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初来日ツアーの前に再注目! フォーク、ジャズ、ソウルからデジタル・クワイアまで音楽史を俯瞰するかのように大らかな米ダラス出身のコナー・ヤングブラッドとは何者か?

01 April 2019 | By Sinpei Kido

昨年8月にデビュー・アルバム『Cheyenne』を発売したばかりの米ダラス出身のシンガー・ソングライター、コナー・ヤングブラッドがまもなく日本にやってくる。今回が初の来日公演となる。

『Cheyenne』はデビュー・アルバムと位置づけられてはいるが、デジタル配信では過去に数枚のEPとアルバムを発表しており、それらはオーストラリアやネイティヴ・アメリカンを題材にした素描ともいえる作品。既にテロワールとも言うべきその土地を思わせる豊かな音楽世界を構築していた。

それらの集大成でもあり、今回、旅と鳥をテーマにしたコンセプト・アルバムでもあるというのが『Cheyenne』である。その内容がとにかく素晴らしい。まず、フォーキーでサイケデリックな音のレイヤーは、オーガニックな自作自演アーティスト……ボン・イヴェールやデヴェンドラ・バンハートあたりを思い起こさせる。特に、国・地域・家族をテーマに据えるコンセプチュアルな創作スタイル、そしてギター、ハープ、クラリネットなど複数の楽器を自らこなすマルチプレイヤーぶりは、とりわけスフィアンからの影響が強く感じられると言っていい。

ただ、彼の音楽がオリジナリティを持っている最大の特徴は、そうしたフォーキーな側面だけではなく、主に50年代から70年代の様々なルーツ・ミュージックに深い敬意を抱きながらも、2010年代を生きる若者として、確実に未来に向かって開かれた音楽を奏でているところだ。

彼の音楽的な歴史の糸を手繰ろうとすると、スフィアンやデヴェンドラなど同時代に生きるコンテンポラリーな“同志”だけではなく、実に様々なジャンルやアーティストが湧き出るように浮かんでくる。例えば、ミニマルなアコースティック・ギターのリフはジョン・フェイヒィのようでもあるし、ドラミングのタイム感や音の丸みは、ザ・バンドのレヴォン・ヘルムを思い起こさせる(実際、コナーはザ・バンドの論文も執筆したそうだ)。音の空間づくりや歌声は、ジャズ・ギタリストのブランドン・ロスのようでもあるし、『Cheyenne』収録の「12 lbs」で弾かれるピアノはクラシカルで、まるでエリック・サティを思わせる。あるいは、後期ガスター・デル・ソルのようなポスト・ロック的な部分も散りばめられているかと思えば(実際収録の「Red 23」などは、『ユリイカ』の頃のジム・オルークのようだ)、ボン・イヴェールがそうだったようにデジタル・クワイアをとりいれる柔軟性もある。ジャンル、時代を鮮やかに横断しながら様々なアングルから様々な音楽成分を吸収し、それを決して確信犯的ではなくあくまでプリミティヴな音楽空間において確立させているのが面白い。デジタル配信もアナログ・レコードもサブスクリプション・サービスもカセットもCDも……様々な音楽ツールでその作品ごとに自由にチョイスする時代を象徴するかのような、ある意味でとても現代的な存在だ。

そんな彼がいよいよ日本にやってくる。今回、ベーシストのベンジャミン・ウィリアムズと2人体制でのライブとのことだが、アルバムで表現されたオーガニックな空間が、ライブでは、どんな風に立体的な音像に仕上げていくかが、最大の聴きどころだ。そして、彼の放浪した土地土地の、土・風・街・人の香りに思いを馳せながら、時にゆっくりと瞑目して身を委ねてみてほしい。

この来日が、これからも続く彼の音楽の旅としてスケッチされ、きっとまた知らない土地へと、私たちを導いてくれるだろう。 (文:キドウシンペイ 写真:Trevor Paulhus)

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■Conner Youngblood来日公演情報
http://www.billboard-japan.com/d_news/detail/70078/2

■Conner Youngblood Official Site
https://www.conneryoungblood.com/

■ビートインクHP内アーティスト情報
https://www.beatink.com/artists/detail.php?artist_id=469

Text By Sinpei Kido

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