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Sofia Bolt: Waves

2019 / Loantaka Records
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ヴァン・ダイク・パークスも惚れ込んだフランス出身LA在住シンガー・ソングライターの美しくも残酷な吐息

11 July 2019 | By Shino Okamura

そろそろ地球上のどこかからかこういうアルバムが届いてほしいと願っていた。美しくも残酷な匂いのする音楽。例えるならセルジュと蜜月だった頃のジェーン・バーキンとかヤング・マーブル・ジャイアンツとかウィークエンドとかトレイシー・ソーンとか。脆く崩れ落ちそうな儚い表情をたたえながら、背後から鈍い音をたてて刺し違えてくるような。ラフでロウファイな音楽は今もたくさんある。単なる雰囲気モノというような音楽も掃いて捨てるほどあるだろうが、これはジョン・フェイヒィと繋がりそうで、アーサー・ラッセルと隣り合わせに置いていたりしても全く違和感はない。つまり実存と架空の間の距離を埋めることを指標とするような音楽。そしてそこに埋没してしまうことも厭わない音楽。一体いつからこういう音楽を耳にしなくなったのだろう。と考えてしまう。

このソフィア・ボルトはフランス出身のギタリストでソングライターのアメリー・ルソーによるスタジオ録音を中心とするプロジェクト。これまでにEPは多く発表しているが、フル・アルバムはこれが初めてとなる。レーベルのオフィシャル・バイオによると、2017年、“彼女のガールフレンド”と別れてLAに引っ越したとあり、現在は西海岸を拠点としている模様。そしてそのLAにおいて僅か5日間でレコーディングしたという本作には、驚くことにあのヴァン・ダイク・パークス、ライやセラ・スーなどのプロデュースで知られるイタイ・シャピラ(Elevaters、Babystone他)、あるいはエンジェル・オルセンなどをサポートするEmily Elhaj、LAのバンドのLa LuzのMarian LiPinoといった様々な人脈が参加している。ヴァン・ダイクとイタイ・シャピラが同じアーティストに関わっているというだけで奇跡的なのだが(ヴァン・ダイクはタイトル曲のストリング・アレンジふんだんの別ミックス曲を手掛けている)、ともあれ、ここまでギターの音が揺れ、歌が揺れ、リズムが揺れ、音の位相そのものが揺れ動いているのに軸は全くブレていない音楽も久々だ。

25、30年くらい前ならともかく、おそらく今の時代に最も受け入れられ難いタイプの、そう、ある種の洗練を伴うAORとかシティ・ポップスとかニューエイジに世界規模で脚光が集まるような(でもそれもようやく、なのだが)現在からはかなり乖離されたところに置かれるような、時代とあまりにも対照的なオブスキュア・ポップスだ。でもだから? そう、絶対支持。(岡村詩野)

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