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Sunn O))): Life Metal

2019 / Southern Lord Recordings
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ケツァルの羽毛も永遠ではない

02 May 2019 | By Shino Okamura

おいそれと言葉にできないような凄いアルバムだ。3月に亡くなったスコット・ウォーカーとの共演作『Souced』(2014年)もまだ記憶に新しいが、新録の単独作品集としては『Kannon』(2015年)以来。ステファン・オマリーとグレッグ・アンダーソンというギタリスト2名を中心とするこのユニットが、ドローンでもドゥーム・メタルでもストーナー・ロックでもノイズでもアンビエントでもなく、どうしようもなくSunn O)))でしかないという泰然自若とした事実を、これ以上ないほど立体的かつ生々しい音像で伝える力作だ。これまでの彼らの作品の中で最も人間臭い…というと語弊があるかもしれないが、過去にないほどダイレクトに目の前で鳴らされているような迫力のあるアルバムと言ってもいいだろうか。彼らのライヴはこれまでに2度観たことがあるが、その時の強烈な記憶を追体験をしているかのような臨場感もある。

変化の理由の一つは、まずその録音方法にあるようだ。『NEW NOISE』や『Stereogum』などに掲載された記事によると、これまでにも再三共同作業をしているTos Nieuwenhuizenと一緒にLAで肩慣らしをし、スティーヴ・アルビニが設立したシカゴのスタジオ『Electrical Audio』で録音されたという本作は、一つの部屋の中で全てアナログ機材で完成させたという。Tim Midyett(シルクワーム〜ボトムレス・ピット)、Hildur Guðnadóttir(パン・ソニック、ムーム他)らをゲストに迎えているものの、プロ・トゥールズなどによる編集も一切しなかったことで、ライヴ・パフォーマンスさながらの重厚感が目の前にどっしりと現れることになったのはそういうプロセスによるものなのだろう。もちろん、本作がそもそも今年の『レコードストア・デイ』用にアナログ・レコードとして作られることを前提とした作品だったことも無関係ではない。

加えて、本作は今を生きる一人の人間としての日々の営みから得られる喜びを反映させた内容にもなっている。グレッグ・アンダーソンによると、彼自身、子供を持ち父親になったことが気分を変えたのだそうで、ブライト(というほどブライトでもないが)でシンフォニックな方向へと向かったのはそうした私生活の変化も影響しているのかもしれない。

とはいえ、昨年結成20年を迎えた彼らが本作でいきなり人情味溢れる穏やかなタッチを目指したのかといえば全くそうではなく、むしろ今まで以上に思想を持った音楽家としてのフィロソフィーをつきつけてくる作品になっている。1曲目「Between Sleiphnir’s Breath」の歌詞で、古代アステカの文化神の使いである鳥=ケツァルの羽毛を絶対的なものの象徴として描き、それが必ずしも永遠ではないと示唆している事実……。『Life Metal』というタイトルは、一人の人間として生きる日常と、そんな自身の存在など到底絶対的ではないが、絶対的な永遠に向き合うにはそんなちっぽけな日常という窓から覗くしかないのではないか、という彼らの哲学の表れのような気もする。そしてその哲学は反資本主義とそう遠くないところに視座したもののような気もするのだ。(岡村詩野)

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