FEATURES : 21 July 2017

Gorillaz

Interpretating Gorillaz with Dissertation and Original Album Disc Guide

By Shino Okamura / Yuta Sakauchi / Tetsuya Sakamoto / Yasuyuki Ono / Daichi Yamamoto

FEATURES : 21 July 2017

Gorillaz

Interpretating Gorillaz with Dissertation and Original Album Disc Guide

By Shino Okamura / Yuta Sakauchi / Tetsuya Sakamoto / Yasuyuki Ono / Daichi Yamamoto

そしてデーモンは世界共通語としての“ポップ・シーン”の中枢に立つ数少ない音楽家の一人となった~論考文とオリジナル・アルバム・ディスク・ガイドで読み解くゴリラズ

 こうでもしないと重い扉を開くことができなかったのかもしれない。それは何の扉か。世界の大衆音楽となりうるための扉であり、侵略を繰り返してきた傲慢な英国白人としてのアイデンティティを解き放つための扉かもしれない。ゴリラズというユニットは、最初、いや、今もかもしれないが、ブラー時代になかなかなしえなかったデーモン・アルバーン自身の、長く欧米至上であってきたポップ・ミュージックを英国人の目線から解体する場であり、長く欧米人が制圧してきた民族ヒエラルキーを贖罪する場としての機能を持っていた。

 筆者がデーモン・アルバーンの口からそうした“贖罪”の意識をハッキリと聞いたのは、ブラーのアルバム『13』(99年)での取材の際だった。第一弾シングルでもあったアルバム1曲目「テンダー」がゴスペル・クワイアを加えた祈祷歌のスタイルになっていることからそうした話に及び、デーモンはイギリス的であることの意識を誇示してきた初期ブラーの作品への反省に自ら言及してみせたのである。その頃、彼が夢中になっていた音楽は、コンゴ(ザイール)やマリの音楽。具体的にはパパ・ウェンバやトゥマニ・ジャバテといったアーティストの名前があがった。ただ、英国で人気者になった自分がそれをバンドの中に取り入れるには様々な理由で難しいかもしれないとも語っていたように、結局、ブラーとしてその挑戦の成果をすぐに形にすることはなく、その2年後にゴリラズのファースト・アルバム『ゴリラズ』を、3年後にマリのミュージシャンたちと現地で録音した『マリ・ミュージック』を発表する。いわば、ブリット・ポップ時代の最終章としてもカウントできる『13』から、世界に向けた拡大発展の一つがゴリラズだった。

 ファースト・アルバム発表後、サマーソニックの深夜帯でのゴリラズのライヴのために初来日したデーモンは、当時筆者との取材でこんな話をした。「僕の顔が全面に出たら、どうしたって、ああ、ブラーのデーモンか…って言われてしまう。それじゃダメなんだ。だからアニメーションに登場してもらう必要があった。先入観なしに聴いてもらう必要があったんだ」。ジェイミー・ヒューレットという人気カトゥーニストによるアニメーションを用いた覆面スタイルの必然。それは重い扉を開けるための苦肉の作でもあった。もちろん、白人少年、アジア系の女の子、ガタイのいい黒人青年…と人種やバックグラウンドの異なるキャラクターにすることでそのミクスチャー状態をデフォルメさせる目的もあっただろう。そのくらいしないとデーモンはブリット・ポップ時代のブラーから解き放たれることができなかったのかもしれない。

 その後のゴリラズの世界的な大成功、特にアメリカでの高評価は説明するまでもないだろう。各作品についてはこの後のディスク・ガイドに譲るが、ゴリラズのデビューから16年、しかし、もう、今のデーモンは生身の自分自身を見せることを厭わない。ブラーの一員であることも、ブリット・ポップ時代に生きた事実も堂々とゴリラズの中で伝えていくようになった。先ごろ、イギリスはマーゲイトで開催された《Demon Dayz Festival》。日本でもストリーミング配信されたのでリアル・タイムで観た人も多かっただろうが、トリをつとめたゴリラズのステージでは、デーモン自身が堂々とステージに登場し、デ・ラ・ソウル、ダニー・ブラウン、ヴィンス・ステイプルズらアルバムにも参加しているアーティストを“ホスト”として迎え、加えてある時期は仲違いをしていたブラーのギタリスト、グレアム・コクソンまで引き入れたのである。スターとしての自分自身の過去やキャリアを真っ向から認めた上で、ヒップホップ、R&B、レゲエ、リンガラ・ポップ、アフロなどを、序列や優位性のないポップ・ミュージックの中で咀嚼していこうとする包容力。そこにこそ現在のゴリラズの、デーモン・アルバーンの最大の功績がある。あるいは、それは、過去長きに渡る英国ロック史において誰もなしえてこなかった大仕事の結晶かもしれない。

 さあ、もう贖罪のシーズンは終わった。いや、もしかするとデーモンの中では一生潰えることのないミッションかもしれない。もちろん、デーモン・アルバーンの格闘はこれからも続いていくだろう。だが、少なくとも、今のデーモンは世界共通語としての“ポップ・シーン”の中枢に立つ数少ない音楽家の一人になった。そこが、ロンドンであろうと、キンシャサであろうと、バマコであろうと、香港であろうと、東京であろうと。まもなく開催される《フジロック・フェスティバル2017》のステージで、おそらくそれは証明されるはずだ。(岡村詩野)

Gorillaz Full Live Set from Demon Dayz Festival (2017年)


Gorillaz Original Album Disc Guide

『Gorillaz』
2001 / Parlophone / Warner Music Japan

 当初は何かとアノニマスな側面ばかりがかなり強調されていたが、15年以上経過した今、日系アメリカ人のダン・ジ・オートメーターがプロデュース、全英チャート3位、全米14位を記録したこのファーストに改めて触れると、デーモンの英国白人としての贖罪の思いがグローバルに表出された最高の第一歩であることに気づかされる。

 もちろん、この後の『ディーモン・デイズ』でのポップな帰着、最新作『ヒューマンズ』での柔軟な咀嚼と比較すると、手法はまだぎこちない。人気俳優/監督の名前でもあるが、ジャマイカのレゲエ・ミュージシャンの名前でもある「クリント・イーストウッド」に代表されるようにレゲエ、ダブへの傾倒が軸になっているし、パンク~オルタナな曲が随所に挿入されていることへの賛否も分かれるだろう。だが、デル・ザ・ファンキー・ホモサピエン、イブライム・フェレール、羽鳥美保(チボ・マット)といったゲストを適材適所に配して、シームレスであることをデフォルメした全体像からは、英国的とさんざん揶揄されてきたことへの発奮とその気概を感じることさえできるのだ。そう、P.I.L.を始めた時のジョン・ライドンや、『サンディニスタ!』の頃のクラッシュのように。(岡村詩野)

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『Demon Dayz』
2005 / Parlophone / Warner Music Japan

 デ・ラ・ソウルをフィーチャーした「Feel Good Inc.」が本作より先行リリースされたのが2005年5月。いまでこそ、ロックのアーティストがラッパーとコラボして曲を作ることも多くなったが、本作がリリースされた当時は、少なくとも皆が皆、他のジャンルに対してオープンな態度を取っているような状況ではなかった。ましてや、その仕上がりが猛烈にクールで、しかも商業的にも大ヒットに繋がったことは、この時期のデーモンにしか成し得なかった曲芸だったと言えるだろう。また、前年に『グレイ・アルバム』でブレイクしたばかりで、本作以降、ヒップホップとサイケ・ロックを融合したサウンドでシーンをリードするデンジャー・マウスを一足先に起用する先見の明にも驚かされる。デーモン史的には、2003年のブラーの活動休止に伴い、”バンド”という容れ物を脇に置いて、メインストリーム流のフレキシブルな制作スタイルに前作以上に本格的に取り組んだ結果、創造性とポップス的な即物性を両立してみせた作品。その意味では、カニエ・ウェストやビヨンセがリードする現代のポップ・シーンを予見するアルバムでもあったのかも知れない。(坂内優太)

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『Plastic Beach』
2010 / Parlophone / Warner Music Japan

 どこの国家にも属さない、誰にも見つかることのない島。ある意味では楽園のように見えるこの島は、プラスティックのゴミでできている。これは環境破壊に対するメタファーのようにも思えるが、実は世界に楽園など存在しないというデモーンの現状認識であるようにも感じられる。その認識のもとで、デーモンはルー・リードやマーク・E・スミス、スヌープ・ドッグ、グリフ・リース(スーパー・ファーリー・アニマルズ)ら多様なゲストを招き、エレクトロ色の濃いアーバンなヒップホップやエレガントなディスコを展開する。確かにここには「クリント・イーストウッド」のような華やかさはない。だが、過去2作に比べて音は洗練されている。そして、そのサウンドからは、楽園はないという意識はありつつも、どこかにそれを追い求めているデーモンのロマンティストという姿もみえてくる。そんなデーモンの冷静なリアリズムとそれに抗えないロマンチシズムを、豪華なゲスト陣に無理なく理解させることで、トータリティのあるこのコンセプト・アルバムが生まれたのだ。デーモンのプロデューサーとしての手腕と才能、ここに極まれり。(坂本哲哉)

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『The Fall』
2010 / Parlophone / Warner Music Japan

   2010年10~11月にかけて行われた北米ツア-中、2Dが自ら携えたiPadを全面的に使用し、短期間で制作された4作目。前作までのような他アーティストとのコラボレーションは最低限に、海を越え訪れたアメリカの各地で、2Dが経験し目指した「アメリカ」を、アメリカ発のテクノロジーを利用して描く。 特にユニークなのは、オーセンティックなカントリー・ソングだと思えば、突如登場する電子音に時間感覚をバラバラにされる、ヴァージニアで制作された「Hillbilly Man」。ブルックス&ダン、グレン・キャンベルといったカントリー・ソングを曲頭で引用しつつ、管制官/宇宙飛行士からの通話のようにも聞こえるヒューストンのカントリー・ラジオ局DJの声を組み込んだヒューストン制作の「The Perish Of Space Dust」あたりだろうか。民族的、思想的、文化的、物理的、時間的、エリア的…あらゆる事象において越境することで自らの音楽を構築するゴリラズのアイデンティティは、本作で敢えて“アメリカ”という空間を焦点化しても、なお、薄れることはないと伝える。  本作がリリースされた2010年、アメリカでは3発のスペースシャトルが打ち上げられている。翌年にはアジア各地で民主化が進む、そんな時代に、デーモンはアメリカに何を見たのだろうか。(尾野泰幸)

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『Humanz』
2017 / Parlophone / Warner Music Japan

 『ヒューマンズ』はこれまでのゴリラズのディスコグラフィーの中でも特殊な作品だ。過去作でいう「クリント・イーストウッド」、「フィール・グッド・インク」、「スタイロ」のようなアルバムの掴みとなる曲はなく、ドレイクやカルヴィン・ハリスの新作とも並べたくなる17組の、それも実に2017年的なゲスト構成の下、ゴリラズの存在が目立たないのが寂しく感じられるのは否定できない。それでも「トランプが大統領選で勝利するような世界の終わりのためのパーティ」とテーマを付けられた本作では、60年代から公民権活動家としても活動するゴスペル・ソウル界の母、メイヴィス・ステイプルズに「オバマは去ってしまった。誰が俺たちを救ってくれるんだ?」と尋ねるプッシャ・T、シリアスなトーンで人種問題を扱うヴィンス・ステイプルズ、ポジティブなムードを届けるPopcaanや、誰よりも力強く「何が起ころうとお互いに愛し合うパワーを持っている」と誓うサヴェージズのジェニ―・べスといった若手を中心に、それぞれのゲストの役割に一つとして無駄が無く、しっかりと2017年に生まれるべくして生まれたレコードの意味を成している。これまでアフリカや中東の音楽家とも共作するなど、誰よりも多民族の多様な音楽を飲み込むことに意識的だったデーモンのキュレーションだけにより一層の説得力を持って聴こえるのは言うまでもない。(山本大地)

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■Gorillaz OFFICIAL SITE
http://www.gorillaz.com/

■Warner Music Japan 内 Gorillaz OFFICIAL SITE
https://wmg.jp/artist/gorillaz/


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