼女への注目に拍車を掛けたのが“チャンス・ザ・ラッパー周辺”というキーワードだった。ノーネームは『Telefone』と同年にリリースされた『カラーリング・ブック』をはじめ、ドニー・トランペット&ソーシャル・エクスペリメント名義の『Surf』(2015年)や、チャンスの出世作である『Acid Rap』(2013年)にも参加。さらに遡れば、チャンスと彼女は、シカゴのハロルド・ワシントン図書館をベースに展開される《YOUMedia》プロジェクトを通して、10代の頃から友情を育んだ、盟友とも呼ぶべき存在だ。ノーネームとコラボする地元のラッパーはチャンスだけではなく、同じくシカゴを中心に活動するミック・ジェンキンスやサバ(Saba)の作品にも彼女は参加。今やノーネームは、活況を呈するシカゴのラップ・シーンでも、最もユニークなアーティストの一人だと言えるだろう。

 そんな彼女のラップ・スタイルは、かなり独特。というか、本質的にはポエトリー・リーディングに近い。ラッパー毎にスタイルは千差万別とは言え、基本的にはトラック/ビートに対して、どのように言葉とフロウを乗せるか、そのセンスやパターンの豊富さ・複雑さが問われるラップの世界にあって、ノーネームは従来的な意味でのスキルを積極的に追求していないように見える。もっと言えば、彼女は現代のいわゆる“ラップ・ゲーム”的世界観からも、かなり遠い位置で活動しているようだ。彼女のそうした志向性は、前述の『Telefone』のアートワークや、そのファッション・スタイルにも反映されているのではないだろうか?(彼女自身は、ローリン・ヒル、ニーナ・シモン、トニ・モリスン、バディ・ガイ等を自身の創作のインスピレーション源に挙げている。)

 しかし、だからと言って、彼女が音楽(技術)的に優れていない、というわけでは断じてない。特に今年4月に公開された《NPR》の人気企画「Tiny Desk Concert」でのライブ映像は圧巻の一言。スムースでメロウなモダン・ファンク・サウンドの上を、スムースにフロウするノーネームのラップはリリカルであると同時に素晴らしく心地良い。「Tiny~」特有の親密な空間設計やオーディエンスの反応も相まって、この人気シリーズの中でも、ひときわ感動的な映像に仕上がっている。

 今回の来日はフル・バンドでのライブになるということで、その「Tiny~」のライブにも参加しているブライアン・サンボーン(ギター)、コナー・ベイカー(ドラムス)が参加。また、詳細は不明ながらキーボード奏者としてマイク・ニールなる人物も参加するそう。このメンバーは、先日行われたばかりの《North Sea Jazz 2017》にも参加した布陣のようで、現在のツアー・バンドということになるのだろう。バンドは今後も9月までライブが決まっており、10月の公演では、ツアーを通してさらに連携を深めた演奏に期待できるだろう。

 ところで、今回のノーネームの公演は、“(まだ)スタジオ・アルバムをリリースしていないアーティストの来日公演”ということになる。ご存知の通り、チャンス・ザ・ラッパーやその周辺のアーティスト達は、WEBやサブスクリプション・サービスを通して無料のミックステープという形で作品を公開し、そのプロモーション効果に期待しつつ、その他の収益で実際の活動費用をまかなう方針だ(ゆえにレコード会社とは契約しない)。

 ノーネームもまた、そうした活動スタイルに部分的に依拠しているわけだが、一方で、そうした活動サイクルに“日本でのライブ活動”というものが、どのように組み込まれて来るのか? が、今後の日本の洋楽文化における焦点の一つになりつつある。なにせ日本は、金額比でいまだに8割を(映像商品を含む)音楽ソフトが占める、世界随一のパッケージ大国。日本盤はおろか、CDさえリリースしていないノーネームの公演は、そうした状況における一つの試金石にもなるだろう。願わくば、一人でも多くの人と一緒に、先の「Tiny~」のコンサートのような、インティメイトな雰囲気に溢れたショウを見届けたい。(坂内優太)

Text By Yuta Sakauchi


WWW & WWW X Anniversaries 

NONAME

日程:2017年10月7日(土)
会場:渋谷 WWW X
出演:Noname
時間:open18:00 / start19:00  
料金:前売¥5,800(税込 / ドリンク代別 / オールスタンディング) 
問合:WWW X 03-5458-7688 
チケット:
 ●先行予約:7/1(土)10:00-7/9(日)23:59 ※先着
  受付URL:http://eplus.jp/noname17/
 ●一般発売:7/15(土)
  e+ / ローソンチケット / チケットぴあ / WWW店頭
公演詳細:http://www-shibuya.jp/schedule/007942.php 


MORE FEATURES

  • INTERVIEWS : 20 October 2017

    kitty, Daisy & Lewis

    アメリカにアラバマ・シェイクス、ロバート・グラスパーがいるならイギリスにはこの兄姉妹がいる! キティ・デイジー&ルイスが1月来日決定

    By Shino Okamura

    キティ・デイジー&ルイスのことを、いまだに1950年代前後のルーツ・ミュージックに傾倒するロンドンのレトロ・キッズたちだと思っていたら、それはもうとんでもない損失だ、ということをまず断言しておきたい。

  • INTERVIEWS : 22 September 2017

    Moses Sumney

    モーゼス・サムニーの清くダークな歌世界、それは誰の胸にも宿る天国と地獄~ サンダーキャット、ジェイムス・ブレイク、スフィアン・スティーヴンスまでもを魅了したシンガー・ソングライター、ついにファースト・アルバムをドロップ!

    By Shino Okamura

    本人と思しき男性が体の後ろで手を組み、飛び込むかのように前方にジャンプしている後ろ姿。前かがみになっているため頭は見えない。その様子は、例えがよくないかもしれないが、まるで捕らわれの身となった囚人のよ

  • INTERVIEWS : 21 September 2017

    The Horrors

    ザ・ホラーズ~ダーク・サイドへの帰還と、そこから始まる新たな旅路

    By Hiroko Aizawa

    ザ・ホラーズが久々にダークな側面を打ち出して3年ぶりに戻ってきた。デビュー・アルバムである『ストレンジ・ハウス』は、ダークでオカルト的な雰囲気も持つガレージ・ロック。その時期、多くのガレージ・ロック・

  • FEATURES : 21 September 2017

    Knox Fortune

    チャンス・ザ・ラッパーとインディ・ロックの壁を破る男!?シカゴのニュー・カマー、Knox Fortuneって誰?

    By Daichi Yamamoto

    ここ3年ほど、チャンス・ザ・ラッパーやヴィック・メンサを中心としたクルー=セイブマネーとその周辺のシカゴのヒップホップ、R&Bシーンから多数の才能が産み出されていることはご存知の通り。昨年も

  • FEATURES : 15 September 2017

    Thurston Moore

    なぜ今無骨なバンド・アンサンブルなのか? 音響をロックンロールでダイナミックに構築するサーストン・ムーア・グループ来日ツアーに期待するもの

    By Tetsuya Sakamoto

    サーストン・ムーアの音楽のとらえ方が少し変わったと思ったのが、彼がエレクトリック・ギターからアコースティック・ギターに持ち変えた『デモリッシュド・ソウツ』(2011年)だった。その奥行きと浮遊感のある

  • INTERVIEWS : 08 September 2017

    Queens Of The Stone Age

    ジョシュとトロイが語る、ただただロックンロール・バンドでいるために必要だった引き算の美学~新作が初の全英1位を獲得したクイーンズ・オブ・ザ・ストーンエイジの未来

    By Tetsuya Sakamoto

    クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジは確かにデンジャラスなロックンロール・バンドだ。全米チャート1位となった前作『ライク・クロックワーク』に続いて、初めて全英チャート1位を獲得したニュー・アルバム『

  • INTERVIEWS : 06 September 2017

    Mew

    ミュー~一瞬の閃きがもたらす勢いと細部への拘りとの両立

    By Tetsuya Sakamoto

    ミューというバンドは「勢い」とか「閃き」という言葉には無縁だと思っていた。アルバム制作に長い年月をかけ、じっくりと自分たちが納得するまで突き詰めて、それをリリースするーーある意味で今まではどんなに時間

  • FEATURES : 22 August 2017

    Festival

    フジロック・フェスティバル ’17 ライヴ・レポート第2弾

    By Tetsuya Sakamoto / Daichi Yamamoto

    レコードでのサウンド・プロダクションをライヴでも形にすることの意味 -The xx- Photo by Masanori Naruse ライヴにおいて派手な曲と静謐な曲をバランス良く配置しながら、徐々