Review

(Sandy) Alex G: Rocket

2017 / Domino Recording
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28 June 2017 | By Nami Igusa

 先行シングル「Bobby」を聴いて耳を疑った。なんて古風なんだ! これが24歳の作る曲? それが(Sandy) Alex Gへの第一印象だった。だがそんなのは序の口。本作『Rocket』には、このアパラチアン・ミュージック調の「Bobby」と一緒に、不穏でエクスペリメンタルなリズムの「Horse」、ハードコアなエレクトロ・サウンドでシャウトしまくる「Brick」など、全く対照的な楽曲も並び、度肝を抜く。型に収まることができないアイディアがそのまま暴発しているかのようだ。フランク・オーシャンがこれまた多彩なジャンルを包摂した『Endless』『Blonde』(いずれも2016年)へ彼を招いたのはそんな彼へのシンパシーからだと言われても、頷ける。
 持て余し気味な振り幅をおくびなくさらけ出したイビツな今作には、アーケイド・ファイアが時勢へのパッションから生み出した『フューネラル』(2004年)での、ニュー・ウェイヴやクラシックの接合に似たものさえ感じてしまう。そうか。“まだ自分が何者か決められない、でも表現したいことは山ほどある”と言わんばかりのパッションを彼が抑えきれなくなったのは、もしかしたら2000年代初頭当時のイラク戦争の闇とも似た、出口の見えない現代の混沌が後押ししたのかもしれない。(井草七海)

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