FEATURES : 17 February 2018

Migos

Entertainment As Migos Evolved With 『Culture II』

By Daichi Yamamoto

FEATURES : 17 February 2018

Migos

Entertainment As Migos Evolved With 『Culture II』

By Daichi Yamamoto

「Culture II」で進化させたミーゴスというエンターテインメント

今思えば「この世代のビートルズ」とはよく言ったものだ。昨年のゴールデン・グローブ賞でラッパー、チャイルディッシュ・ギャンビーノとしてもお馴染みドナルド・グローヴァーが自身のドラマ「アトランタ」の受賞スピーチでわざわざ(彼らがドラマにゲスト出演しているものの)ミーゴスの「Bad and Boujee」をシャウト・アウトし、直後のインタビューで彼らを誰もが知っているポップ・ミュージックの英雄、ビートルズと重ね合わせたことは大きな話題となった。

当時はまだ「Bad and Boujee」が全米1位を獲得する前だったこともあり、「さすがに大袈裟な例えでは!?」と思ったものの、一年経った今なら私は迷いなく「まさに!」と言い切れる。そんなことを思ったのも、先月末ドロップされたミーゴスのニュー・アルバム『Culture II』(日本盤はユニバーサル・ミュージックから3月16日発売予定)を夢中になって聴いている私の彼らへの眼差しは、思春期に一番夢中になっていたインディ・ロックのヒーローを見ているときのそれと何ら変わりないものだろうと思ってしまったからだ。

彼ら3人並んだときの出で立ち、スリムな体型に有りっ丈のアクセサリーとハイブランドを着こなすファッションから醸し出されるオーラもまた唯一無二となりつつあるが、何より『Culture II』に収められた楽曲たちは、ミーゴスというグループのエンターテインメント性を増強している。つまり、この作品は彼らが「この世代のビートルズ」たる自分たちのプレゼンスを自証してくれた作品だと思えたのだ。

「ミーゴス・アー・エヴリウェア!」昨年はそんな一年だった。先述の通り1月にはシングル「Bad and Boujee」が全米1位に輝くと、同月に発売したアルバム『Culture』は年間チャートでも8位にランクインする大ヒットとなり、彼らが代表するアトランタのトラップ・シーンだけでなく、「史上初めてヒップホップとR&Bがロックの売り上げを上回った」2017年の記念碑的作品の一つともなった。作品以外でも婚約へと結びついたオフセットとカーディBの交際から時には批判を浴びてしまう言動までゴシップ関連でも楽しませてくれたが、彼らは何より一年間を通してあらゆるアーティストへの客演曲をこなしまくることで私たちにその「声」を届けることを止めなかった。一度『Culture』で彼らに夢中になった私たちが「ミーゴスが足りない!」と思った頃には、直ぐにいずれかのメンバーの客演曲が投下され、一年中常に頭の中にはミーゴスがいた。彼らは文字通り2017年の音楽シーンを象徴する「声」となったのだ。

そんな怒涛の成功の中わずか一年のスパンで放たれた新作『Culture II』は、彼らの陽気で愉快な三連符フロウを「カルチャー」として浸透させる作品だった前作に対し、「もっとギア上げてくけど、ついて来れるか?」とでも言っているかのような、彼らのスーパーグループとしてのプレゼンスを更に高める作品だ。

作風のわかりやすい変化といえば、まずはビートの加速、ファンキー化だ。前作では彼らのユニークなフロウを強調する手助けにもなっていたスロウで不穏なビートは激減。冒頭からアップリフティングなサウンドがひたすら続き、享楽的なダンス・ミュージックとしての機能が一層高まった。また「ミーゴス・アー・エヴリウェア!」を強調するように、ビートメイカーの名前もカニエ・ウエストやファレル・ウィリアムスといった大物も並べながら一気に多彩になっている。

こうした変化は、彼らの楽曲の精製過程で使われる原材料=サンプルの多様化も引き起こした。「BBO (Bad Bitches Only) feat. 21サヴェージ」ではカニエ・ウエストの仕業とも思われる60年代のソウル・グループ、ザ・フェスティバルズ(2011年にはメイヤー・ホーソーンも同曲をカバーしている)が、「Narcos」ではハイチの伝統的なポピュラー音楽・コンパ、「Crown the Kings」ではボブ・マーレーの「Get Up, Stand Up」を使用。ピュアなトラップ・ビート以外との相性もバッチリであると共に、あらゆる手を使ってよりキャッチーなパーティ・ミュージックとして昇華しようとする気概さえ受け取れてしまう。

そうした「キャッチーさ」の追求はワードプレイにも現れている。「ナルコス」、「パブロ」、「ディエゴ」など非英語圏の私たちにさえ耳馴染みのいいアド・リブが並べられた「Narcos」や、「ウォキ・ライクァ・トキ」(「Walk It Talk It」)、21サヴェージが歌う「バー・ビッチ・オンリ」(「BBO (Bad Bitches Only) feat. 21サヴェージ」)といった、大した意味なんて無いのに思わず声に出して一緒に呟いてしまう不思議なフレーズの繰り返し。このワードを記号化するようなやり口自体は彼らにとっても、現在のラップ・シーンにとっても珍しいものではない。しかし、やたらと陽気に発声し、しかもそれを本作のようにノリのいい音に被せてみれば「楽曲をより楽しくさせるため要素」として作用することがずっと明白だし、もごもごと不気味な心地を醸し出す同郷のフューチャーらのラップとは対照的である。コール&レスポンスのような強度さえ感じさせるし、「ポップ」への遊び心いっぱいな3人をここで垣間見てしまう。

つまり、ミーゴスが『Culture II』で達成したのはラップ・ミュージックの更新というよりは、彼らなりのリスナーを選ばないポップへの更なるアプローチである。24曲1時間45分という、聞いただけでは気が遠くなるボリュームの作品だが、どの曲順のどの曲が流れてきたとしても、きっとあなたはドキドキし、踊り、シリアスに意味を考えることなんてなく歌ってしまうだろう。ただただ、ポップの楽しさを体現し、私たちをエンターテインしてくれる、そんな一枚になったのだ。

『Culture II』は当たり前のように全米アルバム・チャートで一位を獲得。全米トップ10入りシングルも既に「Motor Sport」、「Stir Fry」と2曲出ており、タイトル通り彼らは前作から地続きの成功を達成している。アトランタのトラップ・シーンの勢いは昨年後半から落ち着いてしまったし、かく言う私も昨年後半以降アメリカで出てきたラッパー達の大半には正直ノレなかった。だが、そんなシーンの状況を他所に自身のプレゼンスを維持どころか高めてしまうところに彼らのポテンシャルを感じるし、だからこそより享楽的ポップとなった『Culture II』を通してスター・グループとしてのミーゴスへの愛に気付かされたのだった。(山本大地)

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Text By Daichi Yamamoto


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