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Pot-pourri: Diary

2022 / UNKNOWNMIX / HEADZ
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焦燥や寂寥感に縁取られた歌の肖像画

10 May 2022 | By Dreamy Deka

Luminous101、Yank!、えんぷていなどを筆頭に、OGRE YOU ASSHOLE、People In The Box、NOVEMBERSやミツメといったゼロ年代以降の日本のロック・バンドからの影響を感じさせるバンド・サウンドを、ポスト・パンク、サイケ・ポップからネオ・ソウルまで幅広いジャンルからの着想によって進化させた、新しい世代のオルタナティヴ・バンドの活躍が目立つ2022年。セカンド・アルバム『Diary』をリリースするPot-pourri (ポプリ)もまた、そうしたシーンの中心となっていくことを強く予感させるバンドである。

全楽曲の作詞・作曲を手掛けるフロントマン、Sawawoを中心としたバンドだが、自らをアブストラクト・ポストパンクと称する彼らの特長は、「歌もの」からの逸脱をもいとわないバンド・サウンドの徹底的な解体ぶりと、その上で新たにつくり出すサウンド・スケープの雄大さにあると感じた。1曲目「Astra」のカット&ペーストの痕跡をあえて残したようなギターとヴォーカルのループと無機質に打ちつけていくドラムのせめぎ合いは、彼らがロック・バンドというフォーマットにとらわれることなく、自分たちの世界観を作り上げていくことの宣言のようにも聴こえてくるし、6分を超える3曲目「In Profile」では、生々しく録音されたアコースティック・ギターとスリリングなドラムを、プログレッシヴ・ロックを思わせるスケールの大きな地図の上に再配置することで映像的なサウンドをつくり上げている。なお、本作のマスタリングはROVOのメンバーである益子樹が担当。エクスペリメンタルなバンド・サウンドという点において、彼がプロデュースを手がけた後期スーパーカーの名作群に通じるところがあり、今作の立体的な音像の構築においては彼の貢献も大きかったことを想像させる。

そして彼らの作品のもう一つの特色は、こうした大胆なサウンド・プロダクションをただの音響的な実験として完結させることなく、焦燥や寂寥感に縁取られた一人の青年の心象風景を、より鮮明に描くための手段にまで昇華させているところにあるように思う。例えば5曲目「Papillion」における、荒々しい世界に対峙する逡巡と静かな覚悟を綴ったシンプルな言葉とメロディ。そこに重層的なリアリティをもたらしているのは、フォーキーなギターと呟くようなヴォーカルの向こう側で鳴らされる、ドローン的なシンセや残響の深浅を絶妙にコントロールされたキックの音色がつくり出す背景画だ。この主題と背景の距離感こそが、荒涼とした景色の中に佇む魂の姿をありありと聴き手に想起させるのである。

ロック・バンドの息づかいを感じさせながらも、ライヴ・ハウスにおける肉体的な熱狂やリスナーとの同一化とは一線を画した彼らの世界がどのように受容され、どこまで広がっていくのか、この先が楽しみになる作品である。(ドリーミー刑事)

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